INTERVIEWS

Dicky Trisco

- まずは自己紹介をお願いします。

Dicky Trisco、イギリス出身のDJ/プロデューサー。幸運なことにレコードに囲まれた生活を長いこと送っているよ、音楽に情熱をかけ続ける人生と言っても過言ではないと思っているね。子供の頃から、寝る前にThe ClashやIan Dury、Talking headsを聞いたりしていて、ローカルバンドのドラマーだった事もある。
ディスコミュージックと出逢った事は、僕の人生の大きな転換期だったし、その影響は今でも続いている。でも、他のどんな音楽でも僕は同じように愛しているし、それを自分のDJにも取り入れるようにしているよ。「ジャンルレス」と表現する人もいるし、「バレアリック」と形容する人もいるけど、Bill Brewsterが言ったこの言葉が1番ぴったりだと思っているよ、「いい音楽」という言葉がね。

  - ありがとうございます。あなたのDJセットは、ジャンルに囚われないだけでなく、自身のエディットした音楽を多く取り入れている印象を受けます。

オリジナルもエディットも両方プレイするよ、もちろん曲や場所によってね。ただ自身のセット用に、ちょっとしたエディットを施すことは多いね。クラブという空間にどの曲が相応しいかをよく考えているけどね。エディットやDJだけのスペシャルトラックは、常にDJカルチャーの魅力の1つであり、それが僕がDJに取り憑かれた理由なんだ。きっとみんなそうだと思うし、だからDJのセットというのは、それぞれの違うカラーを持っているんだろうね。
 
- そういったそれぞれのDJスタイルというのは、制作にも大きな影響を与えているように感じます。あなたのそのDJ観がメインワークであるエディットレーベル"Disco Deviance"に影響しているのでしょうか?

その通りだよ。"Disco Deviance"は、DJの魅力にとことん迫ったレーベルになってるからね。DJの開拓者とも言えるLarry LevanやTee Scott、もちろんレゲエシーンのLee Scratch PerryやKing Tubbyなんかのやっていたことを引き継いでるつもりだね。
 
- エディットの多くは、Mp3やWavといったデータでの販売が一般的となってきていますが、その中で"Disco Deviance"は、一貫してヴァイナルでのリリースにこだわり続けていますよね、その理由を教えて下さい。

ヴァイナルはDJカルチャーの肝だと思ってるからだよ。ただ単純に音がいいというだけの理由ではなく、買う事、集める事、針を落とす動作、そんなさまざまな魅力がヴァイナルにはある。"Disco Deviance"は「DJオンリー」のプロダクトをコンセプトにしているし、エディットは、それでいいと思う。デジタルのDJたちは、どんどん新しいものに挑戦してるんだ。ヴァイナルだかっらってオリジナルだけにこだわる必要なんてないだろ?

僕は別にヴァイナル至上主義じゃないし、本質的な音楽がいい音で流れて、皆にダンスしたい!と思わせるものなら媒体は何でもいいと思ってるよ。現に有名なDJの友達もたくさんいるけど、彼らも決してヴァイナルオンリーだけじゃない。CDの人もいればラップトップの人もいる。OptimoのTwitchはヴァイナルにラップトップで実に上手くエフェクトをかけるし、Greg WilsonはRevoxのオープンリールとCDかラップトップを組み合わせている。大好きなDJでもあるPete HerberetやChris DuckenfieldはCDのみ、OptimoのJonnieはヴァイナルオンリーを貫いてるね。でも誰が正しいとかないでしょ?

ただ経験上、良くないプレイをするDJはヴァイナルユーザーよりラップトップユーザーの方が多いと感じてるよ。これは多分、安く(時にはタダで)簡単に音楽をダウンロードして、お金や時間を音楽を掘り当てるのに割かないからだと思う。そして何でもかんでもミックスしてる、それじゃあ意味ないよね!
 
- 大げさに言うと、音楽にどれだけ人生を捧げているかという事でしょうか?

そういう事だと思うよ。古くさいと言われるかもしれないけど…最近の若い人たちはラップトップなどの登場で簡単にDJできるようになったよね。DJとして立つ前に、聞ける限りの音楽を聴いて、その行為に活力を注ぐという習慣がなくなったと思うんだ。音楽的な背景や、音楽を愛する気持ちは、ダウンロードできないものだからね。
 
- ところであなたは先ほど"Disco Deviance"は、DJオンリーをコンセプトにしていると言っていましたね。他にも"Maxi Discs"や"File Under Disco"といったさまざまなレーベルワークをこなしていますが、それらのコンセプトも教えて下さい。

そうだね、最近特に精力的に取り組んでいるのは"File Under Disco"の方だね、これは100%オリジナルのディスコミュージックをリリースするためのレーベルで、僕が本当に長い間、夢見てきた取り組みだよ。ただ現代のクラブに合うようにそれをアレンジして提案していくようにしている。たくさんのエディットバージョンをダウンロードで購入できるようになっているけど、これは聴く人がその音楽をより好きになれるように、段階を踏んでいくように構成している。オリジナルとエディットを繰り返し聞いているとそれが分かると思うよ。
"Maxi Discs"はずっと一緒にやってきたPete Herbertとの共同レーベルで、大型のクラブにぴったりなハウスミュージックを特徴として謳っているよ。彼はバレアリックハウスとディスコのヴァイブスを組み合わせるのが上手いからね。
これらとは別に"Back to Balearic"という新しいプロジェクトも始める事が決まったんだ。これは他のものよりずっとダウンテンポなサウンドで、クラブじゃない所で聴く音楽にフォーカスしているよ。インスピレーションは、イビサの美しい島内をドライブしたり、そこで家族や友達と遊んだりしてる中で得られたんだ。音楽がまるで星の瞬きのように見える瞬間があってね。最初のリリースはMaricopaというアーティストをフューチャーした素晴らしいものになるはずだよ。
 
- なぜそんなに多くのプロジェクトを持ってるのですか?その活力はどこから来るのですか?

