Interview : yanma(clubberia)
――作品を聴いて、まず思ったのが電子音ひとつひとつが生命体のように感情をもっているように感じ取れました。それこそ、KENさんの子どもを見ているような感覚になりました。ご自身のなかでは、どのような作品になったと思いますか?
「音が生きているように聴こえる」というのは、このアルバムを作る上でのテクニカルなテーマのひとつでした。今のところFlareは、完全なレコーディング・プロジェクトであって、このアルバム上のすべてのサウンドは、ソフトウェアやハードウェアのMIDIを組んでプレイしているのですが、その上でランダムな部分、音が勝手に変化している感じ・音が自分の意志で鳴っている感じをどの曲にも入れ込みたいなと思っていました。プログラムに左右されない不確定要素として。そこを感じてもらったのは嬉しいです。あとは全体を通して音楽的・姿勢的に自由に自分を出せたというのが、このアルバムの一番の収穫かなと。
――曲の「長さ」「構成」「リズム」などダンスミュージックとしてのテクノのフォーマットに収まらない「作りたいものを作りたいように作る」というコンセプトがFlareにはありますが、これは実験的な楽曲を作るという意図も含まれていますか?
実験的な音楽を作るぞ!と意気込んで作っているわけではないですね。もともと自分が小学生の時にエレクトロニック・ミュージックを好きになった理由が「これまで聴いたことのない音を聴きたい。それが可能なのがこのジャンルなんだ」というもので、今でこそ自分も作り手側に回りましたが、その最初の気持ちが「聴いたことのない音が自分で作れたらさらに楽しいな」とアップグレードされた感じです。という意味ではシンプルに音をエンジョイしながら作ったらフリースタイル/エクスペリメンタルになった、という感じです。
――アルバムは、ダンスに適した楽曲とそうでない楽曲のふり幅が非常に大きく感じました。Flareに、実験的な意図も含まれるのであれば、「実験的なもの=踊れない楽曲」というイメージも、もたれることがあると思います。KENさんのなかで「実験的なもの=踊れない楽曲」というような構図は成立しますか?
実際には、多くがそうかもしれないですよね。ただ「実験的なもの=踊れない楽曲」ではなくて、「実験的なもの=でも一部の人は踊れるもの」であり、「実験的なもの=踊れません、ですが何か問題でも?(笑)」というのが僕のスタンスですね。そんなにハッキリ区分けしてません。例えばこのアルバムでは「Sympathetic Nervous System」とか「Parasympathetic Nervous System」とかは全くダンスの要素は入れていないけど、僕的にはテクノのつもりだし、「Downglide」はダンスっぽいビートを使ってるけど聴いてもらいたいのは、いびつなリフの部分だったり。その辺の線引きも含めて自由にやらせてもらうのがこのプロジェクトかなと。
――ダンスさせるために必要な音の要素の持論はありますか?
通り一遍かもしれないですが、第一にリズムやビート、その次にベース(必ずしもフレーズでなくてもいい)。あとはダンストラックが持つ展開(イントロがあってビルドアップがあってブレイクダウンがあってまた元に戻って、みたいな)。これは人が踊る上でのサイコロジーというか全人類共通の公式なのかなという気もします。自分がダンストラック、DJトラックを作る時はあえてこの型にハメてスタートしつつ、自分だけのオリジナリティとか遊びとかをその上に散らす、という感じですね。すべてが上手くハマると気持ちいいです。
――Flareが自由な制作名義だとしたら、KEN ISHIIの場合、どのようなことを考えて曲を作られてますか?
