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「DEKMANTEL FESTIVAL 2023」 ~DEKMANTEL TRANSITION~ 新しい時代への転換期

TEXT: Norihiko Kawai 
PHOTO: Stef van Oosterhout, Pierre Zylstra, Jente Waerzeggers, Tim Buiting, Yannick van de Wijngaert, So Oish, Norihiko Kawai
MOVIE: Norihiko Kawai 
SUPPORT: So Oishi, Kumi

2013年にアムステルダム近郊のAmsterdamse Bosでスタートし、2024年には、いよいよ10回目の開催を迎えるDEKMANTEL FESTIVAL。

初開催から数えて10数年あまり、その間にステージ数は拡大され、フェスティバルの期間も2日間追加され、そして来場者は1万人をはるかに超えて増え続けた。二度の悲痛なコロナ禍でのキャンセルもあった。それらの経験から、彼らは“変化こそが最も強力な不変だ”と定義している。エレクトロニック・ミュージックの過去、現在、未来に深く等しく根ざしてきたDEKMANTEL。規模は変われど、2013年からの土台は変わらずに現在に至っている。

毎年恒例の8月第一週目、通算9回目の開催となった今回、どのようなストーリーが用意されていたのか。


オープニング2日間の会場

 

8/2-3 Opening 2days 


7月の後半くらいから、アムステルダムは気温が下がり始め、毎日のように雨が降り続いた。日中でも20度くらいの気温で肌寒く感じ、1週間前くらいから目まぐるしく変わる天気予報に一喜一憂しながら、初日のオープニングコンサートを迎えた。

DEKMANTEL FESTIVALといえばAmsterdamse Bosで開催される野外フェスティバルを想像する読者がほとんどだと思うが実際には、初日と2日目にインドアの複数の会場で行われるコンテンツも豊富にある。


オープニング二日間のタイムテーブル


オープニングコンサートの会場Muziekgebouwのエントランス


Muziekgebouwの建物内

オープニングコンサートの目玉は何といってもJEFF MILLS presents TOMORROW COMES THE HARVESTだった。この名前を聞いてピンときた人もいるだろうが、 TOMORROW COMES THE HARVESTは、2018年にBlue Noteからリリースされたナイジェリアの伝説的なドラマーであるTony Allen(2020年79歳没)とJeff Millsによるコラボ作品のタイトルだ。Jeff Millsがこのコラボレーションに敬意を表し、Tony Allen Bandに欠かせない存在であったベテランのキーボーディスト、Jean-Phi Daryと、タブラの名手Prabhu Edouardと組んで再びトリオとして再構成したプロジェクトだ。


セッティング時


コンサートホール


ライヴ序盤

今回のメンバーにはトリオの三人に加えて急遽、アトランタのベスト・ジャズ・アーティスト2019でもあるフルート奏者のRasheeda “Ra Flautista” Aliが加わった。
ライヴがスタートし、目眩くインプロビゼーションの世界観に圧倒されると同時に、タブラ奏者の演奏に度肝を抜かれた。超人的な速度の指の動き、独特の中毒性のある深く軽快なリズム、その多彩な演奏に聴き入ってしまい取材を忘れ途中何度も没入してしまった。このトリオのアルバム『Evolution』は9月にリリースされる予定で、今回はそのツアーの第二回目の公演だった。ニューアルバムもぜひチェックしてもらいたい。


ライヴ中盤


TOMORROW COMES THE HARVEST 


ライヴ後半

開催二日目は6つの会場にまたがってさまざまなコンテンツが繰り広げられた。6つの会場といってもアムステルダムのセントラルステーションとノールト地区を隔てるIJ RIVER沿いで開催されており、DEKMANTEL側が用意してくれている無料ボートや徒歩で5分以内で移動可能な距離に会場は集中している。


