INTERVIEWS

Derrick May

- そもそも、どうしてこのタイミングでこのようなコンピレーションをリリースすることにしたんですか?

<Transmat>の違う側面を見せるのにいいタイミングだと思ったんだ。もちろん、ラストラムから声をかけてもらえたということも大きいけれど。彼らは俺がやろうとしてることをよく理解してくれている。 - 違う側面というと?

このコンピレーションには「Strings of Life」も入っていない。そんなものは、過去にもう何枚もつくってきたからね。 - なるほど。では今回の選曲基準は?

いい曲なんだけど、リリース当時には早すぎてしまったのか、そのクオリティに見合う評価や注目を得られなかった楽曲を改めて紹介したいと思っていた。それと、新しい才能を紹介しようと思った。 - 実際にどうやって選んでいったのですか?

まずLouis Haimanの曲は入れたいと思っていた。彼のアルバムをリリースしようとしたときに当時<Transmat>の流通を担当してくれていたCISCO RECORDSが倒産してしまった。最悪のタイミングだったね。そんな不運に見舞われた彼の楽曲を収録するのは大切なことだった。Sans SoleilやDouble Helixはアルバムをリリースできたけれど、流通の状況は悪かったから彼らの楽曲も収録すべきだと思っていた。そういうわけで、最初の段階からある程度はアイデアがあったんだ。 - なるほど。

それとDVS1とGreg Gowは、<Transmat>から最後にリリースしたアーティストだから彼らの作品は入れようと思っていた。彼らは<Transmat>の「再起動」に多大なる貢献をしてくれたからね。それから、新しい才能を紹介したかった。 Yotam Avniの作品は、ミックスCD『Heartbeat presents Mixed by Derrick May』に収録していたから入れたいと思っていた。Rennie Fosterは日本に住んでいたから、日本とのつながりの中で発掘できた。Karim Sahraouiは、自分の音楽が認められないとひどく落ち込んで、音楽を止めてしまって、マレーシアに引っ越して、ジャングルに住んでいたんだ。でも、俺は彼は音楽を作るべきだと思っていたから、何度も君の音楽は素晴らしいって言い続けた。それでカムバックしてくれたんだ。今回の収録曲を中心に12インチをリリースして行くけれど、彼の作品は4枚ほど出すつもりだ。 - では「陽の当たらなかった名曲達」について教えてください。

Steve RachmadによるA Scorpion's Dreamの「Aqua Dance」をを収録している。これはまさに時代の先を行っていた曲だと思う。当時は早すぎたんだ。だから、このクオリティに見合う評価や注目を集めることができなかった。他の曲についても同じようなことが言えると思うよ。 - 確かにJohn Arnoldの「Sparkle」やDigital Justiceの「heme From: It's All Gone Pearshaped」、Tony Drakeの「One」などは<Transmat>の隠れた名曲でしたね。また、CD未発表曲が多かったのも興味深いポイントでした。

そうだ、これらの作品もリスペクトに値する。今回は、Aril Brikhaの「Groove La Chord」のような確立されたクラシックではなくて、こういった隠れたクラシックを紹介したかったんだ。むしろ、「Groove La Chord」のような成功を収めかけている曲をね。 - 新旧<Transmat>の楽曲が収録されている構成は興味深いものでした。

古いものは新しいものであり、新しいものは古いものだ。ストーリーのはじまり、途中、終わりを見せることが重要だ。そうでなければ完成とは言えない。俺は何かを未完成のままにしておくようなことはしないよ。  - 今回楽曲を提供したアーティストたちについて一言ずつコメントしてください。

