INTERVIEWS

Prins Thomas

 
- 意図的にアルバムをまとめるというよりは、そのチャレンジの集大成がアルバムというフォーマットでリリースされるという事なんだ。-
 
 
- 以前、作品に名前をつけるのが苦手と言ってましたが、各トラックのタイトルはどうしてますか?


トラックの名前を付けるのは、いつも作品が出来上がってそのトラックを発表しようと思う段階になってから最後に決める事が多いんだ。タイトルはその作品の関連性や頭の中にあるイメージから名前を付けるんだけど、そのタイミングは締め切りが決まっていてそれまでに名付けるという感じではなくて、トラックが完成して名前を決めてから何時リリースしようかな、と考えるんだ。他の国の人達から見ればちょっとルーズな感じがするかもしれないけどノルウェー人々は常にこんな感じで物事を決めているというか、、
前のアルバムの時には10歳の僕の息子がいくつかのタイトルを決めてくれたよ(前作のアルバムIIはプリンスの息子がジャケットのイラストも描いている)。でも今回のアルバムのトラック名は全部自分で考えたけどね、、、ははは。

  - 私は、今作を聴いた時にドラム(特にキックなのでしょうか?)の音を耳で追ってました。アルバム1枚を通して、ドラムで惑わされているようでした。理由は、1曲目のHans Majestetがセカンドアルバムを思い出させるトラックであり、2曲目のArabisk Natt(Dub)で徐々にドラムのプレッシャーが強くなってくるようで、3曲目でビートレスになるけど最後だけにキックが入り、それで4曲目2000 Lysar fra Morellveienでも同じような展開で、5曲目Enmannsrockではキックの単音から入ったりと。このアルバムでは、ご自身の中でどういったものをまとめた作品なのでしょうか?

 僕はいつもアルバムを作る時に何か特定のコンセプトや狙いを定めたりはしないんだ。僕にとってアルバムの制作を開始する時に1番大事な事は、新しいチャレンジに対する喜びで、そのクリエイティヴなプロセスがとても重要で何か意図的にアルバムをまとめるというよりは、そのチャレンジの集大成がアルバムというフォーマットでリリースされるという事なんだ。もし君が指摘している様にそれぞれのドラムが何かストーリーや相互関係を持っている様な印象を受けたのであれば、それはこのアルバムが短期間に集中して制作した事を物語っているんだと思うよ。結果的にそれぞれの作品が効果的に配置されていたのなら嬉しいよ。

  - あなたのアルバムは、ボーカルが全く入っていないかと思いますが、それはなぜでしょうか?EPもほとんど入っていないように思います。

もしかしたら今後、本格的なヴォーカル作品を作りたくなる時がくるのかもしれないけど、今はヴォーカルトラックよりも空間的なインストゥルメンタルの方が自分のクリエイテイティティーを満たしてくれるんだ。ファーストアルバムや12”ではコーラスを使った作品もあるんだけど、もし僕が作ったヴォーカルトラックに興味を持ってくれるなら2008年にフランスのVERSATILEからリリースされたシャトー・フライトのプロジェクトQuixoteの「Before I Started To Dance」のリミックスが気に入ってる作品なんでチェックしてみてね。

 

  -毎回サイケデリックでありながら親しみやすいユーモラスな曲が多いですが、ご自身ではご自分の音楽をどのようにとらえていますか?

僕は自分の音楽をサイケデリックにしようと意図した事は無いんだけど、自分の好みのメロディーや反復的なリヴァーヴやエコー、フランジャーの効果がリスナーにとって僕の作品にサイケデリックな印象を受けるのかもしれないね。ピカソやフランク・ザッパやカール・ハイアセンなんかにも感じるのだけど、僕は全てのアートにおいて驚きやユーモアの要素はとても大事だと思っているんだ。それは面白い歌詞を書いたり突拍子もない音を出す必要は無いけれど、もしあなたの音楽を目立たせたい時には驚きやユーモアを入れる事はとても効果的だと思うよ。新しいトラックの為にとてもリズミカルなアイデアを思いついたり、太った男が混雑している交差点を苦労して横切っている様なユニークなベースラインを思いついた時には音楽を作りながら笑ってしまうんだよ。

  - あなたの琴線に触れる音楽というのは?

これは難しい質問だね、なぜならいつも聴いている音楽はその時の気分やムードによって変化しているものだからね。ある賢い男がこう言ってたよ「音楽には2種類の音楽しかない、良い音楽と悪い音楽だけだ」とね。でも僕がいつも頻繁に繰り返し聴いてしまう音楽は確かにあって、それは、Arthur Russell、Pat Metheny、細野晴臣、Steely Dan、そしてBeach Boysだね。他にはGram Parsons、Bill Evans、Kris Kristofferson、Lee "Scratch" Perry、Voices From The Lake、そしてMoritz、Basic Channelのバックカタログも家のステレオではよくプレイしているね。

   
- 決して他のプロデューサーが作った良い音楽をコピーする事では無いし、便利なコンピューターや機材を大量に揃える事ではなく、空想する事、アイデアを練るという事がとても大事な事だと思うよ。 -

 
 
- 今度< FULL PUPP >の10周年を記念したミックスCDをリリースされるそうですね。10年< FULL PUPP >でノルウェーのアーティストの作品をリリースされ続けてきましたが、当初と今で変わったことはありますか?