アルバム・プロジェクトとしてのKEN ISHIIは、楽曲的にはよりテクノらしいテクノというか、チャレンジングではあるけどテクノのイメージのなかに収まる感じというか、「KEN ISHIIはテクノだね」と思ってもらえるようなものを作りたいなと。その上でビジュアルやストーリーなど他の要素を巻き込んでより広く表現/アピールしたいという気持ちがあります。アイデアやコンセプトが固まるのに時間がかかっているので「SUNRISER」以降しばらくアルバムは出せていませんが。あといろいろなレーベルから出ているKEN ISHII名義のEPはアーティスト同士、レーベル同士の横のつながりでやっているテクノカルチャー内の活動という位置付けです。
「音が生きているように聴こえる」というのは、このアルバムを作る上でのテクニカルなテーマのひとつでした。今のところFlareは、完全なレコーディング・プロジェクトであって、このアルバム上のすべてのサウンドは、ソフトウェアやハードウェアのMIDIを組んでプレイしているのですが、その上でランダムな部分、音が勝手に変化している感じ・音が自分の意志で鳴っている感じをどの曲にも入れ込みたいなと思っていました。プログラムに左右されない不確定要素として。そこを感じてもらったのは嬉しいです。あとは全体を通して音楽的・姿勢的に自由に自分を出せたというのが、このアルバムの一番の収穫かなと。
――曲の「長さ」「構成」「リズム」などダンスミュージックとしてのテクノのフォーマットに収まらない「作りたいものを作りたいように作る」というコンセプトがFlareにはありますが、これは実験的な楽曲を作るという意図も含まれていますか?
実験的な音楽を作るぞ!と意気込んで作っているわけではないですね。もともと自分が小学生の時にエレクトロニック・ミュージックを好きになった理由が「これまで聴いたことのない音を聴きたい。それが可能なのがこのジャンルなんだ」というもので、今でこそ自分も作り手側に回りましたが、その最初の気持ちが「聴いたことのない音が自分で作れたらさらに楽しいな」とアップグレードされた感じです。という意味ではシンプルに音をエンジョイしながら作ったらフリースタイル/エクスペリメンタルになった、という感じです。
――アルバムは、ダンスに適した楽曲とそうでない楽曲のふり幅が非常に大きく感じました。Flareに、実験的な意図も含まれるのであれば、「実験的なもの=踊れない楽曲」というイメージも、もたれることがあると思います。KENさんのなかで「実験的なもの=踊れない楽曲」というような構図は成立しますか?
実際には、多くがそうかもしれないですよね。ただ「実験的なもの=踊れない楽曲」ではなくて、「実験的なもの=でも一部の人は踊れるもの」であり、「実験的なもの=踊れません、ですが何か問題でも?(笑)」というのが僕のスタンスですね。そんなにハッキリ区分けしてません。例えばこのアルバムでは「Sympathetic Nervous System」とか「Parasympathetic Nervous System」とかは全くダンスの要素は入れていないけど、僕的にはテクノのつもりだし、「Downglide」はダンスっぽいビートを使ってるけど聴いてもらいたいのは、いびつなリフの部分だったり。その辺の線引きも含めて自由にやらせてもらうのがこのプロジェクトかなと。
――ダンスさせるために必要な音の要素の持論はありますか?
通り一遍かもしれないですが、第一にリズムやビート、その次にベース(必ずしもフレーズでなくてもいい)。あとはダンストラックが持つ展開(イントロがあってビルドアップがあってブレイクダウンがあってまた元に戻って、みたいな)。これは人が踊る上でのサイコロジーというか全人類共通の公式なのかなという気もします。自分がダンストラック、DJトラックを作る時はあえてこの型にハメてスタートしつつ、自分だけのオリジナリティとか遊びとかをその上に散らす、という感じですね。すべてが上手くハマると気持ちいいです。
――Flareが自由な制作名義だとしたら、KEN ISHIIの場合、どのようなことを考えて曲を作られてますか?
アルバム・プロジェクトとしてのKEN ISHIIは、楽曲的にはよりテクノらしいテクノというか、チャレンジングではあるけどテクノのイメージのなかに収まる感じというか、「KEN ISHIIはテクノだね」と思ってもらえるようなものを作りたいなと。その上でビジュアルやストーリーなど他の要素を巻き込んでより広く表現/アピールしたいという気持ちがあります。アイデアやコンセプトが固まるのに時間がかかっているので「SUNRISER」以降しばらくアルバムは出せていませんが。あといろいろなレーベルから出ているKEN ISHII名義のEPはアーティスト同士、レーベル同士の横のつながりでやっているテクノカルチャー内の活動という位置付けです。
Flareとしては、新しいものだけでなくエレクトロニック・ミュージックの歴史を顧みつつ昔のものも、ビートもあったりなかったり、身体が動く局面と突っ立ってしまう局面が交互にあるような自由なスタイルでいければと。
――KENさんがエレクトリックミュージックを作ることの目的は、何になりますか? また、デビュー当時と現在では変わりましたか?
