INTERVIEWS

Moodman

- 本作『SF』を聞いて、走るビートやリズムとは裏腹に、冷静で知的なメロディーが対称的で、暖流と寒流が一緒な場所に流れているようで、「かっこいい」って言葉が自然と出てくる1枚でした。特に、デトロイトテクノ的なサウンド、ダブステップを通過したサウンドが多かったように思いますが、今作の話が来た時、どのような内容にされようと思われたのですか?

今回、ぼんやりとアタマにあったのは、インテリジェント・テクノでした。  インテリジェント・テクノというのは、90年代初頭に主にUKを中心に起こった小さなムーブメントのことで。WARPのアーティフィシャル・インテリジェンスのシリーズとか、ブラックドックとか、ニューエレクトリカのシリーズとか、レーベルで言うとジェネラル・プロダクションやアーディアルなどなど。デトロイトテクノのオリジネーターたちに影響されたヨーロッパのアーティストたちが、デトロイトテクノの実験性を突き詰めていくことでその時期、なんだか妙なトラックを次々と世に送り出していたんですね。最終的には、その土壌からオウテカなどが生まれる訳ですが。ぎりぎりダンスミュージックの形態を保っていた数年の作品が僕は好きで、ダンスミュージックと言っても踊れるかどうかぎりぎりの線なんですけど。

 今、聴き返すと、いわゆる4つ打ちだけではなくて、いろんなビートに取り組んでいるんですよね。そういったムーブメントに対して、デトロイトテクノの影響はよく語られているところなんですが、それと同じぐらい背景として、当時のヨーロッパのレイヴカルチャーの影響が色濃かったんだなぁと最近、思い返していて。レイヴカルチャーの大衆的でなんでもありなパーティチューンを、異化することで実験的な音楽が生まれていたんです。

 あの頃の奔放なビートの解釈というか、自由な感じがまた今、2000年代後半ぐらいから時代の空気になってきている気がしていて。特にダブステップですよね。僕も現場で、いわゆるポスト・ダブステップを時々ハウスやテクノに混ぜたりしてきたんですが、なんというかそういうときに体感的に思い出したのが、そのインテリジェント・テクノだったんですね。2000年代を通じてベースカルチャーが世界的に席巻していて、ヒップホップにしてもR&Bにしてもハウスにしても、わりと体感的になってきていますが、そうしたベースカルチャーが当時のレイヴカルチャーに匹敵するぐらい台頭している。それを、ポスト・ダブステップが率先して異化しているというか、意識的に新しい音楽を作ろうとしているように感じたんです。例えばビートひとつをとっても、BPMが110だったり、130、160だったり、いろんな打ち方を探求している。 

 そんな気分から、CDの裏テーマは、インテリジェント・テクノにしました。20年前に断ち切れたインテリジェント・テクノの亡霊を、今の音楽で呼び覚ます..ということかもしれません。ジョン・ベルトランやステファン・ロバーズといったベテラン勢からすんなり入っていって、現代の感覚へ引き継いでいく。いろいろやっているうちに、結果、そんな流れになりました。
 
- だからダブを基準に1枚が作られていたんですね。  

 もともと僕はルーツ・ダブを偏狭的に愛してまして、僕は極端なことをいうと、ディープハウス自体もダブの進化型のひとつだと捉えているので(笑)。広義のダブを媒介にしながらいろんなものを入れていきました。BPMでいうと、ディープハウスを真ん中に置くと120前後でやることが定石ですが、今回はちょっと速めに設定しました。これは、現場でDJをやっていての感覚と言うか、なんだか今、130前後が心地よくて。でも、トラックの構成要素が主張しすぎると難しいピッチなので、構成は複雑であっても薄く聴こえるトラックをチョイスしてみたり。今まで僕がやってなかったピッチだったので、その身体感覚が定着するまでなんどもグルーブを作っていった感じです。
 
- 31曲と多く収録し、ショートミックスにした理由は?   

