先日、5年ぶりのアルバム『Lotta Love』をリリースしたG.RINA。2013年にtofubeatsが発表したアルバム『lost decade』に収録されている「No.1 feat.G.RINA」のアンサーソングとして、本作で「愛のまぼろし feat. tofubeats」を制作した彼女。いかにしてこのような関係が生まれたのか、本イベントにも出演を果たしたふたりに話を聞いた。
Interview: TOMOTAKA HOSHIDE
Photo: Rio Yamamoto (81BASTARDS)
「“全部やる派”なところにシンパシーを感じる」G.RINA
――そもそも、おふたりが共演するきっかけはなんだったのでしょうか?
tofubeats:「Did It Again」(G.RINAが2010年9月にリリースしたアルバム『Mashed Pices #2』収録曲。のちにtofubeats『university of remix』にも収録。)かな。
G.RINA:4枚目に出したアルバム『Mashed Pieces #2』に収録されている全曲のアカペラデータを、いろんな方にリミックスしてもらおうと思って公開していたんです。気が向いたら私に送ってくださいという感じだったんですが、tofu君が「Did It Again」じゃない曲をリミックスして送ってくれて。その曲の印象がとても残っていたので、その後リミックスでアルバムを作ろうとしたときに、公募ではなくこちらから「この曲をリミックスしてくれませんか?」とお願いしました。そのリミックスでtofu君のことをきちんと知った気がします。名前はもっと前から知っていたんですけど。
――tofuさんは、もともとG.RINAさんの7インチを買われてたとか?
t:はい、中学校のときに神戸のJET SET RECORDSで。もうないんですけど……。そこでG.RINAさんの7インチを買っていて、「漂流上手」とか聴いていたんですよ。普通にファンだったので、アカペラが上がっていたのを見て、やってみようかなと思ってリミックスしました。その後、正式なオファーをいただいて、ご一緒して。そこから調子に乗って、「自分のアルバムでも歌ってくださいませんか?」とオファーさせていただきました。
――お互いの第一印象とか覚えていますか?
t:僕は、「本物だ!」って思いましたね(笑)。
G:初対面って「NO.1 feat.G.RINA」の撮影のとき?
t:かもしれないですね。
G:ミュージックビデオの撮影のときですね。音のやりとりは顔を見ずにやっていたんですけど。
t:メールでやりとりをしていて。Gさんに、「どうしても鰹節をおろすシーンを撮りたい!」って僕と監督がワガママを言って。結局そのシーンは使われなかったんですけど(笑)。しかも醤油をかけるシーンを撮るのに、生後間もない息子さんを現場までわざわざ連れてきてくださって。
――メールだけでやり取りしていると、初対面で「あ、この人こんな人だったんだ」というズレみたいなものはないですか?
G:全然。
t:僕もなかったですね。
――メールの文面そのままの雰囲気みたいな?
G & t:はい。
――その後はどういうやり取りをされたんでしょうか?
t:曲のこと以外、やり取りはそれほどないですね。
――ないですか?(笑)。「元気ですか?」とか。
t:いやー、それはもう…ねぇ?
G:(笑)。
t:ご家庭がある方に、そんなフランクな連絡は取らないです(笑)。
G:イベントなんかで時々一緒になることはあったよね。
――おふたりの共通の話題は音楽がメインですか?
G:そうですね。
――普段のくだらない世間話とかはそんなにしないのでしょうか?
t:僕が単純に「息子さん可愛い!」みたいになるくらいでしょ?
G:時間もあって話すことがあれば、別にくだらない話とかもすると思うんですけどね。
――ちなみに今日はどんなことを喋っていましたか?
t:めっちゃ根掘り葉掘り聞きますね(笑)。Netflix(定額動画配信サービス)のことですよね。
G:連続ドラマの話とか。
t:「何見てましたか?」とか。
G:『ブレイキング・バッド』の話とか(笑)。
t:音源をどこで買うかという話もしましたよね。
――音楽以外に共通点ってありますか?
G:音楽のことですけど、頼まれなくてもひとりでいろんなことをやってしまう“全部やる派”なところとか。オーダーがなくても、誰も聴いてなくても、“やりたいことはやる”ところにすごくシンパシーを感じます。
――ひとりで全部完結させてしまうということですか?