会場の場所を示す看板も設置


会場の一つであるBIMHUISへ


BIMHUIS内部

この二日目、個人的に注目したのが韓国のデュオSALAMANDAだ。というのも2022年のベストアルバムの企画で彼女達のアルバム『ashbalkum』を選ばせてもらったからだ。
会場はMuziekgebouwと同じ敷地内にあるBIMHUIS。ここは普段はジャズ系の小コンサートホールとして有名な場所だ。

Salamandaのライヴは彼女たちの作品のイメージ通り、ほのぼのとしたサウンドですぐに引き込まれた。全てを包み込むような深く幻想的で雄大なアンビエンス感から、徐々にビルドアップしていき、トライバル感漂うグルーヴを披露し、後半はvocalを散りばめ、眩い雰囲気を創り上げていた。しかし、このデュオ、ステージ上で全く言葉を交わさず、黙々とプレイしており、最後までステージ上から緊張感が感じられた。


プレイするSALAMANDA 

その後は船を利用して他会場のアムステルダムを代表するクラブShelterとParallelに向かってみた。


船内の様子 


Parallelのエントランス 


Shelterのエントランス

Pararellに入ってみると、事前に面白そうだなあと期待していたCOBY SEYのライヴ直前だった。
サウス・イースト・ロンドン出身のヴォーカリスト、ミュージシャン、DJである彼は今回バンド編成でライヴを行っていた。オルタナティブロック、アカペラ、ダークアンビエンス、そしてヒップホップをベースとしたトラックを順次プレイ、ストレートにかっこいい音楽と気持ちのこもった熱いプレイで満員に膨れ上がった会場を完全にロックしていた。
幅広い音楽を探求できるDEKMANTELならではのナイスブッキングであった。


COBY SEY

その後、シカゴの名高いハウス/テクノ・プロデューサー、Hieroglyphic Beingとポーランドのサックス奏者・プロデューサー・作曲家のJerzy MaczyńskiのコンビをチェックしにBimhuisに戻った。
Amsterdamのアーティスト・イン・レジデンスで結成されたこのデュオ、Hieroglyphic Beingが奏でる怪しげなダーク・エクスペリメンタルサウンドに、Jerzy Maczyńskiの幻想的でどこか儚いサックスが見事に融合し、深い夜の宴へとオーディエンスを誘った。


HIEROGLYPHIC BEING & JERZY MĄCZYŃSKI

 

8/4-5-6  Festival 3days 


会場を野外に移しての3日間。野外ということでまず一番に気になるのは当然天気である。天気予報は軒並み雨か曇りという予報で不安を募らせたが、初日の金曜日は太陽も時折のぞく、心地よい天気となった。

エントランス


ロッカーの値段


トークン売り場(カード専用の自販機もある)

会場に到着後は関係者に挨拶をしながら、各ステージを徘徊してみた。今年も8つのステージが用意されていたが、まず、驚いたのが昨年までのメインステージが新たにThe Loopという名前のステージに変更されていた。フロア自体の大きさは変わっていないが、ダンスフロアはヴィジュアルスクリーンで囲まれ、DJブースが多少小さくなったのとDEKMANTELの象徴でもあった白いタワーとフロアの中央の屋根がなくなっていた。


オープンから一時間後のThe LoopステージでプレイするMORITZ VON OSWALD 


Selectors Stageのタイムテーブル

Selectors Stageに向かってみるとブラジルのアーティスト・コレクティブであり、レコード・レーベルであるGOP TUN DJSのクルー4人がプレイしていた。息の合ったコンビネーションでハウスを中心に心地よいグルーヴを奏でていた。


GOP TUN DJS

平日の金曜日ということもあり、オーディエンスの入りがなかなか遅かった感があるが、そんな環境下でもGreenHouseステージのスタートから3時間セットを披露したMEREL RHIZOOMやUFO IIのNAONEなどが好プレイをしており、関係者からの評価も高かった。


