12歳のころに初期のNYヒップホップにはまって、音楽が大好きだとはっきり意識するようになったんだ。その後15歳のころにテクノと出会った。ものすごく熱中して、レコードを集め始め、一晩中クラブで遊んでたよ。そのうちに何人かのデトロイトのアーティストに興味を持つようになった。とくにTerrence Dixonが1995年に発表した12インチ「Minimalism」は際立っていた。それで最初は彼をドイツツアーに招聘して、自分がケルンでやっていたパーティーでプレイしてもらったんだ。それから自分も定期的にデトロイトに通うようになり、友人になったTerrence Dixonを通してMad MikeやJuan Atkinsらと知り合ったんだ。そのころTodd Sines(aka.Xtrak)にも出会ったよ。
そういう人脈と音楽への大きな愛が自分にあったので、レーベルを始めるのは自然な流れだった。当時はまだ今ほどレコードレーベルが乱立していなかったから、"Background Records"みたいに特定の音に強い焦点を当てたレーベルの存在は特殊だった。ヘッズのための音楽、真のミニマリストとフューチャリストのための音楽さ。
状況の変化でもっとも大きいのは、デジタルに関すること。知ってのとおり違法ダウンロードによって音楽をタダで手に入れる人が増えて、マーケットの在り方は大きく変わってしまった。アーティストやレーベルが注ぎ込む愛情と努力が、的外れであるかのように映ってしまっている現状―――人々が当たり前のように音楽を無料で手に入れることでアーティストは脅かされ、音楽に導かれた汗と努力に対するリスペクトも失われ、それが当然のことのようになっている。
でも実際はそうじゃない。違法ダウンロードはゆっくりとこのアートフォームとシーンを殺していってる。それ以外の変化としては、焦点を自分の初期衝動であるハウスミュージックに当てることを決意して"YORE records"を始めたことだね。いろんなアーティストのめちゃくちゃディーブなハウスグルーヴを提供しているよ。レコードの売り上げがどんどん減っているこの時代にあって"YORE"はすばらしく成功している。なによりそれが"Background records"を眠らせて別のフレッシュなことに移行した自分が正しかったことの証明さ。
いいデモを聴いたときだね。いまだにすごく興奮するんだ。結局何年もずっとレコードを集めて聴き続けてきたけれど、"YORE"にとっての最高のデモを聴いたときはいまだにひっくり返ってのぼせあがってしまうほど興奮させられる。つい最近も起こったばかりだよ。Ibexというアーティストのすばらしい作品でね。"YORE"の26番目でリリースする予定だ。すばらしい音楽には本当に強く心を打ってくれるものがあるんだよ。あとは初めての場所にプレイしに行くことも大好きだ。2002年に初めてジャパンツアーをした時は、日本に向かう飛行機の中で小さな子供みたいな気分だった。まったく新しいオーディエンスの前で自分の音楽をプレイして、違う文化と触れ合うことができるなんて夢のようだったし、この音楽が自分をこんなに遠くて新しい世界まで運んでくれるなんて思ってもみないことだった。オーディエンスが自分の音楽とレーベルに愛と興奮を示してくれたときはさらに幸せだよ。最近は初の中国ツアーの準備をしているところなんだけど、同じように興奮している。旅をして新しい文化やオーディエンスと触れ合うことが大好きなんだ。それは確実にこの仕事だからできる大きなメリットのひとつだね。
自分はいつもトラックソングベースで曲を作る。だからいつでも12インチのリリースを前提に作っている。ライブのためだけの音楽はあまり作らない。もちろんライブでの流れを盛り上げるためにリエディットを施したりするけどね。だから曲はライブでもフロアをロックするよ。
えっと、ヨーロッパはどこも似たような雰囲気だと思うよ。クラブシーンが長いこと存続していて、お互いに影響を与え合っているからね。もちろんベルリンの客とケルンの客は幾分違う、というようなことはあるけどね。奇妙だった体験は、数年前にヴュルツブルクという街で平日のパーティーで、お客が1人もいない状況でプレイしたとき。ゴーストタウンのエンターテイナーになったようで変な気分だったよ。
今もヒップホップが大好きだからよく聴いてるよ。いいのがたくさんあるからね。Quasimoto / Madlib、J Dilla、MF Doom、Dudly Perkins、All Natural、Dilated Peoplesとか。今でも定期的にヒップホップのレコードは買っている。ジャズやソウルも聴くよ。ParliamentやFunkadelicも日常の良い調味料さ。もちろんハウスも聴くしね。毎日のようにレコードを集めているよ。
するつもりだよ。初めてエディットを作ったけどいい感じだ。オーディエンスも気に入ってくれているし、プレイするといつでもフレンドリーな空気が生まれるよ。
