INTERVIEWS

TRI-Force

通称Sha-A(シャア)ことTRI-FORCE(トライフォース)と申します。2000年代初頭からキャリアをスタートさせ、Nagisa、SOSなどのビッグイベントから、「アフガニスタンに学校を建設しよう!」というスローガンのもと、駒沢体育館で開催された地球家のチャリティーイベントなど大・小さまざまなイベントにて、アンビエントDJやトランスのライブアクトとして出演させていただきました。また、uvAntam(元UbarTmar)・Zombo(Za Cafe/ FrankZakka)と共に「座・渦巻兄弟」というお騒がせバンドにも「三男」として参加させていただいて、主に尺八や篠笛などの日本楽器を演奏しておりました。このバンドにはShpongleのパーカッショニストNogeraや、DJおよびJoujoukaのギタリスト兼トラックメーカーのFunky Gongなど、国内屈指のミュージシャンが入れ替わり立ち代わり参加していて、今思えばかなり贅沢なお祭り騒ぎ集団でした。もう8年くらい前の話なんで、懐かしいと思ってる方はかなりのベテランかと(笑) 小学生のころに少しピアノをやっていましたが、当時はどちらかというとゲームの方に興味があったのであまり上達はしませんでした。が、中学のころに「小室ブーム」を体験し、一気に音楽の世界へ興味を持つようになりました。それからはYMOやKraftwerkなど80年代のテクノポップを掘り下げてみたりしてたんですが、同時に同級生のすすめで当時流行っていたテクノも聴くようになってきました。そのころ衝撃をうけたのはGlobal Communicationの「Pentamerous Metamorphosis」と「76:14」ですね。この2枚は今でも大好きな作品です。

その当時の日本におけるクラブミュージックは「テクノ」というワードのもと、トランスやドラムンベース、アンビエントなどが一括りにされてて、とくに先入観もない状態で純粋に電子音楽として、そして今でいうジャンルをそれぞれのアーティストのスタイルという感覚で捉えることができていました。その感覚は僕にとっての重要なポイントとして、今でも大切にしています。そして高校2年生の冬にJuno Reactorの「Beyond the Infinite」と出会い、トランスミュージックの持つ摩訶不思議かつ神秘的な世界観に惹かれていきました。

楽曲制作に関しては14歳のころからスタートさせています。当時はシンセサイザー搭載のシーケンサーでテクノポップを作ってて、でき上がった曲を10分テープのA面B面に1曲づつ録音して、シングルとして同級生に販売してお小遣いを稼いでました。また高校生のときには友人と曲を持ち寄って、お店でCD-Rに焼いてもらって(※)いろんな人に聴いてもらってました。本格的にトランスを作り始めたのは高校3年生の時ですね。TRI-FORCEのゼロ年代初頭のライブで最後にかならず演奏していた「Amrita」という友人と2人で作った曲があるのですが、原型はこのころに完成しています。

大学は音楽系の学校に入ったので、常に音楽が身近にある環境に身を置くことができました。その中で西洋音楽のみならず、日本やアジアの音楽と触れることができたので、音楽的感性を養う上でとても良い刺激を受け、それはかけがえのない僕の宝物となりました。そして大学3年生のころから本格的にTRI-FORCEとしての活動を始め、各イベントでの演奏をライブ録音し、その音源をCDにしてQuintrixやFrank Zakka、Global Chillageなどのショップで取り扱っていただいておりました。

※当時はCDライターが一般レベルでは普及していなかったので、マスターを持って行くとCD-Rに焼いてくれるサービスを行っている楽器店が存在した。 アルバムの構想自体は2年前くらいから少しずつ立てていました。ちょうどそのころ、即興で創るアンビエントミュージックについていろいろ実験していたところで、そういう部分から自分の内面と対話する機会が増えてきたときでした。またアイソレーションタンク体験からも自分の内面世界を見つめ直したりしていました。そういう体験を通して自分の中をすすめば進むほど「日本」というキーワードが何度も浮かんできました。今回のアルバムのテーマはこれだなと思い、古事記を読んでみたり神社にお参りに行ったり、日本を旅したりといろんなエネルギーを吸収しながら作品へと昇華させていきました。 まったくもって同感です。僕は「心を落ち着かせ、自分の内なるサウンドに耳を傾ける」ということが作曲の第一歩だと考えています。また日常生活の中でまったく音がない瞬間というのは、都会で生活する上ではほぼ皆無といっても過言ではありません。なので意図的に無音状態を作ったり、都会を離れ自然の中に身を投じ、耳を休めたり、逆に自然のノイズに耳を傾けることは作曲家の耳や精神衛生上必要なことだと考えています。 僕はダンスミュージックを作曲する際に「音楽」であるという意思を持つことをとても重要視しているので、ビートそのものをただの「ガイド」としてではなく、楽曲全体のサウンドを構成する要素の一つとして捉えています。そう意識することによって必然的に様々なアレンジメントが産まれ、それらは全体のストーリーを織りなすひとひらの詩編となり、結果としてアルバム全体の世界観を押し広げてくれました。

