INTERVIEWS

★STAR GUiTAR meets re:plus

 前作『Wherever I am』から、わずか4ヶ月でリリースされた★STAR GUiTARのフィフスアルバム『Wherever You are』(1時間で1曲を完成させる企画から生まれたアルバム『One Hour Travel』から数えると1週間)。タイトルからも伺えるように、前作の続編といえる今作にも、豪華なアーティストたちが参加している。さまざまなピアニストとのフィーチャリングで話題になったヒット作『Schrödinger's Scale』でもコラボレーションし、華麗な楽曲でリスナーを虜にした超技巧派ピアニストH ZETT M。日本をはじめ、中国、韓国とアジア諸国で計り知れない人気を持つジャジー/メロウヒップホップ界の覇者re:plus。ニューディスコ、ニュージャズ、ディープハウスを軸にフロアを揺らす注目の新人トリオバンドLotus Land。今回は、そんな豪華ゲスト陣のなかから、満を持してフィーチャリングを果たしたre:plusを迎えての対談インタビューをお届けする。
 アルバムのなかでも1、2位を争う美しさを放つ「forgive feat. re:plus」はどのようにして制作されたのか。2人の出会いから共通のルーツ、楽曲の制作工程の裏話までを2人に聞いた。

 

 


「re:plusくんの楽曲にはすごい奥行きを感じます。音としてではなく、曲として。すごい向こう側まで景色が見えるような」★STAR GUiTAR


――★STAR GUiTARさんの最新作『Wherever You are』で、二人は初共演となったわけですが、最初の出会いはいつ頃だったのでしょうか?

★STAR GUiTAR (以下S):それが、ちゃんと思い出せないんです。最初に会ったのっていつなんでしょう。
re:plus (以下R):本当に最初に会ったのは…。
S:あの忘年会にはいました?
R:どの忘年会ですか?(笑)
S:渋谷の安い居酒屋でやったやつです!
R:それいましたよ!
S:じゃあ、同じ場所には居たのにコミュニケーションを取っていなかったんですね。
R:そうだったんですかね…。
S:最初がいつだったのか全然思い出せないです(笑)。
R:そもそも、★STAR GUiTARさんが所属しているCLUSTER SOUNDSで、僕はatrie.って名義でCDを出していまして。CLUSTER SOUNDSの品番CSMC-001は実は僕なんですよ。

――意外なところに共通点がありましたね! というか、レーベルメイトだったんですね。

R:制作していた時に★STAR GUiTARさんとKiyoshi Sugoの話は聞いていたんですよ。なので、こういう音楽やっている人なんだっていうのは知っていたんですけど、初めて会ったのは覚えていない(笑)。

――こうして二人で話した事は?

S:何回もありますよ。初めて会ったのは思い出せないけど(笑)。
R:昔バーベキューやったりしましたよね。
S:あー、やりましたね。バーベキューして帰りにre:plusくんに送ってもらいました!
R:2010年くらいの話ですよね。車で送ったのはすごく覚えている。


――出会ったのはかなり前だというのが判明しましたが、今回が初共演ですよね。★STAR GUiTARさんが初めて聴いたre:plusさんの楽曲は何でしたか?

S:「Time goes by」ですね。

「Time goes by」


――曲を聴いた時、どんな印象を持ちましたか?

S:めちゃくちゃかっこいいなっていうのと、単純にあの曲は誰が一聴して良い曲だと思うはずです。あと最近の曲では「Everblue feat. Lazy Habits & Baby Sol」が好きです。
R:おお!? それ好きって人、初めて聞きました(笑)。

――re:plusさんのサウンドにはどんな印象を、お持ちですか?

S:すごい奥行きを感じます。音としてではなく、曲として。すごい向こう側まで景色が見えるような印象がre:plusくんの楽曲にはあります。なのに、これは僕だけかもしれないけど、見え隠れするトゲを感じますね。
R:ん? どういうことですか?(笑)
S:すごい優しく包んでくれるんだけど、そのなかにトゲがあるんですよ。ちょっとした隠し味的な毒が。

――それは楽曲のどういうところで感じますか?

S:フレーズはもちろんなんですが、ちょっとイレギュラーな音色とか、そういうのを入れてくるのが上手だなあって感じますね。
R:けっきょくアングラな音楽ばかり聴いてるので、自分の楽曲はわりとポップに作るんですけど…やっぱ残ります。
S:そう、残っていますよね。でもそれがね、僕はすごい好きなんです。隠しきれない感じが。

 

 

 
「★STAR GUiTARさんの魅力は手数の豊富さ。オーディオの編集や広げ方。あとは、判断力の早さ。僕だったら1時間あっても、ビートの8小節も作れない」re:plus


――次にre:plusさんが、最初に★STAR GUiTARさんの楽曲を聴いた時はどんな印象を持ちましたか?

