INTERVIEWS

「小箱から生まれるロングランパーティー」
継続の意義や変遷をたどる

 溢れんばかりのクラウドと華やかなレーザー演出、そして大音量の中でプレイするDJ。クラブと聞くと、そういったいわゆる大箱を思い浮かべる方も多いのではないだろうか。しかし、東京のクラブシーンには、小箱やDJバーと言われる100人に満たないキャパシティーで営業しているベニューが数多く存在する。実際、東京には100軒を超える小箱が存在し、それぞれが独自のこだわりを持ったユニークなパーティーを催し、見えないところから東京のクラブシーンを支えてきた。今回の特集では、そんな音楽愛に溢れた東京の小箱にて、10年以上にわたり開催されてきた「ロングランパーティー」を3つピックアップ。パーティーを始めた経緯や時代の変遷と共にアップデートしている点、そして小箱でパーティーを行う良さなどについて語ってもらった。






――パーティーを始めた経緯やコンセプトを教えてください。

ダンスミュージックが大好きで、当時は様々なパーティーに遊びに行ってました。その後、パーティーで知り合った仲間と自分達でも始めてみたいという気持ちが芽生え、表現の場を探した結果、当時の青山 LOOPがベストな箱だとメンバーの意見が合致。LOOP関係者のご協力もあって、パーティーをスタートさせることが出来ました。



――時代の変遷と共にアップデートしている部分はありますか。 

常に変化するダンスミュージックシーンにおいて、新旧ジャンルを問わず上質な音楽を織り交ぜながら、
時代に対応したシームレスな空間作りが出来るように努めています。



――小箱でパーティーを行う良さや大箱との違いを教えてください。

スタッフ含めオーディエンスと共に一体感のある空間を作れるところが大箱との違いだと思います。



――今まで開催してきた中で印象的な一夜があれば教えてください。

23年間開催してきた中でいくつか印象的な夜があります。
2002年FRESH JIVEとの合同企画「ハッピーソーセージツアー DJ HARVEY」は、今でも記憶に残るスペシャルな夜でした。
2007年にはKEI、TAKASHI、NAOKIによる念願のmist the partyアフターアワーズ。
CHIDA君によるDANCAHOLICアフターアワーズ。
12周年、13周年はRAY MANG&PETE Z飛び入りでキーボードにMaurice Fultonが弾いてくれて最高な雰囲気でしたね。
20周年にはNYCに拠点を移し活躍しているTAKAYA NAGASEを招き自分達にとって節目となる日になりました。
レジデントでもあるMICKのリリースパーティーも過去3回開くなど、MOOVから生まれた曲が世界に広まって行く事になったりと色々な良い思い出があります。



――今後の方針や告知などがあれば教えてください。

MOOVは今年で23周年を迎えますが、今までの流れを崩さず、常にフレッシュに、そして誰もが楽しめる空間作りを目指していこうと思います。
奇数月第三金曜日に開催しています。次回は3/20。皆様お待ちしています。



AOYAMA Zero店長 寺田有希氏からのコメント

MOOVというパーティーが20年以上長く続く理由は個々のベテランDJのバイタリティーにあると思います。
自身も前のお店から19年お付き合いさせていただいておりますが、常に新旧問わないレコードによるアンダーグラウンドな選曲は感銘を受けます。
また、20年も経てばプライベートでの環境、音楽へのモチベーションも変わるのが普通ですが、何も変わらず常に楽しんでパーティーに向き合っているMOOVはとても稀有な存在だと思います。
DJだけでなくBAR前での大人なユーモアにも自身は毎度お腹が痛いです(笑)。







――
パーティーを始めた経緯やコンセプトを教えてください。

クボタタケシとDev Largeが2人でパーティーを始めようと話したことをきっかけにスタート。それぞれフックアップしたい信頼できるDJを1人ずつ選出することになり、クボタタケシから川西卓、Dev LargeからKE-TA THE DISCO 9が選ばれ加入。フードにドミンゴ企画を据えて、5人で渋谷のROOMにて2010年4月に「ダブルサイダー」が始まりました。
ちなみにクボタタケシ、Dev Largeと色が違う2人が始めたということで、名前がダブルサイダーになったそうです。
初めはROOMの開催でしたが、2012年10月に青山蜂に移り、そこから8年は蜂で開催してきました。
コンセプトは、初めてクラブにくる人達にも聞けるようなベーシックな音もありつつ、クラバーも楽しめるような音もある対象を限定しないパーティー。



――
時代の変遷と共にアップデートしている部分はありますか。 

蜂に移ってからゲストでECDを招聘。毎回ゲストとしての出演だったので、いつの間にかレギュラーDJとして加入していました。
2015年5月4日にDev Largeがなくなり、2015年7月にKZAが加入しました。
KZAが加入した事により、今まで来なかった客層の方も来るようになりましたね。
2018年1月にECDが亡くなり、同月に青山蜂の摘発。
2018年4月に再開。
Dev Large、ECDが亡くなり、蜂も摘発されましたが、それでも偉大なお2人が最後にDJした場所、レギュラーパーティーとして参加してたクラブなので、根気よく続けて今に至ります。
今ではDev Large 、ECDに敬意を持ってサブタイトルに「Overseen by DL a.k.a. BOBO JAMES and ECD」と入れてます。