 DJは、もちろんアナログでもやるんですけど、2000年代の半ばあたりから意識的にデータでもやろうって決心したんですね。それは単に、新しい作り手たちの発表形式が、データ中心になってきたからなんです。世界中のおもしろい音源を探そうとするとデータの可能性もしっかり追っておきたかったからです。そのような感じで約10年ほどデータを使ってきた中で、ひとつ顕著に感じたのは、アナログでやってる時とデータでやる時と身体感覚が全く変わるんですよ。僕だけかもしれないですが、アナログだと1曲をしっかりかけたくなるんですけど、データでDJをした時、各トラックの素材感がより強くなるといいますか、ただ1曲をかけるのではなく、何曲かで曲を作るみたいなDJもおもしろくなってきたんです。  今回はパイオニアのCDJ-2000をメインに使ってミックスを組んでいったんですが、現場では常に使っていますが、データだけでミックスCDを作るのって初めてだったんです。過去2作品は、アナログの一発録音で作りだったんですが、せっかく今、リリースするのだからデータだけにして、その身体感覚を記録するのもおもしろいかなと。それがショートミックスにした理由です。過渡期の今、僕はこんな感じでデータに対峙していますという、なんというか、過渡期の楽しみを残しておくのもいいかもしれないというノリです。
 
- もう1つの感想が、使用している曲が「おれいるぜ」みたいな主張をしてこなかったんです。先入観かもしれませんが、これがMoodmanさんの名前の由来であるムードミュージックなのか、一歩引いて鳴っている印象がありました。  

 それはあります。クラブでお客さんを前にDJをする時はまた違うんですが、ミックスCDはわりと引き算で作ります。今まで出したミックスもそうなんですが、キーになる曲が何曲かあって引っ張っていくというスタイルではなく、BGMとして心地よく機能することとか、空間を作るってことを重要視しています。
 
 ミックスCDという形態で音楽を聞いてて僕が好きなのは、BGM的なもので、かけながら作業したりとかするのに適しているもの。その時に、何回聞いても覚えられないものが好きなんです。そういう意味でムード音楽っぽいと思います。「こんな曲入ってたっけ?」とか「こういう順番だったっけ?」って半年後に聴いた時に思えるように、一曲一曲は主張をなるべくしないというか。序破急のような流れを作るんじゃなくて、一定なんだけども、細かいヤマがちりばめられている。そんな感じを考えてました。今回、ショートミックスしていておもしろかったのは、「こんな曲入ってたっけ感」がより増えるというか(笑)。普通、ショートミックスってヒップホップのバトルのように強烈なパンチラインの応酬にするんですけど、引き算のショートミックスをやってみたらどうかなってのは、やりながらすごい考えましたね。 
 
- データで作られたってことは、制作はPC上で?   

 いろいろやってます。パイオニアのCDJ-2000が基本で、現場でやっているのと同じスタイルで、CDJにハードディスクを刺して使っています。それをPCで録音してちょっといじったり、地味に複雑なこともいろいろしてみたり。途中で、ライセンスが取れない曲も出てきたりするんで、最終的に50テイクくらい録ったので、どこをどうしたのか分かんなくなってしまいましたが(笑)、聞いて1番すんなりするのを選びました。

  - では、現場でやるときはアナログがメインですか?  

 場所によって変えてますね。データの場合はPCではなく、CDJ-2000を使います。やっぱりサウンドシステム自体が、今、デジタルで組まれてるところも多いので、その時はデジタルの方が鳴りがいい場合もありますね。あとは箱に常設されているスピーカーとかミキサーとかで変えますね。あの箱だったら今日はアナログかなとか、こういうジャンルだったらデータかなとか。過渡期なので、試行錯誤している感じです。
- 他のお二人の作品って聞かれました?また、どういうことを思われましたか?  

 それぞれ、らしいなって思いました(笑)。1月にDaniele Baldelliが来た時に、僕とShhhhh君で名古屋のMAGOでサポートしていたんですよ。そこに、Nobu君が遊びに来て。これからミックスやんないといけないけど、どんな感じ?というぐらいの情報は交換していたんですが、その時に聞いてた印象よりも2人とも攻めてましたね(笑)。二人とも好きなDJだし、普段、現場でよくあうし、プレイも見てるし、その時々、気にしてる音楽とか掘っている音楽とかについて話す機会も多いんですが、予想していた以上で。Nobu君もShhhh君も、独特な身体感覚が身に付いているDJだから、聴いていて上がりますね。現場っていろいろなシチュエーションがあるから見えにくい部分もあると思うんですが、今回は作品ということで、真っ向からそれぞれのエッジを攻めてる感じ。2人が絶対攻めるだろうなって思ったんで、僕は逆に安定感を全面的にだそうかなとか思った部分もあったかもしれないです(笑)。ちょうどいいバランスなんじゃないですか、この3枚って。

