RAINBOW DISCO CLUB 2015(以下RDC)が終わり、何度あの3日間のことを話たでしょうか。一緒に行った友人たちとRDC以降も毎日のようになぜか集まり、RDCの事で会話が弾みました。GWも終わり、いつもの生活が戻ってきても、なかなか抜け出せられませんでした。むしろ、楽しかった思い出が熟成されていきます。思い出話は熟成を促し、笑った後には、会場の芝生の青い香りなのか、Todd Terjeで踊りながら飲んだラムの甘さとアルコールの鼻を突く香りなのか、朝の澄んだ空気の澄んだ香りなのか、それぞれの残り香と共に少しの空虚感がやってきます。
5月2日~4日にかけて東伊豆クロスカントリーで開催された「RAINBOW DISCO CLUB 2015」は、なぜこれほどまでに楽しかったのでしょうか?「楽しかった」というと、このような場での表現として乏しい気もしますが、例えばよく見る「伝説的な」といった仰々しさは、このフェスには似合わないと思います。もっと身近でシンプルな感情が今年のRDCには似合い、それを伝えたいと思いました。では、なぜこれほどまでに楽しく心に残るフェスとなったのでしょうか?
Text : yanma (clubberia)
- 小さな苦難と大きな幸運 -
今年のRDCを遊ぶにあたり、遊ぶ側が恵まれていた点は、天候とロケーションでありましたし、このことは誰もがほぼ平等に同じ体験を共有できる点です。3日目に雨は降ったものの初日と2日目はこれ以上ないフェス日和となりました。
ロケーションは、会場を移してから1回目の開催ということもあり、遊ぶ側は蓋を開けてみないと分かりませんでしたが素晴らしい会場でした。メインステージが全面芝生?(芝生のような草?)という贅沢な環境。気楽に裸足になったり、寝っ転がれたりと汚れを気にせずに童心に戻れました。テントエリアも場所によって若干の差はありましたが、メインステージにも近いけれど、木々でステージと仕切られてたので遊ぶ区画と生活する区画で分けられているようで、気持ちのメリハリが持てたように思います。会場も広過ぎなかったのもよい点だったのではないでしょうか。また21時で音が止まるので、自然と寝るのも早くなり、朝日や小鳥のさえずりと供に6時ごろに目が覚め、自然と同じリズムで生活するのもいいものだと感じました。特に子供連れにとっては、このような場所や環境であったら、子どもでも一緒に過ごせる、遊ばせたいと思えるかもしれません。
天候に関しては、ラッキーとしかいいようのものですが、ロケーションは主催者が数ある会場の中からこの場所を選び、作り込んでくれたたという道筋があるため、それはギフトのように思えました。
小さな困難は、人によって違ってくると思います。主催者サイドのオーガナイザー不足のようなものは、特に感じられませんでした。ただ、GWということもあり渋滞にはまり予定より到着が大幅に遅れた人も少なくなかったと思います。早く会場に到着したいという気持ちとは裏腹に進まない車。私もその1人でした。到着が遅れると何が待ち受けているかというと、テントエリアの最も奥へ行くこととなる。大量の荷物を持っての移動は早くも挫折しそうになりました。個人的なことを書くと、まさかの斜面にテントを建てるはめになるとは思いませんした。さらに持っていったテントの1つがワンポール式のテントで斜面NGということに途中まで建てて気付き、男4人くらいで・・・となっていました。
私たちのグループは、そのことや他にもアクシデントはありましたが、そういったストレスは、思い出に残るためのいいスパイスとなります。おそらくみなさんのグループでもアクシデントはあったと思いますが、後日の笑い話になっていることでしょう。
- 野外フェスで空いていたポジション-
年々大きくなっていくフェスシーンではありますが、EDMを除くクラブミュージック系の野外フェスを考えると実はあまりないように思います。特にMetamorphoseが開催されなくなったのは、1つの大きな出来事だったのかもしれません。それは、Space Lab Yellowが無くなりクラブへの足が遠のいた人が少なくないように、クラブミュージック系のフェスシーンにとってメタモ難民は存在していたように思います。
