高校生のころ、「LONDON NITE」の大貫憲章さんにお世話になってたというか、いつも周りで遊ばせてもらってて、その周りにそうそうたるDJの先輩がたくさんいて、その影響でDJを始めたのがきっかけです。その後、元々地元がこっちだったのと、結局一日も行かなかったんですけど、大学受かったので名古屋に帰ってきて。そのとき日本音響工学研究所が音響をてがけた"Trance World"っていう、日本初のハウスオンリーのクラブがあってそこで毎週レギュラーの話しをいただいて。それとキリンビール工場の跡地に、期間限定で作られた毎週2000人以上入ってた大阪の"パラノイア"ってとこの毎週土曜日のレジデントをやらせてもらったのが始まりといえば始まりです。その前にも大貫さんのとこにいたとき「LONDON NITE」や西麻布にあった"P・PICASO"でもやらせてもらったことはあるんですが、それはまあ修行期間というか(笑)。その後は名古屋のいろんなクラブでのレジデントパーティーはもちろん、全国各地でもゲストで呼んでいただいたり、DJと平行してさまざまなパーティーや海外DJなどを招聘したオーガナイズ的なこともやらせていただいてます。ここ10年以上ベースとしているパーティーは"MAGO"での「SMASH」がメインです。
いい意味でも悪い意味でも、確実に活性化はしたのかなと思います。僕が始めたころは、まだクラブって言葉やDJってものがそこまで認知されていなかったように思います。当時の意味合いで、ディスコってとこには当たり前にディスコな音楽しかなく、そこに対してロックだったり、ヒップホップだったり、ジャズだったり、それこそハウスだったり、その大きな意味でのジャンルに特化したクラブってのが、カウンターとして成立しはじめてて。そこにそのジャンルの専門的なDJが存在しはじめたというか。それゆえ、そのDJもその道のプロとしてさまざまな角度からそのジャンルを掘り下げていったり、客観視しながらも、「それで踊らせるという基本的な概念は成立させつつ、それのみで一晩のパーティーを構築していく」みたいな。だからそこにいるマイノリティな人たちにも良い意味での特別感とか、刺激があったのかなって思います。今はそれを受け入れるクラブ側も、海外のさまざまなクラブから良い部分を吸収し、それに特化したハコの形状、サウンドシステムの導入だったり音作り、それから機材面の進化や音源入手の迅速さ、容易さで、DJ的には個々にとても表現しやすい環境になったと思います。そのぶんお客さん的にはクラブが身近に感じられ、選択肢も多くなり、遊びに来やすい環境になったとも思います。単純に絶対人口が増えたというか。それと同時に、DJ的には入り口の敷居が低くなり、ファッションとして捉えられるようになってしまったことは、認知度が上がったという意味では良い反面、残念な部分でもありますよね。
たとえば、フェスや大型のイベントってバイキングに近いと思うんです。海外のフェスってとくにそうだと思うんですが、ステージがたくさんあってDJも盛りだくさん。前菜はもちろん、メインの料理もたくさん用意されてて、それを好きなときに好きなだけ、みたいな(笑)。それはそれでお得感もあるだろうし、そういうことがシーンの活性化にも繋がるし、否定するつもりはまったくありませんが、クラブでやるパーティーに関していえば、僕がやりたいことはそれじゃない。木村コウさんがいつも適切な言葉で表現しているので、その言い方をお借りすれば、僕のやりたいクラブでのパーティーとは、料理人が作るコース料理を味わってもらう、みたいなもの。元々ハウスをやってるDJってロングセットでやる人が多いんですが、それはバンドやショウと違って、視覚的に刺激するものがなく、「純粋にそのビートのみの世界にどれだけトリップしていってもらえるか」ってとこが肝で、それゆえその時々の理由付けを一つ一つパズルのように組み立てていく、ドラマみたいなものを要求されてるんだと思うんです。お客さんがまだ少ないオープンから、ガンガン飛ばしてても、6~7時間持たずして疲れてしまうのは目に見えてるし、その時間帯にいる人たちは多分それを求めていない。「さあこれからどんな料理がだされるんだろう?」とか、「この物語はどんな感じで進んでいくんだろう?」とか、そういう期待感みたいなものがあって、それをうまく繋ぎあわせていって、そこでのお客さんとのインタラクションを結末に結びつけていくのがDJというか。もちろん2時間とか短い時間DJする場合は、全部がその通りではありませんが、そこでもその与えられた時間帯や最期のつじつまはキッチリあわせつつ、その前後のDJの人にうまく流れをバトンタッチする、みたいなことは大切にします。古くさい考えと思われるかもしれないけど、そういう部分はどの時代でも良いパーティーを構築していく上で、DJの責務として受け継がれていくべき部分なのかなと思います。
