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コンセプトは“原点回帰”
「RDC“Back To The Real”」イベントレポート

文:Masafumi Take
写真:Jiroken, Ken Kawamura, Masanori Naruse

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、今年5月と8月から延期せざるを得なかった「RAINBOW DISCO CLUB」。そのスピンオフ企画「RDC "Back To The Real”」が、10月30日(土)から31日(日)の2日間にわたって川崎市「ちどり公園」にて開催された。本記事では、「RDC」にとって7年振りとなる郊外型パーティーの様子をお届けする。


Day1


 新型コロナウイルス感染拡大の影響により、伊豆町での開催を見送らざるを得えなかった「RDC」が"原点回帰"をコンセプトに掲げ、新たな形での開催となった「RDC “Back To The Real”」。シンプルに音楽と向き合い、皆で創り上げるダンスフロアを目指し、川崎市の緑豊かな臨海公園「ちどり公園」で開催された本フェスティバルは、長きに渡った緊急事態宣言が解除され、開催発表から2回の延期を経てようやく開催となった。

 開催に際して、新型コロナウイルスの対策として来場者と出演者、スタッフへの参加条件が明示され、条件をクリアした方のみが参加できる万全の対策が施され、全ての公演ではないもののライブストリーミング配信もされていたので、自宅から配信を楽しんだ方も多かっただろう。

 初日に到着した頃、メインフロアである「RDC stage」では穏やかな晴天に恵まれ、芝生のフロアに腰をおろして休憩や談笑をしているお客さんも多く、ピクニックのような平和な雰囲気であった。テントや椅子は持ち込み禁止だったため、一般的な野外フェスというよりは郊外型フェスティバルという様相だ。



 心地よい秋晴れの中、「RDC」の象徴の一つでもあるピラミッド型のDJブースにはCHIDAが登壇。「Lady - Dance To The Music (Club Mix) 」や「Lisa Stansfield - People Hold On」といったクラシックを次々とプレイ。会場全体のレイドバックな雰囲気も相まって、ここが「RDC」のフロアなんだということを実感させられる。

  

 また「RDC stage」のフロアは後方から前方に向かって少し下る傾斜になっていて、後方で踊っていても前方のお客さんやDJを見下ろせる。そのため、友人を探していても比較的すぐに見つけられたり、踊っている友人を発見したりという場面が多く、一般的な全てフラットなフロアと比較して、ほどよい一体感を感じた。


 

 京浜運河に面する「The Top」は、ブース奥に川崎火力発電所、運河の対岸には石油ターミナルを臨み、まさに川崎の工業地帯というロケーションだ。時折り京浜運河に船が通ると波しぶきがフロアに上がってくるのもこのフロアならではだ。フロアがコンクリートのためキックの低音がタイトに腰に響いてくるのが心地いい。喫煙スペースとなっていた展望広場の付近から、フロアを見下ろしながらチルしているお客さんも多く見かけた。


 


 「The Top」に着いた頃、パーティコレクティブCYKの4人がブースで激しくダンスをしながらも、しっかりとフロアを掴みつつあった。広義のハウスミュージックをコンセプトにする彼らは、フロアとコミュニケーションを取りながら次々にトラックを投下し、その様子が実に心地いい。縦長のフロアはすでにしっかり埋まっていて、そのフロアの熱量に圧倒されながらも、思わず最前列まで向かう。デトロイトアンセム「Octave One - Blackwater」がスピンされ、「The Top」の初日デイタイムのピークタイムであっただろう。「22nd Street - Just Wait & See」がかかる頃には、徐々にサンセットタイムが訪れる。CYKの4人も夕焼けをブースから臨み、興奮しながらレコードをスピンしていく。DJに率いられ、フロアの熱量もさらに上がっていった。




 その後も、MAYUDEPTHが登場し「Achterbahn D'Amour - JX3」など、シカゴハウスを感じる繊細なトラックが折り重なり、ちどり公園の美しいマジックアワーを彩っていた。




 Harukaが始まる頃に「RDC stage」へと移動する。辺りが薄暗くなってきた時間帯に合わせたテクノトラックから始まり、後方までお客さんで埋まったフロアを一気に引き込んでいく。夕闇から夜に移り変わり夜の世界へと誘われるこの時間帯は、私自身も野外パーティーで最も好きな瞬間だ。「Mode_1 - The Road Back」など​​削ぎ落とされたストイックなトラックが続き、フロアをビルドアップ。そして、レーザーやVJが始まりフロアの雰囲気も夜の世界へと変わっていった。



 “ディスコ”の象徴であるミラーボールももちろん存在している。特にYAMACHANGによるレーザーはさながら映画『トロン』の世界のような演出で、周りのお客さんからも驚きの声が上がる。この時間のために特別に設置されたであろう頭上のクレーンからレーザーが打たれ、音楽との連動やマッピングのクオリティは今まで野外イベントで体験してきたどんなレーザーとも別次元の演出であった。



 タイトな前半セットを経て、後半ではフロアのエネルギーが高まり、2000年代初期のアンセムトラック「Underworld - Two Month Off」が見事に投下された瞬間は、本フェスティバルの中でも最も印象的な瞬間の一つであった。