G:完結というか、まず自分から発信するような。
t:G.RINAさんは、自分のなかでやりたいことが決まっているところがいいなと思います。そこが、ファンになった最初の理由なんです。あと、「漂流上手」を聴いて、面白いなと思ったんですよ。「都会のジプシー」を聴いたとき、民族っぽい感じだったのが、ちょっとスイングジャズのような曲も入っていたり。でも、いろんなメンバーで作っているというわけではない。そういうのを見て、こんなに大きい幅がある、でも一貫性があることをひとりでやるってかっこいいなと。そんな風に思いながら、素人のときに音源を聴いていたんです。こうなれたらいいなと、その佇まいを参考にしています。
G:tofuくんは初期からすごく上手に自分を発信しているから、私も刺激を受けて頑張らなきゃなと思っています。
ーーおふたりはそれぞれ全部ひとりでできる方ということですが、コラボレートするにあたって、それぞれがぶつかるようなことはないんですか?
G:う〜ん……、なかったと思うんですけど。
t:でも「Did It Again」の1回目はボツでしたよね。多分無理だろうなと思って、かなり大ネタのサンプリングで作ったのがありましたけど、Gさんからボツが出ました。「もうちょっとちゃんとした感じにしてください」って(笑)。
G:(笑)。
――どこが気に入らなかったのですか?
G:気に入らなかったわけではなくて、tofu君ならもっとできると思ったから。
t:「まだいけるでしょ?」みたいな感じでしたよね。「確かに、じゃあやろう!」と思いましたね。Gさんにはそういう理由がはっきりあるんです。「何かイヤだ」とかではなくて、「ここをこういう風にしてください」と言ってくれるので、全然いやな気分にならないですね。
――では、いやな気分になるアーティストさんもいらっしゃるのですか?
t:たとえば、「トキめかない!」と言われたりすると、「何がトキめかへんねん!」って思うんですけど(笑)。「ココはこう思ったから、こうしたほうがいいんじゃない?」とか、「ココの歌詞がこうだと、ココと噛み合わないから」って指摘されると、僕も「確かに……」と思うんです。だから、Gさんの言うことは僕も納得できますし、そういうディレクションをしていただけるので助かります。
――明確な指示や指摘をするのは、G.RINAさんご自身も制作されているからですか?
G:似ている部分があると思って。こういう言い方で伝えれば伝わりやすいというのは、自分の経験からも勉強していますし、なるべくそうするようにしているのかもしれません。
――「ちょっとカワイイ感じにしてください」って言う人もきっといますよね。
t:素敵な仕事をたくさんいただいているので何とも言えないんですけどね(笑)。
G:「これを参考に」とかは言わないようにしてます。
t:もちろんそうですね。
G:「こういう曲、こういう曲、こういう曲のこの部分を寄せ集めた曲を下さい」というオーダーって、大きい仕事だと普通にあるんですよね。「Taylor Swiftと、コレと……」みたいな(笑)。
――「ビートはこんな感じ、メロディーはこんな感じで」と?
G:そう。でも、そうならないように、どこまでオリジナルで発信する感じを引っ張れるか。
t:自分のなかにある余白は、きちんとそのままでオーダーしてくれるんですよ。だから「もっとこういう風にできると思うから、こう考えてみて」というオーダーをいただける。
「全編にわたってキチンとコラボしたと感じるのは、個人的に珍しかった」tofubeats
――今回の曲に関しては、最初にどういったやり取りをしたんですか?
G:最初に私がデモを。まず、自分のパートを作ったものが土台にあって、これにtofu君のパートはtofu君が展開をして、歌詞はtofu君の部分はtofu君が。
t:「Dメロを作って」というリクエストがありましたね。
G:tofu君の登場箇所をこの場所にしてほしいと。
t:Dメロをゼロから書いて、あとアレンジを少々追加しましたね。
G:アレンジも一緒にできたらいいなと思っていたんです。思いつきで足してみたり、構成も一緒に考えられたらと。
t:結構やり取りは早かったですよね。
――他のアーティストさんとやることも多いと思うんですが、ふたりならではの掛け合いとかはありましたか?
t:僕、ボーカルとアレンジの両方で参加することがなかなかないので、今回は珍しくきちんとしたコラボって感じがしましたね。自分のアルバムになると、やり取りが意外と一往復で終わっちゃったりするんです。中途半端ではいやなので、完成間近まで作っちゃって、歌だけ録って終わりというパターンが多いんです。Gさんとの作品作りは、アレンジもそれぞれが作業したし、ボーカルも同様で。全編にわたってコラボしたと感じるのは、個人的に珍しかったし、面白かったですね。
――それは、前作よりもワンステップ上にいった感じでしょうか?