John Arnoldは過小評価されてる。だからセカンドチャンスを与えたかった。Digital Justiceの曲はまさにクラシックだ。唯一無比だ。Choiceによる「Acid Eiffel」は、Laurent Garnierの最高傑作だ。 Louis Haimanは、真の才能だ。PsycheことCarl Craigの「Crackdown」はエモーショナルテクノの最高峰だ。Double Helixも過小評価されているが、素晴らしい作品だ。Tony Drakeはエレクトロニックミュージックのスチュワートコープランドだな。Sans Soleilは真面目な男だ。 A Scorpion's DreamことSteve Rachmadは、偉大なアーティスト。Silent PhaseことStacey Pullenは、長く過小評価されてきたけれど、今やっとチャンスを掴もうとしている。 Karim Sahraouiは、特別な男だ。ハート&ソウルを持った真の才能であり、すべてにおいてロマンチックなんだ。今回収録した彼の楽曲はいずれもハイテックソウルと呼ぶにふさわしい。Microworldは、緻密で計算された音楽をつくる男だ。Rennie Fosterは強い決意を持って活動している。Yotam Avniは、使命感に燃えた男だ。クロノフォンはまだ22歳くらいだけど、次世代のロランガルニエだ。ダーク・コメディことケニー・ラーキンはジェダイの騎士だ(笑)。 Greg Gowは、救いようがないくらいロマンチックだ。DVS1は黒いロシア人だな(笑)。Deep'a & Biri, Geneは、音楽に人生を捧げた真面目でナイスな奴らだ。 Craig Sherradは、学んでいる途中だけれど、そんなに周りから遅れているわけじゃない。 Stephen Brownは止まることをしらないウォリアーだ。これで全部かな? - ご自分については?

それはさすがにやめておくよ(笑) - それと今回は、Derrick Mayの未発表曲「Hand Over Hand」が収録されているのもポイントです。この曲について教えてください。

ずっと前につくった曲だ。自分の人生でデリケートだった時期について描いている。当時は、幸せを感じられなかったし、何に対しても愛を感じることができなかった。これはダンスフロアのための曲じゃない。この曲は、自分の音楽スキルが披露できていると思う。この曲ではキーボードを自分で演奏しているんだ。生演奏をオープンリールテープに直接録音した。1度テープに録音してから、また別のテープに移したりはしない。ダイレクトに録音したときの音質が好きなんだ。自分の作品は、すべてそうしている。この作品もそのときの感情がダイレクトに収められた曲だ。 - ダンスフロアのための曲じゃないということですが、今作も「Beyond The Dance」というサブタイトルがつけられていますね。そもそも、これはあなたの作品のタイトルでもありましたが。

その通りだ!今回は「Beyond The Dance」とタイトルにつけたけれど、「Beyond The Dance」は、収録していない。今回は、その哲学を込めたんだ。つまり、ダンスだけ、クラブだけじゃなくて、よりスピリチュアルな楽曲を収録した。そして、その意味通りにリスニング対応として作った。ダンストラックだけではなく、もっと知的で山あり谷ありの構成にして、全曲を通して聞くと1つの楽曲に聞こえるようにしたかったんだ。 - 今作はCDですが、アナログ盤リリースの予定は?

3枚組アナログ盤セットもリリースする予定だ。これは限定版コレクターズシリーズとして出すつもりだ。ちょっと高くなるけど、ブックレット、アナログ盤、特別ジャケットなど、コレクターズアイテムにしたい。まるで、Earth, Air & Fireみたいにね(笑)でも、アナログを出すのはレコード好きな人への敬意を表すためなんだ。また、今回からデジタル配信も始めるよ。これまでは、1曲も配信したことなかったけどね。 - 今後の<Transmat>の予定は?

このコンピの後に12インチシングルをリリースして行く予定だ。Karim SahraouiやSteve Rachmad、 Chronophone、Rennie Fosterらのリリースを予定している。 - <Transmat>のアーティスト選定基準は?

彼らはエレクトロニックミュージックの未来にノイズを巻き起こすフロンティアに一歩踏み出そうとしているアーティストたちだ。彼らを紹介することに絶対の自信を持っている。彼らは、大きな可能性を持っていると共に、彼らが直面するであろう重責に耐えられる人物たちだ。だからこそ、彼らをTransmatアーティストと呼ぶことができるんだ。簡単にTransmatアーティストの称号を与えることはしてこなかったし、これからもするつもりはない。この称号には名誉、リスペクト、そして責任がついてくる。これらをちゃんと理解して管理できるアーティストを慎重に選んでいるんだ。 - 今回のアートワークには歴代のアーティストたちの名前が入れられていますね?

そうだ。今回は楽曲を収録していないアーティストでも、これまでにリリースしたアーティストの名前を入れた。これは彼らへのオマージュなんだ。それと、ライナーノーツは元<Transmat>のスタッフにも書いてもらっている。それと、初期の制作風景など<Transmat>の歴史を物語る写真を入れたりしているんだ。ぜひ、ゆっくり時間をかけて見てもらいたいと思っているよ。 - <Transmat>創設時に考えていたコンセプトは?

時代の経過に耐えうる音楽をつくること。エレクトロニックミュージックの本質に忠実な人々と仕事することだ。
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