INTERVIEWS

Thundercat

- 前作は『The Golden Age of Apocalypse』で、今回は『Apocalypse』というタイトルです。混同されそうですが、なぜこのタイトルにしたのでしょうか?

今回『Apocalypse』というタイトルにしたのは、自分自身のパロディという意味からだよ。自分のことをジョークとして見る感じ。でも同時に、今は、俺にとってある1つの時代の終わりを意味するのさ。

  - 今回もFlying Lotusと制作していますが、前作を作ったときと何か違いや、変化、成長はありましたか?

ああ、俺の歌が前作よりもたくさん入っている。俺とLotusはいつも一緒に音楽をやっているから、俺たちの関係は特に変化はないけど、前作を作ったときとの違いでは俺のヴォーカルがより多く収録されているんだ。

  - 前作の時点では、まだソロアーティストとしてどういうアーティストであるかはっきりしていない、というような発言をしている記事を以前に読みました。ソロアーティストとしてのライブを経験し、新作を作るにあたって、改めて「Thundercat」というソロアーティストがどんなアーティストであるか考えましたか?

今でもあまりはっきりしていないと思う。自分の立場や、するべきことを今でも探っているし。今、自分がどういうことをやっているかというのは理解しているけど、それは常に変化し続けるものだから、今自分がどういうアーティストかというのはあまり深い意味を持って考えない。なぜなら、しばらくしたら、そのアーティスト像は変わるかもしれないからね。

  - 今回は前回と比べて、あなたのボーカルとメロディ、リリックを前面に押し出した、あなたのシンガーソングライターとしての面をフィーチャーした作品のような印象を受けましたが、そういうことは意識されましたか?

以前よりヴォーカルを多くしたりするのは意識した、というか努めてやったんだ。最初、俺自身は自分が歌うことに対して少し抵抗があった。だが、Lotusが「このアルバムではお前がもっと歌った方がいい」と言って勧めてくれたんだ。最初はそれにちょっと抵抗を感じていた。だって、俺はヴォーカリストとしてはまだ発展途上の身だし、リスナーは俺の歌声に対してどう思っているかよく分からないからね。
 
- あなたの歌声はとても美しいと思います。

ああ、それはありがとう!まあとにかく、それでLotusに言われたように歌うことにした。
- シンガーソングライターとしてのあなたをもっとも表現した曲はどの曲でしょう?

うーん、それは分からないなぁ。アルバム全部だよ。その中で、俺をもっとも表現している特定の曲ってのはない。アルバム全部に最高の自分を込めたつもりだよ。
- 今回の新作は、全体的に70年代~80年代のソウル、ファンク、ディスコミュージックや、AOR、ジャズフュージョン色が強く感じられ、サウンド的にも前作とは一線を画します。Mizell Brothersがプロデュースしていた時のDonald Byrdであったり、最近ではMiguelの『Kaleidoscope Dream』などにも共通するものを感じましたが、いかがでしょうか?

Miguelの『Kaleidoscope Dream』がMizell Brothersみたいに聴こえるって?

  - あなたの音楽がMiguelやMizell Brothersの音楽と共通性を持っているという意見に対してどう思いますか?

Mizell BrothersとMiguelがどう関係あるんだ?

  - あなたの音楽とMiguelの音楽とMizell Brothersの音楽に共通するものはあると思いますか?

正直な意見を言おう。俺とMiguelはとても仲の良い友達さ。それは共通点と言える。Miguelは、彼の人生のどこかの時点で、Donald Byrdの音楽を聴いたことがあると思うし、俺もDonald Byrdの音楽はよく知ってる。俺はDonald Byrdの大ファンでDonald Byrdの音楽が大好きだ。だが、俺の音楽やMiguelの音楽がDonald Byrdの音楽のように聴こえるか?と聞かれたら答えはノーだね。
- 「Lotus and The Jondy」には、Adrian Youngeが参加していますよね。Youngeのスタジオで録音されたそうですが、どういう経緯でそうなったのでしょう? 彼とのコラボレーションは初めてですよね?

