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WIRE13 - 15TH ANNIVERSARY - supported by Music Unlimited

SVEN VATHが両手を横に大きく広げオーディエンスを煽る。その両手を上にあげると、オーディエンスも歓声と同時に両手をあげる。あれが、SVEN VATHなりの"BANZAI"だったのかは不明だが、「WIRE」の15周年は、アニバーサリーらしく温かく終焉を迎えた。そして15周年という歴史的な開催は、終焉から12時間前の18時に幕が開けたばかりだった。

Photo:

WIRE全景: 成瀬 正規(Masanori Naruse)
MAIN FLOOR:成瀬 正規(Masanori Naruse)
SECOND FLOOR:北岡一 浩(kazuhiro kitaoka)


Text:
yanma(clubberia)
 
18時のオープンと同時に、メインフロアはDJ SODEYAMAがプレイ。3回目の出演にして、メインフロアのオープニングを担う大抜擢。開催前日、彼のTwitterで「オープニングでかける曲を仕込まなきゃ」というツイートがあっただけに、1曲目に何をかけるか楽しみにしていたが、あいにく仕事の都合で会場に着いた頃には、すでにオープンから30分が過ぎていた。例年、オープニングは派手目な印象があるが、硬質な音色と厚みのあるキックで、オープニングにちょうどよい雰囲気を作っていたように思う。終盤、昨年のWIREコンピに収録していた「TOUCH」のエディットだと思われるトラックから、Telefon Tel Avivのビートレスのエレクトロニカで、巨大なアリーナが2~3分くらい優しく包んだ。そして徐々にビートが入っていきオープニングの60分を終えた。後で人から聞いた話だが、彼のオープニングの曲は、最初はノイズのような音の中に、「ピッ、ピッ、ピッ、ピッ」とカウントダウンのような電子音が入って来て、そこへ「W」「I」「R」「E」と1文字ずつ発せられる声ネタを約10分くらいかけて、お客さんがある程度アリーナに集まるまで待っていたそうだ。その音に今年のWIREコンピに収録された「FREEDOM」が入って来た時には、しびれたと言っていた。

そしてメインフロアはAGORIAへ。AGORIAは、一転してメロディアスなトラックを中心に構成。DJ SODEYAMAの硬派なプレイとのギャップも楽しめた。ボーカルもの、シカゴっぽいアシッディーなトラックやバウンシーなトラックが多く、彩り豊かなプレイ。ブレイクの度にオーディエンスの手が上がるのだが、まだ始まって1時間やそこら。それほど踊るということに目的意識が高いお客さんが今このフロアには多いのだろう。

   
セカンドフロアへ移動し、インタビューを録ったRYUKYUDISKOのライブへ。少し早く着いたので、TAKAAKI ITOのプレイを少し見ていたのだが、7時からスタートしたセカンドフロアもオープンから約1時間でピークタイムを迎えているかのような盛り上がりをみせていた。ハードなミニマルテクノの音の抜き差しで歓声が上がる。空調もあまり効かなくなるくらいの熱気と汗のにおいが生々しくも、それは踊るために創られた音楽、テクノの魅力を感じる時間だった。

RYUKYUDISKOへ変わり人が入れ替わるかなと思っていたが、ほとんど入れ替わらなかった。さっきまでTAKAAKI ITOの硬派なトラックで踊っていた人たちが、RYUKYUDISKOのポップなトラックでも踊り続けるのには、WIREというフェスティバルのおもしろさ、ファンの許容力の大きさを感じた。拘りの強いオーディエンスが多いのがテクノファンの印象があったが、その先入観が崩れた瞬間だった。アルバム『TEN TO TEN』の楽曲を解体し再構築したようなパフォーマンス。Donna Summer「I FEEL LOVE」をサンプリングしたエディットを披露したりと終始楽しませてくれた。沖縄音楽独特の三線の音色のブレイクでは、みなが沖縄独特の手の振り付けをする光景も今日というお祭り感に浸れる瞬間だった。イーヤサーサー!

   
メインフロアへ戻り、こちらもインタビューを録らせてもらったKEN ISHIIのプレイへ。常にピークタイムのようなテンションを維持し続ける彼のプレイは、まさに「WIRE」のような巨大な空間にぴったりだ。寒色の照明は、彼の情熱的だがクールなプレイによく合う。音楽を楽しむというより、サウンドを楽しむ。そんな時間が流れた。

そのまま、WESTBAMへ。スクラッチでオーディエンスを煽り、初期のFatboy Slimのようなビッグビートが鳴り響く。そしてブリーピーなサウンドを重ねていく。ブースでは、激しく踊り、タオルを回し、ブースの前に出て踊ったりと、このテンションにオーディエンも引っ張られる。エレクトロをメインにプレイしていたが、最後に春にリリースしたアルバム『Gotterstrasse』からリードトラックである「You Need The Drugs」をプレイして彼のパフォーマンスは終了した。
 
 
WESTBAMが作った空気に登場するのは、スペシャルゲストであるGIORGIO MORODER。エリアによっては入場制限もかかり、おそらく今日1番の人がメインフロアに集中した。GIORGIO MORODERがボコーダーの処理をしたマイクパフォーマンスをしプレイがスタートする。おそらくだがCHRIS COXがメインでプレイし、GIORGIO MORODERがポン出しやエフェクトなどをしているように見える。とくにサンプリングされたキュルルルルル~というSFっぽいサウンドをポン出しし、そのまま手を上げるが、それだけで会場は大盛り上がり。今日はお祭りだからいいかと思う。重いビートからダウンビートに移行するDonna Summer「I FEEL LOVE」ニューミックスや「The Neverending Story」「HOT STAFF」など数々の名曲を踊れるようにエディットし披露してくれた。

