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YOSA

高校時代にバンドでベースを弾いていたころはLarry GrahamやMarcus Millerにハマっていて、ベースが際立ったバンドが好きでしたね。それと平行してMondo GrossoやFPMといった打ち込みのダンスミュージックも聴いていました。加えて、イギリスにいたときに隣に住んでいたアフロの黒人からMadlibやMF Doomのようなヒップホップの洗礼を受けて。帰国後、そのあたりの影響を基に自分なりに曲を作りはじめたという感じです。 ぼく、機材とか音周りに関しての知識がまったくないんですよ。最近までステレオとモノラルの違いもわかってなかったくらいで(笑)。なので、楽曲制作をはじめてから現在まで、RolandのFantom Xしか使っていません。シーケンサーとしてAbleton Liveを使っていますが、ソフトシンセもプラグインもプリセット以外一つも入っていません(笑)。9割をFantomで作って、エディットとミックスをLiveで、という感じをいままで続けてきました。ただ、そろそろ限界を感じているので近々大幅に機材を変更しようと思っています。 19歳のころにスペインのレーベルからはじめて楽曲をリリースしたときですね。「Desmond」という曲なのですが、この曲がなぜかSteve Lawlerのお眼鏡にかなったようで。彼がBBCの番組や、いろんなフェスでプレイしてくれたんですよ。この曲がきっかけでその後、現在に続くさまざまな出会いがありました。もうひとつは昨年、ヨーロッパでライブ/DJツアーができたことです。ここでの経験はいい意味でも悪い意味でも、いまの自分の音楽に対する考え方に強い影響を与えたと思います。 DJフレンドリーかつドラマチックというのがコンセプトですね。個人的にはDJしか聴かない、クラブでしか聴けないDJツールのような楽曲には興味がないので、メロディや展開なども含めてそうならないよう注意しました。 レーベルと相談して候補を出して、最終的に決まったのがSpencer Parkerでした。彼の、いわゆるFreerangeでのリリース作品のようなトランシーで流麗なトラックが好きだったので、今回もそういったものを期待していたんです。今回返ってきたリミックスは、それとはまったく異なるミニマルなトラックだったので、かなり戸惑いました。ただ、DJでプレイしたときにこの楽曲の威力に気付きましたね。なんともいえない怪しいグルーヴが表現されていて、さすがだなと思いました。なのでDJのみなさんも1回聴いただけで判断せず、何度か視聴してこの曲のよさに気付いていただければ。 先ほども言いましたが、DJユースでありながらツールではないという点と、自分のカラーがしっかり表現されているという点が最低ラインです。自分の作品に限らず、アーティストのカラーが色濃く出ているものは好きですね。曲を聴いただけでだれが作ったかわかるぐらいスタイルが確立されているアーティストは、好みに関わらず本当に尊敬します。逆に最近のbeatportのチャートで挙がっているような、昔のディスコを今風のトラックに乗せただけのテックハウスには興味がないです。 Apt.のような日本のレーベルが、海外のシーンに向けてプレゼンテーションしていくというのはすばらしいことだと思います。ただ、これで海外のアーティストの作品ばかりリリースしてしまったら、ヨーロッパのレーベルと変わらなくなってしまいますよね。なのでこれから日本人アーティストのリリースをさらに増やして、日本のシーンと海外のシーンとを繋ぐハブとなるプロジェクトになってほしいと思っています。 最近は、ただ真新しいサウンドというだけで評価されてしまっている音楽が多すぎると思うんです。おもしろい音を出したモン勝ちというか。ぼくはそれよりも、純粋に心震えるメロディーや心地よい音色に興味があるので、現在のクラブシーンの流れからは一歩距離を置くようにしています。近ごろよく聴いているのは90年代の日本のポップスですね。とくにUA「太陽手に月は心の両手に」やbird「マインドトラベル」といった楽曲はダンスミュージックに影響を受けた良質なポップスで、個人的にいちばん興味のある部分です。この時代のJ-POPは本当に完成度が高いと思うし、実際にそれらが売れるマーケットがあった。いまはクラブシーンにもポップシーンにも惹かれるものが少ないので、なんとかそれを自分で作ってみたいと思っています。 自分ではないですが、Steve Lawlerがぼくの曲をプレイした動画を観たときは興奮しましたね。野外のパーティーらしいのですが、すごく盛り上がっていて。極東の狭いワンルームの部屋で作った音楽が、地球の反対側にいるひとたちを踊らせているというおもしろさは、このゲームにのめり込むきっかけになったと思います。あとは20歳のとき、はじめて週末のAIRのメインフロアでライブをしたときですね。満員のお客さんを自分の作った曲だけで1時間踊らせることができて、終わったあとには握手を求めてきてくれる人がたくさんいて、本当に感動したことを覚えています。自分が作った音楽が他の人に届くのをはじめて目の当たりにした瞬間でしたね。 先ほどもすこし触れたのですが、自分の興味がこれまでとは少し違うところに向きはじめてきたので、DJユースなトラック制作は今回の「Mars Volta EP」で一旦お休みにしようと思っています。それに伴ってライブ活動も休止します。とはいえ、ダンスミュージックに対する興味は変わらないので、今後はその流れをMCやシンガーをプロデュースするという方向にシフトしていきたいと考えています。今後も周囲の流れに左右されず、自分がおもしろいと思うことを素直にやれていればいいですね。