そうさ。Adrianはこの曲でLotusと俺とコラボしたのさ。彼と作業するのはおもしろかったよ。彼はとても仕事が細かいんだ。最初はサウンドを作っていくのが大変だった。テープを使っていて、みんな楽器をすごくハードにプレイするから、音がパワフル過ぎて大変だった。ドラムセットの音をちゃんと調整して録音するのに苦労したよ。俺のベースは18ボルトのプリアンプが付いているから、他の機材をオーバードライブしてしまったんだ。だからちょうど良いサウンドを探し当てるまでに1時間半もかかった。でもそれが上手くいった時は、今までにない、本当に美しい瞬間だった。最初、レコーディングをし始めたときは、「俺たち、一体なにやってんだ?」って感じたけど(笑)。最終的にはとても美しい作品に仕上がった。曲を聴くとAdrian Youngeがレコーディング中やレコーディング後に精確に音をミックスしているのが聴きとれると思う。彼は本当に才能のあるエンジニアだ。彼と一緒に制作ができて楽しかったね。
 
- 「Evangelion」という曲がありますが、ひょっとして日本のアニメの『新世紀エヴァンゲリオン』(Neon Genesis Evangelion)を意識されましたか? それとも黙示録(Apocalypse)というタイトルから考えられたのですか?(ギリシャ語で福音を意味するevangelion)

確かに、日本のアニメも俺のアルバムのタイトルも「Evangelion」とは関連している。タイトルは実際、日本のアニメから取った。もう知っているかもしれないが、俺はアニメが大好きだ。『新世紀エヴァンゲリオン』のシリーズは最後まで全部見たけど、エンディングが壮大だった。シンジや、シンジを取り巻く女性たち…キャラクターの使命や運命。そういうのを見ていると、人生の現実について学ばされている感じがした。死はあらゆる生に付随する、ということ。Apocalypse(黙示録)はEvangelion(福音)の終わりを意味する。曲のタイトルが「Evangelion」で、それがアルバム『Apocalypse』に入っているのは壮大な意味を持つのさ。
- Austin Peraltas の死は私もショックでした。今回の『Apocalypse』の最後には「Message for Austin」という曲を、「Praise The Lord」と「Enter The Void」という曲とのメドレーの冒頭として収録していますね。坂本龍一がバルセロナ・オリンピックの開会式で演奏したオーケストラ曲「El Mar Mediterrani」をサンプリングしていますが、どのように制作されたのでしょうか?

前回の来日は俺にとって非常に悲しい出来事だった。Austinの死の直後に日本へ行ったんだ。日本へ1-2週間発つこと…それが俺の、彼の死に対する対応だった。変に思われるかもしれないが、それが俺の彼の死に対するリアクションだったんだ。とにかくその場を去りたかった。ただし、その結果としてとても素晴らしい出来事が起こった。Ron Carterとの出会いだ。彼とは本当に偶然、大阪で遭遇した。同じホテルに偶然滞在していたんだ。Ron Carterは俺のことを全く知らなかった。出会うまでは、何の関係もなかったからね。俺は彼に、自分がAustinと一緒にプレイしていたことを伝えた。すると彼は俺を抱きしめてくれたんだ。俺は少し泣いたよ。Austinの死を受け止めるのはとても辛い事だったし、俺はそれができなかったからLAを発ったんだ。ロンは俺にクールなことをいくつか教えてくれた。「あまり、落ち込むな。俺だって若い時、そういう事態になってしまった経験がある。仲の良かった友人やミュージシャンを亡くしてしまったことがある。そういう出来事は避けようのない事なんだ」と。彼の言葉は俺の中に沁みわたり、俺の気分を一時的に上げてくれた。彼とのは出会いは、俺が歌っている「We'll Die (俺たちは死ぬ)」というメッセージの証なんだ。彼は、俺にこう説明してくれた。「死ってのはいつか起こることなんだ」と。俺は彼のそういう態度を尊敬している。

この「El Mar Mediterrani」のサンプルは坂本龍一の曲だが、テイラー・グレインがサンプルしたことがある曲なんだ。テイラーは「Daylight」も一緒に制作してくれた奴だ。坂本龍一の曲は、俺が聴いたことのあるメロディで最も美しいものだと思った。あんなに美しいメロディは最近聴いたことがなかった。曲をフルバージョンで聴いて、心から感動したよ。曲の歌詞は、メロディを聴いた後の二次的なものだったが、自然に発生したのさ。メロディを聴いて、これはAustinに捧げるべき曲だと感じた。その流れに乗って制作を進めたらこういう仕上がりになったんだ。最初、この曲を歌うのは難しかった。プレイしていて、そのプレイに自分がついていくのが大変だった。ライブで演奏していても、感情的になってしまう時が今でもある。それがこの曲の背景だよ。曲を使わせてくれた坂本龍一にはとても感謝している。この曲のおかげで俺はAustinにメッセージを伝えることができたのさ。

  - 最後の「Enter The Void」というのは、Gaspar Noe監督が東京を舞台に生と死を描いた映画『Enter The Void』は関係ありますか?

