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Red Bull Thre3Styleの傾向と、その本質を求めて

Red Bull Thre3Styleの傾向と、その本質を求めて


 昨年、世界的DJに仲間入りした日本人DJが1人いる。その名はDJ SHINTARO。彼は、2013年に行われたRed Bullが主催するDJ コンペティションのRed Bull Thre3Styleで見事、世界チャンピオンに輝いた。このThre3StyleというDJ コンペティションは、15分の持ち時間内に3ジャンル以上の音楽をプレイし、「創造性」「選曲」「スキル」「ステージ映え」「フロアの盛り上がり」の5項目を競い合うというもので、歴史のあるDMCや昨年から日本でもスタートしたburn World DJ Contestとも少し趣向が違ってくる。
 今年もそのThre3Styleの地方予選が3月から全国5都市でスタートし、各地方予選を勝ち抜いた5名のDJにワイルドカードとして3名のDJを加えた8名で、5月11日(日)渋谷"SOUND MUSEUM VISION"にて9月にアゼルバイジャン・バクーで開催される世界大会への切符をかけた戦いが繰り広げられた。
 
Text : yanma (clubberia)
Photo : Red Bull

 
 
 私は2012年、2013年とこのThre3Styleに同向させてもらい見てきたが、その年々によって傾向が変わってくる。
 まず2012年は、今でいうEDMトラックが多用されていた年だった。Thre3Styleに出場するDJの多くは、普段ヒップホップをメインにプレイしているDJが多い。15分という時間の中で、スクラッチや2枚使いを間に入れながら、大きく分けてヒップホップ、EDM、誰もが知っているネタものといった楽曲でパフォーマンスをクリエイトしていたが、選曲力や構成力に日本大会では重きが置かれていたように思う。
 いっぽいう2013年は、前年と打って変わってEDM系のトラックを使うDJが顕著に減った。わずか1年でここまで変化するのも興味深いが、選曲性に取って代わりコントローラーのパッドを使ったプレイを取り入れるDJが増えた。これは、2012年の世界チャンピオンのFour Color Zackの影響が強いのかもしれない。事前に設定しておいたキューポイントを叩き、曲のフレーズを自身で演奏し、そのまま元曲にミックスするという手法が多く見られた。

 
   
 では、2014年はどうだったのだろう。今年は選曲的にはヒップホップをメインに構成するDJが昨年より増えたように感じる。曲調もアッパーなものというより、ヒップホップ本来の横ノリのグルーヴが主体となり、PioneerのDDJ-SP1やNovationのDicerといったコントローラーのパッドを取り入れたプレイも昨年より工夫が施され、さらに高いレベルへといったように思う。そして、今年顕著に変化があったのが、パフォーマンス性だったかもしれない。これは、昨年DJ SHINTAROがDJブースに飛び乗りオーディエンスを煽ったり、フロア側からDJプレイをしたりしていた影響だろう。
 
 
 
 ファイナリストのプレイとまでとなると、各ミックスポイントに工夫が施されアーティストや曲はかろうじて分かるが、基本的に曲の原型を留めていない。またワンフレーズや数小節のみを使うのはざらで、私が見てきた3年間の中で1番レベルが高いジャパンファイナルだったと思う。ただ、その中でどうしても引っかかる部分があったのも事実だ。
 私にとって今年のジャパンファイナルは、DJプレイの純度は高まっているが過去の大会のアップグレードしたものとしての印象を持った部分があった。欲張りなのかもしれないが、エポックメイキング的な何かを期待する部分がある。その中で、テクノロジーの進化によっていろいろなDJプレイができるようになった現代において、ヴァイナルだけでプレイしたDJ BUNTAのパフォーマンスは、他出演者と差別化が図れ、逆に光っていたように思う。

 
 このことをDJ SHINTAROに聞いてみると、「今はいろんなテクニックや、いい意味での小細工が増えてきてるけど、そっちにフォーカスし過ぎるとThre3Styleでは、逆に足元をすくわれると思う。根底には"Rockする"とい部分があってのトリックだと思うし、自分のキャラにあったプレイをすることが大事。」という見解を説明してくれた。
 このことは、DJの基本でもあるかもしれないが、Thre3Styleの魅力の1つだと改めて再認識した。選曲がいいだけでも、スクラッチやジャグリングスキルがあっても、機材を使い倒すだけでも勝つ事ができないのがThre3Styleなのだ。謂わば、DJとして必要な要素を総合的に全て満たし、確実に盛り上げるプレイヤーでなければならないのがThre3Styleであり、それは純粋なDJ力が試されているコンペティションなのだ。

 
   
 今回日本チャンピオンとして世界に挑むDJ RENは、元レコードショップのバイヤーとして働いていただけあり、安易に人気トラックを連投せずとも盛り上げる選曲センスはもちろん、スクラッチやトーンプレイなどのテクニックとその分量のバランスの良さ、なによりステージ上での立ち振る舞いに多くのオーディエンスが魅了されていたことだろう。だから彼のプレイには、自信と説得力がある。
 今回ジャパンファイナルで見せてくれたプレイは、東京という土地にアジャストしたものだと思う。DJ REN自身も話してくれたが、世界大会に向けアゼルバイジャンという土地でどういった曲が好まれるのかなどのリサーチを徹底的にし、次は世界で勝つ為の準備が待っているそうだ。
 昨年DJ SHINTAROが世界チャンピオンとなっているだけに、今年は、DJ RENに日本からの期待だけでなく、各国からの注目が集まり大きなプレッシャーが彼にのしかかると思う。ただDJ RENは、「2年連続で日本人が世界チャンピオンになり、日本が音楽的に認められるようにしたい」と力強く意気込みを語ってくれた。

 
   
 5月11日(日)午後10時。Red Bull Thre3Style 2014の日本チャンピオンにDJ RENの名前が告げられた。祝福の声援を送るオーディエンスに、彼はステージ中央に膝を着き頭を深く下げた彼の姿が非常に印象的だった。「今日勝てなかったらDJを辞めていた」とステージ上で言ったDJ RENに、後で自身にとってThre3Styleとは?と聞いてみた。

「自分にとってThre3Styleは、存在価値そのものなんだと思います。音楽を通してお客さんをいい気持ちにさせて、みんなが盛り上がって集まっているところに自分は存在価値を感じるんです。だから"Party Rock"という主旨でやっているThre3Styleは、自分にとって魅力以外の何ものでもないんです。」

 DJ RENは、9月に行われる世界大会で各国の代表20名と世界No.1パーティーロックDJの座を賭けて熾烈な戦いを繰り広げることとなる。ステージ上で堂々とオーディエンスを煽る彼の姿を想像すると、世界チャンピオンにDJ RENの名が告げられる事は夢ではないだろう。


■Red Bull Thre3Style
http://www.redbull.com/jp/ja/music/stories/1331650709423/thre3style-japan-final-report