MEREL RHIZOOM


NAONE

夕方ころになり人が一気に増え始め、各フロアも盛り上がってきた。そんな中、今は亡きオンラインラジオ局Red Light RadioのファウンダーであるORPHEU THE WIZARDとJOHN TALABOTのB2BセットがSelectorsステージでスタート。


ORPHEU THE WIZARDとJOHN TALABOT

現在のアンダーグラウンド・ハウスシーンを象徴するこの音キチ二人の共演は意外ではあったが、当日の目玉となったのはいうまでもない。お互いの長所を消さずかみ合ったグルーヴは見事であった。ORPHEUの奥さんTarjaがブース横にいて話しが弾み、多忙なDJの妻は辛いんじゃないかなど、質問を投げかけてみたが「彼は私の誇りだ」といい切った。彼女自身も芸術財団関係の仕事をしており、お互い理解しあい支えあうその姿勢がORPHEUの穏やかな笑顔とプレイへの情熱を生んでいるんだろうと気付かされた。


ORPHEU THE WIZARDとJOHN TALABOT

この時間帯、他のステージも盛況でモダンレイヴの象徴であるSKEE MASK & STRANGER、


SKEE MASK & STRANGER

エレクトロニック・ボディ・ミュージックを代表するFront 242のライヴ、


Front 242


Front 242

ご存じデトロイトシーンの重鎮DJ Stingray 313のライヴが行われており、豪華な出演陣を楽しめる贅沢な環境に感謝すると共に、DEKMANTELにまたこれたという実感が湧いてきた。


DJ Stingray 313

そして、この日の締めにはデトロイトのアンダーグラウンド・ハウスシーンのOmar Sを体感しにThe Loopステージを訪れた。ビックステージのため身近に体感すべく、バックステージに直行し、djブース、彼の真後ろに陣取った(笑)。決して派手さはないもののその卓越したミックススキル、ソウルフルな甘いトラックからダークなアシッドまでとハウスを知り尽くしている抜群の選曲、まったくぶれないその冷静さ、体の中から発せられるクールながらも情熱的なグルーヴ、ブース上での立ち振る舞い、そのすべてが愕然とするくらいに最高にカッコよすぎた。まさにハウスDJのお手本ともいうべきこのOmar S、恐ろしい実力の持ち主だと断言したい。


素晴らしすぎたOmar S 


Omar S 

翌日土曜日、13時のオープニングから駆けつけた。
今年で三回目の取材となるが、昨年までの努力が実ったのか、DEKMANTELからの扱いが多少よくなった気がした。パーキングは昨年まで徒歩15分くらいのスタッフ用だったが、今年はアーティストとクルー専用の徒歩五分くらいの場所があてがわれた。また、会場内の飲食で使えるトークンもバックステージパスを受け取る際に毎日支給していただいた(以前はその都度担当者を探して請求していた)。おまけにステージ裏にいけば、冷蔵庫があり、ビールや簡単なカクテルは頼めば支給されたりと抜群のおもてなしが用意されていた。本当によくオーガナイズされているなぁと毎回感心させられる。


クルーとアーティスト用入り口へ誘導する看板


バックステージパスの種類を見分ける表


バックステージに設置された冷蔵庫



飲食用のトークン



会場内マップ

会場までの交通に関してだが、通常、オーディエンスは地元なら自転車で来る人もかなり多いが、シャトルバスを利用しているのが一般的だ。
フェスティバル期間中、Amsterdam Zuid(アムステルダム南)駅から会場のAmsterdamse BosまでDEKMANTELのシャトルバスが毎日運行しており、チケットは手数料込みの往復11ユーロ。
Amsterdam Zuid駅を降りると、シャトルバスの乗り場を示す看板が立っていた。


Amsterdam Zuid駅を降りたところの看板

開場前の時間などは、乗車率は50%未満のようだが、遅い時間になるとかなり混み合い、チケットも毎日売り切れていた。オランダ特有の美しい住宅街を通り抜け、バスに20分ほど揺られ、フェスティバルの会場入口まで届けてくれる。


