INTERVIEWS

Magnetic North & Taiyo Na

Derek:
Magnetic North(Theresaと僕)は、2007年にTaiyo Naと出会ったんだ。カリフォルニア州のバークリーからニューヨークに引っ越した後のことだね。引っ越す前の2006年に、Theresaと僕で"Magnetic North"というアルバムをリリースして、そのアルバムのプロモーションやライブ活動をしていたんだ。僕たち2人は同じ学校に通っていて(the University of California at Berkeley)、"The History of Hip Hop"という授業で出会ったんだよ。放課後にフリースタイルをやったり、クラスメートとラップグループを作ったりするおもしろいクラスだった。 Theresaは、その中でもスター的な存在だったし、僕も自然と彼女に興味を持つようになったんだ。

Taiyo:
TheresaとDerekがニューヨークに来る前から知り合いだったけど、2008年にコロンビア大学で一緒にライヴをするまでは、一緒にやろうとは考えたこともなかったんだ。一緒にやろうと思った瞬間は、今でも鮮明に思い出せるよ。2人がサウンドチェックをしている姿を見ていて、僕のやろうとしている音楽と、彼らのやろうとしている音楽が根本的にすごく似ていることに気づいたんだ。そしたら自然と彼らと一緒に曲を作ったり、ツアーをしているビジョンが浮かんできた。それ以来、その時、頭に浮かんだことをそのままやっているってわけ。もちろんそれ以上のこともね。 Derek:
パッと思いつくのは、2Pac、Common、Lauryn Hillかな。でも基本的に、人気のあるものやトレンドに流されるつもりはないし、人が期待していることをやるつもりもない。僕たちはただ自分たちの心に正直に、僕たちの暮らしや感情に直結した音楽を作るだけなんだ。

Taiyo:
10代の時に、初めてはまった音楽がヒップホップだったんだ。当時ニューヨークのストリートでは、どこでもヒップホップが聞けたし、非常に近い存在だった。そしてヒップホップは、色々な音楽からサンプリングをして新しいものを作り出すのが文化だったから、そのおかげでソウルやブルース、ジャズ、レゲエ、フォークなんかも掘るようになったし、今の僕たちの音楽に間違いなくそれは活かされているね。Stevie WonderやBob Marley、Don Mcleanの影響がなければ、Lauryn HillやCommon、Tupacがなかったように。僕たちの音楽は、オーガニックとかエレクトリックとか、ミュージカルっぽいとか、色々なことを言ってくれる人がいると思うんだけど、僕にとっての原点は、いつでもヒップホップだよ。 Taiyo:
そういう分析はあまりしたことがないけど、僕たちはただソウルフルに自分たちの今を表現して、みんなが興味を持ってくれるようなリアルな音楽を作っていくだけだよ。目標としては、画期的な方法でアメリカとアジアの架け橋になれるような存在になれればと思っているよ。

Theresa:
典型的なヒップホップシーンからは聞こえてこないような声を届けるのが私たちの使命だと思っているわ。そしてもちろん、それができるグループだと信じているわよ。 Derek:
最近でいうとThe Blue ScholarsとLupe Fiascoかな。2pacがやっぱり1番好きだけどね。他のジャンルでもいいならAlicia Keys、Michael Jackson、そしてUsher。ミュージカルも好きだよ。"Rent"と"In the Heights." 今あげたように、色々なものからインスピレーションを受けているね。

Taiyo:
Princeは、僕の師匠といってもいいね。Jay-Zは、現存するラッパーの中で1番好きだし、ヒップホップ史上最強のアイコンと言えるでしょ。日本のジャズシンガー、Maya Hatchにも最近では注目しているよ。

Theresa:
現役といえるかわからないけど、Lauryn Hillかな。いつも結局"Miseducation"に戻ってしまう。最近という意味では、Jay-Zね。歳を追うごとに凄みを増していくのはすごいと思う。Adeleはモンスターだし、PrinceとStevieも忘れちゃいけないわね! Derek:
僕たちは、いい曲を作ることにただ没頭していて、実は、まじめにレーベル探しをしたこともなかったんだけど、Goon Traxから、In Ya Mellow Toneへの参加やリリースの依頼メールが来たときは、本当にうれしかったね。なんていうか現実的ではなかったね。僕たちと同じような価値観でやっているヒップホップレーベルなんて夢のような話だったし、本当に素敵で幸運な縁だと思ってるよ。

