INTERVIEWS

kiki vivi lily

“kiki vivi lily”という言葉を聞いて、何をイメージするだろう。宮崎駿作品の主人公、女性ファッション雑誌、ユリの花。そのどれもが当てはまらないか、あるいはすべてが当てはまる、そんな謎めいた新人女性アーティストkiki vivi lilyが今年デビューする。彼女は、これまで“ゆり花”というアーティスト名で、都内のアコースティックシーンを中心に活躍。柔らかい歌声と、どこか心が温まるような甘いサウンドを特徴とする彼女の楽曲は、全国的人気アイドルにもカバーされるほど高い支持を獲得していた。活動が勢い付いてきたかに思えた彼女は、昨年突如活動を休止。そして今年、“kiki vivi lily”という名で復活を遂げ、今年10月19日(水)にデビューアルバム『LOVIN' YOU』をリリース。ラップアルバムではないが、ヒップホップ要素が強く、同時にシティポップ感やソウル感がうかがえる、なんとも形容しがたい新たなJ-POP作品として、早くも大きな話題を集めている。そんな彼女に、“ゆり花”と“kiki vivi lily”という2つのアーティスト名義をわたり歩いてきた心境をはじめ、音楽のルーツ、レコーディングでのエピソード、そして『LOVIN' YOU』へ込めた想いなどを聞いてみた。


Interview&Text: Yoshiki Yamazaki(clubberia)
Photo : Satomi Namba(clubberia)

 

 



ループトラックにラップではなく、複雑なメロディをどれだけのせられるか


ーーアルバム名でもあり、リードトラックでもある「LOVIN' YOU」が作られたきっかけはなんだったのでしょうか?
以前はアコースティックシーンでゆり花というソロ活動をしていたのですが、自分のやりたい音楽をやれていないと感じ、昨年の8月に活動を休止したんです。ちょうどその頃、ディスコ調の曲などを歌う胸キュンディスコティックというユニットでも活動をしていたのですが、当時のメンバーにコヤマさんという方がいまして。10年前にバンド活動を辞めて以来まったく音楽活動を行っていなかった彼が、胸キュンディスコティックのために10年ぶりに曲を書いてくれたんです。「アジアンリゾート」という曲なのですが、その曲を聴いて自分の感性にすごくはまった気がしたんです。その後、私と彼で何か1曲作ってみようとなり、作った曲が「LOVIN' YOU」なんです。

■「アジアンリゾート」/胸キュンディスコティック
https://soundcloud.com/hairsalon/sqhjoygywgdx

ーー製作はどのように進みましたか?
最初にデモ音源が送られてきて、「こんな感じの曲作らない?」と言われすぐに賛成し、コヤマさんの自宅で1日かけてレコーディングをしました。そのあまりの出来のよさに2人で「本当にいいものができた!!」と感動し、「これをどこかのレーベルに送ったら絶対に引っかかるし、むしろ引っかからないわけがない」という気持ちが沸いてきて。その曲が出来上がった次の日に、ULTRA-VYBEのオーディションが開催されるということを知って応募したんです。

ーーULTRA-VYBEのオーディションがきっかけでアルバム制作に至ったというわけですね。
そうなんです。ありがたいことにULTRA-VYBEの社長が聴いて下さって、後日「アルバムを作ろう」という話になり、このアルバムをリリースすることになりました。

ーーアルバムは全体的にポップな感じでまとまってますが、ビートの主張が強いヒップホップ調の曲も多いですよね。
「LOVIN' YOU(曲)」を製作中に、リズムをどうするかコヤマさんとずっと悩んでいたんです。それでジャニス(東京都・神保町にあるレンタルCDショップ)に2人で行って、いろんなサンプリングビートのCDを借りました。そのなかで、すごく気に入ったビートトラックを曲にはめてみたんです。サンプリングビートを重ねていくうちに、どんどんヒップホップの要素が醸し出されてきていい味が出てきたので、他の曲もヒップホップ的要素を盛り込んでいく方向に向かいました。

ーー他の曲もビートを重視して作られたのですか?
今回のアルバムはポップスではあるのですが、リズムトラックは特にこだわって作りました。でも、「Stay My Boy」のように曲のコードから作っているものもあります。この曲は、ループを多用するヒップホップのトラックメイクのように、4つのコードのループのみで構成されています。ただ、今回のアルバムではループトラックにラップではなく、どれだけ複雑なメロディをのせられるか、というところに挑戦しています。

 

 

 

 

コーラスワークの完成度の高さに感動し、レコーディングブースで泣いてしまった


ーーレコーディングはスタジオで行ったんですか?
ULTRA-VYBEのスタジオでレコーディングしました。スタジオでレコーディングをするのは今回が初めての経験だったんです。なので、まずレコーディングをするということ自体にとても感動しました。また、その日レコーディングしたラフミックスを聴かせてくれたときに感動して泣きました(笑)。

