INTERVIEWS

FARBE

Shin Nishimura(以下:S):もともと、新しいレーベルを始めようと思っていたときに、チザワが一杯デモを送ってきていて、そのなかにいい曲がいっぱいあったから、俺が「逢ってみませんか?」と電話を掛けたところから始まったんだ。チザワは歌ものにおいてポップスの才能に長けているから、俺もその方面にも足を突っ込んでみたいなぁと思ったんだよね。

Chizawa Q(以下:C):取り合えずデモを渡すならShinさんかなと思っていて。でレーベルの話があって、その中でユニットにしようかという話になって。。。だから、ユニットの話とレーベルの話は別々じゃなくて一緒なんです。もともと、僕は「PLUS TOKYO」にずっとお客さんとして行ってたんだけど、丁度1年前かな? PLUS TOKYOのホームページの募集を見てデモを送ったんです。そしたら携帯に「Shin Nishimuraですけれど」って。すっごい電波の悪い状況の中、電波がぶちぶちいいながら(笑)。 S: とにかくデモ送り続けてきてくれて、いい作品があったら僕から近づいていくと思う。

C: 心配。FARBEの相方変わってたりしてね。

S:そういう心配してる人って多いみたいだけど、そうじゃなくてその時、その時のアーティストと何ができるかって考えているから。「江ノ島ジェーン」のミックスをしたManukanも沖縄の、いや日本が誇る世界のトラックメイカーになると思うし。 S:日本には芽の出ていないアーティストって実は沢山いて、その人たち単体でやるよりも僕が興味あるアーティストに対しては一緒にやった方が近道だと思うし。それはレーベルのコンセプトとも重さなるんです。僕もそういう人たちからいろいろと吸収できると思うし、有名なアーティストとやる方が数字的には出るんだろうけど、実は第一線で活躍している人たちよりも全然いいトラックを作っている人は沢山いるんですよ。

C: 僕等からしてみても、Shinさんクラスの人が下の世代を見てくれるというのはすごくありがたいことだと思うな。

S: 日本の音楽業界とクラブ業界のマーケット自体がすごい商業主義になっていて、売れ線を狙ってしまう動きが先行しちゃっている部分があると思う。もったいないよね。

C: ホントにね、特に日本人のエレクトロニックってレベルが高いし。

S:その人に音楽の才能以外に何かないと取り上げてくれない現状もありますよね。ただ単にその人にプロモーション費突っ込むよりも元から売れるんじゃないかという匂いを持った人のほうが出やすい状況というのはあるよね。 C: もともと80’sみたいなちょっとポップなバンドをやっていたんです。Dead or Aliveとかカバーしてました。いつも自分1人で、作るほうがメインだった。最近は全然やってないんですけど、CMの音楽製作なんかもやってました。キリンの生ウーロン茶の「生社長、お前生かよ~」ってCMや、キシリッシュのCMなんかの曲などを作っていて、ユニット的な活動や共作をあまりしたことがありませんでした。影響を受けたアーティストはあんまり・・・テクノじゃなくてロックの方が影響を受けたかな?ニルバーナとか。

S: チザワって、人間的には真面目人間なんだけど、音的には天然だと思う。あと、追求に時間を費やしている努力家でもあると思う。音楽は何から聞いたんだっけ?

C: 小学生の頃にシティーハンターのエンディングテーマを手掛けていたTM Networkとか、あの辺ですね。

S: そう。僕は音楽聞いてて、好きじゃない音が入ってても「変じゃなければこれでも」って受け入れるんだけど、チザワは自分の気に入る音を探すのに何時間もかけるタイプだな。

C:頑固かも。僕はバンド時代もあったけど、Shinさんはユニットとしての活動は初めてで、その斬新な考え方やユニットに対してピュアなところがすごくおもしろいと思っているので、ユニットのおもしろさが見えてきた感じ。