   
次に控えていたのは石野卓球であったが、DJ HELLのインタビューのためここから暫くメインフロアから離れた。インタビューを終えそのままブースに向かう彼を見送り、再びメインフロアへ。地響きのようなキックとは対象的にメロディアスな上音の反復が続く。ディープな歌モノが多く、どこか中世ヨーロッパの街並みを連想させる曲。30分ほど経ったくらいからアシッディーであったり、ロックよりのトラックも増え、選曲の幅が広がっていった。終盤にはAmeのRejを連想させるリフが特徴的なBen Sims「Staight From Bolivia」でひっぱりプレイを終えた。

そして、この後に控えるのはLEN FAKI。まさに戦車やブルドーザーと形容したくなる常に前へ進むサウンド。キック、ハット、シンセの3音くらいほどで構成されているのではないかと思うほどシンプルなトラックを繋げていくが、これがWIREのオーディエンスが求めていた音かと思うほどの盛り上がりを終始維持していた。
 
 
この盛りに盛り上がった後に続くのがJOSH WINK。個人的に今年のWIREのベストアクトではないかと思ったプレイ。ドラムマシーンを連想するキックとクラップにLEN FAKIとのギャップを感じ、おもしろくなるも、その厚い出音と選曲の構成に繊細さを感じた。この上モノのループはいつまで続くのだろう?そう思えるほど、ループ音が徐々に少しずつ音色を変えていくようだった。退屈な音楽に聴こえた人もいたかもしれないが、その上音の微妙な変化に平行感覚を奪われるようだった。ラスト20分くらいだったか、いきなり「The Bells」「Sunshine」「Vamp」「French Kiss」、そして自身の代表作「Higher State Of Consciousness」といったクラシックスのオンパレードという時間帯があった。まさにサービスタイムとなったこの時間に、みな歓喜した。15周年ということもあり、各出演者がクラシックスをかけるかと思ったら案外そうではなかったので、ここで解き放たれた感覚だった。

SVEN VATHのプレイの合間に、PACHANGA BOYSのプレイを見にセカンドフロアへ行く。BPM125くらいの少しゆっくりめのビートが心地いい。キラキラしたメロディーやアシッド全開の変態トラックなど、この2人は本当に変な曲をたくさんかけるなと思った。マイケルジャクソンの「BillieJean」ネタのトラックで盛り上がりを見せるも、ちょっと変な曲をかけすぎたのか、若干、オーディエンスの気持ちと噛み合っていなかったかもしれないような印象を受けた。ただ、最後にかけていた、少しずらしてオーバーダビングしたようなボーカルもののトラックがすごいかっこよかった。あの曲のタイトルを知りたい。
 

 
 
さて、今年もいよいよSVEN VATHのプレイを残すばかりと大詰めを迎える。相変わらずヴァイナルを使用したプレイは健在。エフェクターもおそらくほとんど触っていないだろう。彼が行ったテクニックといえばおそらく、ボリュームを自ら下げてブレイクのように見立て、一気にボリュームを元に戻すこと。それ以外は、DJとしてグルーヴを壊さぬよう低域は常に一定で、中域で変化をつけていっていた。終盤はLEN FAKIのようにハードミニマルでオーディエンスを休ませない選曲になっていき、初期のデトロイトテクノサウンドへ流れ、徐々にビートレスになり終了していった。曲が止まるも、アンコールを求められるとすぐにプレイを再開し、約20分ほど楽しませてくれたのち、"BANZAI"へと繋がり素晴らしいアニバーサリーは終わりを迎えた。
 
 
近年、フェスの増加も伴い、おそらくここ5年は厳しい状況が続いてきたと思われる「WIRE」。また「WIRE」の場合は、15年という時間からくる世間の慣れも大きいかもしれない。人は刺激に慣れてしまうのはしょうがない。ただ、タイムテーブルを見るたびに、これだけのアーティストが一夜で揃うテクノフェスなど「WIRE」しかないし、これが15年続いていると思うと、この火は消すわけにはいかないと思ってしまう。テクノという音楽を巨大な空間で体験できるということは、テクノをはじめ、ハウス、ダブステップ、エレクトロなど全てのクラブミュージックの魅力を伝えるための大切な場所だと思うからだ。体験に勝る経験はない。音楽はどこでも楽しめるが、「WIRE」でしか楽しめない音楽の魅力があるはずだ。でなければ、毎年足を運ぶファンがこれほど多くいるはずがないと思う。

追記:
現在WIREのオフィシャルサイトでは、アンケートが行われています。回答者の中から抽選で計100名の方に、「WIRE13 スタッフTシャツ」または「WIRE13 缶バッヂ コンプリート55個セット」が当たります!アンケートは10月末日で締め切られるとのことです。アンケート内に、「今後WIREに出演して欲しいアーティストは?」とあったので、私はKraftwerkと書いておきました。みなさんは誰が見たいですか?
http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/WIRE/13/enquete/index.html