INTERVIEWS
>

“アジアの心臓”が脈打つ鼓動│台湾《Smoke Machine》主宰 Diskonnectedインタビュー

Text : Yutaro Yamamuro
Support : Shuting Chang

 

台湾拠点のテクノ・コレクティヴ《Smoke Machine》は、イベントオーガナイザー、ポッドキャストキュレーター、レーベルオーナー、そして《Organik Festival》の主催者として、東アジアから世界各国におけるアンダーグラウンドなダンスミュージックシーンを穏やかに見渡してきた。

その名前を世界的なブランドのものとしたポッドキャストシリーズは、今見返してもその先鋭さを全く失っておらず、そのバックナンバーからは、一時代を東アジアの視点でアーカイブした歴史的な意義も感じることができる。それら一つひとつを眺めているだけでも、ダンスミュージックの複合的な進化を感じさせる樹形図のような繋がりを発見できるだろう。

この《Smoke Machine》の主宰メンバーの1人であり、発足時からレジデントDJとしてシーンを率いてきたDiskonnectedは、多くを語らないミステリアスな存在として知られているが、彼の卓越したダンスミュージックに対する先見の明は、世界中の業界人からも一目を置かれている。

Diskonnectedは、DJとしてもベルリンの名門《Berghain》にて、ハードなテクノを主体とする〈Berghain〉と、よりオルタナティヴなダンスミュージックにフォーカスした〈Panorama Bar〉の2つのフロアでDJをした経験を持つ稀有なDJの1人であり、そのライブラリーの幅の広さは、先日Resident Advisorからリリースされた6時間に及ぶ録音からも感じることができる。そこには、ビートに対する適切な理解と、クラウドを踊らせ続けるためのサプライズが詰め込まれており、それと同様のことを彼が主宰する《Organik Festival》にも当てはめることができるだろう。2023年の締め括りとして、東京のアンダーグラウンドシーンの新章を幕開けるOCCA、YSK主宰の"SECT"に彼が登壇することは、アジア地域全体におけるシーンの活性化に繋がることは間違いない。

このインタビューは2018年に台湾に在住していて、現在は閉店した台北の伝説的なクラブ《Korner》並びに《Organik Festival》で起きていた瞬間を見届けてきた筆者により行われた。この時期の体験は、私の人生における貴重な原体験であり、今その体験の創り手に直接話を聞けることを光栄に思う。

 


——こんにちは、調子はどうでしょうか?最近は何をして過ごしていますか?

こんにちは、インタビューに招待してくれてありがとう。最近はDJプレイ以外に、音楽制作に焦点を当てています。新しいことを探索すること、これが私にとって次のステップのように感じています。


——始めに《Resident Advisor》から発表された新しい作品の感想を伝えさせてください。ここまで多様なジャンルと異なった時代性を持つトラックが詰め込まれながら、それらが違和感のないようにミキシングされ、時間をかけてエネルギーを蓄えていく工程は圧巻でした。これは、香港のクラブ"宀(Minh)"でのオールナイトロングの録音でしたね。オールナイトロングのセットに挑む時は、何をどのように考えて曲を準備しているのでしょうか?また普段はどのように曲を探していますか?
 

私にとって、ミックスのエネルギーフローをコントロールすることは、そのパーティーの一晩をイメージすることと同じです。そして、このエネルギーフローは、様々な音楽スタイルやBPM、そしてムードによって生み出され、遊びに来たクラウドの心理状態とも深く関係しているように思います。

準備の部分では、私は自分の楽曲たちを"スタイル"と"モーメント"で整理していますね(これは、ここ数年で試みてきたことです)。音楽を掘るルーティンは、他のDJとあまり変わらないと思います。BandcampやDiscogs、YouTubeのランダムなチャンネル、時には他の人との会話から。個人のフィルターを常に持つこと、これがあなたが何を感じて、どう使うかに繋がると思います。常にオープンマインドでいることですね。


 

< Resident Advisorから発表された香港"宀"でのAll night long set>



——1つの種類のダンスミュージックを深く探求するアーティストがいる一方で、あなたはより複合的にダンスミュージックを探求しているDJだと感じます。前述のRAのMIXでは、ある意味で1つの音楽フェスティバルに最初から最後までいたような満足感を得られました。あなたがDJを通して表現したいことは何なのでしょうか?
 

私が音楽を聴く時に大事にしているのは、それが“時間と空間を引きずり込むような音楽”であるか、“人をトランス状態にさせる催眠的な音楽”かどうか、“興味深いグルーヴを持つ音楽”なのか、そして最後に、“暖かくて充足しているか”ということです。
 

——楽曲のミキシングに対して、独自の理論などはありますか?
 

