INTERVIEWS

salmon cooks U-zhaan

Salmon : ありがとうございます!
U-zhaan : どうもー。 Salmon : "WC"(※)のリリースをしつつ、主催のパーティーをしたり、たまに鎧を着て刀を振り回してました。

(※WC=Salmonが主宰するテクノレーベル)

・なるほど。刀。

U-zhaan : それ、なんか説明不足すぎるでしょ。

Salmon : 徳川家康っていう人が自分に舞い降りて、それで忍者を引き連れてDJをするという。

U-zhaan : 意味わかんないけど、なんかスピリチュアルな感じのやつなの?

Salmon : うーん、スピリチュアル70%、おふざけが20%、悲しみが10%くらいの割合です。

U-zhaan : もうどうでもいいや。

Salmon : いや、けっこう真面目にそれで音楽活動してたんだよ! "WC"では2006年辺りから突然、和風のテイストでテクノやハウスを多くのアーティストがリリースして、このコンセプトに沿って徳川家康がUNITのレギュラーパーティーで生まれた感じ。そのほかにもアンディー・ウォーホールって名前で白髪のカツラつけてDJしたり、ヴェルベッツのマッシュアップのトラックを自作したりとか、そんな企画モノをいろいろやってました。 U-zhaan : 温まるかな(笑) U-zhaan : 5年間! 長いね。うーんと、この春までは、ずっと参加していた「ASA-CHANG&巡礼」というユニットが活動の中心でした。そのほかにもいろいろな人とさまざまな音楽をやっていたのですが。で、「巡礼」に加入して10年目になるし、いったん区切りを付けようと今年脱退しました。やっぱり所属していたバンドが突然なくなると、焦りと不安もあるのか必要以上にいろんなことをやりたくなるもんですね(笑)。まあそれまでも自由に活動させてもらっていたのだけれど、今は本当に何もかも自分で決められる感じが気が楽ですね。なんとなく実家を出た感じの気分。まだ現実には普通に今も川越の実家に住んでいるんだけど(笑)。で、巡礼を脱退してからは、なぜかツイッター本を出したりとか、レイ・ハラカミさんとコラボさせてもらったりとか、いろいろなことを皆様のおかげでやらせてもらっています。ていうか、もういいよ俺のことはこんくらいで。

Salmon : (笑)

U-zhaan : 5年追っていったらキリないよ。 U-zhaan : なんか最初は、2000年ごろに渋谷の"clubasia"で対バンしたんだよね。DCPRGとASA-CHANG&巡礼と、当時SalmonがやってたMetro Flaverってバンドで。

Salmon : いや、その前にリキッドでASA-CHANG&巡礼の初ライブがあって、そこであいさつしたのが最初だな。

U-zhaan : あんとき来てたんだっけ?そうなんだ。まあ出会いはそんな感じで、放っておけばそのままSalmonとはそれっきりあんまり接点ないはずなんだけど。

Salmon : そういわれればそうだね。けどオレにとってはU-zhaanはずっと尊敬するミュージシャンだったよ。

U-zhaan : そりゃどうも。Salmonも、いつ観に行ってもどんな形態でも、ライブがよかったから気になってたんだよね。

Salmon : ほんと? うれしいなあ。

U-zhaan : あ、そうだ! それでなんとなく仲良くなって、なぜか最初は「一緒にカントリーギターのデュオをやろう」って話になってウチで合宿とかしたんだ!

Salmon : あーそれ覚えてる!! 最初はカントリーだったんだ……。

U-zhaan : 何考えてたんだろね……(笑)。で、そのころからだんだんSalmonがテクノに傾倒していってて、トラックとか作るようになって。それがかなりよかったんで「一緒に1枚作ってみないか」って俺のほうから誘ったんだよ。

・それが、前作のですね。

U-zhaan : そう。んで、たまたまSalmonがレーベル始めたとこだったからそこから出そうかと。 U-zhaan : タブラの音だけで音楽を構築するってことは、1作目を作る過程で決まっていったことで。最初は僕が演奏するほかの楽器も録ったりしたんだけど、タブラだけの方が潔くていいな、と。

Salmon : うん、それは今回のアルバムも変わってないです。前回はクリックテクノ色が強かったけど、今回はもっといろいろやろうってのは制作前に2人で話してました。今回はほんとに細かくやりとりしたね。

