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CREAM

 
- 葛藤があったことには間違いないです。でも、僕の理想としているラッパーというのは、どんな曲を作っても自分の仕事をしっかりできるというか。Staxx T -
 
- 4月5日のclubasiaでのパーティーには、雨の中、たくさんの人が見に来られていましたがライブを終えてみていかがでしたか?

Minami: 初めて歌う曲がたくさんあったり、人が入るかなという不安もあったんです。

Staxx T: 自分たちのプレリリースなので本当に盛り上げないといけないという中、実はトラブルもあったりで。パーティーをするにはベストな条件ではなかったりして結構焦りましたね。でも普段イベントやっていても来ないような友達が遊びにきてくれたり、出演者の方々も協力してくれたので大成功でしたね。

Minami:ジョン君(TJO)があんなに盛り上げてくれて。あれはすごかった、めっちゃカッコ良かった!

Staxx T: ジョン君に出演してもらえてよかったね。ジョン君はいつもめちゃめちゃ盛り上げてくれるけど、特に今回はマイアミのUMFから帰って来たばかりというのも知ってたし、プレイ中にお客さん全員をしゃがませて一斉に飛び上がらせるパフォーマンスは圧巻でした。僕たちのパーティーはライブ目的で来る人も多いけど、やっぱりDJタイムもライブと同じくらい楽しんでもらうっていうのが「WHATEVER」の目標でもあるので。

  - どういった経緯で「WHATEVER」を始められたのでしょうか?

Staxx T:以前は"MICROCOSMOS"でレギュラーイベントをやっていたんですけど、場所を変えることになった時、やっぱり渋谷からは離れたくなかったんですよね。実際友達のことを考えた時にどこが1番遊びに来やすいかっていったらやっぱり渋谷だし。渋谷の中でも"HARLEM"とか"VUENOS"だとヒップホップ色が濃いかなあとか、"SOUND MUSEUM VISION"だとライブ環境というよりはDJのほうが生きるかなあとか、いろいろ考えましたね。
 当初、キャパシティ的に"clubasia"を埋められるのかなという不安もあったんですが、いわゆるクラブゾーンにあってライブがしっかりできる場所、ライブを中心にパーティーできるっていうことを考えて"clubasia"で始めました。

  - 先ほどMinamiさんが少しおっしゃってたのですが、パーティーのコンセプトは?

Staxx T:コンセプトは、僕たちの曲で「WHATEVER」っていう曲があるんですけど、「明日は野となれ山となれ」って感じで、仕事が7時から始まるなら6:55までWHATEVERで遊ぼうぜっていう。まぁ本当は5分前まで遊んでたら仕事になんてならないんですけど、それが僕たちのパーティーに対する姿勢?というか(笑)

 あと、僕たちのライブを見に来てくれる子たちっていうのは、普段あまりクラブに行かない子たちが多くて、そういう子たちがクラブって恐いよねってならずに安心して遊びに来れるような場所にもしたくて。実際クラブに行ったことなかったけど、CREAMのイベントで初めてクラブ行ったらすごくおもしろくてクラブにハマっちゃいました、みたいな子もたくさんいるんです。
 パーティーはとりあえずお酒をたくさん飲んで、朝まで踊るんだよということをクラブに来たことがないようなファンの子たちにも教えてあげられるような、パーティー精神を体現できるよな場所であった方がいいと思うし。そういうコンセプトですね。

  - 2人はクラブで育って来たんですよね?

CREAM: はい、完全にそうです。

  - クラブで遊び始めた頃はどんな音楽を聴かれていたんですか?

