INTERVIEWS

単なるリバイバルではない。 Ree.Kが実感するトランスシーンの新たなうねり

取材・文:bluestract records
写真:Keiichi Nitta(ota office)
 
 日本のトランスシーン黎明期から活躍するRee.Kへのインタビュー。前編は最新EPについてだったが、後編は最新アルバムについて。今回も話はどんどん興味深い方向へ。最新アルバムの『Early Tracks 1』は、1995年〜98年のトランス黎明期に作った楽曲を収録したもの。なぜ、約20年前の曲を今リリースするのか? そこには彼女が世界を巡るなかで体感した新たなうねりがあると言う。
 
 
——『Early Tracks 1』をリリースする経緯を教えてもらえますか?
 
このCDアルバムをHypnodiskと共同でリリースするbluestract recordsからは、2015年に『Quantum Leap』というアンビエントミックスのアルバムをCDで出していました。で、その直後から「ぜひ次の作品も出しましょう」と言ってくれていて。どんな作品にしようかなっていろいろ考えた末に、「新曲を作って出すのではなく、あえて以前作った曲をアルバムに組み直して出してみよう」と思ったんです。
 
——本作に収められているのは、ゴアトランスが日本に伝わった1990年代に作られた曲ですね。なぜ今、あのころの曲をもう一度リリースしようと?
 
ゴアトランスがリバイバルになっている今、あのころの曲を組み直して再び出すことには意味があるって思ったの。とくに若い人たちに触れてもらうのには、いい機会になるんじゃないかなと。思い返してみると当時、イスラエルのレーベルから声がかかって、コンピレーションアルバムに書き下ろしの曲を提供したりとか、よくしていたのよね。
 
——いろいろな国でプレイされていて、リバイバルの波は世界的に感じますか?
 
うん。世界的な実感もあっての『Early Tracks 1』なんです。あちこちの国で「Ree.Kひさしぶり!」とか、「あなたと再会するのを待っていたよ!」とか言ってくれる人たちとまた会えたりしていて。で、その多くが『Early Tracks 1』に入っている曲を作ったころに出会った人たちだったりもするの。私は90年代からヨーロッパやオーストラリアのパーティーへプレイしに行っていた。そのころに出会った人たちと巡り巡ってまた会えている。
 
——回帰しているような実感があるんですね?
 
ひと巡り目ではなくて、ふた巡り目くらいの回帰のはずだけどね。でもとくに今回は「やっぱり大きな波が来ているな、いろんなことが重なってくる流れがあるな」と思う出来事が続けて起きていて。でもね、私が強く感じるのは、昔の人たちばかりが再び盛り上がっているんじゃなくて、当時の人たちと最近の若い人たちが混じり合って、大きなうねりになってきているっていうことなの。
 
——単なるリバイバルではない、ということですね?
 
そう。そういうことをまざまざと感じたのがベルギーで、ヘントっていう街に行った時。そこはR&S Recordsがある昔ながらのテクノの街なんだけど、その街が新旧混合で大変な盛り上がり方をしていたの。現地の友達に詳しく聞いたら、やっぱり92~95年ごろが一度目のピークで、やがてそれが落ち着いて、今また当時の音がリバイバルで大盛り上がりなんだって。昔ながらの人たちと今の人たちが一緒になってね。
 
——新旧混合の新しいうねり、回帰的進化の新しいうねりが来ているんですね?
 
そんな実感をしました。そしてだからこそ「あの頃の曲をもう一度出すことはきっと意味がある」、「このトラック集は若い人たちにも喜んでもらえるかもしれない」って思えたんです。




20年前の曲と向き合ってみて。
 
——90年代の音源ですから、いろいろ苦労もあったのではないですか?
 
何しろDATで録っていた時代の曲ばかりだからね(笑)。あのころ作った曲を全部聴き直してから収録曲を決めていこうと思ったんだけど、最初に曲を探すことがまず大変で……どのテープにどのオリジナルトラックが入っていて、何曲目が最終マスターなんだっけ、とか。
 
——大変そうですね……
 
さらには家に何台かあるDATマシンが、ぜんぶ動かなくなっていたりとか(笑)。でも、Space GatheringのMASAさんがいろいろ手伝ってくれて助かりました。たくさんのテープの中から、ここにこれが入っていて、これがこの曲の最終マスターで、みたいな整理にも力をかしてくれて。そしたら、我ながらこんなにあったかと思うほどいっぱい出てきたんだけど(笑)、いろいろ聴いた上でアルバムとしての流れと収録曲を決めていった感じかな。
 
——このアルバム、単純に曲を年代順で並べたというものではないですもんね。
 
うん。アルバムとしての流れを意識した曲順にしているし、その流れのなかで曲を選んでいます。
 
——ほかにも入れたい曲がたくさんあったのでは?
 
