この曲は8年前ニューヨークに住み始めてから最初に作ったもので、私が初めてハウストラックにトライしたナンバー。実はダニーと出会ってから恋に落ち、このナンバー「If You Love Me」が生まれました。だけど「ビートの感じが私の好きなダンスチューンとは違う気がする」「グルーヴが違う」って思い、なかなか認印が出せなくて。でもダニーが家に遊びに来たときに聴いてもらったら、「これは絶対完成させたほうがいい」って言われて。結局、当時はビートが私の中でどうしても納得できなくて完成せず。それで8年後にこのアルバムを作るにあたって振り返って聴いて、幼稚だけれど、このまま形にしてもいいでしょ、って思うようになって、ミックスをしていたらダニーがそれを聴いて「なにこれ、すごいいいじゃん」って。8年前に聴いてるのに忘れてて(笑)。最初に作ってたときに、何かハイハットのグルーヴがこうじゃない、って思っていたのだけれど、8年後にダニーにもう1度聞かせたら、「アケミ、この曲の僕が1番すばらしいと思うところは、ハイハットが絶妙なグルーヴを出してるところだよ」って(笑)。もう目からウロコというか。やっぱり既成観念にとらわれずに、自分が素直に作ったものはそれで自分のスタイルとしていいんだって、レジェンドDJのダニーから、そんな風に言われて、OKにしました(笑)。
「Say That You Love Me」が出たことによって、ある意味ダンスシーンからも注目を集めて、その後ジェフテからコラボレートしないって誘われたのだけど、それまでコラボレーションの経験が1回もなかったから、最初はとまどいました。ジェフテから「僕は歌わないし、メロディと詩は書かない。だけどAKのメロディと詩は好きだし、君のボーカルプロダクションが好きだから、僕はトラックだけ、ビートとコードだけやるから、一緒にやらない?こういうトラックがあるけど聴いてみる? 」って言われて。私、メロディって子供のころからインストゥルメンタルが聴こえると、クラブでもそうなんだけど、自然にメロディが浮かんじゃって、即興で作ってしまうの。ジェフテのトラックを聴いたときもすぐに浮かんで、「ジェフテ作らせて」って。で、「Shining Your Way」ができてリリースすると、コラボレーションのお誘いがほかにもくるようになって、STUDIO APARTMENTからもお誘いがあり「Beautiful Sunrise」が生まれました。実はAnanda Projectのクリス・ブランからは、ずいぶん前に「一緒にぜひやりたい」と言われてトラックを送ってもらったのだけれど、1ヶ月経っても2ヶ月経っても、メロディがぜんぜん浮かんでこなくて。いつもすぐ浮かんでくるのに、ここまでがんばって浮かんでこないのならもう無理って思い「ごめんなさい、できません、浮かびません」ってクリスに伝えたら、当然彼もすごく落ち込んで(笑)。去年、再度「やっぱりぜひAKとやりたい、今度はたくさんトラックを作ったからこの中から浮かぶものを選んでくれ」って言われて。それらを聴いているうちに「待てよ、あれから随分時間が経っているし、もしかしたら?」と思って、改めて最初にもらったトラックを聴いたらメロディが浮かんできたの。「Heaven Is Right Here」って曲なのだけど、ダニーと結婚したから生まれたんです。
実は「All Day, All Night, Always」にはドラマがあるの。締め切りの1週間前に全部機材がクラッシュしてしまって(笑)。10年使っていた私のホームスタジオのレコーディングシステム、プロツールスがだめになってしまったの。ちょうどそのころハクリスマスシーズン、お正月前で、そこから全部買いなおしってイわれ。機材もなかなか届かないし、慣れるのにも時間がかかるし、データは全部消えてしまったし、もうこれは完全に無理と思って、1回お断りしたのだけど、先方から「待ちます」というお返事。そのときにもダニーが、「これだけすばらしい曲なんだからがんばって完成させたほうがいいよ」って。それでなんとか完成させたものがiTunesの1位。あそこで頑張らなければ、リリースもあの1位もなかったんだなあって。
本当は英語の歌詞と日本語の歌詞を作りたいの。1曲に2ヴァージョン録音できたら理想なんだけど、1ヴァージョン作ったあとに「もうできない」ってクタクタになっちゃうわけ(笑)。私のボーカルプロダクションって1つの曲を作るのに相当のエネルギーを使っているので、日本語の歌詞もできてるんだけど、レコーディングができていないっていうのは何曲かあります。ただ、英語で作る心地よさっていうのもあったりして。ニューヨークに住んでるから、ってことだけではないんだけれど、英語でしか言い表せない気持ちとか、そのメロディに乗っけたときに「この言葉で歌いたいな」っていう言葉もあったりするんですよね。たとえば「If you love me」の詩で歌っている「meant to be」。それを日本語にじゃあどう訳すかとか、そのひとつを表現するのにこのメロディじゃ乗っからないな、とか。同じ意味で日本語と英語で言い表すというのは私の中でチャレンジの一つです。
もともとメロディが浮かぶときに、キーワードが必ずあるんですね、感情がまず出てくる。トラックを聴いて、メロディを書いてるときには、まずエモーションが先に浮かんでくるの。そのエモーションと言葉がマッチしたときに、もう詩のテーマがほぼ決まっています。そしてとにかくストレートに、本当は言葉にはちょっとしにくいっていうような、自分の心のうちにしまっておこうかなっていう気持ちも、あえて言葉にするようにしてるの。たとえば日記にしか書けないことがあるとしたら、そういう言葉が一番伝わると思う。歌詞に関しては全部実体験なの(笑)。自分が体験した気持ちでないと書けない。もちろんシチュエーションは変える場合もありますが。
