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FUJI ROCK FESTIVAL'12 -DAY 1-

フジロックへは帰って来たという表現がしっくりくる。昨年、初めてのフジロックは自分の準備不足もあり、もはや苦行のレベルだったということもあったが、不思議と嫌な思い出にはなっていない。むしろ青春時代の部活動の様に美化されているくらいだ。車の窓から苗場の「FUJI ROCK FESTIVAL’12」のゲートが見えると、苗場に帰ってきたんだなと感慨深い気持ちになるのは、フジロックをおいて他にないように思う。

Text:yanma (clubberia)
 
昨年は、1日半しかなかったので、とりあえず見たいアーティストを休みなく見て回ったが、今年は夏休みも兼ねて3日間ゆっくり過ごすことにした。

今年のフジロックは、GREEN STAGEのThe Birthdayからスタートした。元THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのチバユウスケとフジイケンジらによるロックバンド。金曜日ながら、すでにステージには多くのオーディエンスで埋め尽くされている。ステージ付近ではファンが、青空に突き上げた拳とくしゃくしゃになった顔、激しく心と体を解き放している。普段ロックをあまり聞かないが、ちょうど行きの車で彼らのCDがずっとかかっていたこともあり、チバユウスケのしゃがれた声が、苗場らしくない日差しとは対照的に体にどんどん馴染んでいった。演出もMCもほとんどなくシンプルに進んで行くが、彼らの圧倒的なオーラに大型モニターを見入ってしまっていた。GREEN STAGEの大観衆をロックする音楽、日本語の歌詞のメッセージ性に到着早々感服した。
   
日本語特有の詩的な美しさ、力強さを表現するTHA BLUE HERBが同時にWHITE STAGEでパフォーマンスをしていた。The Birthdayに見入ってしまったため、急いで向かうもいつ終わってもおかしくない時間帯。「未来は僕らの手の中、未来は僕らの手の中」ILL-BOSTINOの声が近づいてくる。ようやくステージに到着した時には、曲は終わり最後のMCだけ見ることができた。大型モニターに映るILL-BOSTINO。脱原発に対するメッセージを己の声とマイクを使い、あの場に送った。堂々した出で立ちは、強さだけでなく紳士的でもある。「かっこいい」。単純な形容になってしまうが男として憧れる。また、私からしてみればクラブシーン代表のように彼らが見えてしまう。日本最高峰のフェス、それもWHITE STAGEという巨大なステージで、集まったたくさんのオーディエンスから大きな歓声と拍手が注がれる光景を見て嬉しくなった。ほんの少ししか見れなかったが私も大きな声援と拍手を送らせてもらった。

入場して1時間、けっこう慌ただしかったが、この後はのんびり過ごすことにした。川に入って遊び、フェス飯を食い、寝っ転がれそうな場所を探して仮眠をとったり。自然の中でゆっくり過ごす、そんな贅沢な時間を過ごさせてもらった。
   
日も暮れてGREEN STAGEでBEADY EYEのライブが始まる。元OASISのシンガー、リアムギャラガー率いるバンドだ。09年のOASIS事実上の解散から3年も経っているのかと思う。OASISのライブは見たことがなかったので、リアムの手を後ろに組んで体を曲げた、あの歌い方を見れたことと彼の声を聞いた時には嬉しくなるが、OASISと何が違うのだろうと疑問に思い考えたりもした。キーボードの音がOASISの時より疾走感を生んだのか?ロカビリーの雰囲気が強くなってオールドスクールな印象もあったり。疑問を持ちながらパフォーマンスを見ていると、OASISの代表曲である"Rock ‘n’ Roll Star"や"Morning Glory"を演奏した時は、1番の盛り上がりをみせていた。やはり、みんなOASISが見たいんだなと正直思う部分もあった。OASISの曲をやるのであれば、仲直りすればいいのにとも思ってしまうし、やはり再結成を私自身も望んでしまう。
   
初日のヘッドライナーは、2011年に奇跡の再結成を果たしたThe Stone Roses。私自身リアルタイムを通ってきていないので、正直名前は知っているが・・・といったところ。The Stone Rosesが再結成したことよりも、今年のフジロックの開催発表と同時にThe Stone Rosesの出演が発表されたという異例の事態により、これはただごとじゃないんだと認識した。ちょうど、フジロック前にカメラマン/ライターの久保憲司氏と「クッキーシーン」主宰の伊藤英嗣氏による共著「ザ・ストーン・ローゼズ ロックを変えた1枚のアルバム」が発売されていたので読んでいたのと、YOUTUBEが予習だった。

転換の音楽がフェードアウトし、The Supremes/Stoned Loveが流れステージに4人が姿を現すと、GREEN STAGEに集まった超満員のオーディエンスから大歓声が沸き起こる。ステージ後方で見ていた私にとっては、人数、規模、エネルギー量に鳥肌が立つ。1曲目は、ファーストアルバムの1曲目でもある"I wanna be adored"だった。ルーズなボーカルと演奏に心が安らぐ。売れることがパンクじゃないとされたパンク以降のイギリス音楽シーンに対し、売れることの何が悪いの?有名になりたい!と言い切った前向きなメッセージが伝わってくる。"Somethings Burning"や"Foolds Gold"では、もはやファンクだよね?と思うほどのグルーヴ感に脅かせられたり、"Foolds Gold"は、オリジナルより尺を伸ばしてサイケデリックで怪しい世界観に引き込んでいった。
   
The Stone Rosesは、不思議なバンドだ。音をちょっと聞いただけで、稲妻が走ったかの如く好きになるタイプの音楽ではない気がする。とりわけ歌や演奏がうまいかといったらそうでもない気がする。ただ、彼らがもつ揺らぎは心地いいし癖になりそうだった。

90分間のライブが終わり4人が肩を組んだ姿を見たとき、あの場にいたオーディエンスは夢から覚めたのだろう。The Stone Rosesがほんとに再結成したのだと。

前日ほとんど寝ていなかったこともあり宿舎にもどり早めに就寝することにした。眠りに着くまで絶えない友人との今日を振り返っての会話が、今日1日をより熟成させてくれる。とりあえず、フジロック1日目ありがとう。