ーーどういったところに感動したのでしょうか?
今回のアルバムでは、コーラスワークにすごく力を注いでいます。今までも、宅録ですがコーラスワークを重要視して曲を作ったりしてきたのですが、いかんせんミックス能力が乏しく、奥行感をなかなかうまく出せずにいました。でも今回は、エンジニアさんに完璧にミックス処理していただいたことによって自分の理想どおりのコーラスが実現し、そのあまりの完成度の高さに感動し泣いてしまったんです。

ーーコーラスワークを重視するようになったきっかけは何だったのでしょうか?
両親の影響もあり、山下達郎さんの作品がとても好きなんです。彼の作品では声を何重にも重ねるといった多重録音をされているんです。そういった重なりや効果的なコーラスを聴くのが昔からすごく好きで。最近では、アメリカの5人組グループNew Editionの代表曲「Mr. Telephone Man」が好きでよく聴いてます。コーラスワークがとてもカラフルに聴こえるんですよね。コーラスワークを考えることは好きですし、作品がどんどんカラフルになっていく過程を楽しみながらレコーディングができました。

ーー本作は、ヒップホップの要素だけではなくシティポップの要素も見受けられますが、そういったものもご自身のルーツとしてあるのでしょうか?
そうですね。松任谷由実さんや土岐麻子さんもすごく好きだったので、そういう部分が音に現れているのだと思います。そういった方々の音楽も、やはり両親が好きでよく聴いていたという背景がありますね。ラジオも毎週日曜日に車のなかで聴いていましたし。


■New Edition - Mr. Telephone Man

 

 

 

音楽活動を始めたきっかけは九州の音楽番組への出演。“外”に向けた曲を作り始める


ーー2011年、自身初のオリジナル曲「ふみきり」で、KBC九州朝日放送の「V3新人オーディション」の最終選考会に出場されたそうですね。
「V3新人オーディション」は、九州限定で放送される深夜番組なのですが、その番組に友達が出ていました。福岡の周りでは音楽活動をしている人がたくさんいて、その番組に出演している友達を見ていて私も出たいなと思うようになり、曲を作って応募したんです。

ーー最終選考で何かアドバイスはいただけましたか?
当時はなにも考えず、ただ曲を作って応募しただけでした。審査員の方にその旨を話したら、「これは自分の“内”に向けた曲だから、これからは“外”に向けた曲を作ってごらん」と言っていただき、その後また曲を作り、ヤマハが主催するアマチュア向けの音楽コンテスト「Music Revolution」に応募したんです。そこでも東京のセミファイナルまで勝ち上がったのですが、当時司会を務めていた方が都内でライブイベントを主催しているイベンターで、懇意で私をライブイベントにどんどんブッキングしてくれるようになったんです。今思えば私の音楽活動の最初のスタートラインはそこでしたね。そこからゆり花としての活動を始めました。

ーーゆり花名義で活動されていた頃は、何曲ぐらいオリジナル曲をもっていたのでしょうか?
30曲ぐらいです。でも、ライブのために曲を作っているだけで、作って発表して、作って発表しての繰り返しでした。でもそういうやり方で活動していたら、私が普段聴いている音楽からだんだんかけ離れていってしまって。本当はもっとビートを感じて聴いたりするのが好きですし、そういった音楽を普段聴いているのにもかかわらず自分のフィールドに向けた作曲活動をしていたので、どんどん矛盾を感じ始めていって。それが積み重なって、最終的に「もう一度自分のやりたいことを見直してみよう」と思い、音楽活動を休止することにしたんです。

ーーゆり花時代の楽曲のひとつに、地下アイドルBiSの元メンバー寺嶋由芙さんがカバーした楽曲「80デニールの恋」がありますよね? どういった経緯でカバーされることになったのですか?
グレートハンティングという新人発掘チームがありまして、そちらでお世話になっていた時期があったんです。当時、そのチームに私の歌をすごく気に入ってくれていた方がいまして、その方が後に寺嶋さんのマネジメントに携わることになったんです。その後、私の曲を寺嶋さんにぜひ歌わせたいと仰ってくれて、カバーしていただくことになったんです。

■80デニールの恋/ゆり花
https://soundcloud.com/yurika-8/80-short-ver

ーーこのカバーをきっかけに何か身の周りで変化は起きましたか?
変化というか、いろいろ学びましたね。寺嶋さんはすごく人気のあるアイドルさんなのですが、カバーをきっかけに一緒にライブをする機会が増えまして。彼女の誕生日イベントで一緒にツーマンライブをやったり、大勢のアイドルさんが出演するアイドルイベントに出させて頂いたり。アイドルさんのファンの方って本当にアイドルさんのことが好きなので、そのアイドルさんを応援するという意味で私のこともすごく好意的に見てくれて。どれもすごくあたたかいライブで、とてもいい経験になりました。
 

 

 

 