 
 この10年は大きな変化があったよ。10年前はノルウェーのクラブシーンもとても盛り上がっていてDJ達に大きな注目が集まっていたんだ。僕も廻りのDJもたくさんクラブでプレイをしていたよ。その後ノルウェーのクラブシーンで大きく盛り上がっていたハウスミュージックはコマーシャルな盛り上がりが一段落してDJたちはただDJをするだけでなくトラックを制作する様になっていったんだ。

< FULL PUPP >は幸いにもノルウェー以外のDJやクラブシーンでもプレイされる様になって10年経っても新作をリリース出来る状況が続いているけれど、ノルウェーのローカルなクラブシーンで今何が起こっているかは正直あまり良く分からないんだ。

  - Lindstromとは最近曲を作ったりしていますか?

 彼との3枚目のアルバムを是非作りたいと思っているのだけれど、今はそれぞれがたくさんのプロジェクトを抱えていてそれを実現する為には時間が必要かもしれないね。数年前にそれに取りかかろうとしたんだけど、上手くタイミングを合わせる事が出来なかったんだ。
 彼とのアルバムを制作する為にはまず僕のスタジオのスケジュールを空けてそれに集中しないとならないからね。新しいアルバムにも挑戦したいんだけど、僕らは別のプロジェクトでELEPHANT9という本当に素晴らしいジャズロックバンドと一緒にレコーディングしたセッションがあって、この作品もまだ完成していないんだ。まずはこの作品を仕上げて、もしタイミングが合えば僕らの新しい作品にも取りかかっていきたいね。
 
- 今年もジャパンツアーを行いますが、日本の印象はいかがですか?

 2004年(だったと思う)に最初に日本に来てからずっと、本当に日本は大好きだよ。その頃と最近では日本のクラブシーンも変化してきているけど常に良い雰囲気を持っていると思う。日本のクラブシーンが持っている情熱やプロフェッショナリズムはどこにも負けない素晴らしいものだよ。素晴らしいサウンドシステムとダンスミュージックの歴史に対する日本人の深い理解は世界中のどんな場所よりも優れた物だと思うよ。

  - 今回「RAINBOW DISCO CLUB 2014」では、MOODYMANN,  MAGIC MOUNTAIN HIGH, HESSLE AUDIOと魅力的なラインナップとなっていますね。また、日本人で興味あるDJやアーティストはいますか?

このラインナップはとても興味深いよ。それぞれがお互いに良い作用を起こすんじゃないかな?特にシークレットゲストが誰なのかは僕だけでなくみんなとても興味深いよね(笑)。 日本人アーティストは細野晴臣がとても好きなんだけど、もっとコンテンポラリーなサウンドだとGonnoや瀧見憲司、Kuniyuki、Cos/Mes,Boredomsは大好きだよ。

  - 今の時代で、音楽で世界に出ていくためにやるべきことのセオリーは何だと思いま
すか?


悲しい現実かもしれないけど、今だと10%の才能と残りは運とソーシャル・メデイア・スキルなのかもね(笑)。僕の場合は自分の作品を売り込む能力も無かったし、ソーシャル・メディア・スキルも無かったけど、20%の才能と80%の運があったのかもしれないね。10年前と今とでは音楽の聴かれ方もずいぶんと様変わりしているからね。

  - また、いい音楽を作るためには何が必要なのでしょうか?

 この質問は上の質問で言われた成功する為の音楽よりも、はるかに難しい質問だと思うよ。僕はいい音楽を作る為に誰かにアドバイスを出来る立場ではないと思うけど、常に自分が良い音楽を作れる事を念頭に自分の為にアドバイスする事なら出来るかもしれない。それは自分の理想の音楽を作る為のスキルを習得するにはとても時間がかかるけど、それを習得する為に自分で何をするべきか考える事はとても重要な事なんだ。それは決して他のプロデューサーが作った良い音楽をコピーする事では無いし、便利なコンピューターや機材を大量に揃える事ではなく、空想する事、アイデアを練るという事がとても大事な事だと思うよ。

  - これからあなた自身のビジョンや夢を教えてください。

残念ながら今の僕にはヴィジョンも夢も無いんだ。だって僕は大好きな音楽を作って暮らす夢の様な生活を今しているんだから(笑)。
 
  - Release Information -

アーティスト:Prins Thomas
タイトル:Ⅲ
レーベル:OCTAVE-LAB / FULL PUPP
発売日:4月23日
価格:2,149円(税込)

- Tour Information -

4/29(火/祝) 東京 Harumi Port Terminal @ Rainbow Disco Club 2014
5/3(土/祝) 江ノ島 @ OPPA-LA
5/4(日/祝) 広島 @ MUGEN5610

■More info:
AHB Production
PREV
CREAM
CREAM
NEXT
Ryota Nozaki
Ryota Nozaki