Minami:私がクラブで遊び始めた頃は、やっぱりヒップホップですね。2000年代の〈Murder inc.〉全盛期がちょっと過ぎたころかな。流れてた曲っていったらFat Joe の「Lean Back」とか。まあヒップホップですよね。EDMなんか全然流れてなかったし。

Staxx T: どっちかっていうと、当時はいわゆる「ギャル系・ギャル男系」の人がトランスとかパラパラとか聴いてて、それと対照的にヒップホップを聴いている人が多かったと思います。あとはミクスチャーバンドが流行っていてバンドっぽい人がいたりとか。僕はもう完全にヒップホップで、特にサウスのヒップホップが好きで。Lil Jonが流行りだしたくらいから、どんどんのめり込んでいきました。だってMinamiと出会った時はサウス以外の曲はやりたくなかった派でしたからね。それに、女の子がグループに入るのはイヤっていうくらい(笑)。
 でも、デビューに向けていろいろ改善していくっていう意味でも、女の子を入れた方が俺たち絶対マイルドになるからって、MinamiとCREAMを始めたんですけど。

  - サウス以外はやりたくないって思われるって、コアなマインドを持っていたんだと思いますが、メジャーデビューしましたし、今はポップな楽曲を作られていますよね?方向性を変える時に葛藤などはあったりしたのでしょうか?

Minami:私も知りたい。

Staxx T:葛藤があったことには間違いないです。でも、僕の理想としているラッパーというのは、どんな曲を作っても自分の仕事をしっかりできるというか。

例えば1番わかりやすい例でいうと、僕はLil Wayneだと思うんですよ。4つ打ちの曲がこようがパリス・ヒルトンからのオファーが来ようが、ギャングスタなヒップホップのトラックでオリジナルを作ろうが、アコースティックサウンドの上でオートチューンで歌おうが、ロックをやろうが、彼は彼の仕事をすると思うんですよね。それが本物のアーティストなんじゃないかなと思っていて。
 
 僕は昔から本当に頭が固かったから自分の好きな男臭いヒップホップばっかりをやっていたかったけど、現実をしっかり見た時にこれが果たして日本のチャートで1位を取れるのかと思って。アメリカなら文化として根付いているからいいけど、日本の場合はまたシーンが少し違うだろうと思ったんです。もちろん今や日本のHIP HOPシーンにもカリスマ的な人気を誇るラッパーの先輩がたくさん居ますけど、当時20歳そこそこの僕が「もし自分が、、、」と考えた時に、じゃあJAY-ZやNasをはじめとするヒップホップの「レジェンド」達みたいに音楽で稼ぐには、どういう道を取るべきか?といったらやっぱり音楽をより多くの人に売らないといけない。そう思って、売れるものを意識し出したというのもありますね。
 ミドルテンポのメロウなラブソングとか甘いラップみたいなモノも、もともと好きで作ってはいたので。デモを作る時に5曲中1曲はそういう曲が入っていたし、別に嫌いではありませんでした。僕がビートを作るとき、T'Z BEATZとしても、メッセージを伝えるためのメロウな曲も作ったりはしていたので。

 憧れてきたラッパーにはソロのラッパーが圧倒的に多かったので、ユニットを組むっていうところに抵抗があったんでしょうね。どうしても自分がグループでやっているイメージができなくて。だけどMinamiもそうだと思うんだけど、それを長年かけてだんだんお互いが心を開いてきたりして相手の1番いいところが分かってくるから、そのいいところを活かせば絶対にかっこ良くなるんですよね。だから葛藤しつつではありますけど、たぶん今はこの形が世の中に何かを発信する時にベストなのだろうなと思います。
 
 
- 前よりいいのができた!って言っても、いや前の方が良かったよって言われたらそれまでじゃないですか?結局は自分を信じるしかないんですよ。Staxx T -
 
- 結成される前から面識はありましたか?

Staxx T:それまでは違うグループを一緒にやっていました。3人メンバーでここにもう1人いて。その人は僕と大阪でゴリゴリのヒップホップを2人でやっていました。

Minami:私はインターナショナルスクール繋がりで知っていました。もう1人の彼が辞めて、これからどうするかという話になった時に、もちろん続けるでしょ、という意見が一致したので2人で活動を始めました。

Staxx T:なのでその別グループの時期が3年あって。そのときMinamiは高校卒業したてで
18だったね。

Minami:大学に行かずに音楽やるって決めたぐらいの時で(笑)。

  - 3人で活動されていた時はアーティストとして上手くいっていたんですか?