自分の存在証明であり、十代の頃から続く一番の趣味であり、という意味ではデビュー当時からそんなに変わっていないのかもしれません。以前、レコードやCDが売れた時代ではお金とか別の理由も結果としてあったのかもしれないですが、今みたいに音楽を売るのが厳しい時代では逆に当時の、あるいはデビュー前の気分にまた戻ってきてるような気もしますね。
――Flareは、個性的な楽曲が多いですが、テレビやラジオでも使われるそうですね。そういったマスメディアでは、もっと分かりやすいものが要求されそうですが、なぜでしょうか?
分かりません(笑)。これだけ番組があるとたまにはちょっと違うものがほしいと思ってくれる人がいるからかな? 自分でもテレビを見ててハッと気付いたりします。あとは送られてくる著作権印税のリストとかを見ても「なんでNHKでFlareのあの曲がこんなに使われてるんだ?」みたいなことも多いですね。
――今回、自身のレーベル<70 Drums>からのリリースですが、その理由は?
これまでFlareは、制作70 Drums/発売Sublime Recordsというスタイルでしたが、一回自分で売りの部分まで経験してみたかった、リリースに関して最初から最後まで面倒をみてみたかったというところです。特にこのアルバムは出来上がってみて音楽的に趣味性が強いと思ったし、濃いファンのみなさん中心に届けるべきものかなという思いもあって、プロモーションのスケールを小さくしてよりダイレクトなスタイルでリリースしようと。でCDプレスやおまけのバッグ制作のアレンジなんかも自分でやりました。
――海外ツアーはいかがでしたか?
8月は海外日程が多くて、サンフランシスコ、ジローナ(スペイン)、タラゴナ(スペイン)、シンガポール、アストゥリアス(スペイン)。とアメリカ、ヨーロッパ、東南アジアを回りました。シンガポール以外はフェスティバルだったんですが、サンフランシスコは「J-POP SUMMIT」という現代ニッポンカルチャーを紹介するフェスティバルで、そのオープニングイベントをボクのDJプレイ+森本晃司さん監督のアニメ映画というコラボレーションで、しかもカストロシアターという名劇場でできたのはいい経験になりました。
――今後、Flare名義でDJ出演はされますか? 2013年末にAIRでFlare名義でされてますよね?DJとしてクラブでプレイする場合、KEN ISHIIとどう差別化を図かっていますか?
つい先日CGアーティストの森野和馬さんの作品展示会のオープニングで彼とオーディオ&ビジュアル・セッションをしたんですが、その時の内容はFlareとしてのものでした。
こうしたコンセプチュアルでビジュアル中心なイベントがあればFlareとしてプレイできればいいなと思っています。KEN ISHIIとしては、ストレートな踊らせるためのDJを心がけていますが、Flareとしては新しいものだけでなくエレクトロニック・ミュージックの歴史を顧みつつ昔のものも、ビートもあったりなかったりと、身体が動く局面とボーッと突っ立ってしまう局面が交互にあるような自由なスタイルでいければと。
――20周年を記念してつくられたムービーのなかで、若い頃描いて夢はほとんど叶えられたと、おっしゃっていました。現在、目標や夢などはあったりしますか?
もともと遥か先の大きな目標とかは持ったことがなく、いつも数ヶ月先くらいしかみてないんですが(笑)、一応人生も折り返し地点を過ぎたんで何か考えないといけないですね。何がいいのかな? 基本的には、その時その時を一生懸命走ればいい結果がついてくると信じつつ、常に新しいことを経験しながら自分の好きな音楽を作り続けられれば、プレイし続けられればいいなと思っています。
- Release Information –
アーティスト : Flare
タイトル : Leaps
価格:2,500円(税込)
[トラックリスト]
01. Mole Tunnel
02. Downglide
03. Deep Freeze
04. Sympathetic Nervous System
05. Las Pozas
06. Iapetus
07. Parasympathetic Nervous System
08. Mousetrap
09. Shadows and Rings
10. A Year Later
■70 Drums Web Store
https://70drums.stores.jp