なぜかって?簡単な事だよ。音楽が、そしてそれを通して多くの人と繋がる事が好きだからさ。だから常に色々なアーティストと一緒に仕事をしたいと思ってるし、それが幸せなだけなんだ。ただ、マーケットとしてやるべきだからという一面もあるよね、現代は常に違う事をしていかけなければ生きていけないだろ? 
 
- 制作だけでなくDJとしても精力的に活動し、世界各地を飛び回っていますよね、今まで行った場所を教えて頂いてもいいですか?

ありがたいことにいろいろな所に招かれてDJする機会をもらって、本当に楽しいよ。アメリカ、南アメリカ、オーストラリア、欧州各地、トルコ、中国、もちろん日本も訪れた事があるよ。夏はイビサに滞在しているけど本当にいい場所だよね、みんな音楽が大好きでおもしろい人たちばかりだし。
 
  - ちょっと脱線しますが、イビサの事について聞かせて下さい。日本ではイビサというとクラブシーン、特に大型のクラブの話題が取り上げられがちです。先ほどの"Back to Balearic"の話題にあがったような、その他の魅力についても伺えたらと。

確かにほとんどの人がその印象を持っていると思うよ、特に90年代以降は「スーパークラブ」の評判が凄かったからね、ビキニとかトランスとか。
でも、長いことイビサにいると他にもいい場所がたくさんある事に気が付くんだ、それに音楽が常にイビサに寄り添っていたこともね。60年代はCanやPik Floydといったバンドが度々訪れて、ヒッピーカルチャーが形成されていた。80年代のニューウェーブの広がりからクラブが流行り始めたんだ。音楽的には今でも成熟され続けているよ、Spaceみたいな大型のクラブは凄いラインナップでビックリさせられるし、飽き飽きしない音楽的一貫性があるよね。その一方で小さな海の家やビーチでのパーティーも開催されていて、そこではバレアリックなライフスタイルを取り戻す事ができる。Andy Wilsonに強く影響を与えた人物の1人でもあるJon Sa TrinxaのIbiza Sonicaでのラジオショー"Balearia"が毎週放送されている。ローカルDJも活躍しているよ、CallumとValentin Huedoとかね。
でも、僕にとってのイビサの魅力は純粋にいい島だという事もあるんだよね。花とパイナップルの木の匂いに包まれて、美しい砂浜や入り江があって、夜の間はずっと外で星を眺める事ができて、本当に最高の場所だよ。 
 
- ありがとうございます。話題を戻しますが、イビサや欧州など世界の様々な音楽シーンを見てきたあなたが感じる日本の音楽シーンの印象を聞かせて下さい。

音楽に対して情熱的で知識に溢れていると思う、それはディスコミュージックに限らずね。古くはLarry Levanからの影響、今で言えば HarveyやEric Duncanといった日本を訪れるDJたちに影響を受けているんだろうね。日本はロックやディスコやテクノ、その他のジャンルでもその素晴らしさにビックリさせられるよ。日本はヴァイナル文化もまだまだ根強いし、すごくいい事だと思うよ。日本のバンド音楽にも興味深々だよ、友達のDJ Brkaが教えてくれたHappy EndやFar East Family Bandとかね。 
 
- あなたの日本の音楽シーンの精通ぶりには驚きを隠せないです...Happy EndもFar East Family Bandも世界的に有名じゃないのバンドなのでまさか知っているとは。"Disco Deviance"で唯一の日本人アーティストであるShota Tanaka (Beaten Space Probe)を取り上げた事もビックリしました。まだ著名なアーティストではないにも関わらず、彼を起用した経緯を教えて下さい。

僕は音楽に関わる仕事をしていて、自分よりもっともっと音楽に詳しい人と出会う機会も多いからね。そんな人たちから教えてもらうんだ。Brkaは日本のロックバンドが好きだから、日本に滞在した時にメールを送ったら、この2つのバンドを教えてくれたんだよ。
ShotaはSoundcloudを見ている時に偶然見つけたんだけど、本当の意味でのディスコブラザーになれたし、その時から今までずっとサポートし続けている。彼は本当に才能あるプロデューサーだと思うし、若いのにいいDJだよ。それに人柄もいいよね。音楽には人柄が表れる、いい人柄はいい音楽を作ると思っているんだ。Shotaもその1人だと確信しているし、今後彼のキャリアが開かれる事に期待しているよ。 
 
- そんなShota Tanakaのレギュラーパーティー"Boogie Prancin"のサポートを受けて、共に周る今回のジャパンツアーですが、ファンに向けてメッセージをお願いします。

皆さんに会える事を楽しみにしています。 
 
- Tour Infomation -

supported by Boogie Prancin
開催日:3月8日(金)
開場:渋谷"SECO"
時間:23時
料金:DOOR¥2,000
出演:Dicky Trisco, Shota Tanaka, haraguchic, KENWOOD, mogmog
www.clubberia.com/events/205260-DISCO-DEVIANCE-2013-Tour-Of-Japan/


supported by DAWN
開催日:3月9日(土)
開場:愛知"QUARK"
時間:22時
料金:DOOR¥3,000  W/F¥2,500
出演:Dicky Trisco, Shota Tanaka, ASAI, Kenji Tanaka
http://www.clubberia.com/events/206091-DISCO-DEVIANCE-2013-Tour-Of-Japan/