Minami:いや上手くいかないことばっかりでしたね。あたしがもう1人のメンバーとすごい仲がよかった時期があったり、Staxxが仲良かった時期はあったけど、私とStaxxは仲良くなる時期は無かったよね。

Staxx T:まあ1枚壁がある感じでしたね(笑)。聴く曲も、もともと違うし遊ぶ相手も全然違うし。仕事として初めて出会って一緒にこれからやっていきましょう、という感じだったんで基本的に何をしゃべっていいのかわからなかったんですよね。

 それから1人が辞めて、2人で活動しているところを想像できないって周りに言われていたし、クビにでもなるのかなと思っていたんですけど、事務所の社長が「2人で続けていくなら、頑張ってみなよ」ってすごく応援してくれて。

 頑張りなって言ってくれたんで、僕は坊主でダボダボのB-boyだったんですけど、1回見たら忘れられないような衝撃的なグループになろうぜっていうことで、髪型を変えてイメチェンしようってなったんです。

Minami:いろんな髪型いっぱい見たよね。Googleで検索してこれいいんじゃないかみたいな。

Staxx T:そうそう、ハイトップフェードがいいってなった時も、髪に帽子のツバが付いている人とかいて、これいいんちゃうみたいな(笑)。すげえ変な形の髪型ばっかりあったよね。

Minami:私も髪の毛真っ黒だったし、2人でどういう髪型がいいか相談し合ってね。でも。派手な髪色にハマって、どんどんクレイジーになってきてピンクとかブルーとか、しょっちゅう色んな髪色に変えてたんですけど、逆に印象が残りにくいのかなって思ってアルバムごとに変えることにしました。

Staxx T:1枚目の時は紫だったよね。紫色で2つお団子があるのがキャラと一緒で基本の髪型。

  - Staxxさんを最初見た時に元気が出るテレビのダンス甲子園とか通ってきた方なのかなと思ったんですが?

Staxx T:今でもよく、「ダンサーさんですか?」って聞かれるんですけど(笑)。僕は若い時から意外とダンスを踊る方にはあまり興味が無くて、見るのは楽しい。そして、自分がやるならラップとかDJの方が興味があったので。だからダンス甲子園の存在は知ってましたけど追いかけてたという訳ではないですね。

   
- このアルバムを聴いた時にああCREAMってこういう人間なんだっていうのが伝われば、それが僕たちそのものということだと思うので。Staxx T-
 
- ファーストアルバムが評価されたことで今作へのプレッシャーはありましたか?

Minami:めちゃめちゃありました。たぶん人からプレッシャーを受けるというよりは、自分の中でプレッシャーがあったと思います。やっぱり1曲書いたらその次の曲はもっといいモノにしようっていう意識になるから、2枚目へのプレッシャーはかなり感じていましたね。

Staxx T:自分でいいって思っていても人が聴いたらどうなのかというのは、あくまでも主観でしかないんですよね。前よりいいのができた!って言っても、いや前の方が良かったよって言われたらそれまでじゃないですか?結局は自分を信じるしかないんですよ。

 コンセプトの「#nofilter = 自分らしく生きる」にも繋がるんですけど、周りからは「KISSING (Flip Side)」みたいにみんなで歌える曲を求められます。でも、この新曲を1年間ずっとこすり続けたら1年後みんな歌えるようになるからっていうのをあまりわかってもらえないんですよ。過去の数字で判断されるので。やっぱり数字がないモノを提示して、これはあの曲みたいになるんですって言っても信じてはもらえない。でもそこを形にしていくのが僕たちなので。結局自分たちが本当にカッコいい!と自信の持てるモノじゃないと、1年歌い続けてもそういう楽曲にはならないですからね。
で、自分たちが人からあんな曲を作ってほしいというリクエストを1度飲み込んだ上で、自分たちがかっこいいと思えるサウンド、歌いたいと思う内容の曲を歌わないといけない。要は「自分らしい音楽を作るべきだ」というところに気付いて。それからは楽曲の制作の仕方も変わったし、Minamiはピアニストの縄田さんとのセッションにもたどり着いたしね。