 続くWata Igarashiは美しいアンビエントトラックトラックから始まり、「Cavüm - Bass Time」をロングミックスしながら自身の最新トラック「Wata Igarashi - Warp」をドロップ。前曲のドラムタムの音がトリッピーなテクノにディスコの要素を加えていた。続いて「Skudge - Bite」などアシッドトラックに変化していくのに合わせ、レーザーの演出も赤色に変化。その後もしっかりと埋まったフロアを緻密に掴んでいく。「Peter Van Hoesen - Coast To Coast」から徐々に着地させ、初日はあっという間に過ぎていった。




 2日間の野外フェスティバルで21時で全公演が終了することは、来場者の多くが初めての体験だったのではないだろうか。まだまだ音楽で高まる胸をそのままに帰路へ着いた。


Day2


 やや肌寒い小雨模様となったDay2。到着した頃には、ラスベガスにて開催された「Boiler Room x Technics」の特別配信で注目を浴びた7インチヴァイナリストDJ KOCO aka Shimokitaが「RDC stage」に登場していたRoxanne Shante初期を代表するミドルスクールの名曲「Have a Nice Day」でサンプリングされていたディスコブレイク「King Errisson - Well, Have A Nice Day」など、日曜日の午後のフロアを陽気なトラックで作っていた。



 続いて登場した名古屋在住のプロデューサー、食品まつり a.k.a Foodmanは至極ミニマルな音数から、ゆっくりとトライバルな音を足していき、最後は太鼓のドラムロールのようなキックドラムを展開して、フロアを盛り上げる。どこか懐かしい人肌感のある音処理ながら、強烈な個性を発揮していたストイックなLIVEセットであった。




 「The Top」のブースにはElli ArakawaとFrankie $によるB2Bユニットが登場。音楽ルーツの異なる2人から繰り出されるテクノセットは実に痛快で、小雨日和を吹き飛ばしていくようだった。後半では往年のBerghainアンセム「Regis - Speak To Me」が飛び出しBPMもフロアの集中力も高まって、Elliがプレイした「JakoJako - Viridis」のアナログシンセのアルペジオがクラウドをエモーショナルに駆り立てる。そして、Frankie $が2000年代前半のトランスの名トラック「Marco V - Simulated」をセットの締めくくりに投下したのは鮮烈であった。



 続いてブースには、K404とXTALの2人からなるDJ・プロデューサーユニット、Traks Boysが登場。「Liberty City - Some Lovin’」といったベテランらしいディープハウスクラシックのグルーヴが足腰にガッシリ響き、クラウドを離さない。



 「RDC stage」に移動して、クロージングのDJ Nobuが始まることには、すっかり小雨模様も収まり踊る準備も万端であった。昨夜から続くレーザーの演出は、まるで宇宙の中に居るようで、DJ Nobuが率いるスペースシップは緩急をつけながらこの2日間の旅をまとめ上げていく。「Archivist - Binary」からクラウドの熱も高まり、デトロイティッシュなトラックも引き出していく。ラスト1時間前後のタイミングで、見事な選曲の流れでハウス〜ディスコモードへと切り替わった瞬間は忘れられない。



 ピラミッド型のブースから淡いピンク色の照明が輝く中、DJ Nobuはベルリン在住の日本人ユニットHOUSE MANNEQUINのキラー・リエディット「House Mannequin - 5 B1」など、往年の名トラックを次々とプレイ。テクノセットでは聴くことができないイコライジングも駆使し、希少なハウスセットを堪能できた。



 そこから、まだ少し延長していた「The Top」に移動すると、Traks Boysが引き続きグルーヴをキープ。まだまだ着地できない人々でフロアは埋まっている。終盤にプレイされたシティポップ「山下達郎 - ついておいで (Follow Me Along)」で、私の心も一気に満たされた着地モードになり、友人とタクシーを乗り合い帰路についた。──昨年3月の「RDC」の配信企画のエンディングBGMが「山下達郎 - Someday」だったことを思い出しながら。



 郊外型フェスティバルのため、電車で1時間半ほどで帰宅することができる。まるで数時間前のちどり公園が夢の国であったかのようだったが、それは幻ではないのだ。今回の「RDC “Back To The Real”」を振り返ると、コンパクトな会場の良さを発揮して、実に一体感のある空間を作り出していた。それは決して急かすものではなく、海外のパーティのようなリラックスして自由な一体感であった。

 また、ハウスやディスコ好きなお客さんだけではなく、様々な界隈のお客さんが集っていたことも特徴であった。川崎というロケーションも相まって、今まで野外フェスティバルに行ったことがなかった方も参加しやすかったのではないだろうか。都内のクラブ好きからテクノ好きなレイバーも、どんなお客さんも会場のどこにいても自由な時間を楽しんでいて、踊り狂っていてもチルしていても心地いい開放感が続いていた。そして何より、そこにいる全ての人々の音楽愛が詰まった時間であった。

 私自身は東伊豆での開催の「RDC」にはまだ参加できていないが、会場で話した「RDC」リピーターの方々の声も参考にすると、今回は凝縮版してギュッと「RDC」の魅力が詰まっていたのではないだろうか。2022年の東伊豆での開催日程(4月29日〜30日、5月1日)もすぐに情報解禁され、そこではどんな世界を魅せてくれるのか、期待が高まった本フェスティバルであった。

 2回の延期を経て、スタッフや出演者の心意気と苦労も、相当なものだったのではないかと想像する。それは来場していたクラウドにも、いいバイブスとして伝わっていたはずだ。苦難の2021年、多くの制限があるなか、言葉にできないほど素晴らしい2日間を創り上げてくれた「RDC」チームに、この場を借りて感謝をお伝えさせていただきたい。