t:「NO.1 feat. G.RINA」は、1年ぐらい前にもともと僕が作っていた曲で、自分のボーカルじゃ不完全だから、「あ! ここはファンだし呼んでみよう」ってことで、Gさんを呼んだのが最初だったんです。制作過程ということではまったく毛色が違いますね。
G:前回はボーカリストとして参加した感じですね。共演するもののなかで、自分で詞やメロディを書かなかった初めての曲だったんです。後にも先にも唯一これだけ(笑)。
――「愛のまぼろし feat. tofubeats」では、「No.1 feat. G.RINA」と方向性を近づけるのが難しかったとtofuさんが仰っていましたが。
t:“続編”というテーマがあって、ビデオも「No.1 feat. G.RINA」のときと同じ僕の友人が撮っているんです。テーマだけはあったので、あとはGさんから来た最初のデモを聴いて、「こういうことか」と。
G:アンサーだと受けとれました?
t:個人的には一応組み立てました。
G:ビーフ(アーティスト間の論争)もののアンサーはよくあるんだけど、ラブソングのアンサーってどうかなと思ったんです。自分のなかでは「これがアンサーだ」と確信を持っていても、人はどう思っているのか少し気になっていて。それに「No.1 feat. G.RINA」の登場人物が少し非現実的な夢見がちな男の子の感じがしたので。ふたりの恋や関係が始まっているのかさえ分からないような気がして。そのなかの登場人物としてのアンサーって意味じゃなくて、もっと現実的な女の子の、そして関係も終わってしまったというリアルな世界にしようという感じでアンサーしようと思いました。
t:本当の恋愛だけじゃない、関係が始まる前と終わった後にしかない感じだということは分かりました。そもそも「No.1 feat. G.RINA」には、受け取り方がいろいろあって。レコード会社の人は「不倫の歌だ!」っておっしゃってるんですけど(笑)。
G:不倫の歌だと思ったことは全くなかった!
t:この曲をどう取るかでその人の性格が分かる。僕は、本当に何も考えないで作った曲なんです。少し話はそれますけど、ピエール瀧さんが「Shangri-La」を作ったときに、“トロフィー”って言葉が思い浮かんだそうなんです。歌詞には入れなかったけど、結果的に一位を取ったから、縁起が良かったんだなという話を聞いて。その話がすごく好きで、じゃあ僕も縁起がいい言葉をタイトルにすればいいと思って「No.1」ってタイトルだけを先に決めて。あとは好きなアイドルの写真を立てて作ったんです。
G:そんな感じしてたよ(笑)。
t:だから整合性が取れていないんです。だけど、それをGさんがロマンチックに、きちんとした流れとして受け取ってくださった。ただ 、「歌詞をきちんと直してください」って指示があって、確かに少し思慮が足りなかったなと、僕なりに反省しましたね(笑)。
G:いや、ちょっとしたストーリーの整合性についてのことだけです。だけど、 そうやってやりとりしながら一緒につくれたのはとても楽しい時間でした。
- Release Information -
アーティスト:G.RINA
タイトル:Lotta Love
レーベル:TOWER RECORDS
価格:2,000円(税別)
発売日:2015年10月21日(水)
[トラックリスト]
01. ミッドナイトサン
02. 音に抱かれて
03. Kamakura
04. 黄昏のメモリーレーン feat. やけのはら
05. Virtual Intimacy
06. いま何時
07. Back In Love (Music) feat. PUNPEE
08. Sweet Juicy Luv feat. LUVRAW
09. 空蝉 〜Twilight Long Walk〜
10. 愛のまぼろし feat. tofubeats
11. Life
アーティスト:G.RINA
タイトル:Lotta Love
レーベル:TOWER RECORDS
価格:2,000円(税別)
発売日:2015年10月21日(水)
[トラックリスト]
01. ミッドナイトサン
02. 音に抱かれて
03. Kamakura
04. 黄昏のメモリーレーン feat. やけのはら
05. Virtual Intimacy
06. いま何時
07. Back In Love (Music) feat. PUNPEE
08. Sweet Juicy Luv feat. LUVRAW
09. 空蝉 〜Twilight Long Walk〜
10. 愛のまぼろし feat. tofubeats
11. Life
- Release Information -
アーティスト:tofubeats
タイトル:POSITIVE
価格:[初回限定盤]3,600円(税別)、[通常盤]3,000円(税別)
発売日:2015年9月16日(水)
[トラックリスト]
01. DANCE&DANCE
02. POSITIVE feat. Dream Ami
03. T.D.M. feat. okadada
04. Too Many Girls feat. KREVA
05. STAKEHOLDER
06. Throw your laptop on the fire feat. 小室哲哉
07. I know you
08. Without U feat. Skylar Spence
09. すてきなメゾン feat. 玉城ティナ
10. くりかえしのMUSIC feat. 岸田繁(くるり)
11. 閑話休題
12. 別の人間 feat. 中納良恵(EGO-WRAPPIN’)
13. I Believe In You
※初回限定盤のみ過去全てのミュー ジック・ビデオを収録したDVDが付属。