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videobrother

ノスタルジックなメロディ、異郷の薫り、ファンクやロックを織り交ぜた雑食感など、独自の世界観を展開し続ける8人組ジャズバンド、videobrother。2008年の結成以降、都内のライブハウス、クラブ、路上などさまざまな舞台で“極楽に導く”ライブパフォーマンスを展開。その独特の世界観が話題を呼び、今年5月にファーストアルバム『馬鹿と煙』のリリースとともに、全国デビューを果たす。そんな今話題沸騰中の極楽ジャズバンド、videobrotherの代表を務める山田宣人に、アルバムのコンセプト、曲に込められたストーリー、そして今後の展望などについて聞いた。

 

 



自分で勝手に昔話を作ってそこに曲をつける、という作曲スタイル。


ーー今回のアルバムタイトル『馬鹿と煙』の意味を教えてください。
名前の由来は「馬鹿と煙は高いところが好き」ということわざからきています。 昨年から“来年はフルアルバムを出そう!”という気持ちがメンバーで高まりました。あれこれ話をしているうちに、アルバムタイトルを冠したイベントをたくさん興し、そのたびに新曲を披露しました。“新曲をアルバムに入れ、これまでの自分たちの代表曲も入れたらフルアルバムができちゃうのでは?”と、こういう流れでアルバム制作が始まりました。イベントタイトルもアルバム名も意味合いは同じで“浮かれた我々が天高く舞い上がり、その愚かしさ、可笑しみをみなさんに披露して一笑得ようではないか”という想いをこめました


ーー曲のタイトルにおいて、童話のようなコミカルなものが多いですが、何かモチーフにしている題材などはありますか? 
モチーフは童話や『まんが日本昔話』にあったような昔話のタイトルです。『まんが日本昔話』の挿入曲はどれもこれも私にとって素敵なものばかりでした。また、カセットテープで聴いていたグリム童話やアンデルセン童話の物語にも素敵な曲がたくさんあったんですよね。そこから影響を受けて、曲名をつけるとき、ついつい昔話みたいなタイトルにしてしまうのです…。気持ち悪いんですけど、自分で勝手に昔話を作ってそこに曲をつける、というのがわたくしの作曲スタイルとなりました。


ーーそれは、どのような物語ですか?
メンバーにも各曲の物語の詳細まではじっくり語ったことはないんですけど、ここにいくつか列挙いたします。アルバム10曲目の「死なすな!」は姥捨て山に捨てられたお爺さんお婆さんが、危機に瀕した自分のいた村を助けにいくというお話です。弱いけど戦う、死ぬのは怖いけど助ける! こういう素敵な老人たちの話です。アルバム2曲目の「天国まで何千里」は、「死なすな!」で死んでいった老人たちが愉快に死んでいく、その道中のお話です。途中で地獄に落ちそうになったり、天女様に救われたりとごちゃつきながらも天国を目指す話。死んだら終わりではなく、まだまだストーリーは続くんです。アルバム4曲目の「王様の樹」は擬人化した樹々のお話です。巨大な樹の王様が治める平和な国に、隣の貧しい国の使者が救済を求めて訪ねてくるのですが、使っている言語が違い、姿が違うためアレヨアレヨで戦争が始まってしまうんです。もともと優しい王様です、使者の意図が正確に伝われば助けてあげたのに…。そんな切なさをはらんだストーリーです。8曲目の「遠々野々」は岩手県遠野地方の逸話伝承を記した説話集からきています。そのなかにすごい話がありまして。仲の良い姉妹がいて、2人で芋を食べるんです。姉はおいしいところを妹にあげたのに妹は姉が食べているほうがうまいのだと誤解し、姉を恨んで刺しちゃうんですよ。びっくりしますよね? 刺された姉はその瞬間カッコウ(ガンコ)になって飛び立つんです。刺した妹は自分が誤解していたことに気付いて時鳥(ホイチョガケ)になって飛び立つんです。このハードなお話をイメージして作ったのがこの曲です。といった具合にストーリー、曲名が先行してできてそこに曲をつけています。