バスで到着する人々

さて、この土曜日、日本からもDJ NOBUと¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$Uという二大アンダーグラウンドヒーローが出演とのことで自然と気分も高まった。

この日のThe Loopステージのオープニング4時間を任されたのは地元の女性DJ Jasmin。この大きなステージ、毎回のことだがオープンから1.5時間くらいはどんな大物がプレイしようが人はまばらだ。クラブならまだしも、野外の広いフロアにほとんど人がいない状況なので、ある意味DJとしては苦労する現場だと思う。しかし、彼女はその雰囲気を楽しむかのようにブレイクスやハウス、ディープなサウンドでじっくりと聞かせて徐々にビルドアップしていき、Scotch Rolex And Shackletonの「Final Spasm」が奏でられたころにはすっかり没入させられてしまっていた。


オープン30分後のThe Loopステージ

そうこうしているうちに雨が本格的に降り出し、屋根付きのステージにオーディエンスは自然と集まっていった。


雨が降り出す

そんな雨をもろともせず心地よいパーティー感を演出していたのがConnectsステージのRoelienだ。アムステルダムのクラブDe School、Garage Noord、Radio Radioなどの常連である彼女、In Syncの名曲「Storm」をプレイするなど興味深いセットを披露していた。


雨の中のConnectsステージ

そしてもう一組忘れてならないのがDEKMANTELの創設者であり、中心人物であるCASPER TIELROOIJと2017年にMixcloudの"Best Eclectic Show"を受賞したNYのGABRIELLE KWARTENGのB2Bセットだ。Selectorsステージに相応しいハウスとディスコを巧みに操り、この日の前半戦のハイライトを作り上げていた。


CASPER TIELROOIJ & GABRIELLE KWARTENG

そしていよいよUFOⅡで¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$Uがスタート。勢いのあるハード目なトラックでスタートし、オーディエンスの心をすぐにつかんだように見えた。本人曰くいつもとは違うテイストのセットを披露したとのことだった。彼からShackletonへの流れは非常に相性が良く、DEKMANTELの新たな潮流を生み出す貴重な機会となったのではないだろうか。


¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U


¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U


コアな面子が揃ったUFO Ⅱタイムテーブル


¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$Uのセット終盤のフロア

そして30分後にはDJ NOBUがAURORA HALALと共にB2Bセットとして登場した。プレイ前にB2Bセットは自身一人のプレイとは別の緊張感があると語っていたが、プレイが始まるとそこは百戦錬磨のDJ、瞬く間にフロアをつかみ、息の合った渾身のプレイを披露し、モダンテクノを中心に絶妙なACID感覚を織り交ぜ、満員のフロアを昇天に導いた。


DJ NOBUとAURORA HALAL


DJ NOBUとAURORA HALAL


DJ NOBUとAURORA HALALプレイ時のフロア

会場内でプレイ後の¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$Uと軽く談話する機会を得た。初対面ではあったが細やかな気遣いとともにプレイ同様に懐の深さを感じられる人間味を感じとった。その場に同席していた彼の所属エージェンシーの担当Lisaは音楽畑の叩き上げで、過去にはTHE WIRE、ELECTRONIC BEATSの編集者としても活躍しており、その彼女すら魅了する彼のピュアな音楽性は、今後もますます世界を席巻するのではないであろうか。

DJ NOBUや¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$Uのように日本のアンダーグラウンドシーンを牽引しているアーティストが世界で活躍する姿を実際に見させてもらい、この仕事への誇りややりがいがさらに膨らんだと同時に、彼らが日本のアーティスト、ひいてはシーンに対して夢を与えている貴重な存在であることを再認識させられた。


