INTERVIEWS

Hiroyuki Arakawa

 
- ポジティブな事件を起こす「きっかけ」になれればという願いが「TRIGGER」という言葉に込められています。 -
 
 
- 前回の真紅のレコード KAN KAKU EP から1年。前回のリリースの結果はどうでしたか?


KAN KAKU EPはデビューから3年後に初のレコードリリースで、僕にとって大きな一歩となりましたね。海外での評判もよく、ガルニエがセットリストにGENKAKUを挙げてくれたりあと、日本の流通では入荷後、即日完売ということが何度も起こって、驚きと感謝の連続でした。このリリースを記念したWOMBさんでFRANK MULLERと出演した、RHYTHM HOLICでの700人規模のパーティーを始め、国内6箇所でのリリースツアーを、たくさんの方々のお陰で、全日程を成功で収めることができました。本当に本当に感謝しきれないです。

  - 前作から今回のアルバムまでになにか作風の変化はありましたか?

作風というよりか、作り方自体結構かわっていて、より洗練されたものになったと思います。自信をもって曲発表できた半面、時間が経つにつれて自分の曲に納得がいかなくなってくるんですよね(笑)作曲からちょっと距離をとってみたり、新しい機材を導入したり、仲間と相談したりしながら自分に残された、作曲に関する課題の解決に努めましたね。そこまで突き詰めるのに結構な時間が掛かりましたが、これからもどんどん変わっていくでしょうね。

  - 2月DOMMUNEでのトークでは作りかけとおっしゃっていましたが、まだ全然終わってなかったんでしょうか?

実はそうなんです。バイナルのあと、すぐにアルバムの話が来たんですが、ギグや先に入っていたリミックスワークが忙しく没作品ばっかりで、結局なみに乗り始めたのは、まさにFRANKがきたELECTRIC DISCUSSIONにてDOMMUNEでトークに参加した頃でした。

  - 製作で苦労した点はありますか?

苦労はたくさんあったんですが、悩む時間が多かったですね。何を作ればいいのかっていう。テクノミュージシャンにとって、テクノは聴かせる作品、躍らせる作品、2つの側面があると思うんですが、僕は兼ね備えたものを作ることが自分にとって1番フィットします。しかし、方針をその方向へ決定するまでにかなり時間かかりましたし、捨てた曲もたくさんありました。

  - 聞ける踊れるは、やはり、ルーツであるトランスの影響ですか?

そうですね(笑)。中1の頃から買いあさった、ヨーロピアントランスのレコード。そういったメロディアスな部分が作曲に出てしまいます。

 

  - でもDJはそこまでかたよってないですよね?

そうです。メロディーものばっかりだと、テクノのお客さんも自分も飽きてきてしまうし、なによりニーズがアンマッチすることもあるので(笑)。なので、DJするときは、作曲とは全く切り離した黙々と踊るスタイルの、インダストリアルテクノだったり疾走感のあるテックハウスだったり、その日に応じてです。

  - では結構雑食なほうなんですか?

そうですね。3.11の震災で5000枚のレコードは手放したったんですが、その枚数が物語ってます(笑)。普段 家で好んで聞くのは普段クラブでかける事のない、EDMだったり、ポップスだったり、ゲームや映画音楽だったり。

  - 今回アルバム、TRIGGERは鋭い名前ですがどんな思いでつけましたか?

自分自身や相手、ミュージックシーンにおいて事件のきっかけとなりたい思いでつけました。MULLERで、CDとレコードでアルバムを発信できることは、僕にとって、ものすごく大きな事件なんですよ。このリリースをきっかけに、たくさんの人の耳に届けたいしたくさんのクラブでかかって、たくさんの人が感性を共感してもらいたいという気持ちがほんと高鳴ってたんですよね。自分は日本でも世界でも知名度については、はまだまだこれからなので(笑)。「本当にアラカワが好きだ」とか「お前の曲は最高だ」みたいなファンが1人でも多く増えてほしい思いですね。あとは、話題性ありきに逆行して音楽一本で勝負したいです。音楽性で評価されることができるならば、話題が起こると信じています。そのために1つ1つのギグや出会い、リリース、SNS、自分が相手に向けるメッセージ1つ1つにおいて大切にすべきなんだと、いつも心に誓っています。聴いてくれた、一人ひとりに心からありがとうと可能な限り伝えてはいますが本当は全ての人につたえたいんです。

このアルバムを通して、自分にとっても、相手にとっても、テクノミュージックシーンにとってもなにか音楽的にポジティブな事件を起こす「きっかけ」になれればという願いが「TRIGGER」という言葉に込められています。

今回のリリースが多くの方々の耳にとまり、テクノミュージックがさらに盛り上がるための大事な一部になれることを願っています。
 
- TRIGGER収録曲はいろんなテクノがつまっていますね。内容について教えていただけますか?