技術的な意味では、可能な限り楽曲同士がスムーズに聞こえるように心掛けています。長いミックスを行うことが多いので、次のトラックは現在のトラックに音響的にフィットするようにしています。
 

——音楽活動を続ける上で、大切にしている生活のルーティンは何でしょうか?
 

政治や社会科学に関するポッドキャストを毎日聴いていますね。

 

——ここ数年のアジア地域の盛り上がりには目を見張るものがあり、あなたはそれを渦中から眺めてきた人物の1人でしょう。若いクラウドの熱の高まりを受けて、あなたの選曲に対する意識が変わることはありましたか?
 

基本的なアイデアは先ほど述べたことと変わりませんが、素材が異なることはあります。例えば、D'n'Bのセットをトリッピーに演奏することもできるし、速いテクノのセットを演奏してもディープに鳴らすことができますよね。


 

——続いては、台湾の地下音楽シーンに関してお伺いしたいです。あなたはどのように台湾の地下音楽シーンと出会いましたか?また、当時はどのようなものだったのでしょう。
 

2008年頃、初めてナイトクラブでのDJを観ました。2000年代初頭から2010年にかけては、レギュラーイベントもほとんどなかったし、アンダーグラウンドなクラブもありませんでしたね。台湾では90年代に、テレビや新聞で放送されるような激しい警察の捜査があり、それ以降、エレクトロニック・ミュージック・シーンの発展はほとんど止まってしまいました。

また、世代的な影響もあったと思います。私自身でさえも、子供の頃にエレクトロニック・ミュージックを聞いたり、人々がそれについて話しているのを聞いたりすると、すぐにネガティブなことや悪い社会的印象と結びつけて考えていました。

 

——率直に、DJを始めたきっかけはなんだったのでしょうか。
 

ただ、自分自身を表現する方法を見つけようとしていただけです。
 

——《Smoke Machine》はどのように発足したのでしょうか?
 

とてもシンプルです。当時ただ何もなかったので、私たちはいくつかのことを実行して、そのプロセスを通して学んでいくことを決めました。
 

——私は2018年ごろに台北のクラブ《Korner》の近くに住んでいて、当時の毎週末の光景は今でも脳裏に焼き付いています。私が訪れた時に印象的だったイベントの1つは、一番大きなフロアである《The Wall》がアンビエントステージになっており、それより小さなセカンドフロアがダンスフロアとなっているイベントでした。あのような空間の使い方をしているパーティは未だ他で見たことがありませんし、あの夜はとても上手く機能していたように思います。
 

私が《Korner》で最後にかけたトラックは Europeの『The Final Countdown』 でしたね。本当にエピックな瞬間でした。


<台北にかつて存在した伝説のクラブ"Korner"の写真>
 

——《Korner》を拠点に数え切れないほどの《Smoke Machine》イベントをオーガナイズしてきた中で、そのプロセスから学んだことは何ですか?

私にとって、イベントやパーティーを創ることは、オーディエンスとコミュニケーションをとり、自分の音楽的なアイデアやビジョンを人々に納得してもらうための長いプロセスのように感じます。オーディエンスが何を望み、何を必要としているのか、音楽のアイデアとエンターテイメントの完璧なバランスをどう設定すれば良いのかを知るために、数え切れないほどの時間を費やしてきました。

それが最終的には、自分自身をもっと知ることに繋がります。

——ここ数年では、《Pawnshop》や《Final Taipei》、そして《Grey Area》などの新しいクラブも台北に誕生して、ますます活気を帯びてきているのが海を超えて伝わってきます。今の台北の音楽シーンをどのように感じていますか?


台北のシーンは今、すべてのクラブに加えて不定期に開催されるイベントもあり、非常に競争的です。正直なところ、生き残りをかけてエンターテメントとしてより多くの人をイベントに呼び込もうとしている以外に、今のところ確かな変化は見られません。

それはある意味でスタートでもありますが、長期的にはカルチャーの基盤としてもっと良いコンテンツが必要だと考えています。

 

——今は東京のクラブシーンでも若い世代によるオーガナイザーたちが増えています。イベントを開催するという観点で、1つアドバイスを送るとしたら何でしょうか?
 

今の日本の現状を詳しくは知りませんが、“持続可能なコア・バリューを持つこと”が大きな意味を持つと思います。
 


<Diskonnected Boiler Room TaipeiでのDJセット>



——続いて、《Organi Festival》の話を伺いたいです。私は同フェスに2018年から参加していますが、たくさんの変化を遂げながら、進化を続けていく様子に毎回インスピレーションを得ています。去年からは台北から比較的近い場所での開催になって、フォーカスされる音楽ジャンルも少しずつ変わっているように感じます。今年私が最も驚いたことはクラウドの変化でした。コロナ禍前までと変わり、多くの若い台湾人たちが集まっていたように思います。その変化について、どう感じていますか?
 