Minami:そう、前はトラック先行で曲を書いてたんですよ。トラックがあった上でその上からメロディーを書くっていう流れだったんですけど、今になって気付いたことは、それが1番難しいやり方なんじゃないかなっていう。
 5年間それしかやってこなかったんですけど、スタッフの提案でピアニストと一緒にセッションしながら作ったらどう?って言われて。それで初めてやってみたらこれだ!と思って。曲ってこうやって書いて、後からトラックを合わていった方がメロディーも活きるし、より自由にメロディーラインが書けることに気づいたんです。前まではパートごとに分けて作っていたんですけど、今は1つのストーリーのようなメロディーラインを書けるようになったと思います。「Beautiful」や「Nobody」が、そのピアノのセッションで生まれた曲なんです。

Staxx T: Minamiはピアノを習ってたんですけど、8年間やってて右手しか弾けないんですよ(笑)それがMinamiっぽい。繊細なコードを弾きながら器用に歌う感じではないんですよね性格的に。もう右手ドーン!左手誰かやりなさいよ、みたいな(笑)。そういう感じがすごい出てる。

Minami:確かに(笑)。

Staxx T:でもその左手に上手い人が付いた時に右手の才能が発揮されるんじゃないかな。

Minami:なるほどね!右手ってメロディーラインだもんね。そう、左はコードをおさえながら右手でメロディーを弾くからね。縄田さんはピアノが上手すぎて何でも弾けちゃうし、これやって!って言ったらなんでもやってくれるから本当に左手になってくれてる。
- アルバムを作る時って、すでにリリースされているシングルがあるわけじゃないですか。それ以外の曲っていうのは、そのシングルの曲ありきで、アルバム全体がまとまるように作っていくんですか?

Staxx T:今回は、そうではなかったですね。曲が足りなくてずっと追いかけられている感じでした。コンセプトを最初にざっくりと決めて曲を作っていきましたね。ここもウソなし = #nofilter で言うと、今回はあまり計画を立てて進むことができなかったところがありました。目の前のことばっかりを考えてしまっていて。1枚目を出してたくさんライブをしながら、体力的、精神的に結構追いつめられていていっぱいいっぱいの部分があって。それで制作もなかなかいいメロディーが出てこないとか、いいトラックができないとか、どんなことを歌ったらいいのかわからないみたいなそういう時期だったんですよね。
 さらに、曲数も足りていなくて、次ぎ出すシングルどんなのにしようか、その次のシングルはどうしようかっていうことばかり考えていて、本当にアルバムの制作としてがっつり取り掛かれたのはここ半年ぐらい。去年の夏ぐらいからライブも少し減って制作にかける時間ができたころからです。

Minami:やっぱり何事も初めてだと先が見えないから、何が次にくるんだろう?あ、プロモーションか、みたいな。その次はクラブツアーなのか、みたいな。全然わかんないから気持ちに余裕がなかったんですよ。でも今回はそれで学んで、この後はこういうことがあるんだってわかるから、3枚目はきっとスムースにいくだろうと思います。レコード会社や事務所が契約してくれるならね(笑)。
 
- でもライブを見ていても、作品を聴いても売れそうだなと思いましたよ。

CREAM: ありがとうございます。

Staxx T:自分たちでも今回勉強になった部分っていうのはたくさんあって。コンセプトが中心となって全曲できるんで。あの曲作ったからこうしようっていうよりは、コンセプトからぶれないモノを作るっていう。

  - ちなみに今回のコンセプトとは?

Staxx T:さきほども少し触れましたが、タイトルにあるとおり『#nofilter』、「フィルターをかけないで自分らしく生きる」っていうことです。 例えば発言であっても上辺じゃなくて本音を話すとか、生き方自体、自分に嘘をつかずに本当にやりたいことをやって、好きな事をするっていうテーマがあるんです。
 今回のアルバムでは言いたいことも言ってるし、きわどい話もしてます。僕の身の回りにいるチャラ男(僕を含め、、、)と、そのチャラ男に振り回されてる女の子たちに焦点を当て作った曲もありますし(笑)。
 シチュエーションは限定しているんですけど、逆にそのシチュエーションの中にいる子たちって、自分たちに向けられた曲を聞いた事なんてないと思うし、逆にそういう音楽があってもいいんじゃないかと思って。
 あとは逆に「Beautiful」みたいに世の中の汚い部分にピンポイントでフォーカスした曲もあったり、その反面すごく広い「Nobody」みたいな曲もあったりして、振り幅があっていいかなと思っています。「Nobody」に出てくる、僕たちがクラブで経験してきた週末の恋の話もありのままで嘘はないし。逆にとがった話とかクラブの話ばっかしてるなーと思ったら「Just Like You」みたいに家で2人でザキヤマ見てたのにな、みたいなちょっとリアルなあるあるもあって、まさに『#nofilter』でいいかなと思ってます。
 