今回のアルバム製作にあって、まず考えたのはCDやレコードというフォーマットになった点ですね。というのは、CDはクラブ以外の様々なシーンで聞くことができることを想定して、渋くなりすぎずリスニングとして十分に成立するようなトラックを作っています。あとは、最初にお話したような意図もあります。

  - 三味線の曲とか、ブレイクで壮大になる曲とか、いいですよね。さらにドラムンベースやアンビエントがあったり

ありがとうございます(笑)。特に、メロディを重視して、和太鼓や三味線、サックス、自分の声(笑)、ファミコンぽい電子音などを取り入れたり一辺倒にならないようにシンセやドラムマシンといった外部機材をライブ感覚で録音したりしています。あと、今回レコードになることで、DJユースである一面も意識してトラックを作っています。ドラムンベースやアンビエントは好みでつくりました。表現を4つ打ちにとらわれず広げたいという思いからですね。なので環境音を入れたり、ドラムの音を普段と変えてみたり、BPMを極端に早くしたり遅くしたりすることで、気持ちよく聞こえる旋律があったりするので。

  - クラブでの反応とかどうですか?

シビアに気を配っています。自分がライブセットでこれらの曲をつかい、十分に躍らせることができるように、クラブ鳴りにもかなり気を使い、特に60Hz周辺のスーパーローの処理には時間をかけています。アルバムの音源のみで披露した、ライブセットの公演では、代官山AIRで開催されたPLUS TOKYOが印象深かったです。

クラブでかけた時のフロア鳴りを神経を研ぎ澄ませて確かめたり、オーディエンスからのレスポンス一つ一つを大切に感じ取って、楽曲へフィードバックし、改良を重ねています。DJでプレイするときは、一番盛り上がる場面で自分の曲を使うようにしています。簡単にいうとこのアルバムの曲にディープにハメるトラックはありません(笑)。まずは聴いてみるのが一番理解しやすいと思いますので、大音量で聴いていただければとおもいます。可能であれば、現場に是非足を運んでいただいて、踊りながら感じていただければ最高です。さらに今回、アンビエントやブレイクビーツ、ドラムンベースといった、違ったテクノのアプローチも取り入れています。アルバムの構成として自然とそうなったんですが、公式のリリースとしては初めての作品なので、普段と違う、独特の空気感に触れていただければと思います。


アルバム収録曲
1. TRIGGER
2. PROCESS
3. PASSENGER
4. RING
5. FUNKY SEXY
6. SYAMISEN TECHNO
7. NASTY BOY
8. 8BIT
9. EMERALD
10.SWEET SARROW
11.BELIEVE
12.SOME DAY
  - アラカワさんといえばシンセの音が特徴ですが、作曲に使っている機材について教えていただけますか?

そんな高級なものはつかっていないですし、がんがん弾けるプレイヤーでもないです(笑)。まずシーケンサーはSONAR、CUBASEを使っています。ライブではABLETON LIVE。ドラムについては基本的に単発音源をHIGHLIFEで取り込んで組んでいます。リリースタイムの長い鳴り物はMACHINEDRUMから録音しています。あとリードシンセやパッドシンセ、効果音は基本的にNORDREAD X2を使用しているんですがZ3TAやMASSIVEといったソフトシンセのほうが作りやすい音がでたりするので、使い分けています。エフェクターはすべてソフトウェア、BRAINWORXはマスタリングに使い、WAVESは空間系エフェクトをつかいます。鳴り物の打ち込みはトリプレットが好きで、シーケンスタイミングやベロシティ、ピッチを細かくずらしてループの揺らぎを作っています。いろんな細かいテクニックありますが、詳しくは内緒で。。(笑)

   
- 液体をランダムに一滴ずつ垂らしながら、一定の規則性を持って弧を描いていくんです。絵を描いていく様子がテクノのマナーに沿いながらも多様性のある「TRIGGER」の楽曲と一致するのでは?っていう提案でした。
-
 
 
- ジャケットのデザインもとても印象的ですね。このデザインについて教えてもらえますか?

静岡のVJ&デザイナーである、KRAKのRAITAさんにお願いさせていただきました。全体像をお任せし、細かい部分を話合い、形にしていったんです。ある日、RAITAさんから連絡があって"Magnetic Field Record”の提案がありました。"Magnetic Field Record”というのは、磁力と重力を使って、こうビジュアルを描く共栄デザインさんの絵を描く作品です。 今回は墨汁なんですが、液体をランダムに一滴ずつ垂らしながら、一定の規則性を持って弧を描いていくんです。実際動画を見てもらえればわかるんですが、絵を描いていく様子がテクノのマナーに沿いながらも多様性のある「TRIGGER」の楽曲と一致するのでは?っていう提案でした。もちろんしっくりきたので、それで短時間ですすめてもらって。。
あと、"Magnetic Field Record”が弧を描く様はヴァイナルの溝を掘っているようにも見えるんですよ。作品のビジュアルもミニマルだし、有機的な偶然がもたらす奇跡みたいで、すごく気に入っているんです。デザインが、フィジカルになるのがとても楽しみですね。

  - 今回のリリースを記念した、リリースツアーについて教えていただけますか?

