INTERVIEWS

Mother

- この10年を振り返ってどんな10年でしたか? 

簡単に言うと、人生の縮図のようでした。 思うようにいかないことの方が多かったかもしれませんが、喜怒哀楽に富んだ、素晴らしい10年だったと思います。

Motherを立ち上げた2002年頃は、ダンスミュージックシーンではサイケデリックトランスをはじめとしたトランスミュージックが大きなムーブメントになっていた時代で、インドア、アウトドアを問わず良質なパーティーが毎週末開かれていました。皆、熱狂と笑顔が溢れるポジティブなバイブに包まれたダンスフロアに魅了され、トランスカルチャーを通して世の中を変えることができる!と誰もが本気で思っていたと思います。

そんな中で、SOLSTICEさんをはじめとしたビッグオーガナイザーが開催していた夏の野外フェスが1万人クラスにまで発展を遂げ、箱でも毎週3000人オーバーのパーティーが開かれていたシーン最盛期の時にMotherを立ち上げました。

それまで特にシーンと深い関わりのなかった私たちでしたが、パーティーのトータルプロデュースを担うTA-KAのDJと世界観にシーンの未来があると信じ、チーム一丸となって開催して大成功を収めた"Club Citta'Kawasaki"でのオープニングパーティーの事は、まるで昨日の事のように思い出せます。既存のビッグネームに頼らず、Motherと同じニュージェネレーションのアーティストを招聘し、TA-KAがパーティーの中核をなすスタイルは、それまでにない新しい形のパーティーでした。彼のディレクションの元、毎回試行錯誤をしながらパーティーを創り上げるのは本当に楽しかったです。そしてこのスタイルは、10年経った今も全く変わっていません。

その後まもなくして、トランスミュージック主体のパーティー全盛期は終わりを迎えます。騒音問題やゴミの問題、ドラッグの問題や喧嘩、マナーの問題など、シーンの中で起きたさまざまな事象が原因で、パーティーの最大の魅力であるポジティブエナジーと一体感がフロアから失われてしまったのが原因ではないでしょうか。

こうしてシーンが大きく変化を遂げる中、2003年から「S.O.S FESTIVAL」、2005年からは「GROUND BEAT」という2つの野外フェスティバルをスタートさせました。SON KITEがレーベルアーティストとして参加した2006年頃から、現在のMotherの真骨頂となるジャンルの垣根を超えたクロスオーバーなパーティースタイルへとシフトし、音楽性の幅が格段に広がり、最終的には両フェスティバルともに4000-5000人規模のフェスティバルへと発展し、2009年まで毎年春と夏に日本各地の素晴らしい自然の中で開催する事ができました。

また2006年には、トルコで開催された皆既日食フェスティバル「SOULCLIPSE」では、日本事務局として参加し、初めてとなる皆既日食体験をする事もできました。  しかし、いろんな問題が矢次に起こって行く中で、野外パーティーをとりまく環境が悪化するのを止める事ができなく、思い描いているMotherの野外パーティーを作る事ができない事を理由に2009年以降は野外パーティーを開催していません。野外パーティーのカルチャーが好きで、Motherを始めたのに、開催すらできないという苦しみにここ数年間は直面しています。

そんな中でスタートしたのが日本最高峰のエンターテイメントスペース"ageHa"を舞台にした「ageHa×Mother」です。それはシーンが低迷していく中にありながら、将来、最高の野外パーティーをまた開催できると信じ、未来のビジョンを見据えていたTA-KAが描いた次なるMotherの形でした。「ageHa×Mother」ではPROTOCULTIREやD-NOX、SON KITEをはじめとした、Motherがそれまで培ってきた良質なトランス/プログレッシブのアーティストをクラブのオーディエンスに紹介していく事からスタートしました。その反響は素晴らしく、パーティーは回を増すごとにアーティストと共に進化し続け、現在はテクノ~トランスまで幅広い音楽性を背景に、パーティーによってスタイルを変えて、さまざまなオーディエンスを巻き込みながら成長を続けています。