 それを通してこのアルバムを聴いた時にああCREAMってこういう人間なんだっていうのが伝われば、それが僕たちそのものということだと思うので。前回よりもよりさらけ出しましたね。

 
- 説明を聞いてすごく納得しました。歌詞を追っていても、押しつけがましくなくて、正直という印象を受けました。それに、先ほどの初めてだったから目の前の事がわからなかったという話の実体験も歌詞に反映されているのかなと思いましたし。

Minami:それは絶対ありますね。やっぱり「Beautiful」の時はそれぐらい病んでたと思うし。その曲に救ってもらったと言ってもいいぐらい。

Staxx T:確かにね。出口が見えなかったしな。

Minami:もう何のためにやってるんだろう、本当にリリースできるのかなって思ったり。

Staxx T:結構周りのムード的にもMinamiダメなんじゃないか?みたいになってたよね。ピアニストっていう鍵が見つかってよかったけど。

  - 追い込まれた中で「Beautiful」が制作されたとのことですが、この曲は一般層にも確実に届くすごい曲だと思いました。

Staxx T:アルバムってCREAMそのものを表していると思ってるんです。実際歌詞にも自分たちのライフスタイルも詰め込んでるし、サウンドも僕たちが普段聴いているものからインスパイアされることが多いので。もちろん4つ打ちのクラブでも遊ぶし、ヒップホップのクラブでも遊ぶけど普通の恋愛もするし、みんなが抱いているような純粋なくだらない疑問も考えるし。同じ人間なんだよっていう1つのくくりがある中で、こんな趣味を持っているっていう全てが現れていると思うんですよね、今回の『#nofilter』には。それが『#nofilter』の良さなのかなと思います。鏡みたいな感じですね。



   
- できないなんてダサいし言えないから、できます!って言っちゃって。鼻歌でいいから、ループしとくから書いてって言われて、すーごい汗かいてドキドキしながらはじめて書いた曲がBoAさんの「IZM」なんです。 Minami -
 
 
- Minamiさんは海外生活をされていたんですか?


Minami:はい、香港生まれで8歳まで香港で育って、そこからはずっと神戸です。それから、インターナショナルスクールに通っていました。

  - 歌を聴いていて日本人っぽくないなという印象があって、英語と日本語の境目も滑らかで、歌もすごくうまいし。Staxxさんもすごく独特で、でも他の人と何が違うかと言われたらわからないんですけど、自分の中でそのオリジナリティーというのは理屈としてあったりしますか?

Staxx T:結構ありますよ。語り出したら長くなっちゃうんで完結にまとめると、自分のスタイルとして今回のアルバムでよりはっきりさせたかったことは、「ラップにメロディーを付けるか付けないか」の絶妙なところが1番気持ちいいんじゃないかというところ。
 実際にメロディーはあるんですけど、がっちりとメロディーを付けた上でそのメロディーを思いっきり崩しながら歌っていくと、すごく聴きやすいラップになるんじゃないかなというのはずっとトライしていたんです。
 ある程度音痴に聞こえないピッチっていうのがあるんですよ。そこの基準をとりながら上に行ったり下に行ったりするんですけど、結局そこに戻っくると安定感がでたり。最近のアメリカのラッパーには特に多いんですよね。すごいメロディアスっていうか、それこそT-Painのキャラにもなったエフェクト「オートチューン」をかけながらラップするやつも多くなってきていて、もちろんメロディーつけてピッチがガチガチに合わせたら聞きやすいのは当たり前で、ラップとしてはその絶妙に崩したところが1番気持ちいいんじゃないかなっていう。そこに、たまに思いっきり崩すようなアクセントを入れていったりすると、よりラップ感が出て面白くなると思うんです。

