- 今回レーベルサンプラーとしての意味合いが強いから、曲を長めに聴かせたいって意図はありました。- DJ Pi-Ge
- 本作で使用された楽曲は、いわゆる分かりやすい作品ではないと思います。ある意味、セールスを考えての選曲というより、自分たちの本音が詰め込まれた作品なのかなと思いました。本作を作った目的は何だったのでしょうか
DJ Pi-Ge:
もともとミックスCDを出す予定は無かったのですが、TRESVIBES SOUNDSYSTEMでの活動が増えてきているから、何か作品を作っておく必要を感じていました。今回はミックスCDという形でのリリースですが、SoundcloudやMixcloudがあること、残っているミックスシリーズは、大手のFabricやDJ Kicksなど少数という現状の中、僕たちのような小さなレーベルが、どういったものを作るべきかは悩みました。
新しくTRESVIBESとして<VIS REV SET>というレーベルを立ち上げたのですが、レコードだけではどうしてもDJユースになってしまうから、レコードで出すより先にそれをミックスすればいいんじゃないかって考えて、レーベルサンプラーとしての作品にしました。日本に関しては、CDという文化が少し残っているので、DJ以外の一般リスナーにも、こういう音楽を提案できたらとも思っています。
このミックス用にライセンスした曲もありますが、基本的には最近リリースされた楽曲ばかりですし、自分たちの楽曲と親交のあるアーティストの未発表楽曲を使っています。
-特に前半部分はミニマル色が強く、いわゆる一般リスナーには、その魅力がなかなか伝わりにくいものだったりするかと思いますが。
DJ Pi-Ge:
流れも作っていかなきゃいけないっていう中で、自分たちのパーティーの早い時間にかけるような音楽ですからここは重要なポイントだと思っています。とっつきにくい音楽かもしれませんが、逆に飽きないんじゃないかなと思います。
- たしかに、聞き込んでいくうちに前半部分が好きになりました。
DJ Pi-Ge:
この手のジャンルのミックスCDだったら、もっと早いタイミングでミックスしていくと思うのですが、今回レーベルサンプラーとしての意味合いが強いから、曲を長めに聴かせたいって意図はありました。
- 大きな展開として感じたのが7曲目Denさんの曲から、Chris Carrierへと繋がる部分でした。流れ的にどういう風にしようと思ったのでしょうか?
DJ Pi-Ge:
自分たちの中で中盤はグルーヴを強めていくタイミングでした。1~4曲目までがディープな感じで5曲目から跳ねるようになってきて、そこからDenちゃんの曲がちょうど上手くまったと思ってます。実はChris Carrierの曲を入れたポジションが最後まで見つからなくて。
Kikiorix:
ずっと探してたよね。あの曲って9月に出たばかりのアルバムに入っていた曲でなんです。そのプロモを6月くらいに聴いて、これいけるんじゃないかってなってはめたら正解でした。ちょっと跳ねる感じのテックハウス感が出たかなと思っています。
- ネタばらしみないになってしまうのですが、本作ではどのような工夫を施したのですか?
Kikiorix:
ちょっとエディットした曲はあるかな。でもそんなに深い事はしていませんが、曲が重なりあうところは、気を使って試行錯誤を繰り返しています。
今回、レーベルサンプラーが1つのテーマだったから、いわゆるオーソドックスなミックス作品としての要素が強いのかなと思ってます。
DJ Pi-Ge:
パソコンでやるのは、本当にしんどくて。曲がどうしてもデータのみだったりするのでパソコンを選んだんですが、DJミックスとまた違うからスムーズになりすぎるのも嫌だなって思ったんです。だから、ちょっと大袈裟ぎみにEQをかけてみたりとかして、バランスは取りましたね。
Kikiorix:
パソコンだったらきれいにできるんだけど、意図的にそうしなかった部分はあるよね。「いいじゃんこれくらいで」って、ラフにしたり。 - 自分の中で、それがDenさんからChris Carrierの部分からだったかなって。
DJ Pi-Ge:
はい、音圧が乗っかっていく感じですね。
- 9曲目のJun Kitamuraさんのトラックは、頂いたトラックレビューに「2000年リリースの早過ぎる傑作」と書かれていましたが。
Kikiorix:
あれ、すごい名盤で。僕らがDJを始めた時くらいって、もっと早いテクノをかけていたんですけど、徐々にハウシーな曲も買っていくようになったんです。そうしたらいきなり日本人がすごい曲を出してきたって話題になって。この曲は、当時テックハウスって言葉が無い時のテックハウスだったと思います。
DJ Pi-Ge:
最近リバイバルでTECHNIQUEがEDFっていうアナログディストリビューションをやるようになったから、それをリリースするってなって。
その前まで、海外のアーティストが来日した際に、中古レコードを掘りに連れていくのですが、その時に「Outergaze」が欲しいってよく言ってましたね。
Kikiorix:
再発されるまでは、Discogsでかなり高騰してましたね。
DJ Pi-Ge:
再発されるタイミングが9月くらいって聞いてたから、使わせてってお願いして。
- 3人とも個性はそれぞれあるけど、音もバラバラじゃないし、かける音楽もだいたい分かるので。- Kikiorix
- 2000年ってお二人は20歳くらいだったと思うのですが、その頃の東京のシーンっていうのは?