U-zhaan : ファイルのやり取りの回数とか尋常じゃないよね(笑)。前作は、タブラだけでやるテクノってことだけで、充分自分たちにとっても斬新だったから、がーっと作ってできあがってきたものをちょっとずつ手直ししていく形だったけど、今作は2作目だしいろいろアイデアや試したいこともあって。 U-zhaan : まあ一番は「俺が聴きたい音楽を作る!!」ってことかな(笑)。誰でもそうだろうけど。テクノトラックの中でタブラの音がする、みたいな物珍しさを楽しむようなやつじゃなく、タブラの音であることに必然性があるものを作りたかった。

Salmon : そうだね。ディティールの細かいとこまで2人が納得できるまでやったので、バンド感がめちゃくちゃ出たね。まあ2人とも、ポップな感じにしたいなと思ってました。

U-zhaan : とりあえず今は思い残すことはないね。

Salmon : もう解散?

U-zhaan : そうだね。

Salmon : いやもうちょっとやって行こうよ(笑) U-zhaan : とりあえず音録りだね。

Salmon : そう、まずタブラの素材録音。

U-zhaan : 3月ごろに1回録ったんだっけ。

Salmon : そのあとラフにベーシックトラックをオレが作ってみて、使えそうなのをもとにして2人で作っていった形です。

U-zhaan : んで、また必要な音とか考えて録り直したり。4月に1曲頑張ってとりあえず形にして、そのころ会ったレイ・ハラカミさんのUstに俺が出演したときに、デモを流していただいたりしてるんだよね。

Salmon : そうそう、あれオレ家で見てたんだけどかなりタイムライン上で評判よかったから「いける!」と思いました。ごぼうでハラカミさんとシバき合いしてるU-zhaanを見ながらね。

U-zhaan : あれマジで痛かったんだよ(笑)

-- では、6曲がパッケージとなっていますが、各曲について解説してもらえますか? U-zhaan : これがそのハラカミさんのUstで流したやつだね。とにかく、ポップなメロが入っているやつを作ろうと。

Salmon : これが最初にできた曲だし今回の方向性が一番色濃く出てますね。

U-zhaan : もうロイクソップばりの覚えやすいメロを、と(笑)

Salmon : うん、 そろそろ女の子が聴いてくれるような物を作っていこうと(笑)

-- 一気に倍音の世界へ誘われる感じですよね。

Salmon : まあ全部タブラだからね。それはこのユニットのコンセプトでもあるよ。

U-zhaan : 倍音につつまれる感じを出したかった。曲タイトルも水中の休日みたいな感じ。倍音って重なると水中っぽくない?

Salmon : 結構奇跡で出来た部分がある不思議な曲です。この曲がなかったらアルバム自体があんまり成立しないかも。

U-zhaan : 全曲を、この曲ありきで考えてる感じだものね。で、この曲に関しては、山本アキヲさんのマスタリングも最高です!!

Salmon : そう。今まさにマスタリング中で、この曲は今の時点で上がってますが最高ですね。 U-zhaan : これも僕らの中では押しチューンだね。

Salmon : これはもろテクノだね。どこまでいわゆるテクノっぽくできるかってとこがちゃんとできたかな。

U-zhaan : フロア対応に。そんで、あのベースラインはタブラのまんまだしね。

Salmon : そうベースがバヤ(低音側のタブラ)の感じでずっと走ってるんで、グルーヴが妙に出てる。

U-zhaan : この「ピンポンダッシュ」ってタイトルは、環ROYくんの「6年間」って曲のリリックの中に出てくる言葉で。ていうか別にそこから取ったつもりじゃなかったんだけど「オレなんでこんないいタイトル思いついちゃったんだろ」って思ってて(笑)。しばらく経ってからその2週間くらい前に環ROYくんのライブで聴いたワンフレーズだったことに気づいて。それでROYくんに会ったときに「使っていいかな?」って聞いてみたんだよね。そしたら、どうでもいいみたいで「いや、そんなことよりも」って熱っぽくほかの話された。

Salmon : (笑)いや、このタイトルいいよね。なんかふざけた小学生がピンポンダッシュしまくって暴走していく物語のようだね。 U-zhaan : これ、ジャングルっていってもリズムのジャングルじゃなくただの密林感のつもりです。

Salmon : なんか不思議な浮遊感がある曲ですね。メインのタブラリフがガムランっぽく聴こえて倍音鳴りまくりの感じですね。

U-zhaan : これが今、オレが普通にタブラの演奏でやってるアプローチに一番近い曲かも。オレ、実はちょっと後半にラップ入れたかったんだよね。

Salmon : それずっと言ってたよね。

U-zhaan : それこそさっき言ってた環ROYくんとかにお願いしたりして。途中までのトラックには結構その余地があったんだけど、なんか完成されてきたら入る隙がなくなっちゃった。

