INTERVIEWS

沖野修也が語る、音楽家生活30周年記念公演とこの5年

ジャズとクラブミュージックを音楽的にも文化的にもミックスしてきたパイオニア、沖野修也。彼が今年、音楽生活30周年を迎える。その足跡を祝す記念公演が4月1日と2日に東京と大阪で行われるが、開催を目前にメールインタビューを行った。聞きたかったことは、音楽家生活30周年記念公演のことと、ここ5年での出来事だ。

 

 

ーー自伝『職業、DJ、25年』を出版されて自身の25年間はまとめられましたが、それから5年、沖野さんに起きた大きな出来事は何でしたか?

 

やはり京都に戻ったことですかね。生花や陶芸、庭園鑑賞などを通して和の文化に改めて触れる機会が多くなったんです。和装でDJをするようになりましたし。自分の音楽に自然な形、しかも最先端の手法で日本らしさを取り入れたいと思うようになりました。

 

ーーこの5年間の活動でKyoto Jazz Sextetのスタートは大きかったと思います。Kyoto Jazz Sextetを始動して気付いたことはありますか?

 

 DJを25年やった後に、ジャズバンドをスタートさせた訳ですが、よりミュージシャンの感覚に有機的に近づいていったことは大きかったですね。気付いたことは、躍らせることと聴かせることの融合は可能だということです。DJは躍らせることを至上にしているのは確かですが、ジャズの曲も書けて、演奏の中身に対する吟味もちゃんとできることも証明したかった。もちろん、ジャズのバンドでDJがやるべきことは何なのかを今も探求し続けています。ミュージシャンからDJに転身した人は少なくないんですが、DJからミュージシャンに接近するケースはあまりないので、僕がそのいい例になれればいいですね。

 

ーー自身のバンドをオキノ・ジャパンと呼ばれてますが、何故ですか?また、そのきっかけは?

 

僕のバンドは、イベントの種類、会場や開催国でメンバーを変えるんですよね。それがサッカーの日本代表に似ているなと。普通のバンドはもっとクラブチーム的でしょ? オシムさんが監督のときに、僕が自分の考えを格言風に“オキノの言葉”と称してブログ連載してたんです。もちろん、“オシムの言葉”(オシムさんの格言集)へのオマージョだったんですが(笑)。それからですかね? オキノ・ジャパンと呼ぶようになったのは。

 

ーー30周年記念公演の人選のポイントは?

 

音楽家生活30周年ということで、Mondo Grosso、Kyoto Jazz Massive、Kyoto Jazz Sextet、沖野修也ソロの曲をやるという構想がまず最初にありまして…。まず、Kyoto Jazz Sextetのメンンバーを中心に過去、Kyoto Jazz MassiveやMondo Grosso Tributeに参加したことのあるミュージシャン、さらにはそのミュージシャンのレコメンデーションもあり、という感じです。ボーカリストは、あえてアシッドジャズ時代からの朋友でもあるMonday満ちるさん、N’Dea Davenport(エンディア・ダヴェンポート)さんにお願いしました。

 

ーー数々の楽曲の中から演奏する曲はどうやって選びましたか?

 

まず、MondayさんとN’Deaありきで歌モノを先に決めました。二人に歌ってもらった曲、まぁまぁ多いので絞るの大変でしたけどね。会社のディレクターの意見を参考にして、Kyoto Jazz Sextetの代表曲を2曲、Kyoto Jazz Massiveの代表曲を2曲、Mondayさん曲2曲、N’Dea曲2曲、Mondo Grossoの曲1曲という枠で絞って行きました。楽器の持ち替えとホーン隊のブレイクを考えたら収まるところに収まりましたね。フィルターのレイヤーで物事の決定は自然に決まる!というのが持論ですので。この曲順しかない!という順番は選曲家なので自信もあります。

 

ーーこれまでもMondo GrossoのTributeやGallianoや菊地成孔さんが参加された25周年の記念ライブなどオールスター公演を成功させていますが、今後やってみたいオキノ・ジャパンの形は何かありますか?