あとDJだけでできる表現って限りがあって、6時間とか長い時間プレイするにあたって、かなり重要な要素はその環境だと思います。僕が思うに、お客さんとのキャッチボール的な行為を延々と続けるにあたり、フロアとDJブースとの温度が一緒ってのが理想。「SMASH」をやってる"MAGO"はフロアのスピーカーとDJブースのモニターをMASTER BLASTERで統一してあって、フロアのど真ん中でDJしているのと同じ感覚だったりするんです。ほかにも電源タップやケーブル一本とっても、細部に至るまでこだわり抜いている点や、アナログ使用時のハウリング対策で床をフロアと切り離し、ターンテーブルを置く場所のみ地下から独立させてコンクリートで立ち上げることによって、倍音成分の気持ち良さを再現するとか。照明も世界的ライティングマンAiba君がデザインしててその時々の音楽をより効果的に彩ってくれるし、DJ的には至れり尽くせりで、何のストレスもなくすごくDJしやすい環境。だから時間を忘れちゃうというか、気にならなかったりします。以前はレコードの使用率が高くミキサーはUREI1620にDOPE REALのアイソレーターを使うとか、リクエストに合わせた環境作りもサポートしてくれたし、今現在「SMASH」で通常使用しているテクニカルライダーは、PIONEER CDJ-2000が3台と、DJM-900 NEXSUSなんですが、その前に使用してたセットのCDJ-1000MK3やDJM-800より、音の解像度と原音再生感が格段に良くなっているので、今度はそれに合わせたPAセッティングをしてくれたりとか。そういうクラブ側のサポートもロングセットをやる上だけでなく、一晩通して良いパーティーにしていく上では、もっとも重要なことじゃないかなって思います。DJってそれこそ人前に立つ以上プロなんだし、技術面はうまくて当たり前だと思うんですが、当然、よかったとかよくなかったとか、どんな状況下においても常に結果を求められ評価をされるもの。その持ってるものをさらに120%とかに引き上げるには、そういう部分もとても大切だと思います。まあ良い環境が整ってりゃ言い訳できないですしね(笑)
それぞれ印象は深いですが、「SMASH」のゲストとしては、もはや毎年恒例となってるHernan Cattaneoは毎回斬新な切り口でとても刺激を与えてもらえます。プライベートでもとても親しくしてくれるしとても良い人。Hernanというとプログレッシブハウスなイメージが強いと思うのですが、じっくり聴いてると実はそうだけじゃない、みたいな。時にいまどきっぽいテクノだったり、時にディープハウスだったり、時にテックハウスだったり、ハウスって意味ではとても幅広く、自分に合えば何でもかけるオールラウンドプレイヤー。それをそう聴かせないというか、全部自分色に染めちゃう、みたいな。たとえば「テクノ」といわれてる曲を10曲かける中、2、3曲それっぽいプログレッシブハウスを間に挟んだとします。それをかけてる最中に踊ってる人に、「コレって何だと思う?」って聞くと、たいていの人はテクノって答えると思うんです。わかりやすくいえば、何をかけてても、どうかけてても、どこをとっても前後の曲の流れやピッチ感でその人っぽく聴こえちゃうみたいな。つまり、イメージではなく、「基軸をどうしていて、それをその人なりにどう消化しているか?」ってことができている人こそが、僕にとってはこの人上手いなあと思える基準。それにはダンスミュージックに対して幅広く常に探究心を持ってなきゃいけないし、それをボーダレスに組み込んでいく勇気とスキルとセンスが必要。その点、Hernanは世界でもトップクラスのDJなのに、僕がかけてるものをチェックしたり、最近どの辺の人達がアツい!とかそういう情報に常にアンテナを張り巡らせてるってとことか、すごいなあって思います。SMASHでも何回もやってもらってますが、毎回終わったあとにまた次を楽しみにさせてくれます。