そして10年の節目を迎える本年、素晴らしい出来事がありました。  11月にオーストラリア・ケアンズにて開催された皆既日食フェスティバル「ECLIPSE2012」に、メインオーガナイザーとしてMotherがプロデュースに参加する事になり、主催のRAINBOW SERPENTから「S.O.S Festival」をメインステージで開催してほしいというオファーを受けました。2006年以来2度目となる皆既日食フェスティバルへの参加と、開催できずにいた「S.O.S Festival」=野外パーティーの開催が実現した事は、本当に胸躍る出来事で何よりものご褒美でした。

そして、来たる12/8(土)に集大成となる10周年パーティーを開催します。本公演は、この10年の遍歴を辿るだけでなく、この先10年のMotherの未来像をパーティーに落とし込む事にこだわり、各フロアともバラエティ豊かな内容になっていると思います。

簡略させて頂きましたが、以上がMotherの10年の遍歴です。色んな壁が立ちはだかりましたが、それをチームが一丸となって乗り越えることで、パーティー的にも人間的にも成長できたように思います。TA-KAのDJに魅了され、ファンとなった仲間が集い、駆け抜けてきた10年ですが、 当時と何も変わらない彼へのリスペクトと信頼を胸に、今もこうして同じ仲間たちとパーティーを作っていられる事を、何よりも嬉しく思います。 私たちにとってMotherとは、夢と青春であり、それを支えてくれた何よりも大切なお客さんとの懸け橋です。そんなかけがえのない宝物をこれからも大切に育てて行きたいと思っています。 - シーンはどのように変わりましたか?

トランスパーティーに関して言えば、2000年前後の全盛期から次第にシーンは衰退、縮小の下降線をたどりました。サイケデリックトランスの最も重要な要素である、アンダーグラウンドな世界観がパーティー、音楽ともに希薄になった事と、急激に拡大したシーンを、私たちオーガナイザーがコントロールできなかった事が原因だと思います。そして時代は巡るとの言葉通り、テクノを筆頭に音楽的に成熟した良質な音楽が台頭してきて、時代に合った形のパーティーが登場してきました。毎年こだまの森で開催されている「TAICO CLUB」を筆頭に、「BIG BEACH FES」、「X-LAND(ex.FREAKS)」、「RAINBOW DISCO CLUB」など、過渡期を越えて誕生したパーティーはどれも多くの人たちを魅了しており、どのフェスも2万人~数千人規模で行われています。そういった意味では音楽ジャンルが変化しただけで、野外フェス、野外パーティー文化自体は衰退している訳ではなく、むしろしっかりと文化として定着してゆるやかに上昇しているように思います。 - その中でどのようなことを常に思いパーティーを続けてきましたか?

Motherを立ち上げた時から変わらず想い続けているのは、「お客さんに楽しんで頂く事」。日頃社会の荒波にもまれて、いろんなストレスを抱えながら懸命に生きている方たちが、心から楽しめる空間を作りたい。この思いは変わらず、むしろ年々強くなっています。それはどんな時でも「お客さんの立場になって考える」ということです。この10年間、常にこの気持ちだけはぶれずに続けてきました。パーティーを作る際にはどうしたらお客さんが楽しめるか? 居心地が良いか? 安心できるか? 常にそういう視点でパーティーを作ってきました。もちろん反省もたくさんあります。それと同時に、自分たちが楽しめる内容であるということも非常に大切なことだと感じています。自分たちが気持ちを持って、気持ちを注いで作るからこそ、その楽しさや思いがお客さんにも通じるのではないかと思うからです。またパーティーにおいて重要となる音楽面で最も大切にしてきたのは、"上質な音楽から生まれるポジティブなバイブレーション"です。TA-KAの音楽遍歴の幅広さを物語る、Motherの音楽性の高さと豊かさを魅力に感じてくれているお客さんも多いのではないでしょうか? - いまのシーンをどう捉えていますか?