元々このアルバムの前まではセルフプロデュースで、全部自分で作っていましたが、ダンストラックに関しては、まだまだプロセスの途中。ちょっとずつ年月を経て自分のなかでチャレンジを深めていってます。「If You Love Me」の次にチャレンジしたのが「Golden Lady」で、このトラックを作ったときが、「If You Love Me」から数えて3年後くらい?で、「Ride」というAK初インストも今回入れましたけど、あれが2年前くらいかな。自分なりにちょっとずつちょっとずつ、こんな音をやってみようかなっていうのをトライしている感じ。ルールはとくにないのだけれど、自分のなかでこれが楽しいとか、これが好きっていうのをこれからもマイペースで作っていきたいなって思います。
実はみんな誰でも自分では気がついていないだけで、その人それぞれ、その人が作るもの歌うものには共通点があると思うんです。自分にもともとないものは作れない。私もそのいい例。逆にいうと、自分では違うトライをしたつもりでも、似ちゃっているっていうのがあったりして。たぶん好きなものをやっている以上、意識をしなくても必ずどこかに共通点のあるものができてるんだと思います。
ダニーとの生活は、一言でいうと「最高」(笑)。自分ほど音楽が好きな人がいないだろうと思っていたけれど、本当に「まだ音楽聴くの?寝ないの?」って言ってしまうくらい、彼は本当に音楽が好き。毎日音楽で溢れてます。あと、ダニーに出会ったころ、自分のアルバム3枚を渡したら速攻で電話がかかってきて「アケミ、僕はもらったアルバム全部3回連続で聴いたよ、本当に君の音楽はすばらしい」って言ってくれて。そうやってダニーは、私が曲を作るたびに私の音楽をすごく評価してくれるの。だから私もがんばれるんです。
あのね、私が想像していたのと違った。それまでって、とくに私は日本でYellowとかLiquidroomとか、そういうところに行ってたので、まずは海外のアーティストDJを見ちゃうのね。もう踊ってるときはDJを見ながら踊りたいって。それがニューヨークに行って「B&S」行ったらほとんどDJを見てないっていう(笑)。もうみんな好き勝手踊ってて、その辺で寝転がって踊ってる人もいて、そんな人Yellowにはいなかったっていうか、パツパツだし寝転がる余裕もないんだけど。ニューヨークは本気のダンサーの数が多いし、DJを見に来たっていうよりも、自分たちが音楽を楽しむために、自分たちが音楽に没頭する時間のために来たっていうエネルギーが溢れてて、ものすごいびっくりして。こんな楽しみ方あるんだ!っていう。あれはすごい開眼のポイントでした。
「718sessions」のパフォーマンスはものすごくドキドキしたの。ニューヨーカーに受け入れてもらえるか心配で。何か投げられるんじゃないかとか(笑)。でもAKのライブのときにいつも一貫しているのは、自分がいいと思ったものをそのまま出すこと。ありのままの自分でいること。これは日本でもどんなライブでも同じ。そんな気持ちで自分がいいと思うものを信じて歌ったら、「歌詞は解らなかったけど、とても暖かな気持ちになったよ」とか、まだそのときはリリースされてなかったんだけど「『Heaven Is Right Here』を買いたい!」なんて声をかけてもらって。もともとNORIさんが30周年の記念として、ゲストDJとして「718sessions」参加という話で、だったらAKお祝いで歌う!っていったら、え、AK歌ってくれるの?ってどんどん話が大きくなってパフォーマンスという形になったの。今回もこうやってダニーと一緒に日本でパフォーマンスすることになってすごくうれしい。毎回日本でパフォーマンスするたびに、今でもみんな私より大きな合唱で「Say That You Love Me」を歌ってくれて(笑)。いつも暖かくむかえてくれることに本当に感謝してるし、みんなと会えるのを、今からとても楽しみにしています。
■ツアー情報
King Street Sounds Presents
DANNY KRIVIT & AK - Double CD Release Japan Tour
9/18 (Sat) - Grand Cafe' 大阪
大阪府大阪市中央区西心斎橋2-10-21 スパジオビルB1
tel:06-6213-8637 | http://www.grandcafeosaka.com
9/19 (Sun) - eleven 東京
東京都港区西麻布1-10-11 セソーラス西麻布B1/B2
tel:03-5775-6206 | http://www.go-to-eleven.com
9/22 (Wed) - Club Mago 名古屋
愛知県名古屋市中区新栄2-1-9 雲竜フレックスビル西館B2
tel:052-243-1818 | http://www.club-mago.co.jp
9/24 (Fri) - Nude Supper Club 高松
香川県高松市多肥下町1520-12 FPビル1F&3F
tel:087-815-1515 | http://www.nudesupperclub.com
9/25 (Sat) - Sound a base Nest 宇都宮
栃木県宇都宮市宮町2-16 B1
tel:028-643-6681 | http://www.club-nest.com
Tour Organized by Hisa Ishioka For King Street Sounds
http://www.kingstreetsounds.com
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