一通のメルマガに触発された興味
グラミー賞と聞くと、私はどうしてもAdelを思い出す。Adelを初めて聞いたきっかけは、CDを取り扱うレーベルからのメールマガジンだった。普段、クラブミュージックばかり聞いているからかもしれないが、ポップスの「○百万枚売れた、○千万枚売れた」という売り文句は、まるで別世界過ぎて、どうもピンとこなかった。
だがある日、会社のPCから見たそのメールマガジンに「第54回グラミー賞、主要3部門独占、最多6部門受賞!」と書かれているのを見つけて、思わず掲載されていたリンクをクリックした。初めて聞く「Someone Like You」にいたく感動し、"今さら感"丸出しで恥ずかしながらFacebookでフィードしようとしたが、日本語訳が掲載されているYoutubeが見つけられず、しょうがないので特設サイトのURLを掲載した記憶がある。
映画の最高峰の賞といったらアカデミー賞がまず浮かぶ様に、音楽の最高峰の賞といったらグラミー賞が浮かぶ。それを彼女は6部門も受賞したことへの驚きが、私とAdelを結びつけてくれた。出会いは、思いがけないとこからやってくるものだ。
グラミー賞の中での「ダンスミュージック」
このコラムを書かせてもらうにあたり、グラミー賞に関して掘り下げてみた。おもしろかったのは、81部門もあるということと、いわゆる「ダンスミュージック」と呼ばれるジャンルは、『Best Dance Recording』が2002年(Dirty Vegas /Days Go By)から、『Best Dance/Electronica Album』は、2004年(Basement Jaxx/Kish Kash)から、そして『Best Remixed Recording, Non-Classical』は、1997年(Frankie Knuckles)からと、ここ10年で設けられた部門だということだった。(なお、ヒップホップやR&Bなどの部門は、もっと以前より設けられている)。
これらの部門の歴代受賞者には、The Chemical Brothers、Justin Timberlake、Daft Punk、Madonnaなど、受賞する以前より作品が評価されていたアーティストや、エレクトロブームの象徴だったJustice、ポップスターLady Gagaなどが名を連ねている。そしてここ数年は、近年猛烈な勢いでクラブ/ダンスミュージックシーンを席巻しているジャンル「EDM」系のアーティストが、ノミネート/受賞される傾向が見て取れるようになってきた。
では、実際にクラブでこれらの音楽がかかっているかといったらどうだろうか?答えは、ご存知のとおりクラブやイベントによる。本来「EDM」はエレクトロニックダンスミュージックの総称としての言葉だが、最近はエレクトロハウスや、そこにダブステップの要素が加わったりした派手で大箱に栄える音楽を指す言葉として使われている。このことに関しては、clubberiaのインタビュー内で、Boys Noiseも、さまざまなエレクトニックミュージックを一括りに「EDM」とするのに疑問も持ちながら「自分のスタイルをジャンル分けするのって難しい部分もあるから、総称は必要なのかなとも思うよね。」 と応えている。
さて、話を戻すとイベントの趣向も様々だ。EDMのように音数が多く展開のはっきりとした曲が好まれる場所もあれば、音数を少なく展開も小さく、曲というより音を楽しむ場所もある。流行っているからといって、それが求められる場所ばかりではない。ただ、EDMの需要は、ここ日本でも確実に高くなってきているのも事実。2012年だけでも、いろいろな現場を目の当たりにした。
まず、春に開催された人気フェス「SPRINGROOVE 2012」では、David GuettaをはじめLmfao、Afrojackが一堂にラインナップされていたり(今年の「SPRINGROOVE 2013」では、Aviciiの出演がすでに決定している。)、「Sommer Sonic'12」では、Rihanna、Pitbull、Calvin Harrisが出演した。さらには、Skrillexの初来日ツアーが組まれたり、最近だと国内最大級のエンタテインメントスペースのageHa/Studio Coastの10周年記念イベントでは、今回『Best Dance/Electronica Album』にノミネートされているSteve Aokiがゲストとして出演したりと、嗅覚の鋭いプロモーターは、動きだしているのが伺えた。(余談ではあるが、clubberiaで発表したParty Awards 2012でSteve Aokiが出演したageHa 10th Anniversaryが1位を獲得している。)
自然に音楽と出会えるということ
そして何より日本のシーンにも浸透しているのを感じたのが(むしろ私が気付くのが遅かった)、Red Bullが主催するDJコンペティション「Red Bull Thre3Style Japan」だった。このコンペティションは、世界大会も行われており、私はライターとして日本各地で行われた予選に同行させてもらった。DJは、持ち時間15分という短い時間の中で、スキル、選曲、パフォーマンスなどで会場を盛り上げるかを競った。
そして彼らは、今まで名前を上げてきたアーティストの楽曲を本当によくかけていたし、お客さんもそれを求めていた。おそらく1番かかった曲は、Lmfao/Party Rock Anthemだったように思う。まさに近年のグラミー賞受賞者/ノミネート者の楽曲が多様され、状況は違うが私の中ではAdelを知った時と似た感覚を覚えることとなる。
私にとって言えば、クラブ/ダンスミュージック系に限らず、今年は、どんな知らない音楽に出会わせてくれるのだろう。81もの部門があれば琴線に触れるものが、いくつかありそうだ。去年Adelを知ったように、そんな思いがけない音楽との出会いに期待したい。
第55回グラミー賞授賞式
放送日時:
2月11日(月・祝)午前 9:45 [WOWOWプライム]※生中継(同時通訳)
2月11日(月・祝)夜 10:00[WOWOWライブ](字幕)
グラミー賞とは?
音楽業界のアカデミー賞とも称えられる、世界最高峰の音楽賞。音楽業界で目覚しい業績を挙げたクリエイターやアーティストに贈られる栄えある賞で、中でも「年間最優秀レコード」「年間最優秀アルバム」「年間最優秀楽曲」「最優秀新人賞」の4部門は、もっとも注目を集める賞である。そしてグラミー賞授賞式のみどころは、なんといっても授賞式を華やかに彩るビッグアーティストたちによる数々のライブパフォーマンス。グラミー賞授賞式だからこそ実現できる、超有名アーティストによる一夜限りのコラボレーションパフォーマンスは必見。
■第55回グラミー賞授賞式 (WOWOWオンライン)
http://www.wowow.co.jp/grammy
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