  - 1枚買って聞いてみたら、もう2枚も聞いてみようかなってクオリティーの作品だったと思います。  

思ってくれるといいですね。ちょっと高いんですけどね(笑)。
 
- 今ミックスCDで約3000円ってあんまりない気がします。  

 そうですね。でもこれ、全部ライセンス取ってるから、わりとしょうがないんですけどね。今はCD-Rやサウンドクラウドでいいミックスが上がってますから、お金を払ってもらう分、がんばらないとという気持ちは3人ともあったと思います。
 
- ミックスCDっておまけに付いてくるものもあれば、2000円以内でだいたい買えるじゃないですか。その中で、約3000円払ってもらう物作りってすごいなって思いました。  

 選曲や、ミックスのスキルだけじゃなくて、マスタリングも含めフィニッシュまで、しっかりお金だけじゃなく労力をかけたんで(笑)。正規盤という意味では、3人とも胸を張れるものになっているはずです。
 
- この作品の中に多く使われているダブステップのトラックですが、流行ったジャンルで構成すると賞味期限が短いものができてしまいそうなのですが、まったくそんなことはありませんでした。作品をずっと聞けるものにするには、どういった工夫が必要なのでしょうか?  

 僕がもともと大好きなのはレゲエのダブなんですよね。ダブから入っていろんな音楽を好きになっていったっていう流れがあるので、基本、ダブの耳でテクノもハウスも聴いています。あるとしたらその感覚かもしれないですね。聞き方というか。捉え方というか。だからダブステップを聞いていても、初期のテクノを聞いていても、あまりジャンルとは関係なく、ダブの浮遊感というのですかね。そういう感覚を大切にして選曲しました。
 
 あと、好きでライセンスもとれたけれど、最終的に使わなかった曲もあって。なんというか、30曲を1つ1つ並べていった時に、個性が強烈なトラックに引っ張られないようにしたかったんです。なんとなくムード音楽的にしていくというか。曲の個性を繋ぎ合わせる際に、常にミドルにチューンアップしていくというか。そういう工夫をしていきました。一定のダブ感覚をキープしたかったんです。

僕、強烈にあるんですよ。10代のころにダブをはじめて聴いた時の感覚が。こんな音楽あるのかって。当時は、今ほどアーカイブ化されていなかったので手探りで買っていって。その中で知ったダブの深さというか。ダブを掘っていくことでいろんな音楽を知っていき、その流れで後にハウスとかテクノに出会ってDJとなる訳ですが、その最初の強烈な感覚をフロアーでどう出していこうかって課題はずっとあるんですよね。
 
- DJをやり始めたのは、おいくつだったんですか?  

 僕が10代後半だから、80年代の末ですね。まず、ダブに出会ったのは、DJをするずっーと前で中学生の時です。The Pop Groupっていうバンドがいるんですけど、その『Y』というレコードを地元の貸レコード屋が棚に飾っててね。変なジャケットだったから中身を知らずに借りてしまって、人生が狂ってしまった(笑)。今でいういわゆるポストパンクの中心的なバンドなんですが、ダブが音楽的に重要なキーとなっているアルバムで。それで、ダブってなんだろうってなって、どんどん調べていいくことで、当時のブリストルのシーンだったり、エイドリアン・シャーウッドのON-Uのフリークになってしまったんです。現代音楽やフリージャズ、民族音楽など様々な音楽要素が混在しているところでアバンギャルドなダブを知り、徐々にオーセンティックな方向を探っていった。そんな10代でした。で、そういうレコードを集めてたら、DJやんないかって誘われてちょっとずつ。

  - 初めてプレイしたクラブはどこでしたか?  