Kikiorix:
Yellowに行ってましたね。あとLiquidroom。Liquidroomでは「House of Liquid」が盛り上がってて。あと「Chaos」もよく行ってました。
DJ Pi-Ge:
僕も大阪からたまに遊びに来てたんですが、YellowかLiquidroomによく行っていましたね。
- TRESVIBES SOUNDSYSTEMというプロジェクトは、いったいどういったプロジェクトなのでしょうか?
Kikiorix:
もともと個々でやっていたのですが、同じパーティーに3人ともブッキングされる機会が徐々に増えていったんですよね。だったら別々にプレイするんじゃなくて、ここからここまでを一緒にして3人でやらせてってお願いして。1人1時間強でプレイするなら3人で3時間ください、3~4時間くださいってお願いしていたんです。やっぱり、長くプレイできた方が楽しいじゃないですか。
DJ Pi-Ge:
そうそう、だったら団体戦に持ち込んで名前つけてやろうぜって(笑)。SOUNDSYSTEMって付けたのは、僕たちのイベント「TRESVIBES」の5周年を越えたくらいの時だったと思うから、ここ2年ですね。
- B2Bスタイルって1人より難しくないですか?
Kikiorix:
B2Bは、自分の雰囲気を分かってくれたり懐が深い人だったらやりやすいですけど、あまり知らない人や我を通す人とやる時は難しいですね。3人とも個性はそれぞれあるけど、音もバラバラじゃないし、かける音楽もだいたい分かるので。
- B2Bスタイルの妙とは何でしょう?
DJ Pi-Ge:
トイレに行ける!
一同:
笑
DJ Pi-Ge:
まじめに。。幅が広がりますよね。単純にレコードの数が倍になるわけなので、自分にはないラインに行け、選曲の幅が広がるんです。もちろん人のレコードは使いませんが、たまに、自分が持って来てなくても、知っている曲を2人が持って来ていたら使うことはありますね。
Kikiorix:
「今、あれかけるタイミングだ!誰かあれ持って来てない?」っていう感じで。
DJ Pi-Ge:
あと、ブースがワイワイガヤガヤしているのがいい感じに映ったりしますね。
- どういったシステムでやられているんですか?
DJ Pi-Ge:
自分たちのイベントでやる時は、けっこう自由にセッティングできて。例えば、ミキサーを2台に、タンテ3台置いて、外付けのエフェクター、サンプラーを入れたり、iPadのMOOGのアプリ使ったりしたこともありました。
- 1曲ローテでやっているんですか?
Kikiorix:
今は1曲ローテです。前は2~3曲交代でやってたんですけど、そうすると30分くらい回ってこなかったりして(笑)。後ろで踊ってるのも長過ぎると恥ずかしいですし(笑)。
DJ Pi-Ge:
1曲交代の方が集中できますしね。でもたまに1曲交代じゃない時もありますよ。Otsukiが順番抜かししてたりして(笑)。
- それは、この曲の次にはコレをかけたいんだっていう気持ちの現れじゃ??
DJ Pi-Ge:
いや。そういう感じはなかった(笑)。僕が次なのに、タンテにレコードを自然と置こうとしてましたもん(笑)。
Kikiorix:
僕はボーとしてたら抜かされてたことがありましたね (笑)。
- 3人でやっていて、他にエピソードはありますか?
Kikiorix:
WOMBのアニバーサリーの時に、メインフロアの最後をやらせてもらったんです。その時のブースがやぐらを組んだ作りだったんですけど3人は入れなかったんです。だからレコードを持って階段で順番待ちしてました (笑)。
- 後輩から電話かかってきて、「ピゲさん、レーベル作るってホントですか?Otsukiさんがインタビューで答えてます」。って。- DJ Pi-Ge
- 今年は、フジロックのオールナイトフジにも出演されましたね。フジロックというと、音楽活動をしている人にとっては、1つの夢だと思いますが実際にプレーされていかがでしたか?