S: 僕は、テクノからは入ってて、もともと個人の名前でやってきたわけだから、バンドで活躍していた人と、ダンスミュージックの要素を取り入れたおもしろいユニットだと思います。 S:絶対にダンスミュージックがベーシックにあるんだけど、だいぶボーダレスになってきたし、ジャンルにこだわりたくなかったので、ダンスミュージックにしてもさまざまな色に姿を変えるものでありたかったんです。「FARBE」って、ドイツ語で「色」という意味なんですが、これは「テクノバンドだ」っていう位置付けはまったくしたくなくて、チザワや僕のバックグラウンドが、うまく融合されればって意味を込めて付けました。もしかしたら1年に一度アルバムを出すか、半年に一度かわからないですが、その時にチザワと僕が6曲づつできていればアルバムが出せるんです。要は自分たちが一番好きな曲の素の部分を出せるときに多分FARBEの音楽になると思います。 C: 一番最初からみちよさんの名前が上がっていました。

S: そうそう、一緒にやりたかったっていうのがすごく強くて。っていうのは、Overrocketがもともとすごく好きだったんです。あんなに透き通る声の人がいるんだぁって。

S: 声の透明度がすごい高いよね。無理してないというか、素の声という感じがするよね。 S:そうだね。カラオケヒットを狙うって訳でもなかったから、自分のDJの中に組み込めるとか、ヨーロッパに出た時にかけたいって思うのは、やっぱり英語の方が万国共通だし。もう頭の中では英語ってのが決まってたから。日本語の歌詞の曲もあるけど、大半を英語にしました。

C: OverRocketは元々日本語の曲が割りと多いよね。そういう意味でちょっと違った側面をみちよさんとできてよかったな。 S:1つ言えることが、ヘタなマーケティングをしてるわけじゃないということ。ホント「ひらめきアルバム」だから、ひらめきでしか作ってないし、そこに意図は何もないっていうか(笑)。自分たちのレーベルなので、自分たちの好きなことをできたっていうか。そもそもは、僕が日本シリーズの賭けに負けて、罰ゲームでバンジー飛ぶことになったんです。で、せっかく飛ぶんならちゃんとフィルムに残したいなって(笑)。カメラマンとも相談して、そういう絵のストーリー構成を考えてもらったけど、それ以外は単にマザー牧場で遊んで俺がバンジー飛んだだけ(笑)。でも、まあこの罰ゲームじゃなかったら多分PV作ってなかったかも。罰ゲームでPVってイメージがあったから、僕は頑張って飛んだけど、あの上に立ったら僕は飛ぶ気なんてなかったもん。怖かった・・・。

C: 1日掛り…。すぐ飛んだわけじゃない。帰り際、ようやく1日かけて飛べた。どうでした、生まれて初めてのバンジーは(笑)?

S: 冬やったから特に怖かったのかもな。夏だったらすぐに飛べてたかもしれない。

C: 僕なんかもデモ送るまで、「PLUS TOKYO」に遊びに行ってた頃のShin Nishimuraって、オレンジのミックスCDのジャケットのイメージ。あの電話してるShin Nishimuraのイメージしかなかったから、もし、そんな状況の人が、このPVを見たら、すごくおもしろいと思いますよ。 S:ありました。30歳目前になって、これ1本の仕事で食べていけているていう状況に自信が持てた、自信に変わったって事。去年くらいまでは、「レコード売れなくなったどうしよう」「PLUSに人が入らなくなったどうしよう」とか心配があったのですが、よく考えたらPLUSも4年、もう一つのフェノマナ(モジュールで隔月で行われているレギュラー・パーティ)も3年続いている。リリースも止まっていないし。PLUSに来てくれるお客さんの嬉しそうな顔を見て、「僕が提示しているものにもついてきてくれるんだ。」って前回行われた1/21のPLUSのアニバーサリーで感じられた。心配が半減した。って感じかな?50%の不安が50%の自信に変わった、っていう感じでした。 S:実際、自分が成熟してから日本よりも海外に住んでいる方が長いですからね。(高校時代をイギリス、大学から2002年までを上海で過ごしている。)日本に帰って来てからまだ4年しか経っていないし。日本って恥を重んじる人種だと思うのですが、みんな周りを気にしすぎて、勝手なイメージを自分達で作りすぎていると思います。自分でイメージを作って世界を狭くしてしまうよりも、もっと自己主張をしてしまった方がおもしろいんじゃないかな?って思います。インターネットも普及しているし、レーベルだって自分でできるわけだしね。自由な場所にいるのに、難しい場所にいるって勝手に深く考え過ぎなところがある気がします。 S:音楽作りかな・・・?っていうかね、作りたいって思う幅が広がってきたから。今度ミックスCDも出るんですけど、もっと自己表現したい。っていう欲にかられています。今までは、お客さんの喜ぶ顔が見たいっていうことが中心だったんですけど、今は「もっと極めたい」っていうのもあります。もっと自分の可能性を引き出したいって思うようになりました。今年は、自分追及の年になるかな。