 

じつは、アシッドジャズのレジェンド、 OMARから日本で何かできないかと相談受けてるので、僕仕切りで何かやりたいなと。N’Deaとデュエットとか、彼のヒット曲をKyoto Jazz Sextetっで生演奏するとか…。Kyoto Jazz Sextetと言えば、同じ6人編成のSoil&”Pimp”Sessionsと対バンはやってみたいなーと。あとは、今年発売を予定しているKyoto Jazz Massiveのレコ発のライブも。でも、今年はKyoto Jazz Massiveのデビュー25周年でもあるので、KJMのライブはそっちの括りかもしれませんね。

 

ーーズバリ今回の30周年記念ライブ、見所は?

 

やはり、MondayさんとN’Deaさんの2人をフロントにした強力な布陣でしょうか。Kyoto Jazz Sextetの平戸祐介と小泉P克人をベースに、Kyoto Jazz Massive Live Setのベテラン、西岡ヒデローをフィーチャー。ホーン隊はSoil&”Pimp”Sessionsのタブ・ゾンビと栗原健。ドラムに天才ドラマーとの呼び声の高い平陸を招集してもいます。このメンツ、そのまま海外公演も行えるクオリティーですからね。1曲カバーですが、僕がプロデュースする新曲も仕込んでます。あとは、エイプリル・フールなんで、どこからどこまでが真実で、どこからどこまでが嘘か判らない僕のトークも楽しみにしていて下さい。

 

ーーさまざまな活動をされていますが、曲を作りリリースすることDJをすることといった音楽活動のみで過ごしてたら30年続けられたと思いますか?
 

実際、曲のリリースとDJだけでは経済的に成り立たなかったかもしれませんね。多角的にやって来たから30年サバイブできたのかもしれません。ただ僕の場合、ラジオも書籍も店舗もフェスも出版社もカバンから家具までに拡がったプロダクトデザインも、すべて音楽と関係のあることしかやってない。それらすべてが幅広い意味での“音楽活動”と言えるかもしれません。関連事業を水平的に拡張した“全行”って呼んでるんですが(専業に対し)、逆に言うとこれからの音楽家はそうでもしないと、生きていけないんじゃないでしょうか? 就職して、週末だけミュージシャンやDJってのもアリだとは思いますが…。


ーークラブという場所へのリスペクトを持たれながら、2012年に脱クラブを宣言されたりしましたが、沖野さんのなかでのクラブとう場所はどういった存在ですか? (当時のブログ: https://ameblo.jp/shuya-okino/entry-11208220975.html

 

脱クラブ宣言したものの、僕のクラブへの愛は変わりません。ただ、僕がここで指すクラブってのは、キャバクラにダンスフロアーが付いているようなクラブでもなければ、有名DJが来たときだけ人が集まるレンタルスペースみたいなクラブでもないんです。僕が考えるクラブは、知らない音楽や新しい音楽の組み合わせを聴きに行く場所であり、人との出会いがある社交場なんですよね。音楽のみならず、アートやファッション、建築に興味のある人が集まって、ジャンルを超えたコラボレーションも生まれたりして。そして、そこには、人種や国籍や宗教を超えた一体感もあるんです。僕は自分の店をタマリバとカテゴライズしていますが、昔のクラブはそもそもタマリバだったんじゃないでしょうか? だから、今、世間で言われるクラブではなく、昔ながらのクラブに対して僕は思い入れが強いのかもしれません。古いと言われても、その愛を貫きますけど(笑)。

 

ーー沖野さんが大切にしていることを教えてください。

 

自分の目や耳で確かめることですかね? 誰かがいい!と言っても簡単には信用しない。どんなに有名な人のお墨み付きであってもまずは疑ってかかる(笑)。自分に対する懐疑心すらある。僕は偏見や先入観を捨てて、自由な発想を獲得したい。そして、いろんな情報と照らし合わせて自分で決断することが大切なんじゃないでしょうか? あとは、バカにされても笑われても、自分の信念は貫く。Keep The Faithかな。これ、座右の銘なんです。

 

 

公演情報

ビルボードライブ東京

開催日:4月1日(月)

時間:1stステージ 開場17:30 開演18:30。2ndステージ 開場20:30 開演21:30

料金:サービスエリア¥6,900- カジュアルエリア¥5,900-(1ドリンク付き)

http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=11416&shop=1

 

ビルボードライブ大阪

開催日:4月2日(火)

時間:1stステージ 開場17:30 開演18:30 / 2ndステージ 開場20:30 開演21:30

料金:サービスエリア¥6,900- カジュアルエリア¥5,900-(1ドリンク付き)

http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=11417&shop=2