DJ Pi-Ge:
もちろん、嬉しかったですよ。まさかフジロックのアーティストパスを首から下げているっていうのは。たぶんそれは、どんなフェスよりも嬉しく思うんだと思います。
プレーに関しては、オールナイトフジの1発目だったから、オレンジコートのトリのバンドとの音楽性も全然違うし、ホワイトステージではBasement Jaxxがまだやっていたっていうのもあって、どうしても序盤はお客さんの入れ替わりの時間になってしまいましたね。でもそれは想定内だったので、後半は自分たちの色も出しつつお客さんも戻ってきて、いい雰囲気を作れたので楽しかったです。
- 先日は「WIRED CLASH」にも出られてましたがいかがでしたか?
Kikiorix:
いつもより能動的に音楽を聴きに来ている人がたくさんいましたね。ほんと、WIRE好き、テクノ好きが集まってたんだなと。それが「WIRE」のすごいところですよね。
DJ Pi-Ge:
Waterフロアーでやったんですが、僕らの時は天気が雷雨っていう(笑)。ナチュラルなストロボとナチュラルなシャワーが用意されてました。人気の泡パーティーに対抗してましたね (笑)。
- あとフェス系でいうと近々控えているのはULTRA JAPAN?
DJ Pi-Ge:
はい、今ブッキングが入っているフェスだとULTRA JAPANですね。僕たちのステージはZepp Divercityだから天気は大丈夫ですね(笑)。音もバッチリですし、会場も大きいから楽しみですね。
- TRESVIBESをWOMBで立ち上げた経緯を教えてください。
DJ Pi-Ge:
7、8年くらい前に僕とOtsukiが出会ったんですけど、当時はお互い違うパーティーをやっていました。それで、お互いにこういうことをしたいって話をしてて。そうした時にちょうどWOMBでできるかもしれないって話を聞いたんです。お互いWOMBみたいな大きい箱でパーティーをしたことなかったから、やってみようって事になって。
Kikiorixはちょうどその頃ロンドンにいたから、帰ってくるタイミングで出てもらうようになりました。その後TRESのアートワークをKikiorixがやっているっていうもあってレジデントにもなってもらったんです。
Kikiorix:
そう、2年くらいでレジデントに昇格しました(笑) - 始めた当初は、このパーティーでレーベルをやろうという展望はあったのでしょうか?
DJ Pi-Ge:
当時は全く思いつかなかったですね。どちらかというとパーティーをどう作るか?っていうところに熱量を注いでいたので。
当時のWOMBでは珍しい内容だったと思いますよ。例えば1回目には、1階フロアーにQuietstorm、Kihira Naoki、Inner Scienceが出演していたり、1周年は4階にFumiyaさんのKarafuto名義のロングセットをやってもらたりとか。あと外タレをシークレットで4階にはめたりしていましたね。始動した当時はラウンジって考えはしないで、各フロアでいろんな音楽が聴けるフェス的なことを考えていました。
- では、いつくらいから今のレーベルを考えていたりしたんですか?
DJ Pi-Ge:
去年くらいだと思います。どこかのメディアでOtsukiが「今年はレーベルを作ります」って言ってて(笑)。
Kikiorix:
言ってた、言ってた(笑)。僕ら聞いてなくて、えーーーってなったよね。
DJ Pi-Ge:
後輩から電話かかってきて、「ピゲさん、レーベル作るってホントですか?Otsukiさんがインタビューで答えてます」。って。
でも、最初に言ったけど3人で活動する機会も多くなったし、作品をリリースするべきだったし。曲も作ってリリースできるような環境になってきたからちょうどよかったと思います。
今回収録した曲で自分たちのレーベルからリリースするものは、来年にかけてレコードで徐々に出す予定です。でもプレス工場も最近混んでいるらしいから、すぐにできないかもしれませんけど。あとマスタリングし直すかもしれないし、エディットするかもしれないし、リミックスを入れるかもしれないし。それはこれからプランを立ててって感じです。
- 今後、このレーベルからリリースしたいアーティスト、トラックというのはどういったものでしょうか?