もちろんそうなんだけど、CDには80分以内という制限もあるしね。じつは最初、2枚組にしようかとも思ったんだ。2000年ごろに新宿リキッドルームで演ったライブの音源があって、それを2枚目に入れようかしらって。約1時間のライブで、音を途切らせないまま最後のほうでプレイヤーが一人ずつ登場してきてドラムとギターとベースの生演奏になるの。そういう特殊性も含めていろいろ考えた末、今回は95年~98年ごろの曲だけにして、Early Tracks集の『1』として出そうと決めました。
 
——では、次の『2』ではそのライブトラックが入る?
 
それはまだ分からないな。『2』にはそれ以外にも入れたいトラックがあるしね。
 
——90年代のトランスの黎明期といえば、やっぱりJuno Reactor登場のインパクトが大きかった時代でもありますよね。当時のRee.Kさんも洗礼を受けたのではないですか?
 
強烈だったよね。初めてライブを観たのが確か95年かな。哀愁っぽいキレイな曲調で、がっちり盛り上がっていく様式美が衝撃的だった。この「Early Tracks 1」の中には、そんな時代だからこその化学反応が私の中で起こって生まれてきた曲もあるかもね。
 
——20年以上前に作った曲ばかりなわけですけど、あらためて聴き直したとき、何を思いましたか?
 
なんだか恥ずかしいような気もしつつ、正直少しびっくりした。バキバキだなコレ、すごいなコレ、でも確かに作っていたよコレ、って(笑)。制作のテンションというか、のめり込み方というか、追い込み方というかが、ちょっと狂気モードに入ってたかも(笑)。
 
——でも、そういうのめり込み方は今も変わらないのでは?
 
基本的には変わらないのかな。表現したいと思っていることがあって、それを丸ごと表現したいのに、上手に表現しきれていない自分にいつもぶつかってしまう。そして「これを形にしたいのに、なんでできないんだー!」っていう感じになって、どんどんのめり込んでいっちゃうのかな。




『Early Tracks 2』、そしてニューアルバムへ
 
——これから海外へのリリースツアーも予定されていますが、どの国へ行きますか?
 
3月にイスラエル、それからポルトガルとまだわからないけど8月の終わりから9月にベルリン、アムステルダムに行く予定。ハンガリーの『O.Z.O.R.A. Festival』にも誘われたんだけど、もろもろの事情で泣く泣くキャンセルしたの。残念。
 
——2019年のチャレンジテーマを教えてください。
 
まずは「Early Tracks2」のリリース。で、その次には新曲ずくめのニューアルバムを作りたいと思っています。前に一度作りかけて、中断していたの。そのまま月日が流れていたんだけど、「こういうのを作りたい」っていうイメージがある。
 
——最近はオファーを受けて制作に入るケースが多かったと言っていましたが、自分のなかから湧き出てきているものがあるんですね?
 
そう、それを形にしたいと思っているの。例えば80分なら80分のアルバムがひとつの何かになるというような、組曲形式の作品を作りたいと考えてる。昔のロックとかの名盤でも、3曲とか5曲がひとつの演奏になっているアルバムがあったでしょう? ああいうイメージ。
 
——Ree.KさんはDJの時も、2時間なら2時間が1曲みたいな意識でやっているとよく言いますよね?
 
そうだね。それと同じようなことを、自分の曲で実現したい。
 
——いいですね、組曲……
 
さっき言ったロックの組曲アルバムとかって、「自分が表現したいことを形にしたらこの長さの曲になりました、それをそのまま聴いてください」っていう感じもするじゃない? そういうところもなんだか純粋で素敵だなって感じますよね。
 
——前回のインタビューで『DELTA 03 / Daydreaming EP』について伺ったとき、リリースする前にパーティーでかけていたと言っていました。ということは、今年Ree.Kさんのパーティーに来る人たちは、この次回のアルバムの新曲を聴けるかもしれない?
 
うん。きっと現場でもかけますよ。
 
——それはじつに楽しみですね!
 