Salmon : 真ん中あたりの間奏が割と最初はループだったんだけど、ちょっとアレンジしたらよくなっちゃったんだよね(笑) U-zhaan : これ、オレがカルカッタでお世話になってる下宿の親父の名前だよ。

Salmon : そうなの? 映画のじゃなくて。

U-zhaan : バス男って映画ね。「ナポレオンダイナマイト」だっけ?英語タイトル。あれめちゃくちゃおもしろいよね!!でもあれはスペルが「Bus」でしょ。

Salmon : そっか(笑)。これはウワものの水っぽいフレーズがタブラに聴こえないくらいのレベルで加工してみた曲。なんというかポップスっぽい構成の曲がほしくて、展開もAメロBメロっぽくしてある曲かな。

U-zhaan : 俺がいくら「あの上がっていく音がしつこいから消していい?」って言っても、この曲だけはかたくなに消させてくれなかった(笑)

Salmon : ああ(笑)3回出てくるよね。

U-zhaan : あれがSalmonの思うポップスなの?

Salmon : そう。 勘違い?

U-zhaan : たぶんね(笑)。まあこの曲は4:28くらいのピークを楽しむ曲だよ。歪みタブラが明ける瞬間。

Salmon : たしかにあれがミソだね。 U-zhaan : これ、リフのタブラが「派手な格好」って言ってるようにしか聴こえなくなってきて、それでこのタイトル。

Salmon : それ未だにオレにはわかんないよ(笑)。これは2曲目に出来た曲。最初はベーシックチャンネルみたいな曲をイメージしてましたね。重いダブテクノみたいのタブラでやったらおもしろいかなと思って。

U-zhaan : これは音量出して聴いたほうがいいよね。

Salmon : すでにクラブで使ってみたけど、だいぶいい感じで鳴ってます。

U-zhaan : 後半はキー違いのユニゾンタブラでTabla Dha(U-zhaanによる、タブラアンサンブルバンド)っぽい感じにしてる。

Salmon : そうだね。今回のアルバムでキー違いのユニゾンネタはこの曲だけかも。後半出てくるそこがやっぱり聴き所だし盛り上がるでしょう。

U-zhaan : でも、この曲の前半部分が一番Salmonっぽいかもね。このアルバムの中で。 U-zhaan : まあ、これは一曲目のリプライズみたいな感じだね。ぜんぜん違う曲だけどテンションは一緒。

Salmon : うん。アルバムの最後にすごくぴったりまとまった。この曲はトラックメーカーとしての技を結構出せたかなあと思ってます。実は細かくいろいろやってる。前向きに終われる感じになりました。 Salmon : じゃオレから。キリがないけども、元はパンクから入ってロカビリーへ進んでビートルズとデビットボウイを両方聴きながら、それからジャーマンロック、そんでファンクカデリックとかスライとかの流れでジャズも聴いたし、自分でもよくわからないよね。大抵いろんな音楽聴いてすべてに影響受けてるね簡単にいうと。実験的な音楽が好きな裏に、普通にカーペンターズが好きだったりとか。みんなそうなのかもしれないけどさ。 Salmon : 最近はボブ・ディランかな(笑)。カントリーとかアシッドフォークがいいですね。BIBIOのファーストがすごく良くて……。現代のアシッドフォークだよね。テクノはずっと聴いてるけども、音楽的というよりも、肉体的とか精神的な効能が大きいから、楽しみ方が若干自分の中で違うのかもしれないね。けどもずっと続けられる音楽な気もしてるし、今はやっぱメインかな。あ、ちょっと待って。オレU-zhaanって言ってなかった。とても影響を受けたアーティスト!