 プラス韻の踏み方ですね。ラップって打楽器と一緒だと思うんですよね。リズムが命だと思うんです。どこでどう韻を踏むのか。全部が全部ケツで韻を踏めばいいわけじゃなくて、ちょっとクって入ったりして複雑なリズムになってくれば、フロウになると思うんですよね。
 やっぱり日本語でラップすると、フロウがどうしても単調なものになってしまいがちだと思うんです。日本語自体ほぼ全部の言葉に母音が付いているので。だからこそ母音をどんどんカットしていって、パッと聞いて意味がわかる範囲で、いらない母音を削って、さらに英語で似た発音があればそれっぽく言ってみるとか、言葉の言い方も意味がわかれば自分で変えていいと思うんですよね。よりリズムがなくてべったりした部分をどんどん削るっていうのも僕のスタイルなんですけど、それは10代の頃からずっとやってます。始めた時からずっと、なんで日本語ラップと英語のラップはこんなにリズム感が違うんだってずっと疑問に思っていて。
 例えば洋楽のラップを聴いてかっこいいなと思っても日本人は歌詞がわからない人も多いわけじゃないですか。じゃあその曲と同じくらいサウンドとしてかっこいラップをした上で、日本語でラップしているが故に意味が全てわかったらもっとラップの面白さが伝わるんじゃないかなっていうのはラップを始めた頃から思ってました。そんな中で日本のラッパーでうまいなと思う方ももちろんたくさんいるんですけど、爆発的に流行るのはべたっとしてメロディーが付いてるラップ、、、というか、これもう歌やん!っていう曲が多かったり(笑)。

Minami:とか、ラップだけど全然ライムしてないとか。あと、日本語だけど何言ってるのか聞き取れないとかね(笑)。

Staxx T:うん、そういう曲がやっぱり流行るから、そこで何か新しいラップの基準を作れたらいいなとは思ってます。こういう作り方をすればこうなるんだっていう感覚は、常に自分の中でブラッシュアップはしているんですけど。今年10年目を迎えて、10年目で気付くこともあるし。でも多分15年目になったら、あーここがコツなんやって気付くこともあると思うし、全然まだ発展途上だと思いますね。
- Minamiさんは昔から歌ってこられたんですか?

Minami:そうですね、昔から高校卒業したら東京に引っ越して音楽やるっていうのは決めていたので。中3の時にm-floが日本で1番かっこいいなと思っていて、m-floと一緒に仕事するって言うのも中学の時に決めてました。実際東京に出てきて1年以内にVERBALさんと知り合って、VERBALさんがプロデュースするもの全てを多数やらせていただきました、曲書いたことなかったのに。人生でサビ1個だけ書いたかなってぐらいだったんですけど(笑)。

 それで、VERBALさんにデモシンガーとしてスタジオに来てくれないかって呼ばれて行ったら、一緒に座ってトラック聴きながら、Minamiもなんか書いてよってVERBALさんに言われたんです。初めて大ファンの人の隣に座るのに、もうどうしようみたいなムードになって。でもできないなんてダサいし言えないから、できます!って言っちゃって。鼻歌でいいから、ループしとくから書いてって言われて、すーごい汗かいてドキドキしながらはじめて書いた曲がBoAの「IZM」なんです。カップリング曲だったんですけど、その曲を書いた後にBoAさんのシングルのオファーが来たんです。人生で初めて書いた曲はBoAさんの曲なんですよ。

  - ヤバいですね(笑)。

Minami:奇跡的です(笑)。もう人生ガッツだなと思いました。できなくてもできるって言えばどうにかなるから。

Staxx T:それでできなかったらそこまでだしな。「IZM」を聞くと、いいんですよね、すごく。その頃のMinamiの感じがすごくある。いい意味でスタイルがどんどん変わってると思う。

  - CREAMって見せ方をすごく考えているユニットだと思うんですよ。ビジュアルもそうですし、ホームページやアートワークも。アートワークがここまで見事にマッチしているアーティストってあんまりいないと思うのですが、お二人の中で共通認識みたいなものってあったりするんでしょうか?