パンデミックを乗り越えて、若い人たちがパーティにやってくるのは世界的な傾向だと考えています。

シーンに新しい血が入るのは素晴らしいことであると同時に、それは、このシーンに入ってきたばかりの人たちとコミュニケーションをとるために、再び長いプロセスを歩まなければならないという意味でもあります。

 

——このフェスティバルの卓越したキュレーションは、間違いなく同フェスが国境を超えて支持される理由の1つになっているでしょう。過去のラインナップを見返しても、ひとつのジャンルに囚われることなく、個性的なアーティストが緻密に選出されていると感じます。毎年のブッキングはどのように考えられているのでしょうか?
 

そうですね、成功したフェスティバルと呼べるかは分かりませんが、現時点でできる限りのベストを尽くそうとしています。

音楽スタイルに関して、基本的に私たちが今最も楽しんでいるものを用意していて、私たちが持っている核となるアイデアを表現する新しい方法を常に模索しています。


——《Organi Festival》を開催する上で、最も意識していることは何ですか?

観客に挑戦的でありながら、シンプルで楽しいというバランスを常に考えています。観客が簡単に音に入り込めるような音楽の流れを作ることですね。

 

——今年は、OmformerやHysteria Temple FoundationのLiveといった先鋭的なアーティストからOceanic、Danielleなど初出演のアーティストが多いように感じました。一方で近年は同フェスに欠かせない存在となっているMama SnakeはSpekki WebuとのB2Bでの出演でしたね。この2人の組み合わせはどのように出てきましたか?
 

彼らはお互いを知っているし、素晴らしいコンボになると思っていました。
 

< 台湾花蓮で開催されたOrganik Festival 2019年の様子 ━ 筆者撮影 >

 

——前述のように、《Smoke Machine》そして《Organik Festival》は、ダンスミュージックだけでなく、アンビエントをはじめとしたリスニングミュージックも1つの軸としていることも特筆するべきでしょう。今年もKate Miller、そしてMogamboといった個性豊かなアーティストらの演奏が個人的なハイライトの1つになりました。フェスティバル、あるいはイベントにおけるアンビエントの役割をどのように捉えていますか?
 

私たちは常に《Organik Festival》を表現する異なる方法を探しています。野外フェスティバルはアンビエント・ミュージックに適しているし、クラブでやるよりもリラックスしてオープンマインドで楽しめる。


それに、ステージとステージの間にコントラストがあることは、多くの人に多様なアイデアが伝わりやすいと感じています。
 

——フェスティバル運営とDJの両軸で活動し続ける、そのモチベーションの秘訣はなんでしょうか?その2つには、何か特別な関連性がありますか?
 

人それぞれかもしれませんが、私はイベントを創ることで、音楽に対する別の見方ができるようになりました。何かを持続可能なものにし、同時に価値を維持しようとするのは凄く難しいことです。

何かを成功させて、そのエネルギーを絶やさないようにするためには、多くの微調整が必要だと思っています。

 
——日本のテクノシーンと台湾の関係性は非常に親密だと感じています。あなたにとって、日本のクラブや野外フェスティバルシーンはどのような存在で、どのようなインスピレーションを与えましたか?

日本には、エレクトロニック・ミュージック・カルチャーの豊かな歴史とコミュニティがあり、私はエレクトロニック・ミュージックにのめり込んで以来、いつもそれを羨ましく思っていました。将来的に、台湾でも同じような素晴らしいものができることを願っています。

 

 

——アジアのダンスミュージックシーンは、まだまだ全体で見ても大きくなく、更なる団結が必要だと個人的には感じています。現在のアジア全体のシーンをどのように捉えていますか?
 

完全に同意です。健全なサーキットを持つことは、シーンにとって極めて重要だと感じます。

アジアのシーンにおける大きな特徴は、国ごとの文化や言語の違いを打破できるような、完成されたジャーナリズムが存在しなかったことも言えるでしょう。

 

——今回、日本でDJを披露することについては、どのような気持ちでしょうか?

いつもと同じようにとてもワクワクしています。みんなに会えることが凄く楽しみです。




 

『SECT』
【日時】2023年12月30日(土)OPEN 23:00
【会場】表参道VENT
【料金】DOOR: ¥4000
    ADV/前売:¥2500
    BEFORE 0 AM:¥2000
    FB discount   :¥3000
【前売りチケット】https://t.livepocket.jp/e/vent_20231230
【出演】

Room1:
Diskonnected
DJ MARIA.
OCCA
YSK
Room2:
LYNNE
SISINOBU

TONER