Kikiorix:
それは、3人とも個々で考えているものが違うと思いますし、まだまとまっていないけど、スタンダードな4つ打ち、ハウス・テクノにはなると思います。でも僕たちのレコードバッグに入るようなものだったらいいんじゃないかなと僕は思ってます。もしかして、すごいコンセプチュアルなものもリリースするかもしれないですね。当時ドイツにあった<Playhouse>みたいな感じかな。ジャンルの幅だったり、固執する感じもなくて。まだわからないんですけどね。
- どの国でもやっていけるようにする必要があるって感じてて、それが僕たちのスタイルなんだと思います。- Kikiorix
- ダンスミュージック/クラブミュージックは、以前はもっと分かりにくくて不思議な音楽だったと思いますが、現在はリスナーに合わせたシーンが出来ているように思います。ダンスミュージックが最先端なものとは思いませんが、何かもう少し門戸を狭めてもいいように思ったりしますが、いかがでしょうか?
DJ Pi-Ge:
メジャーとか大きなレーベルは売らないといけないので、リスナーにアジャストする考えでいいと思います。でも作品はいつ売れたって、いいわけですよね。例えば、あるアーティストのCDを買って聴いたらすごいよくて、その人のバックカタログも買ったりすることあるじゃないですか。僕はこの流れが好きなんですよね。
音楽を聴きやすくして買わせるのって、結局その場の瞬間風速でしかないと思います。その時、このCDが理解できなくても、2年後には理解できている可能性って高くなっていたりしますよね。人に理解されない音楽の方がいずれ評価されたりする可能性だってあるし。
僕らがやっている音楽ってもともと、いわゆる一般層に刺さるような音楽でもないし、届けたいところに届けばいいと思ってます。まだ小さいレーベルですが、小さいからこそできることがあると思います。
- お二人は、ヨーロッパを中心に海外でもプレーされていますが、海外のシーンを見られてきて感じる部分はありますか?
Kikiorix:
圧倒的にクラブ人口が海外の方が多いですよね。特にエレクトロニックミュージックは。お客さんもそうだけど、若い男の子は、みんなDJみたいなところがありますよ。
DJ Pi-Ge:
小さい箱でも、お客さんのパワーがすごいですね。それに押されてしまう時もあるけど、そのパワーを自分らでコントロールできた時は楽しいですし。
Kikiorix:
どんなにディープにいってもついてくるし、でもかっこよくないとすぐいなくなってしまう。はっきりしてて、そこはいいですよね。
DJ Pi-Ge:
あとレスポンスがいいですよ。全然知らない人が終わった後にフェイスブックで調べてくれて、よかったよって連絡くれたりとか。
あと、僕らのプレイスタイルに海外で体験は影響していると思います。見よう見まねじゃないですけど、こういう音楽は、こういう風にかけようとかって取り入れたりして。
Kikiorix:
日本独自のものをやろうっていうよりは、僕たちは海外で体験したことを生かしてやる方が強いです。「日本は日本でやっているからいいんだよっ」て考えもあると思うけど、僕たちには、それがあまりない。どの国でもやっていけるようにする必要があるって感じてて、それが僕たちのスタイルなんだと思います。
DJ Pi-Ge:
日本は日本だからって考え方もすごい分かりますけどね。日本独自のやり方で、すごいストイックにやって、いい音楽を作って海外で認められる人たちもたくさんいますし。でもその反面、海外の影響を受けているのに日本は日本だからって人も多い気がするんです。それはマーケットを狭めてるだけだと思うんですよ。
- みなさん、リリースもされていますし、WOMBでパーティーもされています。そしてレーベルも始めたりと堅実にステップアップされていますが。
DJ Pi-Ge:
4年くらいはパーティーを作ることに一生懸命だったんですが、今は幸いにもいろんなところからブッキングしてもらっているし、個人の活動もそれぞれちゃんとできてきています。正直、年齢を重ねてくると動ける数も限られてきます。その限られてなかで、残せるものをやっていかなければならないってなってくると、必然的にプロダクトになってきて。だからそれを中心にプラン立てをするようになっていますね。
Kikiorix:
いつも話合うよね。今年はこうしようって。フェスやろうって言ってた時もあったしね。
DJ Pi-Ge:
TRESVIBES SOUNDSYSTEMって3人で前に出てるけど、自分たちは裏方チームが強いっていうのも助かっている点ですね。VJだったりライティングサウンドだったり。だから何かしたいってなったら、面白いものができたりするんだと思います。
Kikiorix:
シークレットパーティーもしたし、おっさんばっかりでバスツアーもしたしね(笑)。
- Release Information -
アーティスト:TRESVIBES SOUNDSYSTEM
タイトル:PLAYGROUND
レーベル:Vis Rev Set
発売日:9月24日
価格:¥2,200(税別)
■Soundcloud
https://soundcloud.com/tresvibes-tokyo/playground-mixed-by-tresvibes-soundsystem-preview