Minami:ブランディングはすごいこだわるよね。アートワークもウェブサイトもマーチャンダイズも全部。

Staxx T:グッズとかもクオリティーコントロールはしたいし、自分たちが普段身につけられるようなものじゃないと出したくないっていう拘りがあります。頑固だと思います(笑)。自分たちがもしも一般のユーザーだったらっていう目線で、お金を出して買うクオリティーのものかっていうところを重視しています。逆に自分なら買うかって聞かれて買わないっしょこんなだっさいもん、って思うようなグッズは人に売らないっていう。

 YouTubeチャンネル"CREAM VISION"にしても自分たちでゼロからこんなことやろうぜっていうところから始めたんです。当時はチープなものでしかなかったけど、そこから試行錯誤してお金無いなりにDIYでやってきて、それがだんだん受け入れられてきたんです。

 アルバムもCREAM VISIONも自分の子供みたいなものなんで、自分の子供にわざわざダサいことさせたくないという思いもあったりして。すごくクールなチャンネルであってほしいし、オシャレなグループでありたいよね。

Minami:失敗することを恐れないっていう。うちらがこうやりたいって言って実際よくなかったこともたくさんあるんだけど、それはそれで認めて、それを次のステップに繋げるのがブランディングの鍵だと思うんですよね。より良くするために。

  -YouTube見て思ったんですけど外国の方が結構コメント残してますよね?

Minami:そうなんですよ。CREAMとして海外行ったことないんですけど。実際どうなんだろうっていうのは知りたいよね。

Staxx T:すーごいオタクな人ばっかで実際にクラブで遊んでるようなヤツは俺たちのこと誰も知らないかもよ(笑)。
 デビュー前からYouTubeの海外からのコメントは多かったんです。海外のカバーとかもやっていたりして徐々に増えていったんだと思うんですけど。多分サウンドがちょっと洋楽に近かったりするから歌詞は関係なく受け入れられるんだと思います。要は僕たちが何を言っているのかわからないけど、Kポップや洋楽のヒップホップを聴いてかっこいいなと思うのと一緒で。その逆パターン現象が起こりえると思うんですよ。たぶん今聴いてくれているのはそういう人たちだと思う。英語のコメントで、CREAMが何歌ってるか全然わかんないけどクールだわ、みたいな意見も多いし。あとはもうバイリンガルなMinamiちゃんをぶら下げていきますよ。どこに行っても自動通訳になるし万能ですよ(笑)。

  - そのリングもかわいいと思いました。

Minami:もうすぐ販売するんですよ。限定で。

Staxx T:これは僕が大阪で10代の時にラッパーを始めた時からすごく応援してくれている先輩がいて、その人の知り合いでオーダーメイドのアクセサリー作りをやっている方がいたんです。CREAMの音源を聴いて応援したいって言ってくれてるから何か一緒にやろうよって言われてその人に会いに行ったんです。まずはCREAMの金色ででっかいリング作ってくださいってお願いしたらすごく協力してくれて、こんなのどうですか?って持ってきてくれて。

Minami:ファンのことをCREAM TEAMって呼んでいるんですけど、このリングの中にCREAM TEAMって書いてあるんです。こういうディテールまで拘ってくれました。
 
- おいくらですか?

Staxx T:60個くらいしか作らないんですが安いと思いますよ。おそらく5,000から6,000円くらいですね。あと抽選で販売します。これでお金を稼ごうっていうわけではなくて、これを持っている子たちは、CREAMのファンの中でもすごく自慢できるレアアイテムで、しかもそれを中学生でも頑張ったら買える値段っていうのがポイントなんです。全部18金で作りたかったらお金だせばできるんですけど、そんなことやったっところでファンの子が喜ぶのかっていう問題なので。どっちかっていうと誰でも買えることに意味があると思うし。

Minami: 60個作って、40個を3、4倍でブラックマーケットで売る?(笑)

Staxx T:そういうとこもクリエイティブだね(笑)

   
- 英語で有名な名言で「We all die. The goal isn’t to live forever, the goal is to create something that will.」っていうのがあるんです。自分がこの世からいなくなっても残るものを作るのが人生のゴールだっていう。Minami -