U-zhaan : え、そうなの? 俺、悪いけどSalmonに影響は受けてないかも(笑)。 好きだけど。

Salmon : ありがとうございます……(笑) U-zhaan : で、俺が影響を受けたのは、まあ普通にタブラの師匠、ザキール・フセイン。めっちゃくちゃに憧れて、憧れ過ぎて、コピーになりたくないから習いに行けなくて、それでもやっぱり好きすぎて習い始めることになって6年経ちました。ザキール・フセイン以外で最も影響を受けたのは、やっぱりASA-CHANGかな。

Salmon : あ、ASA-CHANGはオレもですね。オレ、昔家まで行ったもん。「一緒にバンドして下さい!」って言いに。

U-zhaan : そりゃ断られたでしょ。

Salmon : そうそう。とても丁重に断られた(笑)

U-zhaan : やっぱあの人の独自な感じはすごいと思うんだよね。10年もバンド一緒にやってて、あれだけ身近にいたんだから、きっとめちゃくちゃ影響を受けてると思う。意識せずとも似てくる部分もあるに決まってるよね。ほかには、クエスト・ラヴ(The Rootsのドラマー)とか、スクエアプッシャーとかかな。俺、ヒップホップ大好きなんだよね(笑)。スクエアプッシャーの方は、タブラ始めたころにずっと「このリズムをタブラで完コピしてやろう」と思って頑張ってたくらい好きだった。あとは、影響を受けたというか、レイ・ハラカミさんの大ファンです(笑)

Salmon : ハラカミさんとU-zhaanが作った「川越ランデヴー」は宝珠の名作になったね。日本の音楽シーンの歴史の中でもほんと奇作なんじゃないかな、オリジナルすぎるし。感動したよ。 U-zhaan : Salmonが夢見がちだから……。

Salmon : わはは。

U-zhaan : でもあれ、出したことなかったら絶対出してみたくなるよね。夢があるよ。たしかに。

Salmon : U-zhaanがやってる流れで、それで出そうと思って作り始めたしね。

U-zhaan : これだけ時間かけていいものを作った、って感じがあるから、俺としてはCD屋においてもらいたい気持ちはあるけど。

Salmon : それも視野には入れたいけどね。ただ今までみたいに同時に配信とCDを出す必要とか、今はもうないような感じもして。

U-zhaan : それに、なんだろ、1回「DIY STARS」で出しちゃうと、今までやってたみたいないろんなことがめんどくさくなっちゃって。流通に乗せるのにかかる費用やら労力やら。もちろん、物質化することによってのいいことも山ほどあるのは知っているんだけど。

Salmon : それはオレもレーベルやってるから痛いほど分かります。

U-zhaan : 全部制作が終わってからサンプル版作って、それ使って宣伝始まって、ってやってったら発売まで普通半年かかるよ。その間に新しいの出したくなっちゃう。

Salmon : その、アーティストのなんというか勢いみたいなものが、死なずにリリースできるのはとてもすばらしいことだと思うよ。

U-zhaan : そうそう、できあがった瞬間に聴いてもらいたいじゃん。 だってさ、このアルバムもリリースまで1週間切った状態で、まだリアルにマスタリングあがってないんだよ! それできちんとリリースできるなんてCDだったらありえないでしょ。

Salmon : あはは。ありえないよね(笑)

U-zhaan : まあこれは正直やばい状況だけどね。「 川越ランデヴー」のマスタリングも、実は決定したの当日だしね。まああれは発売日を一切告知せずに、電撃リリースって感じで出したんだけど。

Salmon : インタビュー受けてるタイミングで、まだ音が完成もしてない! そういう感じとかもいいよね。勢いだけでやれるってのはアーティストにとって健康的ですよ。

-- 2人の今後についてですが、何か展開の予定はありますか?

U-zhaan : salmon cooks U-zhaanとしてはまだ1度もやったことのない、2人の名義でのライブをしようかな、と。

-- おお!

U-zhaan : まだ形態は内緒だけど。

Salmon : 正直、どうやってやろうか今のところ模索中ですね。まあどうせまたインド行っちゃうでしょ?

U-zhaan : 12月の終わりから。あんまり時間ないね。 U-zhaan : 1年のうち、3ヶ月以上は向こうにいる。1年通して行っちゃうときもあるけど。今年は3~4ヶ月かな。

Salmon : なのでU-zhaanの活動はその期間Twitterのみになるね(笑)。オレはDJやパーティーはやってるけども。ブッキングお待ちしてます。 Salmon : まずね、これはまったく新しい音楽だと思ってくれていいと思います。かといって実験的すぎるわけでもなく自然に聴ける音楽。ダンスミュージックファンからワールドミュージックファンまでいろんな人たちが楽しめる音楽。そんなsalmon cooks U-zhaanなので1度は聴いてみるときっと幸せになります。美容と健康にも良いです。コラーゲンもたっぷりだしね。

U-zhaan : えーと、楽しんで聴いてね!

Salmon : え、それだけ?(笑)

U-zhaan : Salmonがだいぶ言ってくれたから、もう大丈夫だよ(笑)