INTERVIEWS

月明かりの下、パーティーに出かけるレイヴの怪物を表現した
Freerange Records首領の最新作
Jimpster


ハウスからニュージャズ、ディープテックなど、カテゴリーを越えたクロスオーバーサウンドで世界的人気を博すイギリスのレーベルFreerange Recordsの主宰者として知られ、プロデューサー/DJとして20年以上のキャリアをもつダンスミュージックの伝道者Jimpster。2017年の1月には、レーベル設立20周年を祝うアニバーサリーパーティーを東京と大阪で開催し、多くのファンの期待に応えた。その彼が、通算7枚目となるアルバム『Silent Stars』を2017年5月にリリース。ニューアルバムに関する制作裏話をはじめ、現行音楽シーンや日本での活動などについて話を聞いた。


取材・文:Midori Aoyama


ーー今年1月に開催したアニバーサリーパーティーはいかがでしたか?

今回の来日では本当にすばらしい旅ができたよ。90年代の後半からDJとして、またThe Bays(イギリスのインプロヴィゼーションバンド)のライブを披露するために来日したけど、Freerange RecordsでのパーティーをWOMBで開催することができてキャリアの前進を感じたし、何よりもすばらしい雰囲気と混雑としたフロアとともに得た成功を幸せに感じているよ。西洋のアーティストのほとんどがインタビューで口を揃えるように、日本は興味深くてユニークで、他の国とは違ったコントラストをもっている。2度訪れても同じ感覚はないこの国でプレイできることは、ある種の特権のように感じるよ。





ーー「Freerange Tokyo(2009年にスタートした、Freerangeによる東京でのオフィシャルパーティー)」について聞かせてください。これは青澤氏(過去にFreerange Tokyoをオーガナイズした中心人物/DJ)との最初の仕事ですよね?当時のことを振り返ってもらえますか?

2009年にPRIMITIVE INC.そして青澤さんとコラボレーションし、東京のWAREHOUSE 702でレジデンシーをもつ機会を与えてもらえた。素晴らしいサウンドシステムを装備した同べニューは、私たちにとって完璧な空間だった。おそらく約3年で10回以上のパーティーをやったんじゃないかな。さまざまなDJ、アーティストたちがプレイしたよ。Freerangeのアーティストや、彼らと同じくらい素晴らしい日本のDJ、MocaやCarlos Gibbs、Nebu-soku、そしてもちろんAosawa本人もね。


ーー最新アルバム『Silent Stars』は本当にすばらしい作品ですね。アートワークを含め、本当に感銘を受けました。前回のアルバムよりもよりシネマティックな作品に仕上がっていると思います。このアルバムに特別なコンセプトはありますか?

ありがとう! 本当に嬉しいよ。この作品に取り掛かったときに、Jimpsterとしてのルーツのサウンドに戻ろうとトライしたところからアルバム全体のアイデアが浮かび始めたんだ。ライブ音源とともに実験的な音楽や、ダウンテンポにアンビエント、そしてリスナーに注意を引いてもらい、何度も聴き返してもらえるような高いレベルのディテールを目指したんだよ。10年後に聴き返してもいいような何かにしたいと望んで取り組んだ。


ーーアルバムタイトル『Silent Stars』とはどのような意味なのでしょうか?
滅多に見られない奇妙で小さなレイブの怪物が、月明かりの下、パーティーに出かける姿を表現したんだ。アルバムのアートワークを見ればこのアイデアがどう湧いたのか、もっとよく分かるはずさ。



 


ーーこのアルバムの制作はいつ頃スタートしたのでしょうか? 

取り掛かったのは約2年前。ちょうどダンスフロアだけにフォーカスしたオリジナルやリミックス作品を手がけた後のことだった。よりクリエイティブで違ったアイデアを探求するのにちょうどいい時期だなと感じた頃だね。


ーー収録曲についても聞かせてください。「Crave」や「Everytime」で共演したFlorence Rawlingsは、ハウス/エレクトロニックシーンのシンガーではありませんが、どのようにしてコラボレーションが実現したのでしょうか?

