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OCCA主催、北海道の大自然で電子音楽を堪能できるオープンエアーパーティー「ApproX. 2022」イベントレポート

文:Riku Sugimoto

 日本のテクノシーンでも突出した存在感を放つDJのOccaを中心とする、道内外で活動するクルーが集結して作り上げた野外パーティー「ApproX. 2022」は10月28日から30日にかけて開催され、先鋭的な電子音楽と豊かな自然を存分に楽しむことができた。

会場の穂別キャンプ場は、木々に囲まれ川も流れる、北海道の自然の魅力が凝縮されたような場所だ。童話にちなんだ名前がついた可愛げのあるバンガローや、芝生のフリーサイト、さらに電源付きのオートキャンプも備えており、キャンプ場としても抜群に魅力的。いずれのエリアもフロアと行き来しやすく、駐車場も会場と近いので、とにかく動きやすい。周囲に民家はないが、外界から隔離されているわけではなく、コンビニや温泉にアクセスしやすいのも嬉しいポイントだ。

©︎Asako Yoshikawa

会場に入ってまず驚かされたのが、メインフロアのHEX STAGEに設置されたサウンドシステムだ。フロアを囲むよう配置された4本のKannon Soundスピーカーに加え、両サイドにはウーファーも設置。解像度・定位ともに文句のない鳴りが響いていた。さらにPioneerのDJM-V10とCDJ-3000も導入されており、ひとたび足を踏み入れると音に呑み込まれるような没入感を体験できた。一音一音の質感や厚みが伝わるため、アンビエントやテクノとの相性が素晴らしかった。

今回のApproX.ではオリジナル設計の白い多角形ブースが鎮座しており、夜にはスピーカーを照らす薄明かりが柱の如く星空に昇り、ブースの存在感も相まって、フロア全体が神殿のようであった。


©︎Asako Yoshikawa

©︎Shoken Murakawa

バーに併設される形でメインフロアの向かい側に組まれたLINEAR STAGEには、近年北海道を中心にサウンドシステムの構築を手がけるwool100wのスピーカーがステレオで配置。さらにAlpha Recording System謹製のロータリーミキサーMODEL9100もインストールされ、テクノ/ディープハウスを力強く味わい深いサウンドで奏でていた。

©︎Asako Yoshikawa

©︎Asako Yoshikawa

©︎Asako Yoshikawa

夜間に少し雨が降った程度で天気が大きく崩れることはなかったが、 10月後半の北海道の山中はなかなかの寒さだ。しかし、LINEAR STAGEには暖房設備、飲食・ショップの近くには大きな焚き火、さらにテントサウナや足湯もあるなど寒さ対策は充分に整っていた。バーに美味なコーヒーやチャイ、ジンジャーシロップなど温まる飲み物が揃っていたのもありがたい。バーでは使い捨てのコップを使わず、パーティーのロゴが刻印されたタンブラーが採用されており、環境に配慮しつつも実用的なアイデアに感心した。

HEX STAGEとLINEAR STAGEの間にはユニークなショップやフードの店舗が立ち並ぶスペースも。フードはスープカレーやアジアンフード、ピザやおにぎり、珍しいところではシャコを使った汁物もあり、これらを巡るだけでも楽しみが尽きなかった。

©︎Asako Yoshikawa

©︎Asako Yoshikawa

2ステージで3日間、計21名のDJ・ライブが披露された2022年のApproX.ではそれぞれのアクトのコンセプトは事前にSNSで発表されていたが、特定のジャンルを標榜するような単純なものはなく、実際に聴いてみると確かな個性を感じられた。主催側が出演者の方向性と世界観を熟知しているからこそ、どの時間も自然と惹き込まれ、期待せずにはいられないようなタイムテーブルになったのだと思う。

©︎Shoken Murakawa

©︎Asako Yoshikawa

©︎Asako Yoshikawa

©︎Asako Yoshikawa

澄んだ空気と綿密に組まれたサウンド、各アクトの連携によって、音に向き合える最適な環境が形成されていた。ここに集まった人々は観客と演者・スタッフという関係性を超え、自然と連帯してパーティーを作っていたように感じられたのも、ApproX.の構想や熱意が伝わっていたからだろう。北海道が育んだ、テクノを取り巻くカルチャーの一つの到達点と言っても過言ではない3日間だった。

©︎Shoken Murakawa