ーー本作では「天国まで何千里」や「王様の樹」、「イワンの馬鹿」、「河童と狸とガマガエル」など、陽気なダンスチューンが多く収録されています。“踊る”ということに関して何か特別な思いはありますか?
「ええじゃないか」ってご存知でしょうか? 江戸時代末期、慶応時代の社会現象で人々が世の中のあらゆる社会不安、世直し要求を求めて歌い踊り狂うってやつです。「新しい世の中へ!」という希望の踊り。私はあの文化が大好きなんです。当時の人の踊りって想像もつきませんけど、私はステージにおいて当時の庶民の踊りを想像して舞い踊っております。踊り方やスタイルではなく、魂が出てきちゃって動いちゃったみたいな。我々の作った曲でそんな風にお客さんが舞い踊ってくれたなら至上の喜びです。


ーーバンド名の「videobrother」とはどういった意味合いを込めて命名したのですか?
バンドを立ち上げてしばらくは、バンド名がなかなか決められませんでした。そんなある日、テレビを見ていたら私の大好きな女性シンガーaikoのライブ映像が放送されていまして。“なんてキュートなんだ”と見てたら、aikoさんのTシャツに“videobrother”と書いてあったんです。電撃が走りました。“これだ!”って。すぐさまバンド名としました。 数年後、映像を見直したらvideobrthersでした。“s”ついてました。今更変えられません。
 
 

 

 



死が訪れたときに思い出してもらいたい音楽を目指している


ーーvideobrotherはジャズシーンのなかでも“極楽ジャズ楽団”という独自のコンセプトで活動されてますがバンドにとって“極楽”とは何でしょう?
昔話とか、おとぎ話ってポップに死が訪れるじゃないですか? 死んでからの話や死んでも地獄から力ずくで戻ってくる話とか。お化けになったりとかいっぱいある。あれらの話を見聞きしているとなんだか“死”が不思議と怖くなくなる感覚に陥るんですよね。死が終わりではなく、死んでからもエキサイティングなことが起こったり、現世に戻ってきて近親者の枕元に立ったり(笑)。“死んでるけど死んでない”というか。“極楽=ピースな死”。これが私の考える極楽感です。その時が訪れても思い出してもらいたい音楽、これを私は目指しています。


ーーvideobrotherの曲は、ジャズをはじめ、ファンクやロック、またワールドミュージックなど、さまざまな要素が含まれています。音楽的ルーツはどこからきているのでしょうか? 
私の実家は新潟の神社です。その性質上、実家では年間何回もお祭りが催されます。お祭りでは、横笛や太鼓などの和楽器を村のみんなで演奏して町を練り歩くんです。それらの祭囃子が私にはしみついています。これがルーツでしょうか。そこに、先ほど話した昔話の要素が加わって、私の楽曲となりました。そして、現在のバンドサウンドはそれぞれ違うジャンルを経験している現メンバーの考え方やプレイが、私の拙いメロディを素敵な楽曲にしているのだと私は考えます。インスピレーションが湧く瞬間はいろいろです。 ただ、その多くは何となくぼんやりとひとりで物語を考えているときに、そのお話にどんな曲が挿入されたらいいか? などを考えていると何となくメロディができ上がります。私はそんな危なげな中年です。


 
 



ーーライブでは、バンドの演奏力の高さもさることながら、代表をつとめる山田さんの表情やパフォーマンスにもとても魅力を感じます。バンドとしてライブ中に常に意識していることなどはありますか?
私は極度のあがり症です。ちょっと本当に病的なやつです。語りたい思いがあっても、大勢のお客さんの前で痙攣し、カラゲロを吐くといったひどいありさま。そんなある日、誰かが言ったんです。「紙に書けばいいのに」。また私に電撃が走りました。読めばいいのです。書いてあることを。思っていたことを。大きな声で! なので、私がライブ中に気を付けていることは「間違えずに読む!」これのみです。


ーーバンドとして尊敬しているアーティスト/バンドを教えて下さい。
個人的に尊敬しているのはお世話になっているスター、ハマケンのバンド、在日ファンク。そして在日ファンクでトロンボーンを吹いており、自身の「Gentle Forest Jazz Band」でも大活躍しているジェントル久保田氏ですね。 和光大学時代の先輩であったジェントル久保田氏は人間的に、浜野君は音楽的に私に影響を与えてくれました。