時代が移り変わる中で音楽も進化していますし、それに合わせて聴く側のお客さんの意識や好みも変わってきているように感じます。単純にテクノが人気があるとか、トランスが人気がないとかそういったことではなく、聴く人の心に響く音楽性そのものがより一層重要になってきているように感じています。その音楽の持つ世界観がフロアの空気を作り上げ、パーティーをエモーショナルなものにするのではないでしょうか。最新の音楽を楽しむ、かつてのパーティーから、最高の音楽を楽しむパーティーへとシフトしていっているように思います。若手オーガナイザーやDJの人たちの中で、この事に気が付いている人たちもいます。僕らが10年かけて分かった事を感覚で体得しているのはすごい事だと思います。「ageHa×Mother」の舞台では、そのような同じ価値観を持った方達と一緒にパーティー作りをさせて頂いてます。このような若手が台頭してきた今のシーンの未来はとても楽しみですね、若者が時代を作っていくのは昔からの定説ですから。 - この先の未来にむけて目指すものは?

Motherのパーティー作りの根底にあるのは「変わらないために、変わり続ける」と言う事。今後もお客さんに最高の空間を提供するために、良いと思う事はどんどん取り入れて、形を変えていきながら「笑顔と感動」に満ち溢れたパーティー作りを目指したいと思います。一過性の音楽パーティーではなく、成熟した文化としてのパーティーは、今までの、そしてこれからの積み重ねの先にたどり着くものだと思っています。またこれからは海外へも目を向け、諸国の良質なフェスともコラボレーションして、海外フェスの魅力を日本に紹介したり、たくさんの日本人と一緒に海外のフェスに参加していけたらと思っています。  エモーショナルに生きる事の素晴らしさを感じて下さい。 そして、明日を生きる活力へと変えてもらえたら嬉しいです。 LOVE & RESPECT to All from Mother 「MUSIC IS CONNECTED TO UNIVERSE」

開催日:12月8日(土)
会場:新木場"ageHa"
時間:23:00
出演者:【ARENA】[SPECIAL ACT] 3 HOURS SPECIAL LONG SET - Joris Voorn (REJECTED / Netherlands), 10th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE SET - Son Kite a.k.a Minilogue (COCOON Recordings / Sweden), [LINE UP] Ta-Ka (Mother / LIGHT MUSIC / Japan), Daijiro (DIGITAL BLOCK / Japan), [VISUALS] Heart Bomb, Naohiro Yako (flapper3), [LIGHTING] Bags Groove, [DECORATION] Kanoya Project, [SOUND] Waves, 【WATER】[SPECIAL ACT] Ken Ishii (70 DRUMS / Japan), [LIVE SET] Fumihiko Takei (PLUS UTSUNOMIYA / Japan), [LINE UP] Nen (SILENT MUSIC / Japan), Java (SILENT MUSIC / Japan), Dazy a.k.a Wtr (SILENT MUSIC / Japan), Fujioka Manabu (TEIonCLUB / AGB WORLD / Japan), [VISUAL EFFECT] Red Screen (SILENT MUSIC / Japan), 【BOX】 [SPECIAL ACT] ラビラビ featuring Nata (Japan), [LIVE] Damiana Terry with ヨシダダイキチ, mergrim (moph records), [GUEST] Yukiho (Femine Session(MEX) / Barearic Sunrise / Y smile), [LINE UP] morrissy (Chimera), tao (Liquid note), [Space Visual Design] TBA, 【ISLAND】[Jam Live Session] Astron (ASTROBASE / LIGHT MUSIC / Japan), [LINE UP] Drunken Kong (Plus rec. / Beenoise rec. / Twisted beats / Japan), Toshihiko & Tera (NDC / Grasshopper Rec / Japan), Takuya saeki & Takamitsu (ATLANTIS / Japan), Ryu & Yow (CHESTNUT / Japan), Yamato vs G.T. (Libero / Japan)
料金:DOOR¥4000  ADV¥3300  ageHa MEMBER¥3000

■詳細
http://www.clubberia.com/events/201377-MUSIC-IS-CONNECTED-TO-UNIVERSE/