 ちゃんとやらしてもらったのは、下北沢のZOOでした。友達のパーティーだったんですがON-Uばっかりかけてたら、「好きなの?」と山下さん(下北沢ZOO~後の下北沢SLITSの店長)が声をかけてくれて。
 
- 私は、『LIFE AT SLITS』という本で読んだことがあるくらいで、当時のシーンに関しては知らなくて。   

 下北ZOOは、SLITSの前身のクラブです。客としてよく通ってました。 
 
- ちなみに創成期のクラブシーンでどんな感じだったのですか?   

 知らない楽しい音楽がいっぱいかかってる所でした。今のようにネットもないし、レコード屋も視聴ができなかったから、新しい音楽を聞くとなるとラジオなんですよ。でもラジオで聴いたあの曲のもっと先が聴きたいとか、もっとエッジな音楽を聴きたいと思ったら現場に行かなきゃいけなかった。毎晩、さまざまなジャンルのパーティをやっていて、スカ、ロックステディから、ヒップホップ、テクノまで、それぞれのパーティに隙あらば足を運んで、毎晩、またおもしろい音楽に出会ってしまったーって感じでしたよ。そこに行かなきゃ出会えなかったから。いろんな音楽が聴きたかったから、いろんなパーティーに足を運びましたね。未だに同年代でDJやってる友人は、だいたい当時のクラブでうごめいていた人ばかりですね(笑)。
- 私は29歳なんですけど、あんなにいた同年代のDJ友達がじょじょに引退していきます(笑)  

 それは残念ですね。僕らの世代は、最初が衝撃的だったと思うんですよ、今まで無かったから。こんなおもしろい音楽がいっぱいあるんだっての知って、知るとさらにもっとおもしろくなるというか。 あとネットワークが今と違うんですよね。人、パーソナルな感じというか。携帯もなかったかし(笑)。家電に電話かけて遊びに行かない?って誘って(笑)。海外のレーベルとのやり取りも、全部FAXですからね。すごい手間はかかるけど、密度が濃かった気がするな。音楽との出会いの密度が。だからみんな未だにアナログ好きだし(笑)。でも、当時の僕らにとってはそれが当たり前だっただけで、今の子はデータで出会っていても密度濃く出会っているかもしれない。意外と変わらないかもしれないと僕は思うんですが。
 
- そうですよね。その時代の当たり前のことを同じベクトルに乗せるのはちょっと違うかなと思います。   

 ただ、アナログとデータって身体能力というか、身体に働きかける何かがちょっと違うんで、それは、おもしろいですよね。素材的になってくるというか、発想が変わってくるというか。今回の作品もアナログでやってたら、全然違うものになっていたと思うし、まだうまく言葉にできないんですけど。どっちが良い悪いじゃなくて、どっちもおもしろい。
- テクノに出会われたとのことですが、どの辺のテクノですか?  

 完全にデトロイトなんですよ。80年代の終わり頃に、デリック・メイがやってるTransmatがレコード屋のハウスコーナーの片隅に並んでいたんです。アメコミ風の変な絵が描いてあってフューチャリスティックだけどレトロ感もある。書体もなんだかデジタル時計風の文字だったり、不思議なのがきたなっと思ったんですよ。『Nude Photo』を最初に聴いたんですけど、あのベッベベベってフレーズが入ってきて「これでどうやって踊るんだ」って、その画が想像できないからすごい惹きつけられて。それまでは、レゲエとかヒップホップとか聞いたんで、アフリカ・バンバータが早くなったと思えばいいのかと解釈してて、でもこれでみんがが踊るってどういうことなんだろうって(笑)。
 
 あと彼らは、アルヴィン・トフラーの『第三の波』をみんなで読んでるみたいな噂があって。日本でもビジネス書として流行った本なんですが、そういう微妙なインテリジェンスをちらつかせる黒人がこういうのを作ってるってのもおもしろかったんですけど、つまり実態が分からなかったんですよ。それも魅力ですよね。ケン・イシイ君とはその頃に出会ったんですよ。お互い学生で。買ってる人が少なかったから必然的だったと思うんですけど、それでレコードの何番持ってる?何番入荷した?みたいなことをやってましたね。  だから、最初、デリック・メイのプレイを来日公演で見た時、衝撃的でした。こうやってかけるのかーとか。一生懸命探してたけど、聴いたこと無い曲ばっかりで、持ってないデトロイトのレコードいっぱいあるぞって。 
 
- それは、どこだったんですか?  
 