R:一番印象に残っているのは、YOW-ROWさん(GARI)との「Mirai Real」のリミックスですね。すごいヤバくて、それをずっと聴いていました。

■「
Mirai Real」

あと、リミックスアルバム(2011年発売の『Blind Carbon Copy』)は車のなかですごい聴いていましたね。あとはSteven McNairとフィーチャリングした「Mind Trip」も最高です。

「Mind Trip」

――★STAR GUiTARさんの楽曲にはどんな印象をお持ちですか?

R:んー、最近は…、難しいな。難しくなったなっていう印象があります。前はもう少しストレートな楽曲が多かったなって。なんか心境の変化とかあったんですか?
S:ピアニストとフィーチャリングした『Schrödinger's Scale』を踏まえてなんですけど、むしろ正確に言うと僕戻っているんですよ。もともとインストが好きで入ってきたんですけど、最初の頃はボーカリストを入れてやっていて。10代の頃は、アンビエントな音楽とか聴いていたし。だから自分的には自分のルーツに戻っているんですよね。最初の★STAR GUiTARの印象からすると、意外なところに行っていると思われそうですけど。

――re:plusさんから見た★STAR GUiTARさんの魅力は何ですか?

R:手数の豊富さ。オーディオの編集や広げ方。あとは判断力の早さだと思います。これは極端かもしれませんが、この前まで『One Hour Travel』をやっていたじゃないですか。あれは★STAR GUiTARさんにしかできないんじゃないかなって。僕だったら1時間あっても、たぶんビートの8小節も作れない(笑)。だから、どこでゴーしていくかの上手さはすごいなと。
S:出たもん勝負ですよ。出た音を認めるだけっていう。
R:僕はそのへんがすごいネガティブなんですよ。
S:もちろん、普段はあんなに早くオーケー出さないよ(笑)。あの早さで曲を作っていたら、今頃ものすごい曲数になっている。でもちょっと違うかもしれないけど、曲中で小さくしたくなるパートってあるじゃないですか。僕は小さくするくらいなら消してしまえって思っちゃう。下げるならいらないって。逆に聴かせたい音はフェーダー振り切れるまで上げてやれって。極端なんですよ。それでだいたいスタッフに「消さないで」って止められるんですけど(笑)。
R:★STAR GUiTARさんの曲って、すごい音数が多いんですよ。解読できないくらい。
S:でもこれでも減ったんですよ。今は多分1曲につき50トラックくらい。昔は、自分の曲じゃないですけど提供曲で140トラックくらいいった(笑)。
R:僕はなるべく少なくして作っちゃうんですよね。
S:でも判断力の早さじゃなくて、極端なだけですよ。
R:そうですか? よくこんなこと思いつくなってことが多々ありますよ。

――確かに『One Hour Travel』ではパパッとフレーズが出てきて、打ち込んでいって、次へ次へと作って…

S:はい。やらないと間に合わないですからね(笑)。

――ちなみに、二人の共通のルーツ、シーンというものはあるのでしょうか?

R:Autechreとかアンビエント系は共通じゃないですかね。でも、メロディーのルーツってなんですか?
S:うーん、やっぱりなんだかんだ小室哲哉さんな気がします。入り口が小室さんとglobeだから。あとは色が濃いのは、UnderworldとかThe Chemical Brothers、Enigmaは俺のなかでは大きいです。

――re:plsさんは、アンビエント以外にはありますか? ヒップホップとかはどうですか?

R:ヒップホップは20歳を過ぎてから聴くようになりました。もともとバンド人間なので、よく大学生の頃はFABTONE RECORDSのライブとか行ってたんですよ。それで、その何年後かにFABTONEのA&Rが始めたGOON TRAXと契約したので、メロディーの共通するエモ的なところは絶対あるなと思います。
S:でも僕もそういうのがあって、初めて買ったCDが広瀬香美さんの「ロマンスの神様」なんです。そして今いる事務所が広瀬香美さんと一緒です(笑)。広瀬さんの音楽とは全然かけ離れたところにいますけど(笑)。

 

 


「一度コードを全部抜いて直感でやろうと思って。コードを全部無視してリズムだけで作り直した」re:plus


――それでは、今作に収録されている「forgive feat. re:plus」はどのように制作を進められたのでしょうか?

