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Red Bull Thre3style Japan 関東予選

世界中のDJが技やクリエイティビティを競い合い、世界No.1 Party Rock DJを決めるDJバトル「Red Bull Thre3Style」。その世界大会の出場権をかけた地方予選が6月より全国6都市で行われてきたが、いよいよ予選最終地区となる関東予選が、6月30 日(土)に東京ageHa@STUDIO COASTで行われた。 Text by : yanma (clubberia)

■Red Bull Thre3style

http://www.redbull.jp/cs/Satellite/ja_JP/Red-Bull-Thre3style/001242825588204 
Clubberiaでは、この「Red Bull Thre3Style 2012」の札幌、東北、中部、関東予選に同行し、ご紹介してきた。振り返ってみると、同じ日本でも、その土地土地でイベントの雰囲気やプレイスタイルが異なってくるのはおもしろかった。東北予選は、ターンテーブルスキルのアピールと選曲性の比重が半々くらいで、どちらかというと出演者もオーディエンスもクールな印象。中部予選は、パーティーチューンの応酬で、バトルでありながら1人1人のDJでオーディエンスも楽しむ、まさにパーティーそのものだった。北海道予選も、選曲性が際立っていたように思う。ターンテーブルスキルもスクラッチで魅せるというよりは、今かかっている曲をその場でエディットしているような使い方が多かったように思う。そして関東予選はターンテーブルスキルの応酬となったし、たとえアップテンポな曲でなくてもDJのパフォーマンスがよかったら、その都度歓声が沸くのも印象的だった。

DJバトルといえば、一般的にDMCが有名かと思うが、このRed Bull Thre3Styleは、DMCと何が違うかというと、DMCがジャグリング、スクラッチ、パフォーマンスの構成を競うのに対し、Red Bull Thre3Styleは、3ジャンル以上の音楽をプレイし、「創造性」「選曲」「スキル」「ステージ映え」「フロアの盛り上がり」の5項目を競い合うDJバトルとなる。世界大会も開かれており、この関東予選には、前年度の世界チャンプであるDJ HEADSPINもジャッジとして参加しており、他にもDJ KRUSHと当バトルのツアージャッジを務めたDJ KOYAの3者で行われた。
 
 
トップバッターとなるのはDJ Shu-g。はちまき姿から、大会にかける意気込みが伺える。プレイも著名人のインタビューをサンプリングし、メッセージ性の強いパフォーマンスを魅せる。トラックもそれに付随し、日本語のヒップホップやUSA For AfricaのWe Are The Worldなどを使用し、言葉として訴えかけるプレイを披露した。
2番手はDJ IKU。2010年Red Bull Thre3Style日本チャンピオンの彼。昨年の雪辱に燃えるプレイは、John LennonのPower to the Peopleからスタート。矢継ぎ早にミックスしていくプレイは今年も健在で、ロック、ダブステップ、ヒップホップ、ハウスと早い段階で条件の3ジャン ル以上というのはクリアする。また、NirvanaのSmells Like Teen Spiritの「Hellow, Hellow, Hellow, How Low」とMartin Solveig & DragonetteのHelloなどといった前後の歌詞の関連性を持ったミックスなど、ユーモア溢れるプレイとなった。
 
 
3番手はDJ SHINTARO。最初から高速スクラッチでビートを作り出し、アグレッシブなプレイでオーディエンスの注目を集めた。使用されるトラックは、どれも原曲 よりBPMが早くなっているようで、オーディエンス側がそれに引っ張られる。早いトラックにも、トラックの良さを壊さない絶妙なバランスで高速のスクラッ チを加え、よりオーディエンスを刺激し高みに連れて行った。ハウスやヒップホップ、レゲエといったジャンルをプレイしながらも、まるでロックのライブを体 感しているようなプレイに終始オーディエンスは盛り上がっていた。
4番手はDJ YU。Kanye WestやJay-Zといった定番ヒップホップからSkrillexといったダブステップ、ドラムンベースなどをプレイしていく。ダークでヘビーな選曲と 正確なスクラッチが加わり、安心してオーディエンスも身を任せていた。後半は、前半と対象的にStevie WonderやAvicii、Chris Brownといったハートウォームな選曲へと移行し盛り上げた。
 
 
5番手はDJ TAKU。DJ YUの流れを引き継ぐかの様なLMFAOやChris Brownの定番パーティーチューンをプレイしオーディエンスの熱を維持する。基本的に4つ打ちのフォーマットでグルーヴをキープしながら進んで行くが、 Nirvanaでもう1つ上の段階へギアを引き上げ、Daft PankやToni Bsdil、A-haを矢継ぎ早にプレイし盛り上げた。
6番手はDJ NUCKEY。序盤はレゲエから徐々にエレクトロハウスへ移行し、中盤は特にエッジーなトラックを多く使用していった。PCのループ機能を巧みに使用し、トラックの中で耳を引くフレーズをループさせ、次のトラックを重ねて行くプレイが印象的だった。
 
 
7番手はDJ U-LEE。正確なルーティーンからスタートしていく。DJ U-LEEが他のDJと明らかに違ったのは、その卓越したターンテーブルテクニックで構成されたセットだったということ。Public EnemyやBeastie Boys、De La Soulといったオールドスクールなトラック群を新たなルーティーンでリズムを作り出し、オーディエンスを引っ張って引っ張って引っ張ってサビを聞かせる プレイに、その都度、大きな歓声があがっていた。
ラストはDJ CHARI。予めサンプリングしておいたMCからスタートし、アンセム系パーティートラックをミックスしていく。パフォーマンスも派手で、跳ねる、煽るは 当たり前で、ステージの端から端まで動き回りオーディエンスを見方につけていった。終始右肩上がりで盛り上げ続け、15分のパフォーマンスを終えた。
 
 
審査が終わり、関東代表の座を勝ち取ったのは、DJ SHINTAROだった。両手を広げ大きなガッツポーズをしたDJ SHINTARO。数分前までライバルだったDJ達も、彼と握手やハグを交わし祝福していた。DJ SHINTAROに今の心境を聞いたところ「嬉しくて言葉には表せない。決勝では、正々堂々と勝負をして世界への切符を手に入れたい。そして日本にもヤバ いDJがいることを世界にアピールしたい」とコメントしてくれた。また、ツアージャッジのDJ KOYAは関東予選を振り返って、「自分のホームということもあるし、知っているDJも何人か出ていたから熱くなりました。いい戦いでした。各地の代表者 のプレイは見てきましたから、決勝はこれほど難しいジャッジは無いだろうと今から思っています」とコメントしてくれた。また、DJ KRUSHは、「DJバトルのジャッジは何度かやっているが、Red Bull Thre3Styleは、いろいろな要素が必要だし、擦れればいいってわけじゃないからジャッジするのが難しかった。優勝した彼には、クールだけれど暖か い印象を感じたから、そういった長所を伸ばしていってほしい」とコメントしてくれた。さらにDJ HEDSPINは、東京でのバトルを見て「カナダのDJとは、音楽の感覚など多くが違うからすごい新鮮だった。DJ SHINTAROは、もっと音楽のバラエティーを持つことができれば、日本で優勝し世界に出たとしても善戦できると思う」とコメントしてくれた。

こうして、とうとう全国各地から7名の代表が出そろった。ここに昨年の日本チャンピオンの8MANが加わり、計8名で世界への切符1枚を争う。DJ KOYAが「これほど難しいジャッジはない」と言うように、7月22日(日)に大阪"CLUB JOULE"で熾烈なバトルが繰り広げられる。