 汐留にある、東京パーンだったと思います。でっかいイベント施設があったんですよ。あれがデリックの初来日公演だったと思うんですよね。彼が出てきて、最初クラシック?アンビエント?みたいなのをかけたんですよ。それからドーンってテクノをかけて。うわ、こうやってかけるんだ、と。

  - その頃は、デリックは既に有名だったんですか? 

 まだ、それほどじゃなかったです。当時のデリックを聴いてる人たちは、けっこうマニアックだった。大々的なリバイバルのちょっと前、92年ぐらいだったと思います。
 
- じゃあ、ハウスとの出会いというのは?  

 遊びにはいっていたんですけど、自分ではあまりかけてはなかったです。ワンオフのパーティによく遊びに行ってたんですが、どちらかというとテクノよりのハウスが好きでしたね。デトロイト系以外だと、NUグルーヴとか、アシッドハウスとか、あとはシカゴのトラックもののレコードで気に入ったのはもちろんチェックしてましたが。箱では、GOLDとか、DEEPですかね。あと、MIXとか。後にご一緒することになる、高橋透さんがかけてるのを見てかっこいいなと思ってたけど、ボーカルものとか、ソウルフルなものは、遊びに行くのは大好きなんですけど、まだ、自分がかけるモチベーションじゃなかったんですよね。自分がかけても説得力が無いというか、もっと黒い人がかけるべきものと思っていて(笑)。長い間、僕はテクノとダブをメインにかけていたので、その要素があるインスト系のトラックものは抵抗無くかけてましたが。90年代の半ばですかね、ボーカルもののハウスとか、ディスコに対峙する心構えができたのは。きっかけは、イジャット・ボーイズのファーストシングルです。ディスコとハウスとダブの要素が入っていて、聴きようによってはサイケロックっぽくも聴ける。そこからなんですよね、自分のかけるものとして本格的にハウスミュージックにはまっていくのって。
- DJとしてMoodmanさんの琴線に触れる音楽というのは? 

 ベースラインと浮遊感ですかね。ベースの安定感だったりとか。その安定があるから作れる空間の感じとか。言語的なメッセージというよりは、体感がメッセージというか。そういう意味で、自分がかけてて、身体感覚的にも嘘がないものをチョイスしているつもりです。 
 
- では、極端な質問になってしまうのですが、クラブミュージックの多くが輸入音楽ですよね?そうなってくると僕たち日本人は、何もかけられなくなるのでは?と質問したくなってしますのですが。 

 世界各地のシーンを見ていても、ドメスティックなシーンってたいていその葛藤から生まれている側面があると思います。話が長くなるのでざっくりといいますと(笑)、2000年前後に一気に、世界各都市から御当地のハウスミュージックが届くようになったんです。クラブミュージックがニューヨークとか、ロンドンとか、主要都市発信のものだけではなくなったというか。その土地なりの融合が生まれる下地がその時期に一気に整った感じがあった。例えば、ディスコを各都市のシーンの解釈で再構築したエディットものが頻発するようになり、自分にとってはいい融合のきっかけとなったんです。オーセンティックなディスコより、それをエディットしたりリメイクしたりした、ディスコダブのシーンは自分の身体感覚に近く感じたんです。これは、自分の身体感覚に近い、自分の音楽体験にも近い、と感じてかけれるようになった。ちょうどその頃に「Godfather」というパーティーを、宇川くんのオーガナイズではじめるんですけど、レジデントを引き受けてくれた透さんはオリジナルのディスコをかけるんですけど、僕はそれを再解釈した新しい音をかけていたんです。その混ざり具合がおもしろいパーティーでしたよ。  
 
- DJの個性としては、Moodmanさんと高橋透さんって全く違うんですね。  

 そうですね、全く違いますね。だから長くやれてると思うんですよ。透さんは、大先輩ですし尊敬しているのでおこがましいですが、お互い未だに刺激し合っていると思います。透さんも、そんなセッションがおもしろくて一緒にやってくれたんだと思うんですけどね。
 
- 高橋透さんから学んだことはなんですか?  
 