だけどもちろん毎回じゃないし、しょっちゅうでもないからね。そこはあまり期待しすぎないよう、こちらこそよろしくです(笑)。


DJ YUTAによる『Early Tracks 1』収録曲へのコメント
 
1.Trinoids
本アルバムのスターターにふさわしい、まったく色褪せていない名曲。まるで最近の楽曲に聴こえてしまうほど。ベルギーやポルトガル、イスラエルでは爆発的なフィードバックが期待できるアッパーでフロアライクなー曲。
 
2. Subconscious Mind
このバイナル盤、今だに持ってます(笑)。主流のゴアトランスに飽きていたときに見つけたバイナルで、名盤にして超レア盤「Agaru To Sagaru」にこの曲が入ってました。テックトランスなグルーブに、スオミを彷彿させる変態メロディ。音楽的に、1996年あたりのゴアトランスシーンとは明らかに異なるゴアトランスが1997~1998年あたりから始まったのですが、常に一歩先に進むRee.Kの多彩っぷりがよく出ていますね。
 
3. Far East Frequency
懐かしい!僕、この音源持ってました。ザ・ゴアトランスですね!ゴアトランスにもいろんなテイストがもちろんあるのですが、全ゴアトランス好きにお勧めしたい楽曲です。
 
4. UT001
超レアトラック其の1。Ree.Kならではの浮遊感あるシンセのフレーズ、女性的な柔らかいタッチが特徴的。
 
5. Psyence
超レアトラック其の2。Ree.K Goa Tranceが確立されてる1998年の楽曲。クオリティは当然のことながら、サイケデリックミニマリストRee.K節は当時から健在していたのが伺えるアンリリーストラック。
 
6. Haneru to Odoru
超レアトラック其の3。タイトルに心を奪われました(笑)。そして楽曲も良い!渋い!いわゆるディープトラックで、個人的に本アルバムでもっともお気に入りの楽曲です。このダーク調なテイストはシーン的にも1997~1998年くらいからよく見られていた作風なんですが、流石としか言いようのないパイオニアRee.Kのセンスと技が随所で輝く一曲。
 
7. Wiggle Peanut
超レアトラック其の4。ピークタイムにハマるBPMがやや速めなナイトチューン、教科書のような楽曲ですね、作り込みや各パートの音の配置がお見事。この楽曲はおおよそ10分ほど、音の抜き差しが匠、世界観にたっぷり浸れるでしょう。
 
8. Glycogen
きました!超名曲Glycogen。当時のリリース先もイスラエルで一世風靡したゴアトランスレーベルKremboから。とにかくマストアイテムです、必聴!
 
9. Apollo
これも懐かしいな(笑)。僕もこの曲を過去に何度も使いました、BPMが遅いのがたまらなく良い!サビのフレーズがアラビック風なんですが、ゴアトランスキッズのハートを鷲掴みにしてましたね、こちらも現代に蘇る超名曲です。
 
 
リリース情報
タイトル:Early Tracks 1
アーティスト:Ree.K
レーベル:Hypnodisk / bluestract records
価格:2,000円(税別)
全国のCDショップ(店舗・オンライン)にて発売中
https://bluestractrecords.com
 
タイトル:DELTA 03/Daydreaming EP
アーティスト:Ree.K
レーベル:Liquid Drop Groove
デジタル版にて先行リリース中:https://www.liquiddropgroove.com/ldg012

 
イベント情報
タイトル:Ree.K Release Tour in FukuokaーValentine's Day Specialー
開催日:2月14日(木)
会場:Transform(博多)
時間:21時料金:1,000円(+チョコレート付き)
出演:Ree.K (Hypnodisk)、Mosquit (八百万) 、21∞6(努屋)、Sitar Live:Dai (Habana)
 
タイトル:Odd Eye
開催日:2月22日(金)
会場:Toonice(高松)
時間:18〜25時
料金:3,500円
出演:Ree.K (Hypnodisk)、DJ Kaigo (R.T.G / 音源食堂)、Pheme (ANTICAL)、Live:Wasaburou Watanabe、Shoko-Rastutin with Trio
 
タイトル:REE.K new EP & Album release party in 山みず木コラゾンキャンピング
開催日:2月23日(土)
会場:山みず木再稼働プロジェクト(四万十)
時間:12時料金:2,500円
出演:Ree.K (Hypnodisk)、Masa (Space Gathering/Hypnodisk) 、dAMAZING (波多之國/おもてなしPROJECT/7th Reconstruction)、woodoo69 (Liquidinsect / ne:magari / woodoofurniture)、Daisuke (波多之國)、Mars (Yamamizuki)、Abu-ami、LIVE: Didgeridoo シロイイヌ
 
タイトル:イカレテルエレキテル
開催日:3月9日(土)
会場:Alzar(大阪)
時間:22時料金:2,500円
出演:Ree.K (Hypnodisk)、Kihira Naoki(Social Infection)、Saki、Shhhhh、and more

 
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