僕がDJを志すきっかけとなったのは、Laurent Garnier「X-Mix 2」だね。そのCDが僕に及ぼした感動を、みんなに伝えたくてね。スタイルでいうと、僕はあらゆるスタイルにオープンでいようと心がけている。みんな僕をテクノDJだと思っているだろうけど、僕がハウスをかけている姿しか見たことのない人もたくさんいる。だが、ギグではいつもバラエティに富んだネタを披露するように務めているよ。1回のセットの中で、ずっと同じスタイルやジャンルにとどまることは好きではないんだ。
今思えば、僕は本当に当時僕がいるべき場所に、いるべき時代にそこにいたんだと思う。90年代半ばに、たくさんの友達がデトロイト中のあらゆるところでパーティーをやっていて、僕はいつもそこらへんで遊んでいたんだ。明け方近くにDJブースがオープンになると、ときどきプロモーターが僕に「家に帰ってレコード持ってきてプレイして」って言ってきたりしたんだ。もし僕がその日レコードを持っていたなら、そのままプレイしていた。僕は大きいサウンドシステムでレコードを鳴らしたくて、オープン前のサウンドチェック後によくプレイさせてもらったりしてたから、たまたまレコードを持っている日もあったんだ。
その当時のシーンは本当にスペシャルなものだった。その当時のパーティーは、人々が純粋に踊るためだけに来ていて、行き過ぎた感じがなかったんだ。僕らが必要だったのは、サウンドシステムといいDJ、それを聴くオーディエンスだけ。そしてみんなそれを理解していたんだ。みんながほかの街のパーティーに遊びに行って、我々とは違うスタイルを見たときに、とくにそれを感じただろう。
そうだな、そこで踊っていたオーディエンスも、プレイしていたDJも口を揃えてみんな同じことを言うだろう。第1回目の「Detroit Electronic Music Festival」だ。あれは本当にすばらしい、マジカルな週末だった。誰もあんなすばらしいフェスティバルになるとは思っていなかった。もうみんな圧倒されていた。デトロイトの街、そしてアメリカ全土に栄光をもたらしたような日だった。
その当時影響を受けたのは、Laurent Garnier、Claude Young、Luke Slater、Richie Hawtin、Jeff Mills、Mike Huckabyかな。そして彼らは今日もあらゆる角度で、僕に影響を及ぼしている。また周囲のあらゆるものも、僕に影響与えている。ロックを聴いているときも、友人と会っているときも、あるいは何かおいしいものを食べているときでさえも。インスピレーションは、どこからでも湧きあがるんだ。何がどのようにストライクゾーンに入るかは、僕自身にもわからない。
過去6年でシーンは少しずつ成長していると思う。もしかすると、ちょっとトゥーマッチかもしれない。「アンダーグラウンドパーティー」といわれているものの大半は、パーティーという枠組みを越えて毎回規模を大きくしているように見える。それは決して悪いことでなない。だが我々がレジデントを務めている「The Bunker」いうパーティーの場合、パートナーのブライアン(DJ Spinoza)がその夜のラインナップの中で、どういったタイムテーブルなら、DJたちがお互いにいい音を鳴らし合えるかを真剣に考えているんだ。ただそれ自身も「真のアンダーグラウンド」とは言いがたい部分がある。なぜなら毎回同じ会場だから(※)。それでもすごく「ロー(生)」でアンダーグラウンドなフィーリングはあるんだけどね。現在の「The Bunker」のスタイルができ上がるには、何年もかかったけど、オーディエンスが音に対してとても誠実だから、今後もずっと続くだろうね。
※ブルックリンにある"Public Assembly"という会場で開催されている。http://www.beyondbooking.com/thebunker/
今は、その流れに選曲をゆだねるようにしている。先ほどもいったように、ギグのときはレコードバッグにさまざまなサウンドを詰め込むんだ。そしてフロアがどんな方向に行くかを見定める。僕にとって、フロアを見ることは大事なことで、どんなサウンドならはまるか、そして人々をどんな音楽的境地に引っ張れるかにチャレンジしているんだ。個人的にクラブに遊びに行くときにも、そういうタイプのDJのセットが好みだね。フロアに入った瞬間にそこに何もなくても、3時間もテクノを流せば、みんな確実にやられる。観客が音の持つパワーにプッシュされる姿は、見ていてとても楽しいよ。
ベルリンのシーンは特別なものだと思う。そして今後もずっとスペシャルであり続けるだろう。あらゆるものが現在進行形で動いているんだ。Berghain/Panorama、Watergate、Tresor、その他の名のあるクラブ以外でもね。こちらは真のアンダーグラウンドシーンが生きているんだ。本当に驚くべきことだよ。どの街に行っても、毎晩どこかしらでパーティーが繰り広げられている。どのパーティーも音楽の質は、ほかに比べられる場所がないほど洗練されているよ。
もしシーンが飽和していると感じるならば、それはここに他所から移住してくるDJが多くいすぎるからだろう。だが、いい音やDJは突出しているから、それだけでわかるんだ。それからいいサウンドを出しているクラブもたくさんあるね。自分に合ったいいクラブを探しあてるのは、時間がかかるだろうけど、借金してでも遊んで掘り当てる価値はあると思う。この街に移住してきたにも関わらず、フラストレーションを感じてよその街に引っ越す人は、きっとそういういいクラブにめぐり合えなかったんだろう。僕はこの街に、音楽に、そしてさまざまな体験に没入するためにやってきた。もしこの街でもっとギグをすることができれば、それは天からの贈り物だろう。僕はこの街に住むと決めたことに、心の底から満足しているし、とても楽しく暮らしているよ。
最近ではポッドキャストシリーズ「Snowprayers」のキュレーションを務めているよ。そこでは、ダンスミュージックやそれ以外の僕が興味ある音楽にフォーカスするんだ。詳細はここで見られる(http://www.snoprayers.net)また、ここのところずっとデトロイトのBMG of Ectomorphというアーティストと共作をしているんだ。「Is Your Mother Home」という12インチシングルを"Interdimensional Transmissions"からリリースする予定。あとはシアトルのCTL-ALT-DELというアーティストのリミックス作業もしていて、これは"From 0-1"から数ヶ月以内にリリースする。それと同時に個人での作品も予定していて、年内にリリースできればと考えているよ。
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