プレイ終了後の¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$Uとマネージャー(中央)と共に

その後は本日の個人的メインイベントであったレーベル3024主宰、 Panorama BarやNTSのレジデントでBroken BeatやDubstep通過後のシーンで絶大な影響力を誇るMARTYNのプレイをチェックしに行った。プレイ前に彼が休んでいたところをチャンスと思い話しかけてみると、非常に柔らかい対応でオランダからワシントンへ移った話などを気さくに答えてくれた。
プレイが始まるとその気さくな面影はなくなり、全身全霊を傾けてプレイを行っていた。彼の人気はすさまじく、The Nestのフロアのキャパを優に超えるオーディエンスが集まっており、その研ぎ澄まされたBroken Beat、Bass系最前線のプレイにオーディエンスは黙々と踊らされていた。


MARTYN

ちなみにMARTYNの前にプレイしていたRE:NIも深いベースラインとブロークンなグルーヴを多用した隙のないセットでフロアに熱風を送り込んでいた。彼女は欧州のシーンの中で頭角を表し、世界的に注目を浴びているが、その理由を肌で感じることができた。


RE:NI

迎えた最終日、朝からほとんど雨が降り続いた。しかし、日曜ということもあり、15時ころには多数のオーディエンスが会場に訪れていた。


The Connectフロア自慢のスピーカーもカバーで覆われた


最終日オープン30分後の会場内

そんな中でもポジティブなバイヴを放っているアーティストがいた。パリ生まれ、ミュージシャンである日本人の父と、スペイン人の母を持つMika Okiだ。その若々しく華やかな外見からは想像できない硬派でファンキー、時にディープで力強いBroken Beat、Dubstep系のグルーヴを終始奏でており、雨によってもたらされそうな憂鬱な気分を晴らしてくれた。


Mika Oki 

最終日のみならず、今回のDEKMANTELで最も盛り上がったフロアはRADARだろう。
このフロアは元々あのBoiler Roomのステージだった。もはや伝説と化していたDEKMANTEL x Boiler Roomフロアから世界へ飛びたったアーティストも数多くいるのも事実だ。その跡を継いだのは今や押しも押されぬベルリン発のダンスミュージックに特化したオンラインラジオ局HÖR。
このフロアはとにかく迫力が凄かった。DJブースとフロアの周り360度を二段の足場で囲まれ、コロシアムの中にあるステージのようだった。満員になるとフロアの全方位から異様な熱気が発せられ、否が応でもオーディエンスは狂喜乱舞してしまっているように映った。もちろん、このステージでのセットはすべてHÖRで生放送された。


RADARステージ


RADARステージへ

このステージにはDJ Stingray 313やOcta Octa、L.B. Dub Corp (Luke Slaterの別名義)など世界的なアーティストもブッキングされており、ピーク時にはステージに入場するために長蛇の列ができていた。長い時だと1時間待ちなどあったようだ。

HÖRの撮影を担当していたスタッフに話を聞いたところ、イベント中の悪天候にだけは悩まされたが、Dekmantelのオーディエンスの十二分に満ちたエネルギーに驚いたことと、建築的に工事用の足場を組んで作ったフロアなので、金属の生々しさが伝わってくるのが面白かったと語ってくれた。



RADARステージのスタジオ内部

この日のGREENHOUSEステージでは、1970年代に結成、2010年代に再結成し、現在も活躍するカリブ発ロンドン経由のファンク・レゲエ・ソウル系バンドCymandeが登場。数々の著名なHiphop系のアーティストにサンプリングを施されその知名度が上がった彼ら。バンド名は平和と愛の象徴である「鳩」が由来となっており、当日もフロアはピースフルで笑顔が溢れた。連日エレクトロニック・ミュージックを大音量でずっと聴いていたためか、生楽器によるファンキーなライブで気分がリフレッシュされたと同時にウォーミィなサウンドとオーディエンスの熱気で、雨で冷やされた体が温まった。