ーー活動されているシーンのなかで、特に気になっているアーティスト/バンドはいますか?
我々の周囲には素晴らしいバンドがたくさんいらっしゃいます。片思いのバンド/アーティストも含めれば 、KILLING FLOOR、たをやめオルケスタ、Yasei Collective、JAZZ COLLECTIVE、PYRAMIDOS、紫ベビードールなどきりがありません。そんななか、現在videobrother全員が満場一致で「好きだ!」と思うのは、間違いなく、アラゲホンジさんですね。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、アラゲホンジは齋藤真文氏率いる未来型お祭りロックバンドです。和楽器とエレキ楽器を駆使し、とんでもない極上ダンスミュージックを展開する彼らを我々は尊敬しております。

 

 

 



メンバーは最高のミュージシャンであり、7人の心優しき私の介護者


ーー今年でバンド結成8年を迎えるvideobrotherですが、印象深かったエピソード、培ってきたもの、バンドの考え方の変化などがあれば教えて下さい。
8年のなかで培ってきたもの、それは現在の素晴らしいメンバーです。結成当初からいるメンバーは私を含めて3人。残りの5人はみんな結成して数年後に加入してきました。それぞれがさまざまな音楽の下地があり、ものすごい腕前の素敵なミュージシャンです。現在の編成に近づくほどに、表現できることが増え、メンバー間の笑顔が増えていきました。メンバーみんなが私の拙い説明で音楽を作り、私の考え方に賛同してくれる。彼らは最高のミュージシャンであり、7人の心優しき私の介護者なのです。


ーー現在、videobrotherをはじめ、fox capture planやbohemianvoodoo、Yasei Collective、Schroeder-Headz、ADAM atなど、いわゆる次世代ジャズシーンを担うさまざまな特徴をもった国内バンドが台頭しています。今のジャズシーンに対して何か感じることはありますか?
列挙いただいているそれらのバンドは本当に素晴らしいですよね。かっこいいの一言に尽きます。今回の我々のアルバムが、CDショップで彼らと一緒に並んでいると恐縮してしまうほどに。特にYaseiCollectiveは和光大学時代のおっかない先輩、マサナオ氏率いるバンドでとってもかっこいいです。とてもじゃないけど同じことはできない。そう思います。そのなかで感じていることは、我々ができること、したいことを連ね、その結果その次世代ミュージシャンの方々と肩を並べられるようになりたいと感じています。


ーーバンドにとってジャズとは何でしょうか?
私は大学時代ジャズ研に所属していました。ただ、ジャズが何なのかは残念ながらわかっていません。ただ何となく思うのは、ブルーズメンが自身の魂を抜き取って楽器で表現しているのがブルースであるように、我々の魂を抜き取ったものが極楽ジャズであったらいいなと思ってます。ほかのメンバーだったらもっとうまく言えるのかもしれませんが、私の表現力ではこれが精いっぱい。残念です…。いつかジャズを知りたいです。


ーー今後の展望を教えてください。
結成当初から私が掲げているのは“お客さんにキャーキャー言われる!”というものです。残念ながらまだ達成しておりません…。いつの日かキャーキャーとお客さんに言ってもらうべく、もっとたくさんのクラブやライブハウスのステージに立ち、あらゆる客層のお客様に見てもらう! ツアーもやってみたいしフェスにも出たい! やりたいこと、やらなければいけないことは山のようにあります! これまでよりももっともっと精力的に活動していきますので、どうぞ我々videobrotherをよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

- Release Information -

タイトル:馬鹿と煙
アーティスト:videobrother
リリース:5月11日(水)
レーベル:VYBE MUSIC
価格:2,160円

[トラックリスト]
1. intro
2. 天国まで何千里 
3. 韋駄天様、こちらです
4. 王様の樹
5. ちょいと桃狩りへ
6. ハミングバード 剛力ver.
7.  イワンの馬鹿 *
8.  遠々野々 ~とおとおのうのう~
9.  河童と狸とガマガエル 
10. 死なすな!
11. 猫野郎

■リリースページ
http://www.clubberia.com/ja/music/releases/4765-videobrother/