『LOVIN' YOU』はラブリーでキュートな作品にしたかった


ーー以前は弾き語りでライブをされていたということですが、現在の楽曲を実際ライブで演奏するとなるとまた演奏のスタイルも変わりそうですね。
実はまだアルバム作りしかしてなくて、ライブ活動は一切行っていないんです…。でも、レコード発売イベントは年内に開催しようと思っています。どのような形態でライブをやるかは模索中です。おそらく同期を使ってライブをすることになりそうですが、私は生演奏も好きなので、将来的には楽器と同期の融合なんかにも挑戦してみたいですね。

ーーこのアルバムは特にどういった人たちに聴いてもらいたいですか?
もちろんいろんな方に聴いていただきたいのですが、特に音楽好きな人に聴いてもらいたいですね。というのも、各楽曲にいろいろなフレーズサンプリングを埋め込んだり、面白い仕掛けを仕込んでいるので(笑)。

ーーご自身が作曲された楽曲のなかでも特にコンセプトの強い曲はどれですか?
「Goes All Right」は、そういう意味では一番コンセプト重視で作りました。どのアーティストの要素を盛り込んだのかは秘密です(笑)。「Mysterious Kiss」は、実はゆり花の後半期に作った曲なので、ゆり花とkiki vivi lilyの架け橋的な曲ですね。互いの要素がうまく融合された楽曲に仕上がっていると思います。

ーー今回のアルバムの作詞の面で何かコンセプトなどはありますか?
アルバムタイトルでもありますが、“LOVIN' YOU”というワードがすごく好きなんです。その意味からも感じられるような、ラブリーでキュートなアルバムにしたかったんです。なので、全体的に歌詞はどこかしら可愛いワードをちりばめたかったという思いがありました。

ーー“ラブリーでキュートなもの”、というのはご自身のなかでどういった解釈なのでしょうか?
The Jackson 5など、外国の子供が歌っている様子ってキュートじゃないですか? 言葉で表すと難しいのですが、私のなかではそういったものがすごく可愛く感じるんです。女性としての可愛いというわけではなく、もっとカラフルでキャッチーな感覚ですね。
 

 

 

 ■Sweet William feat. Jinmenusagi Itto & kiki vivi lily/「Sky Lady



ーーなぜkiki vivi lilyという名前で活動しようと思ったのでしょうか?
以前はゆり花という名前で活動していましたが、その名前だとすぐ単体の女性だということが分かってしまいますよね。その先入観があることによって聴いている人の思考を制御してしまうように感じたんです。女性のイメージが名前に含まれているだけで、もしかしたら曲を聴かない人もいるかもしれないですし。なので次活動する時は、どういった存在なのかわからないような名前にしたかったんです。どんな性別の人で、何人編成で、どんな音楽をやっているのかわからないような。リスナーには何にも縛られていない状態で私の曲を聴いてほしい、そんな気持ちを込めてkiki vivi lilyという名前にしました。あと、自分と切り離した存在で捉えられるので、これから先いろんな人とフィーチャリングできたり、さまざまな可能性を作っていけるとも思っています。

ーー今後どのようなアーティストとフィーチャリングしていきたいですか?
Sweet Williamさんの「Sky Lady」という曲に最近フィーチャリングアーティストとして参加したのですが、こういったヒップホップアーティストの方とフィーチャリングしたいですね。あとは、作曲家の方や、ビートメイカーの方ともいろいろやっていきたいなと思っています。

ーーkiki vivi lilyはどのような存在でありたいですか?
例えば、CDショップでは「このアーティストが好きならこのアーティストもオススメです」みたいに、リスナーが被っているアーティスト同士のCDを並べるじゃないですか。私は、kiki vivi lilyのCDがショップに届けられた時に「これは誰と一緒に並べたらいいんだろう?」と思われるような作品を作りたいし、どう捉えていいかわからない存在でありたいですね。

ーーでは最後に、今後の展望を聞かせてください。
今回のアルバムリリースを皮切りに、もっといろんな作品を作っていきたいです。まだまだ勉強中ですが、とにかく作品として評価されたいという想いがすごく強いので、自分の納得のいく作品を作って世に送り出したいです。あとは、海外ツアーですね。飛行機で巡るのではなく、車で陸路で巡るような、ロードムービーのような旅をしながらツアーをしたいです(笑)。

 

 

 

- Release Information -

タイトル:LOVIN’ YOU
アーティスト:kiki vivi lily
発売日:2016年10月19日(水)
価格:1,620円

[トラックリスト]
1. LOVIN' YOU
2. Goes All Right
3. CRAZY TOWN
4. Mysterious Kiss
5. AM0:52
6. Stay My Boy

■リリースページ

http://www.clubberia.com/ja/music/releases/4790-LOVIN-YOU-kiki-vivi-lily/
PREV
GAUDI
GAUDI
NEXT
Tokyo Black Star
Tokyo Black Star