INTERVIEWS
>

Tokyo Black Star

1曲の尺が40分という作品は、この世にどれほど存在するものなのだろうか。あまり有り触れたものではないだろうし、標準的なものでもないだろう。そして、特別な想いや意味が込められているに違いない。ニューヨークを拠点に活動するDJ/アーティストAlex From Tokyoと、東京を拠点とするサウンドエンジニア/プロデューサーの熊野功雄によるユニットTokyo Black Star。その彼らが、今年9月7日(水)にアルバム『Fantasy Live 1999』を、Alex From Tokyoの新レーベルworld famousよりリリースした。その内容は、Manuel Göttschingによる『E2-E4』を想起させるような、40分にわたるノンストップエレクトロニカトラック。本作は、1999年に行われたAlex From Tokyoと熊野による即興ライブパフォーマンスを録音した“伝説”のカセットテープをもとに、今回のアルバムから加入した新メンバーの高木権一とともに3人で制作。7年ぶりのアルバムリリースのうえ、新体制となったTokyo Black Starの新たな門出ということもあって、今回の作品はメンバーでもありレーベル主宰者でもあるAlex From Tokyoにとって特別なものとなったそうだ。

text:Yoshiki Yamazaki

 

 



マスターテープの行方は不明。願わくはFrancois K.に見つけ出してもらいたい。


ーーまず、今回のリリースを振り返っていかがですか?
今回の作品は40分の1曲ですが、アナログ盤用にpart 1とpart 2に分けて収録しました。Tokyo Black Starによる7年振りのアルバムということと、今回は新たに正式メンバーとして迎えた高木権一と新しいフォーマットに挑戦したということもあり、world famousレーベルとしても特別な意味合いが込められています。実に素晴らしい作品に仕上がり、誇りに思っています。

ーーアルバム制作に至った経緯を教えてください。
以前、ファッションブランドY-3の10周年記念プロジェクトにて、音楽企画用に制作した曲「X」を提供しました。この曲には、22分という長さのダブバージョントラックがあり、この制作をきっかけに長い作品を作ろうと思いたち、制作することにしました。

ーー本作は、17年前に行われた下北沢の地下バーでの即興ライブパフォーマンスから生まれたそうですね。当時どのような環境でプレイされていたのでしょうか?
正直なところ、あまり覚えてないんです。マスターテープもたぶん周りのDJに貸したままになっていて、僕も熊野も行方はわかっていません。ゴメンナサイ…。いつか、Francois K.が見つけ出してリリースしてくれることを願っています。

ーーそれは残念ですね…。では、当時の即興ライブでは、どのような機材を使用していたのでしょうか?
Pro Toolsですね。今でも当時使用していたPro Toolsdでライブしています。あとは、AKAIのサンプラーS6000も良く使っていました。

ーーレコーディング/ミックスの際、印象に残ったエピソードなどはありましたか?
モジュラーシンセの自動演奏は面白いと思いました。それを3人で見守るということは新鮮な体験でしたね。ただ、尺が長いので順番に居眠りしたり、曲が面白くて爆笑しながら制作したことは憶えています。

ーー本作では、まるで心象世界を旅しているような、壮大かつ綿密な音景が描かれていますが、作品における大きなテーマのようなものはあるのでしょうか? 
前のアルバム『Black Ships』もそうですが、僕らの作品は結局そのような印象の作品になるようですね。

ーー熊野さんとは、Tokyo Black Starとして長年活動をともにされてきましたが、活動を続けていくことで何か変化していったものなどはありますか? 
まず、まだやっていることについて驚いています。熊野は相変わらずレコードでリリースしてますし、何も変化していないことがたまに不思議に思います。

ーー従来の作品同様、今回のアートワークもニューヨーク在住の日本人アーティスト、松山智一さんが担当しています。収録曲を体現したようなサイケデリックな色合いのアートワークとなっていますが、Alex from Tokyoさんから何か要望を伝えて製作してもらったのですか?
彼は、Innervisionsレーベルの第1弾作品として2005年にリリースされたTokyo Black StarのEP、「Psyche Dance EP」からヴィジュアルアイデンティティーを手がけているんです。今回も彼に音源を聴かせ、2人でデザインを考えました。

ーー本作のリリースもとである、あなたの新レーベルworld famousについて教えてください。
実はworld famous自体は昔からあって、14年前に東京で住んでいた頃、渋谷のインディーズレーベルFlavour Of Soundとコラボレーションをして、world famousの第1弾作品をリリースしたことがあるんです。その3年後、ニューヨークに拠点を移し、制作や海外でのDJに集中しながらも、ずっとレーベルを復活させたいと考えていました。ここ数年の音楽シーンもとても面白いし、約2年前にはTokyo Black Starとしての制作も久々に行うことができたし、Bing Ji Lingと僕とのコラボレーション曲も実現するなど、だんだんニューヨークでレーベルを新たにスタートしたいという気持ちが強くなっていったんです。そして、レーベルを再始動させたのち、昨年の11月にまずはアナログ限定でTokyo Black Star 「Edo Express EP」を発表しました。

ーー高木権一さんとは、いつどのように出会ったのですか? またどういった経緯で3人で活動することになったのでしょうか?
熊野と高木は10代のころからの友人なんです。以前からサポートメンバーとして数曲参加していましたが、我々が手がけるプロユースハイエンド音響ブランド「PHONON」が忙しいこともあって、今作より正式にメンバーとして3人でやっていくことにしました。

ーー高木さんが加入したことによって、大きく変化した点などはありましたか?
アイデアを考えながらオペレートを同時に行うことによって発生する、主観性が失われるジレンマがなくなったことが大きな変化です。よりオールドスクールでマニアックなものになったと思います。

ーー先ほどお話しに出た「Phonon」については、以前クラベリアでもご紹介させていただきました。現在、開発中の製品などはありますか? 
近々、驚異的なクオリティのラジカセサイズスピーカー「MUSIC LIFE」をリリースする予定です。日本製で、ライン入力が備わっているほか、Bluetoothも対応しています。

ーー今注目しているアーティスト/DJを教えてください。
東京では、今回のworld famousレーベルリリースパーティーで一緒にプレイしたTR(:Synthesize)や、茶澤音楽館のKitahara Takehikoですね。海外では、最近一緒にニューヨークでプレイしたGerd Janson、この前来日していたTornado Wallaceの2人ですかね。

ーーTokyo Black Starでの今後の活動、そしてメンバーそれぞれの今後の活動について教えて下さい。
今年の冬から来年の春にかけて、ヨーロッパを中心にTokyo Black Starのライブツアーを予定してます。world famousとしては、今年の年末に3タイトルのデジタル配信を予定しています。来年のあたまには、次の12”のリリースも考えてますね。さらに、熊野功雄と高木権一のユニットModuler BallのEPが、フランスのRowtag Recordingsからリリースされる予定です。

 

 



- Release Information -
タイトル:Fantasy Live 1999
アーティスト:Tokyo Black Star
リリース:9月7日(水)
価格:2,484円

[トラックリスト]

01. Part 1(21:37)
02. Part 2 (18:22)

■リリースページ

http://www.clubberia.com/ja/music/releases/4776-Fantasy-Live-1999-Tokyo-Black-Star/