 
- ワンマンのライブはチケットがほぼソールドアウトだそうですね。

Minami:そうですね、もしかしたら追加公演もできるかなあ?どうかな?ってとこですね。本当はできるだけたくさんやりたいですけどいろいろ事情もあると思うんで。初のワンマンですし。

Staxx T:ちょうど昨日1時間半ぐらいSkypeでライブのセットリストどーするー?っていうやり取りをしてたんですよ。僕たちそんな長いライブのセットリスト組んだことないし、言っても40分~45分がいいとこなんで。

Minami:一瞬先が見えなかったよね。こんだけの曲どうやってまとめるのみたいな。

Staxx T:どうしてもアルバムって曲の並びに拘っているからライブセットに組み込もうと思ったら大変なんです。『#nofilter』は全曲やろうって決まっても、その曲順のままやるわけにはいかないので、ばらけさせてアルバムとの違いを作るというところでパズルみたいな作業です。でも全部組んで1時間半の流れでみてみたらイメージも膨らんですごく楽しみになりました。今回は通常のクラブパフォーマンスでは出来ない事を、たくさんやろうと思っています。

あと今まではDJとCREAMだけっていうステージばっかりだったのでちょっと差別化を計ったというのもあります。
- ライブハウスだから未成年も来られますしね。

Staxx T:そうですね。僕、実は基本的にはどんな好きなアーティストを見に行っても後半眠くなっちゃうんですよ。多分前半で体力を使い切ってしまうので、後半になると疲れて集中力がなくなってくるんです。そういう人がいるということは、ライブって長ければ長いほど最後まで楽しませるのが難しいということだと思うんです。だからこそ後半により目を引くような展開を考えています。

  - この前のライブを見ていても疲れるだろうなーと思いましたが、1時間半は長そうですね?

Staxx T:動くんでね(笑)。別に踊るわけではないんですけどね。あがれーと思いながらやってるんで体力はすごく必要になって来ますよね。あと夏やで。

Minami:そうだね。こないだもリハーサルの時にエアコンつけないようにしたんです。ちょっとしたことですけど。

  - では最後に、CREAMの活動を通して今後どういったことを伝えていきたいですか?

Staxx T:音楽の楽しみ方を教えるっていうと偉そうですけど、例えばクラブに来たことない子たちをクラブに遊びに来させてクラブってこういう風に楽しめば面白いよとか、トラップっていうジャンルがあって、聴いたことないと思うけどこんな感じなんだけどどう?とか。
 僕たちがいろんなジャンルを取り入れれば入れるだけ、4つ打ちって聴いたことなかったけどCREAMの「Shooting Star」すごくいいねとか、洋楽ばっかり聴いてたけどCREAMは聴けるなとか。音楽の楽しむ幅を増やしてあげられるようなアーティストでいたいですね。ラップを聴かなかったけどラップいいわ、やってみようかなっていうぐらいになるまで。
 あと音楽をきっかけに友達と出会ったりとか。音楽っていろんなことが起こりえると思うんですよね。CREAMの音楽を聴くことによって、CREAM TEAM同士が仲のいい友達になることもあるし、人生が変わることもあると思う。その人の人生に何かを残せるような音楽を作っていきたいですね。

Minami:英語で有名な名言で「We all die. The goal isn’t to live forever, the goal is to create something that will.」っていうのがあるんです。自分がこの世からいなくなっても残るものを作るのが人生のゴールだっていう。自分が永遠に生きるのではなくて。そういう音楽を作っていきたいっていうのは2人ともあるよね。やっぱり一生この世界に残っていく曲を作りたい。

Staxx T:そうだね。「上を向いて歩こう ~Sukiyaki Song~」みたいにね。

Minami:それで、いつかグラミーも取りたいね!

  -Release Information-

アーティスト:CREAM
タイトル:#nofilter
発売日:4月30日
フォーマット:CD、CD+DVD
価格:CD¥2,700  CD+DVD¥3,564

■HMV
http://www.hmv.co.jp/artist_CREAM_000000000515278/