 いっぱいあって一言ではいえないのですが、出音の感じとか。低音の安定感は、僕なりに真似たというかパクらせてもらいました。あとは、ディスコのアーカイブは全面的に教わりました。それも現場で体感的に。
 
- DJってバンドではないので音の調節があまりできないのでは?と思うのですが。  
 
 いや、音の調整は、ダンスミュージックの大切なキーです。手元のDJミキサーもそうだし、PA卓のミキサーも触るし。空間の作り方というか、ハウスとかテクノって、こういう音が低音にあって、こういう音が高音にあると場が作れるという基本的なことを、透さんからは体感的に盗んでました。 
 
- 音に関してですが、スピーカーの位置で曲を選んだりもするんですか?   
 
 位置というよりも、スピーカーの特性は気にします。たぶん、みなさん、やっていることだと思います。スピーカーの位置も変えれるものは変えるし。あともっと細かい対応が必要だと思ったときは、僕は手元にAlpha Recording Systemの5バンドを置きます。
- Moodmanさんは大箱から小箱からフェスまで出演されているじゃないですか。それぞれのシチュエーションで大切にしていることは何でしょうか?  

 音空間を作ることに重きをおいてますね。いっぱいDJが出るときも、例えばバーンとやって終わるんじゃなくて、長く人がいれるように、楽しめるように。つねに足し算、引き算してますね。 
 
- ブースから見ていて、どういう光景を作れた、見れた時がDJ冥利につきますか?  
 
 明け方4時くらいのマジックがあるんですよね。もう語ることもなくなり、みんなが音に没頭してる時間。なんとなくスピーカーの鳴りも安定してきてたりしてて。その時の、フロアにいる黙々と音にはまってるあの感じが大好きで。それは、僕がかけてなくてもいいんです、誰がかけてても良くて。そのマジックのためにやってると言っても過言じゃないです(笑)。その時に聴いた音楽って、忘れないものが多いですね。この曲って、こんな強烈なギターだったっけ、くるな~みたいな(笑)。ピークタイムもいいですけど、それをいくつか抜けた後の明け方の楽しさを若い世代にも知ってほしいですね。
- 私は、外でのシチュエーションなるのですが、メタモの明け方にJoe Claussellが『天使にラブソングを2』の「Oh Happy Day」をかけて「Ain't no mountain high enough」に繋いだ時の、あの場の幸福感は今でも忘れれません。   

 いいDJって今まで聞いてた曲を、まったく違う聞かせ方をしてくれるんですよ。それは、ミックスでもそうなんですけど、いい曲はいい曲でもちろんあるんだけど、こんなに良かったっけって発見させてくれるDJはほんとにいいDJですよね。そういう風になりたいなっていつも思ってます。 
 
- 今、若い子ってキーワードが出たんで伺いますが、若い子のパーティーへ出演はされるんですか?  

 出てますよ、すごい楽しいですね。変わらない部分もあるし、変わってる部分もあるし。自分としてはそんなに違和感ないですが、僕が20歳くらいの時に40半ばのオヤジが遊びにきたら、怖かったし緊張して引いてたから。なんだが悪いかな~って思いつつ、端っこでひっそりと佇んでみたり(笑)。でも呼んでくれてすごい嬉しいです。
 
- 若い子にアドバイスを与えるとしたら? 
 
 今、音楽が聴けるチャンスがすごい増えてるから、もう、片っ端から聴くっていうのが、いいかもしれませんね。こんなに聴ける状況って今までなかったから。片っ端から聴いて、自分はこうだ!って簡単に決めないで、どんどん体験するってことをしたほうがいいかなって思いますね。 音楽もスタイルもすごく細かく分かれてるから、自分のスタイルはこうだ!って決めがちなんですけど、そういうことを忘れる日も1ヶ月に1回くらい作ってもいいかもしれませんね。全然違うところに身を置いてみる、体験してみるってことをする。今ほどこんなに音楽を楽しめるって状況ないですからね。海外からDJもバンドいっぱい来てるし。こんな状況ありえなかったから。あと、テクニック、スキルうんぬんに関しては、みんな上手いから何も言うことないです。僕が言うことじゃないけど(笑)。 唯一、歳をとってるっていう立場でいうと、プラスになっているのはアーカイブ感だったり体験だったりすんで。その数を増やせばね。
 
- Moodmanさんは、今も仕事はされているのですか?  