このたびは、本当にたくさんのご協力のおかげのかいありまして、12月から2月にかけて、まだ公開できていないもの含め、全10都市で開催させていただく運びになりました。さらに、ベルリンを中心としたヨーロッパ方面、アジア方面でのツアーも予定しています。各地でのギグ、一つ一つが僕にとってとても重要です。全日程100点のプレイを目指して会場をしっかり盛り上げたいですね。内容はライブやDJが入っているんですが、ほとんどライブセットになります。今から本当に楽しみです。各所の皆様には感謝しきれませんねホントに。今、調整中ですが、リリパのどこかでもFRANK MULLERが現れるかもしれません。ツアー日程一つ一つ、思い入れやエピソードに詰まっているので、丁寧に説明したくてたまらないんですがすごく長くなるので割愛させていただきます(笑)


12/6  音楽食堂 (新潟)
12/7  APPOLO (東京)
12/20 ABOUT (名古屋)
12/21 PIVOTE (水戸)
1/10  ROOM (福島)
1/17  OPPA-LA (江ノ島)
1/24  RAJISHAN (静岡)
1/30 大阪 (Circus)
2/4   白馬UFO STUDIAM (長野)
TBA   TBA (東京)
  - もう既に、情報がリリースされていますが、12月7日 東京公演の内容について教えていただけますか?

東京公演はタイトなスケジュールの中、話が進みまして説明不要のテクノゴッド、ケンイシイさんをゲストDJとして招いての開催となりました。お引き立ていただいたことに、本当に感謝しきれません。オープンしてまもない六本木APOLLOさんと、ライブ感あるパーティーにこだわっているLAST SAMPLERさんのご協力によりで開催させていただくことになりました。僕自身、六本木方面は久しぶりの出演となり、もちろんこのハコも初めての出演となります。

  - 珍しい場所ですね

キャパ200人で満員のコンパクトながらも、音響はしっかりしていて、清潔感ある内装です。キャパ以上に照明は派手な感じで、音に集中というよりは、お祭り騒ぎにはぴったりの場所な印象があります。イメージは、まだよく知られていないカオスな会場をパンパンにして、普通じゃ考えられないトンでもパーティーを目指します(笑)かなり新鮮で充実感あるボリュームなので、ぶっ飛んだ楽しいパーティーをお届けできるかと思います(笑)しかもデイイベントなので未成年や深夜のクラブに行けないひとも、きて楽しんでもらえたらうれしいです。あと、六本木中心に遊んでいるみなさんにも、テクノのお祭り感を知っていただく貴重な機会とも思っています。ナイスパーティーにしたいです。

  - 余談ですが結婚されましたね、おめでとうございます。お話おきかせできますか?

ありがとうございます。周囲から「思い切ったね」とよく言われるのですがごく自然な流れでした(笑)。自分の健康は嫁のおかげか、独身のころよりもはるかに体調がいいです。ちなみに嫁はベリーダンサーです。あと、子供います小学生の(笑)父とは死別だったので、自分の養子にさせていただきました。外であそんだり、僕は釣りが好きなので一緒にいったり。。あと僕、すっごくゲーマーだったので、子供とはたまに一緒にゲームやったりして遊んでます。特に、スクウェア、任天堂のソフトの有名どころはかなりやりこんでいたのでゲームの興奮するところとか、泣けるところとか、後に共感できたらいいなとか思っています(笑)。

  - DJや作曲はすすめないんですか?

やりたいときにやらせたいです。興味はもっていてやりたいというんですが、さらっと教えるくらいでしつこく教えたりはしないです。ただ、楽しいところはたくさん見せてあげたいですね。ダンスミュージックの楽しさはパーティーありきなので。

  - 話はそれてしまいましたが、最後に今後の目標などを教えていただけますか?

いろんな国で広く知られ、1人でも多くのひとが、自分の作品を気に入ってくれることです。具体的には2015年にはまた国内外とわず大きななにかを発信することを計画しています。まだまだアーティストとしてのスキルはまだまだなのでこれからも地に足をつけ、切磋琢磨して、作曲、DJ、ライブ、パーティーしっかりがんばっていきたいです。

  - Release Party -

12月7日 @ APOLLO CLUB TOKYO
http://www.clubberia.com/ja/events/229855-hiroyuki-arakawa-TRIGGER-album


- Soundcloud -
https://soundcloud.com/beroshima/muller-records-2084-hiroyuki-arakawa-trigger-album-preview-preview