Cymande

フェスの楽しみである飲食だが昨年同様今年もベジタリアンフードのみの縛りがあったようだ。
会場内では、オランダの主要なフェスで日本のソウルフードお好み焼き等を販売している、やす君とあおいさん率いるFOODESCAPEにお世話になった。DEKMANTELの取材中は、いつも荷物を置かせていただいていたり、オランダのフェスに精通している彼らからさまざまな情報を共有していただいている心強いサポーターだ。彼らの特徴はその本格的な味はもちろんのこと、オランダ人スタッフも多数働いており、日本とオランダのさまざまなカルチャーを交流できる貴重な人間交差点となっているところだ。


お好み焼きを作るオランダ人のマイケル


雨の中でも人気のFOODESCAPE


会場内ではアジアンフードをよく見かけた


オフィシャルバーのドリンクメニュー


Amsterdamに店舗を構える人気のEUROPIZZAも出店

飲食と同様に人気なのが、このフェスでのみしか買えない商品もあるDEKMANTELのマーチャンダイズショップだ。


絶えずお客さんが訪れているマーチャンダイズショップ


気になるお値段は?

フェスティバルも終盤に差し掛かかってきたところで、注目すべきアーティストがさまざまなステージに登場していた。

The Nestステージには、現在のオランダシーンが誇る2人のフィメールDJ、ジャンルレスなレイビートラックを基盤とするMAD MIRANとエクスペリメンタルなダンストラックセットのマエストロUPSAMMYのB2Bセット。


MAD MIRAN & UPSAMMYプレイ時のフロア


最終日19時ころの会場内

Slectorsステージのクロージングを任されたのはJane Fitz & Marco Shuttle。ほとんどレコードのみで繰り出されるB2Bセットは胸熱で、ロー、ミッド、ハイと全ての音域が心地よく、ディープかつサイケデリックなシンセ音と気持ちいいベースを基盤に構成され、安心してグルーヴに身を任せられる中毒性の高い高次元のコンビネーションセットだった。

クロージング陣の中で最も印象に残ったJane Fitz & Marco Shuttle


Jane Fitz & Marco Shuttle

もう一つ気になったGreenhouseステージのクロージングでは、Ben UFOがプレイしており、振り幅の広いサウンドでフロアを楽しませていた。ダブステップ、ドラムンベースなどUKレイヴカルチャーを象徴するサウンドにルーツを持つ彼ならではのセットを披露しており、硬派なベース~ダークドラムン、キャッチーなテクノまでシームレスにつないでいくことに驚かされながら、今年のDEKMANTELは幕を閉じた。


クロージング10分前のBen UFO

今年も大成功に終わったDEKMANTEL FESTIVAL。
世界各地から集まる関係者、エレクトロニック・ミュージックのヒストリーからトレンドまでをも知ることができる新旧奥深いアーティストキュレーション、初日から最終日までフルに参加し改めてその影響力の強さと絶大な人気に驚かされた。また、スタッフのおもてなしのレベルは、プレスとして参加して裏側を覗ける観点から考えてもすこぶるよくオーガナイズされており、今年もまたDEKMANTELファンを増殖させたのは間違いないであろう。


お世話になったThe LoopのステージマネージャーEsther Gramsma

The NestのステージマネージャーEsmee


会場内で配布されていたフリーペーパーDEKMANTEL TRANSITION

いよいよ来年は開催10回目の節目となる。今年は例年に比べフレッシュなアーティストの比率が比較的高かったが、DEKMANTELならではの新たなアーティストや音楽を探求するという点において好奇心をくすぐられた。日本からも久しぶりのDJ NOBUに加えて¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$Uの出演もあり、欧州各地の日本人や日本からも一定数のオーディエンスが来場しており、久しぶりに会えた友人などもおり、人気の高さを感じとれた。
来年は今年以上に日本人の参加者がDEKMANTELを余すことなく体感してくれることを願っている。

Special Thanx: Chanel, Yasu & Aoi, CASPER TIELROOIJ, Esther Gramsma and So Oishi