――
小箱でパーティーを行う良さや大箱との違いを教えてください。

小箱は柔軟性がある。デカ箱だと縛りや括りがあるが、小箱だとそのDJが今聴いてる曲や、今感じてる曲をダイレクトにDJとして見せられる。アットホームさや出演者とお客さんの距離間が近いなどの良さがあると思います。

――
今まで開催してきた中で印象的な一夜があれば教えてください。

印象的だったのは2017年12月に開催した時ですね。クボタタケシ、KZA、ECDがそれぞれマイクを渡し合いラップを披露したんですけど、もうECDは身体も衰弱し切ってるのにも関わらず、声を振り絞りつつも、思いっきり声が出てて、魂の声を聞いた気がしました。ちなみにこの日がECDが最後にラップした日となりました。



――
今後の方針や告知などがあれば教えてください。

毎月第二日曜の18時から開催しています。
そして、来月4月12日に記念すべき10周年を迎えます!



青山蜂店長 清水郎樹氏からのコメント

「メンツは凄いけど、敷居は低い」パーティーです!
今は亡きDev Largeさん、ECDさんもそうですが、クボタタケシさんKZAさん川西卓さん、KE-TA THE DISCO 9さん、皆さん本当に素晴らしいDJなのですが、その方達はお客さんをまず大事にして積極的に話してくれます。お客さんとDJの距離間をもっとも近く感じられるパーティーなので、是非一度来て頂きたいパーティーのひとつです!



 

インタビュー回答:DJ SHIBATA
 
――パーティーを始めた経緯やコンセプトを教えてください。

何度か一緒にDJして意気投合したRINTAROと音楽的に面白いパーティーをやりたいと思っていたところ、青山MIXでお世話になっていた高山君が新しくKOARAをオープンさせるということでぜひやってみようと始めました。当時RINTAROが店番をしていたSLEEPING BUGZというレコード屋で手伝いをしていたり、代官山のSALOONで働いていて知っていたTOMIOも誘って3人のレジデントでスタートしました。
音楽とパーティーが好きで刺激を求めてレコードを集め続けていたので、それを持ち寄って皆で楽しもうというシンプルな動機で、当初はかなり幅広いスタイルのDJに参加してもらって楽しくセッションしたりして吸収させてもらっていました。
ダンスミュージック主体のパーティーですが、根底に幅広く音楽を楽しむ姿勢があるのは探心音の隠し味だと思います。



――時代の変遷と共にアップデートしている部分はありますか。 

みんな新譜を多くかけているので自然とアップデートしているのですが、よりダンスフロア向けの選曲が増えたと思います。8年目に新しくHISASHIがレジデントに加わってくれたのも大きいですね。
世代を超えて集まってパーティーをするというのは音楽的にもより幅広い人に楽しんでもらえる強みだし、それぞれが吸収した時代の感覚というのは個性だと思うので、お互い迎合しすぎず良いバランスでやれていると思います。そのうえで、レジデントが4人になってゲストを迎える機会が減った分より自分達が打ち出すカラーを大事にしています。
また、RINTAROがモジュラーシンセのオンラインショップCLOCKFACE MODULARを立ち上げ、Satoshi Tomiieさんとのコラボレーションで12インチをリリースしたり、TOMIOがサウンドシステムHAKOYAを始めたりと面白い動きも出てきています。



――小箱でパーティーを行う良さや大箱との違いを教えてください。

今の時代どこもお店を維持するのは大変なことだと思うのでお店の理解と協力があってこそですが、より音楽に集中できる環境があると思います。プロモーションよりも内容の準備に時間をかけることができるので。また、遊びに来てくれる人との距離も近く反応も直接的なので、いろいろ実験しながら失敗を恐れず大胆にプレイして毎月楽しんでいます。とはいえパーティーなので内向きになりすぎないようバランスは心がけていますね。マンスリーでレジデントをやっているとお店のサウンドシステムやブース環境に慣れ親しむことが出来るのも大きなメリットだと思います。

※NOUHEI氏がレコードをモチーフに制作したフライヤー4部作(2013年)

――今まで開催してきた中で印象的な一夜があれば教えてください。

常に次回のパーティーが楽しみでそうなれば良いなと思っています(笑)。
近いところでは、昨年10月の11周年パーティーは、HISASHIの友人でもあるPHILIPP BOSSがフランクフルトから参加してくれたんですが、単に海外からアーティストを迎えたのではなくて密にコミュニケーションをとって一緒に遊べたのでとても良い夜になりました。ああいうのは良いなと思いますね。



――今後の方針や告知などがあれば教えてください。

これからも内容にこだわって続けていきたいですね。
ただシリアスになり過ぎず、時代の空気も楽しみながら、パーティーで音楽を楽しむ姿勢を忘れずにやっていきたい。そのほうが常にフレッシュでいられると思うので。
そして自分達のフロア感覚を落とし込んだリリースやレーベルができたらいいなと思っています。
次回のパーティーは3/27(FRI)なのでぜひ遊びに来てください。




KOARA店長 高山竜也氏からのコメント

毎月12年間、常にフレッシュな気持ちでパーティーに臨んでいる探心音のDJには頭が下がります。これからもお互いに少しずつアップデートしながら、パーティーを紡いでいけたら幸いです。