「forgive feat. re:plus」


S:いつか一緒にやりたいなっていうのは前からあったんですよ。ただタイミングが今回になってしまったという…。周りの人からは「なんでやんないの?」くらいで言われていたんですよね。
R:制作は、最初に★STAR GUiTARさんからコードとリズムのデモをいただいて、それに沿って作ろうと思っていたんですけど…。難しいんですよ、コード進行が。僕もちょうどその頃忙しくて、2~3日の間にイメージは作っておかなきゃっていう状況だったんですよ。ただ、時間があれば頂いたもので作っていこうとしていたんですけど、このコード進行にメロディーを乗せるのは厳しいと思いまして。それで、一度頂いたコードを全部抜いて直感でやろうと思いまして。それでコードを全部無視して、リズムだけで作り直しちゃったんです。
S:フィーチャリング史上初の、全無視!(笑)。リズム残したって言っていますけど、テンポ変えられてましたからね(笑)。
R:そうでしたっけ? あ、たぶん尺も変えましたよね、僕(笑)。
S:僕のデモは無かった事にされているな、と(笑)。
R:いや、でもあのデモがなかったら生まれてないですよ!
S:でもそれが面白くて。最初は触りだけ送ってもらったんですよ。それ聴いた瞬間に「うわっ、めっちゃいい」ってなって。もうできがってるなって(笑)。ところで、僕のデモどこいったのかな? みたいな。これは俺のデモの先の展開とかかな? みたいな感じでした(笑)。いろいろ考えたけど、あれ、これ根本的に違うなって気づきました。でも単純に、ああ、すげえいい曲ってなりましたね。

――期待を良い意味で裏切ってきた感じですね。

S:そうですね。すごく良い曲です。なんか「ちょっと変えてもいいっすか?」みたいな相談は受けていたんですよ。それで「そんな気にしなくていいっすよ~」って返事をして。部分部分で変えるのかなって思って「僕の曲に沿わなくてもアイディアあるなら出してください」くらいの感じでいたら、僕のデモの原型はなかったんです(笑)。
R:僕は、この形式でやるのが初めてでどこまで介入していいのかがわからなかったんです。今までは自分主体で曲を作っていましたし。だからどの程度まで踏み込んでいいのかがわからなかったんですよね。他の人はどうやっているんだろうって思いました。
S:今までやった人は、良いところを残して先の展開を別の展開にしたり、こっちの方がいいんじゃない? とか。あとはデモに沿った上でこういうのもあるよ、とか。 でも、全部変えてくるってのはなかったです。すごいですよね(笑)。

――逆に予想と違った曲ができて面白かったということですね。やりとりは何回くらいされましたか?

S:実質1回です。
R:はい。
S:僕はre:plusくんに対して、なんかやってって言ったことはないです。
R:なかったですね。
S:もともと打ち合わせしたときに、re:plusくんから「ストリングスも合わせてre:plusだから」っていうのを言われてまして。それで最初ピアノだけ聴いた時点で「あ、いいわ」ってなりました。だからストリングスもお任せします、と。実際ストリングスを入れてもらったらすごく良い出来栄えで、もうこれでいいんじゃないかってなりました。もうこれは僕が提供してもらっているなくらいの(笑)。それくらい何にも言わなかったですね。

――リミックスの感覚にも近いのかもしれませんね。

R:感覚はそれに近いと思いますよ。
S:確かに。音楽的なところはデモとしては残ってはいなかったけど、こういう曲にしたいっていう想いは全部汲み取ってもらっていたので、ちゃんと★STAR GUiTARの曲にはなったかなと思います。ただ、re:plusくんのメロディーが乗ったので苦労しました。僕の音が無くても成り立ってしまっていたから(笑)。
R:確かに、ここかららどうなるんだろうというのはありましたね。ここから間引かれるのかなとか。実際はどうしました?
S:re:plusくんの音がしっかりと面になって出ていたので、僕の音は点で作っていけば整合性がつくかなと思って作りました。もともと、そういうのが好きですし。あとはよりドラマチックにしたかったんですよね。ひとつ言いたいんですけど、音を足していくなかで思ったのが、re:plusくんのコード進行も難しいんです。なので、そこはお互い様だと思っています(笑)。でも、聴いている時にそういうのを感じさせないんですよね。実際、演奏するとなるとすごい難しい。
R:やっぱお互いに、うわ、難しいっていう風に感じちゃうんですね(笑)。
S:お互いにコード進行が難しいって感じるのは、持っているコード感が違うし自分たちも聴いている分には気にならないけど、分析しようとしだすから、なんかすごく難しいことやってる! って感じるんだと思います。

 

 


「枝みたいなのを作るのがすごい好きなので。メインに対して、ちょこちょこ動くものを作るのが好き」★STAR GUiTAR


――制作では1度も会うことはなかったのでしょうか?