もちろんだよ。俺は『Enter The Void』の映画を何度か見る機会があったんだが、映画を見るたびに強く共感した。映画を見て、『新世紀エヴァンゲリオン』を見た時に感じた同じエネルギーを感じていた。Austinが亡くなってから、何者かにAustinを奪われた気持ちになっていた。映画の主人公も同じ気持ちだったはずだ。彼は、この世ともあの世とも区別のつかない場所を行ったり来たりしている。映画のストーリーに強く共感した。映画の主人公が東京にいたというのも皮肉だったな。

  - Flying Lotusはジャズアルバムを作っているそうで、あなたも参加してらっしゃるそうですね。どのような作品になっているのでしょうか?

良い感じでできているよ。俺たちは、コンセプトやアイデアがあって音楽を作る時もあるけど、「とにかくやってみようぜ」という感じで音楽を一緒に作るときもよくある。自由にプレイして、出てくるサウンドに耳を傾けて、その流れに乗っていくのさ…。
- Flying Lotusと共に、Herbie Hancockともスタジオに入ったんですよね。そのジャズアルバムのためなのでしょうか? そしてHerbie Hancockとのレコーディングはいかがでしたか?

そう、ジャズアルバムのためだよ。Herbie Hancockとのレコーディングはとても楽しかったね。Herbie Hancockと言ったら年上の人だし、どんな人か想像がつかなかった。彼が俺たちみたいなキッズをどう思っているのか分からないし、俺はハービーに親密な環境では一度も会ったことがなかったしね。でも実際会ってみたら彼も俺たちボーイズの1人で、とてもクールな奴だった。午前1:30に起きてきて、Lotusの家にやってくる。そこでくだらない話をみんなする。Herbie Hancockと一緒に過ごした時間でディープだったのは、俺がJ Dillaの作品集をHerbie Hancockに聴かせた時だ。Herbie HancockにJ Dillaの音楽を紹介して、J Dillaの音楽が、当時Jが想像していた以上に、今では世界中に広まっていること、なんかを話した。Herbie HancockにSlum Villageの「Get Dis money」を聴かせたんだ。そしたら「これ、俺だよ!」って言ってた(笑)。ハービーは眼を大きくして口をあんぐりあけて「へぇーそういうことか」って言ってた。彼に、俺たちがどんな音楽を聴いてきたかを紹介するのはとてもクールだったね

  - あなたは、R&B、ファンク、ヒップホップ、ジャズ、クラブ・ミュージック、ロック……とさまざまなジャンルでプレイしていますし、自然な形で幅の広さを持っています。音楽を聴くときもジャンルで分けることはないと思いますが、では、ジャンルに関係なく、あなたにとっていい音楽、響く音楽の定義というのはどういうものでしょうか?

いい音楽は、自分が好きな音楽だ。俺に語りかけてくる音楽。良いメロディや良いハーモニー。俺が好きなのは、感情を高めてくれる音楽。音楽がどのように作用するのかというのは、本当に何通りもの表現があると思うけど、俺は存在しうる方法、全てのファンなんだ。俺が言えることはそれだけだね。俺の中でしっくりきて、俺が気に入るものだったら、その他に要求することは何もないのさ。



アメリカの新しいドキュメンタリー番組【Off Main Street】にて、Thundercat特集が決定!現在トレーラー映像公開中! - Release Information -

アーティスト:Thundercat
タイトル:Apocalypse
レーベル:Brainfeeder / Beat Records
フォーマット:CD

■詳細
http://www.clubberia.com/ja/music/releases/4306
  - Tour Information -

東京
2013/6/28(FRI) 代官山 UNIT
OPEN/START 23:00
前売¥4,000 当日¥4,500
※20歳未満入場不可。入場時にIDチェック有り。必ず写真付き身分証をご持参ください。You must be 20 and over with photo ID.

大阪
2013/6/29 (SAT) CLUB KARMA
OPEN/START 23:00
前売¥3,000 (w/1d) 当日¥3,500 (w/1d)
GUESTS >> VJ halwo sakamoto (51h) and more

金沢
2013/6/30(SUN) 金沢 MANIER
OPEN/START 19:00 前売¥3,500(ND) 当日¥4,000(ND)
GUEST DJ >> YOSHIMITSU, PPTV, FRANKKK, MIKI, DANNY HAZE

■イベント詳細はこちら
http://www.beatink.com/Events/Brainfeeder3/