Theresa:
GOON TRAX最高!! Derek:
実感が湧くまで数ヶ月もかかったけど、これまでのリアクションは本当にいいものばかりで嬉しい限りだよ。海を越えても人々の心に触れられるというのは、なんともいえない気分だね。おかげさまで音楽は"Universal Language"なんだって確信できた。

Theresa:
震えたわ。海外でも伝わるってことがわかったのはすごく嬉しいことよ。 Derek:
僕にとっての日本は、いつでも革新的でおもしろいことが溢れている。それでいて音楽的でアーティスティックな国さ。日本のヒップホップは、もはやひとつのジャンルを確立しているといっても過言ではないし、実際似たようなものは、世界を見回してもない気がするよ。たぶんそれはヒップホップだけじゃなくって、ほかのジャンルにも言えることなのかもしれないね。僕は、L'Arc-en-Ciel、Nujabes、菅野 よう子、平沢進.といった本当に色々なジャンルで活躍している日本人アーティストの大ファンだし、日本のアニメとかゲームも大好きだから、そういったところからもいろんなミュージシャンを発見できるんだ。実際、僕の大きな夢の1つは、アニメシリーズのオープニングを書くことだったりするしね。そんな日が来ることを本気で祈ってるよ!

Taiyo:
僕にとっては、1つの感情のよりどころといえるかもしれない。僕の両親は、40年前にニューヨークに引っ越すまで日本に住んでいたんだよ。今でこそ豊かな国であるといえるかもしれないけど、苦難を乗り越えてそこにたどり着いたすばらしい国だと思っている。僕の場合は、両親が少しの間、住んでいただけだけど、その一部になれたような気がしているんだ。 僕も1度日本に行ったことがあるんだけど、その時にカントリー好きのギタリストと話をするきっかけがあったんだ。レゲエバンドを見るために一緒にテレビを見たり、その後で、90年代中期のニューヨークのR&Bやヒップホップに影響を受けたと思われる、Jポップをレコードで聴いたり、すごく音楽に真摯に向き合っている印象があるね。

Theresa:
私は、本当に様々な音楽的要素に溢れている国だと思うわ。それと日本の人は、歌だろうと楽器だろうと、とにかくいいメロディーを好むという印象があるわね。ヒップホップシーンに関しては、GoonTraxやIn Ya Mellow Toneが掲げているような、強いメロディーとメッセージがあるものが本当に大好きなの! Derek:
この曲は、3.11にインスピレーションを受け、あの悲劇無しには、存在しない曲だったね。曲を作ると決めた時も、このようなデリケートな問題にどう触れ、どう曲を作っていくか、とても難しいことだとはわかっていたけど、僕たちはやらずにはいられなかった。日本の人々が苦しんでいる時に、何かしらで力になりたいと思って、僕たちにとってのできること、ベストな方法というのを考えた時に音楽しかなかっただ。

Theresa:
こんな大きなできごとに対して、私たちのできたこと、やったことなんてちっぽけなものでしかないとはわかっていたの。たった5分の音と言葉だけかもしれないけど、できる限りの気持ちを詰め込んだつもりよ。少しでも悲劇にあわれた方々の力になってくれることを祈って。 Derek:
このタイトルは、ニューヨークって街からインスピレーションを得たんだ。すばらしいミュージシャンやアーティストが吐いて捨てるほどいて、どこに行っても、何を見かけても、全てが美や人生のすばらしさを思い出させてくれる。そんな"住んでいること自体がインスピレーションになる"芸術的な街"で暮らす中、長い間離れている家族との暮らしや、大切さといった、僕にとっての「HOME」と、この先の未来を作っていく、僕らにとっての「Word」の重みを再認識して付けたタイトルなんだよ。日本に住んでいる1人でも多くの人に僕らの音楽が届くことを祈っているよ!