彼女はThe BaysのドラマーAndy Gangadeenから紹介されたんだ。ちょうど彼がUKポップバンドのClean Banditのディレクターも務めていて、Florenceは彼らと歌う機会が何度かあったんだよ。それで「彼女のためによりポップ志向な曲を書いてみないか?」っていう提案があって、僕たちはその後スタジオでかなりの時間をかけてセッションした。そのセッションのなかでいくつかの楽曲がJimpsterのアルバムにふさわしいなと感じたんだ。結果、その2つの楽曲がアルバムに収録されることになったんだ。





ーーAndy Gangadeenとは7曲目の「Tau Tona」でも共演していますね。彼のドラムからは改めてMassive Attackのカラーを感じることができます(彼はThe BaysのほかにMassive Attackの一員としても活躍)。彼と再び仕事をすることについてどう感じましたか? またThe Baysとして今後活動することはあるのでしょうか?

Andyとまたやれたことは本当に感謝しているし、彼と一緒に録った楽曲は“生”のエナジーが宿っているんだ。彼は本当に素晴らしい仕事をしてくれたよ。The Baysでのツアーを辞めた後も彼とは仲の良い友人だし、私がロンドンでDJするときにいつも遊びに来てサポートしてくれる。2人でThe Baysの復活に向けて何度も語り合ったし、彼はできる限り早く再開できるよういろいろなプランを考えてくれているんだ。誰がどのイベントに一番合うかによって、さまざまなアーティストを呼んだりできるようなビジョンをもっている。近いうちにまたみんなで何かをやる日がくることを確信しているよ。


ーー「Tau Tona」、そしてタイトルトラックの「Silent Stars」からは、あなたがアフリカの音楽からも影響を受けていると感じました(Tau Tonaは南アフリカの現地語で“偉大なライオン”を意味する)。アフリカのカルチャーがあなたに何かをもたらしたのでしょうか?

アフリカの影響を受けているダンスミュージックは大好きだね。Freerangeは南アフリカでも多くのフォロワーがいるし、アフリカで何年もギグを重ねたことで僕の音楽に影響を与えたことは間違いないね。とくに、1998年頃に私が見つけたガーナの打楽器奏者Mustapha Tettey Addyのアルバム『Secret Rhythms』において、彼が伝えるヒプノティックでトライバルなリズムは本当に愛しているよ。それから、&MEやRampaなどが所属するレーベルKeine Musikの楽曲もよくDJでプレイするよ。彼らは斬新かつ興味深い方法で、アフリカのサウンドをテクノやディープハウスと融合させているよね。


ーー過去に、以前使っていたアナログシンセを引っ張りだしてライブレコーディングに力を入れ直した、というインタビューを見ました。Jimpsterを定義するうえで鍵となる機材はありますか?

Voyetra Eight(アナログシンセサイザー)はアルバムのなかでも主役としてプレイしたし、この機材は本当に怪物だ。曲の流れを変えるうえでいくつか特別なやり方があって、アルペジオやパッドをこのアルバムでも多用した。それが作品のなかで、アナログで暖かく、音全体を興味深いものにしてくれていると思うね。Voyetraの他には、Fender Rhodes Mark 1(エレクトリックピアノ)がプロダクションのキーになっていて、これを使ってサンプルをするかフィルターをかけるか、パッドで差し込むか、わずかなメロディーのラインを作るか、あるいはパーカッシブなノートを作るかなど、ほぼすべての曲の要素をこれで作ってきたよ。


ーーアートワークも本当に美しいですね。これはFreerangeのEPを手がけたデザイナーさんが担当されているのでしょうか?

アートワークが仕上がってきたときも本当にハッピーだったね。そのとおり、彼はI Want Designを運営しているJohnというデザイナーで、ここ5年にわたってFreerange、それからDelusions Of Grandeurのアートワークを担当している。彼とはBuzzin’Flyを運営しているBen Wattを通して知ったんだ。ちょうど彼らとの契約が終わる時期、つまり新しいレーベルと仕事ができるタイミングだったので、彼を迎え入れることができて本当に幸せだよ。今回のアルバムでは、僕から面白いキャラクターと夜をテーマにしてくれって伝えたらこんなにもすばらしい作品を仕上げてくれたんだ!


