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Rasmus Faberが描くネオクラシカル・アンビエントの壮大な世界と日本への想い

 スウェーデン・ストックフォルム拠点のプロデューサー、DJ、ピアニストとマルチな顔を持つRasmus Faberが10月18日に初のヴァイナルをリリースすることを発表した。今作は5月にデジタルにて先行リリースされた同名タイトル『Where Light Touches』[A NIMA Story]のLP版で、ロサンゼルス拠点のイラストレーターRoss Tranとのコラボレーション作品となる。

Ross Tranの最高傑作と称され、アニメ化もされたアートブック『NIMA』の世界観をRasmusが音楽で描いた18曲をコンパイル。鮮やかな色使いと日本のアニメーションを彷彿させるイラストに、エモーショナルなピアノ、オーガニックで心地良いストリングス、洗練されたエレクトロニカといった美しい旋律が凝縮されている。     
Rasmus Faberの存在はクラブシーンではハウスDJとして知られていることだろう。しかし、2009年以降、日本のアニメ界では楽曲制作やジャズアレンジを手掛ける希少な海外アーティストとして高い評価を得ている。ハウス、ジャズ、ポップス、エレクトロニカなど、ジャンルの壁を越えて活躍し続けるRasmusが最新作『Where Light Touches』[A NIMA Story]について語る。

 
Interview / Introduciton  : Kana Miyazawa



18曲で描いた幻想的で美しい世界観

ーーRoss Tranとのコラボレーションプロジェクトはどういった経緯で依頼を受けたのですか?

共通の友人を介してRoss Tranを紹介してもらいました。当初は1曲だけ楽曲提供する予定でしたが、彼のアートブック『NIMA』を見た時、私が以前から計画していたネオクラシカル・アンビエントのプロジェクトに最適な世界だと感じたのです。彼のアートに魅了されたことから、今回のコラボレーションアルバム制作に繋がりました。

ーーあなたが魅了された『NIMA』からはどんな世界観を感じましたか?また、どんなインスピレーションを得ましたか?

私もRossも2人ともドリーマーだと感じました。彼はイラストで、私は音楽で素晴らしい世界を想像します。私たちの作品には共通した形があると感じました。だから『NIMA』の世界に私が音楽を描くことはとても自然なことだと思いました。


ーーあなたは、これまでにEmily McEwanや若くしてこの世を去ってしまったBeldinaをはじめとする才能あるシンガーとのフィーチャリングやキャッチーでポップなサウンドが多い印象です。今作は全曲インストゥルメンタルで、ピアノが奏でる繊細で美しい音とオーケストラによる壮大なサウンドに仕上がっていますが、特にこだわった点や意識したことはありますか?

とても豊かで興味深いと感じさせ、リスナーを別の世界へ連れて行けるようなサウンドにしたいと思いました。これまでに多くのサウンドトラックを書いてきましたが、その経験を今作のようなオリジナルプロジェクトに活かしたかったのです。私が得意とするキャッチーなポップやハウストラックを作るのは今でももちろん好きですが、最近は様々なジャンルの音楽を探求していて、特にオーケストラに魅了されています。様々なジャンルで楽曲制作することが私のスタイルで気に入っています。


 
ーー『Where Light Touches』[A NIMA Story]はどんなシチュエーションで聴いて欲しいですか?
 
一人で自然や都会の街を歩きながら聴いてもらいたいですね。きっと素晴らしいシチュエーションになると思います。私の作った音楽が少しでも心に安らぎを与え、周りの景色がいつもとは違った視点で見えたら嬉しいです。もちろん、Rossのアートブックを見ながらアルバムを聴くのも良いですが、必須ではありません。それに、このアルバムは立体的なサウンドスケープを生み出すDolby Atmosやサラウンドサラウンドで聴けるようになっていますが、その完成度に誇りを持っています。多少の技術的なチャレンジがありますが、1人でも多くの人に体験してもらえたら嬉しいです!
 
日本のアニメソングについて
 
ーー日本のアニメや漫画に興味を持ったきっかけを教えて下さい。
 
長期間日本に滞在し、DJとしてツアーを行っていたので、自然とアニメに触れる機会が増えました。実は、私はあまりマンガは読みません。アニメもそれほど観ません。ただ、アニメ音楽にはずっと興味がありました。アニメ音楽はとても自由な創造性があるジャンルだと感じていましたし、自分が共感できる音楽が見つかることがとても多かったです。日本で過ごす時間が増えるにつれて、そのクリエイティブな分野に興味を持つようになったのがきっかけです。

ーーアニメソングを多数手掛けていますが、話題の『Platina Jazz 』シリーズではデジタル技術など親和性を感じるエレクトロニックミュージックではなく、ジャズでアレンジしようと思ったのはなぜですか?
 