それにダウンロード販売が主流となった現在のダンスミュージックシーンでは、全体でひとつのストーリーを表現したアルバムというのがほとんどなくなってしまいました。アルバムの中の1曲1曲をただの「ツール」として捉えるのではなく、それらは「意図と意識をもって生み出された作品」なんだ、ということを今一度認識してもらいたいなという作曲家としての願いも込めたため、このようなバラエティに富んだアルバムになったわけです。 その名のとおりライブでしか使えないんだろうな、と思っていたし、そうしてたんですが、バージョン7辺りから音質が改善されてきたという印象を、さまざまなアーティストさんの作品やら動画を見て感じていました。さらには専用のコントローラーも登場してきたときで、「これはほかのDAWには無い魅力がある!使ってみたい!」と思ったのがきっかけですね。いざ使ってみるとこれがおもしろくて、サウンドに集中出来るので見やすいんですよね、音が。とくにセッションビューでスケッチしてるときなんかが楽しくて、気が付いたらとんでもない時間になってたってことが多々ありました(笑)。音質的な部分が改善されたとはいえ、人によって好き嫌いが分かれるソフトだと思います。ですが十分なクオリティですし、作曲中の楽しさは格別だと感じたので、このAbleton Liveを今回の相棒としてチョイスしました。 1つのメロディーに対して帯域ごとにレイヤー分けしたりしてます。ソフトシンセ側で組めばいい気もしますが、それだけでは手が届かない所が出てきてしまうので、個別に立ち上げて創ってます。またいわゆるゲートシーケンスの部分でも単純にシンセサイザーをアルペジオで鳴らすだけでなく、変化しながらウネり続ける音の帯をノートの段階で作曲したりしてます。そういう実験をしていると、聴いたことのない音や、見たことのない形や色、触れたことのない感覚なんかと出会えたりするのでとても楽しいですが、常にCPUメーターとの戦いにはなります(笑) 1stアルバム「Entrance to Reality」のころはハードウェアシンセを多用していたのですが、今回は99%ソフトウェアシンセです。そのうち80%のシンセサウンドはSpectrasonicsの「Omnisphere」を使用しています。ここのメーカーのサウンドはハリウッドでも好んで使われているほど、とても壮大で重厚感があるので、とても重宝しています。このソフトはロンプラー的用途だけではなく、バーチャルアナログ的なシンセシスも可能なので、リードサウンド等は自分で一から作っています。ちなみに1stでは前身の「Atmosphere」を使ってました。大好きです、Spectrasonics。また、ベースサウンドにはreFxの「Vanguard」を使用しています。どちらかというとギラついたリードサウンドやユニゾンサウンドに定評のあるソフトですが、バランスのよいベースサウンドを作るには向いているので採用しました。キックドラムはNative Instrumentsの「Reaktor」で簡単なパッチですが、キック作成アンサンブルをこしらえて、それをAbleton付属の「Drum Rack」とEQなどで微調整して仕上げました。

基本的にEQやコンプはAbleton付属のものを用い、それで補えない部分はWavesのプラグインを使用しています。
残り1%のハードウェアシンセですが、それは7曲目の「Realize」のメロディーを奏でている琴のようなピアノのような、あのサウンドだけで使われています。あれは友人から借りていたAccessの「Virus Indigo Redback」で創りました。FMをかけているので少しYamaha「DX7」っぽい音になってます。あのシンセは簡単なことから複雑なことまで、幅広い音を作れるので本当にスゴいマシンです。それにバージョンによって音のキャラクターが違うっていう部分にもマニア心をくすぐられます。今は持ち主の元へ返ってしまったので使用できませんが、いつかはゲットしたい逸品です。 またマスタリングの段階ではApple Logicを使用していただきました。アナログの卓やアウトボードに通して音を変化させるのと同じ感覚ですね。マスタリングエンジニアはDrap DropやDen-Emon名義でライブ活動や楽曲リリースを数多くされているTsune氏に担当していただきました。彼自身イギリスでエンジニアリング(アナログミキシング)のディプロマを取得しているので、その知識とテクニックはお墨付きでして、今回のアルバムのマスタリングではどういう方向性に仕上げるか、という深いところまで相談に乗っていただけました。