 してますよ。今日もしてきました。
-DJだけで生活できそうだと思うのですか?  
 
 よく聴かれるのですが、生活のために音楽をやる方がきっとつらいですよ。あと、小さい規模のパーティというか、採算度外視のイベントに出れなくなるじゃないですか。単純に現場が好きで、週末にでっかい音で音楽を楽しみたいっていうのでやっているので。あとレコードが好きだから、レコードいっぱい買っちゃうので。
- 一時期レーベルもやられてたじゃないですか?それは音楽で生活したいってことじゃないんですか?  
 
 あ、全然違います。自分たちが好きな音を扱っているレーベルが1つも無かったから作っただけです。いいレーベルがいっぱいできたので、やめました。むしろ、才能のある友人が食えるというか、その才能が広まる機会を作りたいという思いでやってました。
 
- 最後に、『SF』を発売し終えて、ご自身にとってどんな意味合いを持った作品となりましたか?  

 まだ、分からないです(笑)。微妙なことをやったので、どう伝わるか。ミックスCDは、その時代時代の空気を真空パックする機能に長けているフォーマットだと思っていて、映画というよりは、ドキュメンタリーとして機能するといいなぁとつねに思ってきました。今回の作品も、今の空気を自分なりにうまく切りとれていたらよいのですが。で、スタッフに感謝しつつ、気分的には、もう、次のことを考えています(笑)。

- Information -

アーティスト:MOODMAN
タイトル:Crustal Movement Volume 03 . SF
レーベル:tearbridge
フォーマット:ミックスCD
価格:2,940円(税込)
発売日:03月27日

●トラックリスト
1. John Beltran "Ten Days Of Blue" (Peacefrog)
2. Terrace "No More Video" (Djax-Up-Beats)
3. Soy Mustafa "Bipolars Revenge - Kirk Degiorgio Remix" (CinematicRecordings)
4. Jonny Miller "Rise - Phuture Lounge Original" (Jus’Listen Recordings)
5. Clyde “Roll Of The Beast - Tim Scott's Roll Of The Beast Remix Instrumental"(M8MC)
6. Atjazz "Khora" (Atjazz Records)
7. Cobblestone Jazz "Sun Child" (!K7)
8. Lewis B "Rhodesalicious" (Smokin' Sessions)
9. Joe "Rut" (Hessle Audio)
10. Toroy Gunner "Headlights" (The Crescent)
11. Douglas Pagan “Birther - Altered Natives Remix” (Voltage Music)
12. Peverelist "Better Ways Of Living" (Punch Drunk Records)
13. Mount Kimbie "Carbonated" (Hotflush Recordings)
14. Baobinga & Guido "Bumba" (Build Recordings)
15. Incyde "Telophase" (Steadfast)
16. Femme En Fourrure "Bronco - Teeth Remix" (Top Billin Music)
17. eLan “Bleep Bloop Brrrrmmp - Lazer Sword Remix” (Monkeytown Records)
18. Incyde "Traverse" (Steadfast)
19. Bakongo "Amhara" (BRAiNMATH)
20. Lewis B "Snippertons" (Smorkin' Sessions)
21. Arkist "Fill Your Coffee" (Apple Pips)
22. Ramadanman "Humber" (Apple Pips)
23. HxdB “2 Cap” (Car Clash Set)
24. Rockwell "Childhood Memories ft Kito & Sam Frank (Teeth Remix)" (Shogun Audio)
25. Jon Hopkins "Vessel - Four Tet Remix" Double Six Recordings
26. Prins Thomas Orkester "Surkal" (Full Pupp)
27. Hypno "Kancourde" (Ramp Recordings)
28. Caribou "People Eating Fruit" (The Leaf Label)
29. Dntel "Bright Night - Robags Kloff Motture Mix" (Pampa Records)
30. TheBigChrunchTheary "Distortion (DJ Koze Remix)" (Versatile Records)
31. Josip Klobucar "The Tea Bag" (4 lux Recordings)

■詳細
http://www.clubberia.com/ja/music/releases/4249-Crustal-Movement-Volume-03-SF-mixed-by-MOODMAN/
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