C: Shin NishimuraってDJが、アーティストとしても確立されてきてるのかもしれないですね。

S: 僕ね、インタビュー受けるにあたって考えたんですけど、僕は「創ること」が好きみたいです。音だけじゃなくて、なんでもかんでも。多分、家とか作るのとかも好きなんだと思うし。

C: 確かに、ShinさんのHPとかいろいろコンテンツもあるし、創るの好きそうですよね。とって付けたようなサイトとは違いますよね。デザインやってみたり、料理してみたりね。

S: 上海とか何もなかったから・・・いや、その前から小学生の頃とか、プラモデル作るの大好きだったしなぁ~(笑) S:実はこのレーベル名って僕の愛犬「デカ」からとったんですけど、レーベルやる事って実はすごい簡単な事で、たとえばデモをCDR一枚100円として、送料が1000円だとして、200か所に送ったとすると、アナログ、レコード1枚自分で切れるんですよ。工場は安いところ見つけて、それから流通、今はインターネットあるから色々できるし、実はそんなに難しいことじゃないって。みんながデモとか送りまくるんだったら、自分でレーベルやって、自分のパーティーやって、自分のホームグラウンドっていうのを絶対持った方がいいと思います。自分のホームグラウンドなしで他人の世話になってる限り、成功って言葉かわからないけど・・・やっぱり自分の自己主張ができないと思う。 S: DEKA TRAXXXからは、Manukanのシングルと、僕のシングルと、今年はあと5枚くらい出したいかなぁ。あと僕と一緒にDJしてるミヤビのEPもそろそろ出したいって思っています。あと、それとは別に、個人でミックスCD、それからアルバムも出したいです。また、FARBEとしても、今後いろいろとやって行きたいですね。今回は、本田みちよさんにボーカルをお願いしたけど、もっと挑戦していきたいです。「テクノ」って別にミニマルなだけじゃなくて、オリコンにだって入れるような要素だってあるわけだしね。FARBEは僕らの逃げ場でもありえると思う。オーバーグラウンドでも、アンダーグラウンドでもやりたいことを共感しあえて、できるユニットにしたいから。死ぬまで好きなことだけやっていきたいな。

C: 僕はフランスのLaurent GarnierのレーベルF-Communicationsからリリースを控えています。あと、DEKA TRAXXXの2枚目のシングル「江ノ島ジェーン」をリミックスしてくれたRyo Mitomi君たちと下北沢WEADGEで「asio」っていうパーティーを始めます。4月22日が1回目で、メタルマウスという新潟出身のアーティストが来ます。Mitomi君もDEKA TRAXXXと交流があるので、DEKA TRAXXXからのおもしろいアーティストとしてコラボレーションしていけたらと思います。

S: 4/8にはDEKA TRAXXXのリリースパーティーを青山の「月見ル君ヲ想フ」でやります。リミックスをやってくれたRyo Mitomi君やManukan、個人的にリスペクトしているOSAMU M君、FARBEのライブなどをやる予定です。 S: 手前味噌だけど、「Colours」聞いて欲しい。

C: うん。10曲目だね。「Colours」聞いて欲しい。結構ポップです。もっとコアな好みの人のための曲もあるし。

S: あえて10曲目にしたのは、「ダンスミュージック」っていうのが基本にあるから、それはそれで提示しておいて、最後に「デザート」的な存在にしたかったです。無駄な部分が一切ないから。

C: 主張しすぎないところ。

S: 場所も選ばないので。聞いてみてください! S&C: ありがとうございました!