いわゆるダンスミュージックって楽曲の波形を見ると海苔みたいに真っ黒ですが、このアルバムの波形を見ると結構ヘッドルームに余裕を持たせた仕上がりとなっています。これは「音圧戦争からの離脱」という我々の挑戦の表れでもあります。ただ音圧が強いだけだと、その音楽がフィジカルな作用しか持たなくなってしまいますが、今回の作業では作品の「聴く・観る・感じる」のバランスをいかに均等にとるか、という部分に重きを置いたので余裕と空間性を保ったマスターを作ることができましたし、結果として自宅でも現場でもバランスよく楽しめる作品に仕上がりました。 これは音楽が持つ3つの要素から起こる現象だと考えています。その1つ目である音楽の表面的な部分でいえば、楽曲の多くでペンタトニックを用いているからではないでしょうか?僕自身、大学時代や座・渦巻兄弟で尺八や篠笛などの日本の楽器を使ってきたし、世界各地の民族音楽が好きで良く聴いていたので、ペンタトニックのスケール感を持ったメロディーが心の内から湧き上がってくるのは事実としてあります。そしてこのスケールは土着的な音楽の中で自然発生したものなので、人間の根源の部分に最もフィットするのではないか?とも考えています。

そして2つ目の音楽の内側の部分でいえば、今回のアルバムの軸となるテーマが関わっているんだと思います。2年前に漠然としたテーマとして「日本」と定め、その神話である古事記の中の生命力あふれるダイナミズムを体験したり、人生初となる子供の誕生という瞬間を目の当たりにしているうちに、それらの全てが「今まさに宇宙が始まる瞬間」を表現しているんだな、ということに気付きました。そして「音楽を創造する」という行為そのものも、このことを表していると感じるようになりました。この「原初体験」をアルバムを通して表現しているので、きっとリスナーの方々の心に何かを残すのだと思います。

そして3つ目は音楽の「本質」です。音楽の表面と内面のどちらか一方では完全にそれを伝えることができません。そこに「能動性」が加わることによって初めて、音楽の力が発動されます。まず僕が作曲をする時、表面の部分を「耳」で聴き、内側の部分を「心」で観る、そして僕の作曲家としての「意思」を提示する。そしてそれをリスナーの方が同様に「意思」を持って、「耳」で聴き、「心」で観る。そうすることによって、作曲家とリスナーそれぞれに三角形が出現します。この三角形の面に当たる部分が「魂」です。この作品を聴いて何か響くものを感じたならば、それは僕の「魂」とリスナーの「魂」が共鳴し合い、輝き出したからではないでしょうか?そしてこの「魂の存在」こそが僕の音楽の本質であると考えています。 今現在ダンスミュージックカルチャーはかなり広範囲に浸透したわけですし、そのベースにある「音楽」としての根源に立ち返ってみたらおもしろいんじゃないかな?と今のシーンを見てて思います。そしてそれらを理解したイベントオーガナイザーやDJ、アーティストなどが輩出されやすいような環境を作るお手伝いを、僕の作品やライブ活動、そしてこのインタビューを通じてできればいいな、そう思っています。この夏は7、8、9月に一本づつ野外でライブのブッキングが入っています。詳しくはtri-force.jpの「Party Schedule」にてご確認下さい。ぜひフロアでTRI-FORCEサウンドを体験してみてください。日本人としての自分をもっと好きになれるはずです。


ありがとうございました。


All photo by "Munehide Ida" except last one by "Toru". TRI-FORCE -Tales of the beginning-
2011-06-29(Wed) on sale

1.Red Magnetic Earth
2.The Hall of Creation
3.Transis
4.Integration
5.Luna
6.Energetic Life
7.Realize
8.The Infinite State
9.Celebration
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