今回のRDCは、TaicoclubやThe Labyrinthに近いイメージがあるかもしれませんが、規模やラインナップの傾向も違います。RDCのタイトルが示す通りディスコ、ハウス、テクノといったエレクトロニックミュージックが楽しめる野外フェスは他にほとんどありません。単にジャンルで括ればありますが、RDCのようなラインナップ、規模を含めたものの中での考えると唯一、京都で開催されている「THE STAR FESTIVAL」くらいでしょうか。特に国内勢は、国内よりも海外での評価が高いアーティストが揃っていたのもRDCの特徴の1つかもしれません。
なによりシンプルに、野外フェス/レイブ=BPMが早めのトランス/テクノが多い中、もう少しゆっくりなグルーヴで踊りたい人へ向けたものであったフェスだったというい点を振り返ると、Metamorphoseが開催されなくなり、その枠がすっかり空いていたのに気付きます。
また、野外フェスの中に存在した擬似クラブであったRed Bull Music Academy Stageの完成度の高さは感動的でした。入り口までは街によくある体育館でしたが、中に入ると洗礼された空間が存在していました。最小限ですが幻想的な照明、音と空間を壊さず名脇役徹する映像、音を体で感じれる圧倒的な音響。今、もっとも求められているであろうクラブの姿を見たように思いますし、こんなクラブが私の住む東京にあってほしいとすら思いました。人それぞれが描くクラブのイメージは違うと思います。がしかし、視覚的な刺激がなくても、音に没頭できる空間、それもある程度の大きな規模であること。それが私にとってのクラブであり、そのような空間を求める人も決して少なくないと思っています。正直、擬似と呼ぶにはあまりにもクオリティーが高く抵抗はありますが、残念ながらわずか2日でこの空間は無くなってしまいます。ある意味、本当に「伝説的な」空間だったのではないでしょうか。
- 実際には存在しない村 -
これは、RDCが楽しかった理由のもっとも大きい部分ではないでしょうか。定かではありませんが、約1500人の集客数という噂を聞きました。正直、何人の人が来たという数字はイベントやフェスの盛り上がりを示す数値ではありません。むしろ何人もの人が楽しんだかの方が重要であり、それが熱量であり充実感だと思います。その数値は簡単に測ることはできませんが、SNSでのタイムラインを追う限り来場者の充実度はかなり高いものがあったのではないでしょうか。
仮に1500人という数字が事実だとすれば、The Labyrinthの半分であり、Taicoclubの約1/6、Metamorphoseに至っては約1/14の来場者数です。例えはかっこ悪いかもしれませんが、私の出身は田舎であり町に1つあるスーパーに行けば友達もいたり、友人の親や、名前は知らないがよく見かける人がいたように、会場内で何度も同じ人を見かけたりすれ違いました。小さな村が期間限定で存在していたのです。その感覚がどこか懐かしく、もちろん一緒に行った友人は家族となります。だから終わってからも会っていたのかもしれません。
さらに、この村は不思議でみんなディスコ、ハウス、テクノで踊り、時にはフォーと奇声まであげるんです。クラブミュージック好きにとっては理想の村かもしれません。しかし、今回の評判があるから、来年は同会場で開催されるのであれば移住者が確実に増えることでしょう。それは少し残念な気もしますが、クラブミュージックの精神には、オープンマインドであることが存在するはずです。
- 終わりに -
東京の晴海客船ターミナルで開催されていたころ都市型フェスといわれたRDCは、場所を変え、都会的フェスとでも呼ぶのでしょうか?どこか柔らかく変化したようにも見てとれます。バカンス的なロケーションで楽しむRDCステージに、洗礼されたRed Bull Music Academy Stage。そして世界レベルのディスコ、ハウス、テクノで踊れる村になります。
これだけ、今までなかったものが集まれば、それは純粋に楽しいはずです。来年も再びあの場所で青空の下、素晴らしい時間が過ごせることを願うばかりです。
p.s
今回の反省を踏まえ来年へのアドバイスがあるとしたら、車で行くのなら早朝出発。斜面では寝にくい。日帰り温泉は事前に可能かどうかちゃんと調べる。朝、テントエリアで淹れて飲むコーヒーは格別に美味しい。という事が挙げれるので、何かの役に立てば嬉しいです。
Photo by Yusaku Aoki
Photo by Suguru Saito / Red Bull Content Pool
Photo by Rakutaro Ogiwara
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