制作活動自体は2006年くらいから、相方Unicと始めていたんですが、初めてリリースしてもらったのはEmmaさんの"Nitelist"から「Departure」って曲です。2008年の忘れもしない2月22日。なぜ忘れないかといえば、大貫さんの誕生日だからです(笑)。まあ僕にとってすべての始まりは大貫さんからだし、ジャケットのデザインも大貫さんのところでお世話になってたころ、よく一緒に遊んでもらってたBounty Hunterのヒカル君がやってくれたし、「やっぱ大貫さんのお陰なんだなあ」って勝手に運命的なものを感じました。そしてEmmaさんはDJとしても一番尊敬しているし、いろいろリリースしてもらい、本当に感謝していますが、まだまだスキルも何もあったもんじゃない僕らに、「どこがどう足りないか?」とか、「どうしたらもっと良くなるか」とか、「リリースするってこととはどういう意味なのか」とか、当たり前に僕らが知らなかったそういう部分を、親のような厳しさで身を削って教えてもらいました。2作目の「SMASH」もパーティー名をタイトルに、というアイデアをだしてくれたのもEmmaさんです。"Nitelist"からはこのほかにも Inoue Kaoruさんの「Whisperer In Garmination」のリミックス、Tomomi Ukumoriと一緒に作った「Meditation」など、計4作品をリリースさせていただきました。あとはニューヨークのヒサさんのレーベル"King Street"からHeather Johnson「Happiness」のリミックス、From P60「I'M Not The Same」のリミックスなどを、OMBの"Frame"からはKeisho Kikuchiさんの「Dreams」のリミックスなどをリリースしていただきました。
今後のリリースは、大阪のOnziemeで開催されてるパーティー「Seven」のコンピレーションに、こちらも僕らのオリジナル「Seven Star」って曲が収録されるのと、OMBの"Frarme Recordings"から、EmmaさんやHernanもかけてくれてる僕らのオリジナルトラック「Explosion」って曲が近々リリースされます。
DJとしては7月から9月くらいにかけて「SMASH 10th Annversary Tour」としていろいろな所でDJさせていただきます。
皆様、「SMASH」にぜひ遊びにきて下さい!
正確なツアー情報です。
7/9 (SAT) @ CLUB MAGO (名古屋) http://club-mago.co.jp/
7/16 (SAT) @ TROOP CAFE (神戸) http://troopcafe.iflyer.jp/venue/home
7/17 (SUN) @ MANIER (金沢) http://mairo.com/manier/
7/29 (FRI) @ EMERALDA (岐阜) http://emeralda.jp/
7/30 (SAT) @ UNION (大阪) http://www.club-union.jp/
8/6 (SAT) @ CLUB MAGO (名古屋) http://club-mago.co.jp/
8/19 (FRI) @ BAR CAEZAR (松山)
8/20 (SAT) @ MONDO CAFE (福山) http://mondocafe.web.fc2.com/
9/3 (SAT) @ PLANET CAFE (浜松) http://www.club-planetcafe.com/
9/10 (SAT) @ CLUB MAGO (名古屋) http://club-mago.co.jp/
9/18 (SUN) @ BUBBLE (水戸) http://www.bubble-mito.com/
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