S:いや、1回会いました。ストリングス録りのときに。re:plusくんのスタジオに遊びに行って、いいねっ! って言って終わり、ケーキをいただいて帰りました(笑)。

――「forgive」というタイトルはどういう意味ですか?

S:タイトルは僕が決めました。許すとか、受け入れるとかそういう意味なんですけど…。デモとか全部変えてきても許すよ! っていう意味です(笑)。
R:そこにトゲがあったんですね(笑)。
S:僕は受け入れるよっていう。

――本当にその意味ですか?(笑)

S:ウソですよ!(笑) もともと、そういうテーマを持ってはいたんですよ。今までの★STAR GUiTARにはなかった雰囲気と、re:plusくんの持っている美しさや切なさだったり痛みだったりを出せたらいいなっていうのを考えて作りました。
R:その話はすごく覚えています。だからそっちにフォーカスを当てて作ろうと思ったんですよ。それで、申し訳ないですがコードを無視して…。
S:お前のはテーマを感じないから変えるぞっていうね。
R:いやいやいや…。難しかったんですよ! メジャーコードだったので!
S:そういう意味もあって。許すっていうのは許す側にも痛みは伴うし、ちょっと相手に対して一歩踏み出している恋愛観とか、そういう感じが出せたらなという意味でのタイトルです。究極は、お互いがすべて受け入れて許し合うっていう。後付けですけど。本当の意味は、さっき言ったこと(デモを変えたこと)です。
R:ちょっと根に持っているじゃないですか!(笑)


――re:plusさんは最近の★STAR GUiTARさんの楽曲でお気に入りとかありますか?

R:fox capture planとの「The Curtain Rises」ですね。ぴったりハマっているな、と感じました。
S:唯一のオール生録音曲です。外のスタジオで録ったのはあの曲だけです。
R:あとは、今回僕が参加させて頂いた『Wherever You are』の中だと、H ZETT Mさんとの「Child's Replay」。あれ良い曲ですね。

――今後、二人のコラボレーションの予定はありますか?

S:望んで頂けるなら!
R:もう許してもらえないんじゃないかな…。
S:もう俺はデモ作らないんで(笑)。
R:逆パターンやっても面白いかもしれないですよね。
S:re:plusくんがデモを作って…(笑)。
R:でも今回の曲、すごく良いのができたと思います。
S:初めてなのに、初めてじゃない感じでしたね。とても刺激的でした。


――では、今後のご予定は?

S:re:plusくんはデモ作りですかね…(笑)。
R:コラボに向けて…。逆でやったらおもしろいですかね?
S:俺はすごいプレッシャー…。
R:オーディオのアレンジや編集をしてもらった方が生きると思うんですよね。僕が作って、それを★STAR GUiTARさんに調理してもらう。
S:re:plusくんのメロディーはすごく強いんですよ。幹みたいな。僕は枝みたいなのを作るのがすごく好きなので。メインに対して、ちょこちょこ動くものを作るのが好きです。
R:では、また是非コラボを。
S:『One Hour Travel』で…。
R:いやです(笑)。

 

 

- Release Information -

アーティスト:★STAR GUiTAR
タイトル:Wherever You Are
レーベル:TOWER RECORDS
価格:2,160円(税込)
発売日:2015年12月9日(水)

[トラックリスト]
<CD ver.>
1.Only The Begining
2.Changing The Same
3.Child's replay feat. H ZETT M
4.forgive feat. re:plus
5.drop me
6.Cross Our Path
7.My Classic
8.remedy
9.There is...
10.Trace back feat. Lotas Land
11.To the moon and back
12.Wherever We Are


<Digital ver.>
1.Only The Begining
2.Changing The Same
3.Child's replay feat. H ZETT M 4.forgive feat. re:plus
5.drop me
6.Cross Our Path
7.If in life
8.My Classic
9.remedy
10.To the moon and back 11.Transparent
12.Wherever We Are



iTunes:https://itunes.apple.com/jp/album/wherever-you-are/id1057907623?app=itunes
●配信限定「ONE HOUR TRAVEL」
OTOTOY:http://ototoy.jp/_/default/p/58190
●MV 「Changing The Same」
YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=i6c7_A3VSOI
★STAR GUiTAR公式サイト:http://www.starguitar.jp/http://www.starguitar.jp/
CLUSTER SOUNDS公式サイト:http://www.clustersounds.jp/