『Platina Jazz』での私の立場はプロデューサーであり、自身でミックスを手掛けていますが、楽曲の大部分はミュージシャンやアレンジャーが行っています。『Platina Jazz』は、人気のアニメソングをジャズでカバーするというコンセプトがあった上でアレンジしています。スタンダードなジャズスタイルで演奏することによってオリジナルに忠実でタイムレスな楽曲に仕上げたいと思いました。私自身幼少期からジャズに触れてきており、ジャズミュージシャンとしてのバックグラウンドがあるので、ジャズのプロジェクトを手掛けることはとてもやりがいがありますね。同シリーズに限らず、他にもアニメのテーマソングを作曲していますが、アニメ音楽における電子的な側面も追求しつつオリジナル曲を書いています。


 
ーーハウスDJ、ジャズピアニスト、バンドやプロデュースなど多岐に渡り活動されていますが、多ジャンルを手掛ける中で、どのように切り替えているのでしょうか?
 
まさに言う通り、私はあまりにも多くのことをやりすぎているのかもしれません。しかし、何か新しいことをやりたいという衝動が常に湧いてくるので、なかなか一つに絞るのは難しいです。特に最近は、最新アルバムやサウンドトラックにおいてスコアリングやオーケストラにフォーカスすることが多かったです。でも、そろそろまたポップなサウンドやハウスのフェーズに入りそうな気がしています。
 
ーーまさに次回作はハウスミュージックでのアルバムリリースを予定されていると聞きましたが、どのような作品を予定していますか?
 
比較的シンプルなハウスミュージックのアルバムをリリースしたいと思っています。DJセットで使いたいと思っているトラックのコンパイルになる予定です。すでに多数のトラックが完成しているので早くリリースしたいですし、とても楽しみです。そして、その次は、もっとディープなサウンドになる可能性が高いです。ハウス、キャッチーなポップ、そして、シネマティックなサウンドのミックスになるかもしれません。
 
ーー日本には何度も訪れていると思いますが、今後日本でやりたいことはありますか?
 
日本を第二の故郷と呼べるほど頻繁に訪れていますが、日本のアニメやゲーム音楽を手掛けられることはラッキーだと思っています。DJとしては、しばらくツアー等を行っていないので、次のハウスミュージックのリリースを機に、また積極的にDJ活動を復活させたいと思っています。
 
 
『Where Light Touches』[A NIMA Story] Farplane Records / FP076 Track Listing :
 1 Train To Nimbus
 2 Beginnings
 3 Opus
 4 Some Are Forgotten
 5 Lunar Axis
 6 New Moon
 7 Grim Coin
 8 The Heart
 9 Healing Rain
 10 Dragon's Whisper
 11 The Apparition
 12 Iris
 13 Warden
 14 Lament
 15 Clutch To Life
 16 Where Light Touches 17 Synthesis
 18 Futures
 
【試聴リンク】
Farplane Records
Spotify
Apple Music
 
 
 
Rasmus Faber:
スウェーデン生まれのプロデューサー、ピアニスト、ソングライター、DJ。幼い頃からピアノを始め、音楽学校卒業後はジャズ・ピアニスト兼アレンジャーとして、スウェーデンのポップスやジャズ・アーチストのプロデュースなどを手掛けていたが、ハウス系アーティストのレコーディングに参加したことをきっかけに、自身でもハウス・ミュージックの制作をスタート。そして、最初に完成したハウス・トラック「Never Felt So Fly」がデビュー・シングルとしてリリースされ、いきなりの大ヒットを記録。その後、彼は自身のレーベルFarplane Recordsを立ち上げ、レーベル第一弾であり、彼の最高作品のひとつであるビッグ・チューン「Ever After」をリリースし、世界的な大ヒットを記録する。また、日本でリリースされた「Ever After」を含むシングル・コレクション『So Far』はクラブ・ミュージック・シーンの枠組みを超える大ヒットとなり、彼を日本で一番有名な海外ハウス・アーティストへと押し上げることとなった。その後、コレクション・アルバム第2弾『2 FAR』や初ミックス・アルバム『Love:Mixed』をリリースの他、数多くのリミックスを担当する中、数年の歳月をかけて構想されたファースト・スタジオ・アルバムの制作を開始。1年以上かけて制作されたアルバム『Where We Belong』を2008年11月に日本先行でリリースし、再び大ヒットを記録する。2009年に入ると、DJツアー、アーティスト・プロデュースなどを精力的に手掛けるのと同時に、彼のルーツともいえるジャズそしてアニメを融合させたアニメ・ジャズ・カバー・アルバム、『Platina Jazz - Anime Standards - 』をプロデュース。