ーーFreerangeの今後のリリースについて教えてもらえますか?

Freerangeは毎月、新しいアーティストとの数多くのリリースを控えている。直近では、オーストリアのプロデューサーDemujaがロウでモダンなサウンドのハウストラックを用意している。それから、アフロな雰囲気をもったStefano Ritteriや、とてもディープな楽曲を作るイタリア人アーティストBugsy、レーベルでもおなじみのHyenahはMr Raoul Kのリミックスと一緒に強烈なEPを仕上げてくれた。新しいJimpsterのリリースも10月に控えていて、絶えず良い楽曲が届けられそうだよ。

ーー5年前のアートワークの変化とともに、レーベルの音楽も変化したように感じました。この先5年のFreerangeはどのように進んでいくと思いますか? また、レーベルの音を言葉で表現するとどのようなものになるでしょうか?

Freerangeのサウンドを言葉で定義するのはとても難しい。ただ、イギリスは音に対して公平な何かがあって、それがより自然なものだと感じている。レーベルのサウンドは、HyenahやClavisなどのアーティストのミニマルまたはアフロ的なサウンドを通して、90年代の黄金期に影響をうけたようなクラシックハウススタイルの深い部分に微妙にシフトしているね。レーベルのレギュラーサポーターの多くが「出れば買う!」という状態で、自分の欲しいコレクションに関わらず、楽曲を聴くまでもないと言ってくれているよ。僕はその時々によって、若いプロデューサーをサポートしながらも、高いプロファイルをもったリミキサーを迎えたアーティストのリリースを良いバランスで混ぜていく。


ーーBOILER ROOMやNTS Radio、そしてWAREHOUSE PROJECTなど多くのプロジェクトがイギリスから生まれてきました。地元のシーンはベルリンのように活発でないように思えますが、ここにきてロンドンのペッカムのような新しいコミュニティーからジャズやソウルの影響を受けたシーンが湧き上がっている気がします。この10年を振り返り、イギリスのダンスミュージックシーンに何を感じますか?

ペッカムのシーンは、今間違いなくいろいろな影響を与えているし、ここからは2000年代に流行った西ロンドンのブロークンビーツの雰囲気も感じることができる。どちらの時代も音楽的な興りはコラボレーションと地理的に隣接していることからイメージできるし、これはイギリス、特にロンドンで起こる極めてユニークな出来事だと思う。Ninja TuneやMowax、WrapそしてARTなどもこの“集合的なアイデア”のイメージで同じムーブメントを作り上げていった。Freerangeは少しそれとかけ離れた感覚があって、レーベル立ち上げの初期は、当時マンチェスターに住んでいた自分とロンドンに住んでいたパートナーのTomとで、世界中のアーティストを扱っていたから、彼らのように強力になることは一度もなかったと思う。そういう意味では、地元意識という感覚は極めて重要なのかもしれないね。


ーーベテランの立場として若いプロデューサーやDJ、レーベルオーナーに何かアドバイスをください。

一生懸命努力して、自分自身の音を見つけるんだ。一度自分でリリースできるすばらしい音楽ができたと思ったら、レコードだけでリリースできる方法、そしてそれが正しいDJの元にわたること、加えて世界に通用するディストリヴューターを探すためにBandcampを使うことを考えてみる。それらがすべて正しい方向に行けば、いくつかの鍵となるリリースとともに、比較的早い時間と効果的なプロフィールを築くことができる。その前に…まずは音楽が素晴らしいことが前提だけどね!




- Release Information -
タイトル:Silent Stars
アーティスト:Jimpster
リリース:5月12日(金)※輸入盤
価格:2,268円

[トラックリスト]
01. Migrations    
02. Yansa    
03. Crave Feat. Florence Rawlings
04. Sylvanshine    
05. Where You Are Feat. Khalil Anthony
06. The Sun Comes Up Feat. Jinadu
07. Tau Tona    
08. Everytime Feat. Florence Rawlings
09. Power Of The Doof    
10. Under Wraps    
11. Silent Stars    
12. Spend The Night    
13. Forever Voyetra

■リリースページ

http://clubberia.com/ja/musics/4903-Silent-Stars-Jimpster/
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