"YORE"はオールドスクールとニュースクールを結びつけて、ディープでグルーヴィーなタイプの音楽を発信している。Alton Miller、Terrence Dixon、Rick Wadeのようなベテランと、Kez YM、Morning Factory、Tracletonといった新人を結びつけながら、ディープネスと踊れるサウンドの丁度良いバランスを保っている。
さっきもいったように、定期的にデトロイトに通っていた時期があって、友達がたくさんできたんだ。だから彼らに参加してもらうのはむずかしくなかった。
ときどきランダムにチェックするだけだよ。もうすぐEPが出るIbexもそんな感じで見つけた。それからMorning Factoryとは3年の専属契約をしたよ。
さっきもいったように、自分のレーベルがうまく行っていることに関してはとてもハッピーなんだけど、違法ダウンロードはなくならなきゃいけない。ミュージシャンを侮辱する行為だし、ミュージシャンが音楽に込めた愛情に泥を塗る行為だ。みんながそのことを理解して再びレコードを買うようになることを望むよ。自分はレコードが大好きなんだ。いついかなるときでもね。レコードそのものがアートの一形態であり、考え方の一形態であり、自分にとってはほとんどスピリチュアルなものですらあるよ。そういう人間が自分ひとりじゃないってことは"YORE"のヴァイナルセールスが証明している。ヘッズやコレクターはレーベルを愛してヴァイナルを集めてくれているよ。彼らなしではレーベルの運営を維持して偉大なアーティストのヴィジョンを共有することは不可能だから、"YORE"のレコードを買ってくれたことがあるみんなに感謝するよ!レコードは魂なんだ。
調子いいよ。熱心なファンがレコードやmp3を安く買える機会を提供できただけでなく、公式の発売日より前に手に入れられるようにもなった。ショップではダウンロードに比べてレコードのセールスの方がだいぶ多いんだ。それもオレたちのファンが同じような考え方でいることの証拠だね。ぜひショップをチェックして(http://www.yore-shop.de)気軽にコメントやフィードバックを送ってほしいな。商品を売るだけじゃなく、利用者との交流を通して奉仕したいんだ。ショップではほかにもレコードを買ってくれるお客に対して"YORE"のフリーグッズをプレゼントしたり、5枚購入でプラス1枚サービスしたりといろいろな特典があるよ。
日本人プロデューサーの新しい潮流が、すばらしいディープハウスを生み出しているのを知ってうれしくなったんだ。それまで正直なところディープハウスに関して日本は後回しって感じだったから、最近の現象は新鮮で興味深いよ。それで注目して手助けするに値すると感じたのさ。「Tokyo Connecition EP」で見られる才能は間違いないものだし、日本と日本人プロデューサーがハウスミュージックの地図に加わっていくのを眺めるのはいい気分だ。
確か、今まで5回来てると思うよ。あの伝説的な新宿リキッドルームでの、田中フミヤのとれまレコード10周年イベントは忘れられない体験だ。すばらしいクラブとサウンドシステム、そしてなによりオーディエンス。自分のライブの歴史の中でハイライトだと断言するよ。
言葉の壁だね。似た考えを持ったすばらしいヘッズたちと積極的に会話をするけど、言葉のせいで言いたいことを全部伝えきれないときにはいくぶんストレスが溜まるね。それでもシャイにならずに会話しにきてほしいな。日本の音楽ファンは世界で1番知識があるし、音楽のことをわかっている。それと、日本語の表示を見ながら自分で街を移動するのはなかなかの冒険だけど楽しいよ。東京ではいつも迷子になるけど、道を尋ねるとみんな温かくて親切だよ。ほとんど英語ができない人でもね。とってもポジティヴに感じるよ。
Kez YM、Rondenion、No Milkの「Tokyo Connection EP」(yore-025)が出る。チェックして、自国のブラザーに愛を送ってくれよ。日本の音楽ファンにとっていいことだし、地元の才能は地元からまずサポートするべきだよ!そしてIbex EP(yore-026)は本当にすばらしい。信じていいよ。1度聴いたら吹き飛ばされて、世界が前と違って見えるはず。そしてMorning Factoryの2つ目のリリースも楽しみにしてくれ。ディープなディスコとクラブサウンドが融合した作品だ。
ぜひイベントに遊びに来て、一緒にすばらしいパーティーを作って、雰囲気を共有して楽しんだりしゃべったりほしいな。君らがわかってるヤツらだっていうのは知ってるからね、ポジティヴなヴァイブを一緒に共有しよう!みんなと会うのを楽しみにしているよ。
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