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「Amsterdam Dance Event ’23」- 世界最大で最も影響力のあるエレクトロニック・ミュージックの都市型フェスティバルADEがさらなる記録を打ち立てた。

 
Text: Norihiko Kawai 
Photo: Enrique Meesters, Tom Doms, Linde Dorenbos, Elske Nissen, Jasper ten Tusscher, Shige, Nori,
 Tetsu (laserboy.tv)
 
2023年の「Amsterdam Dance Event(以下ADE)」 は、あらゆる面で開催者の期待を上回ったとのメールがADE終了後、まだ余韻の冷めない2日後に届いた。150 か国以上から 50 万人以上の過去最高の来場者、65万枚のチケットセールス、2900人以上のアーティストと講演者、アムステルダムのクラブは元よりあらゆる場所を利用し開催された1000以上のフェスティバル/パーティー。

10月18日から22日までの5日間、エレクトロニックミュージックシーン、とりわけダンスミュージックシーンの関係者やオーディエンスにとって非常に重要な世界的イベントの1つであるADEが開催された。
パーティーで良質な音楽を浴び、才能あふれるDJやプロデューサーを発見するのはもちろんだが、世界各地から集う業界関係者と昼間のカンファレンスを通じて、ビジネスチャンスを得られるのも魅力だ。さらに、オランダの首都アムステルダムの美しい街並み、自由な空気を堪能しながら、地元のレコード屋やクラブをめぐり、エレクトロニックミュージックにどっぷりと浸かれる最高の環境が用意されている。

街の中心部にもADEのフラッグ

開催前日、取材用にプレスパス(リストバンド)をピックアップしにアムステルダム中央駅を訪れた時、すでに今年の熱気を感じとった。このチケットセンターは僕の様なメディア関係者をはじめ、オーディエンスのリストバンドも配布している。開催前日にも関わらず今年は列ができる程、すでに混みあっていた。


開催前日のアムステルダム中央駅内のチケットセンター


街中のチケットセンター周辺も混雑

今年のオープニングイベントは、200年以上の歴史を誇り、レンブラントやフェルメールなどの、オランダが誇る傑作絵画をはじめ数々のお宝を所蔵するアムステルダム国立美術館(Rijksmuseum)で開催された。この日のパフォーマンスは、地元のアーティスト、Upsammyが監修したミュージカルで、恐れ、欲望、野心などが表現された。当日の様子はこちらでチェックできる。


オープニングイベント

開催期間中アムステルダムの街中では、昼間のカンファレンスやショーケース的なイベントも行われており、街中でADEのフラッグなどをあちらこちらで見かける。


パートナー企業G-Star Raw Store店内でのイベント


楽器メーカーのブースは大盛況

アムステルダム中心部にあるクリエイティブなコミュニティとアートと実験の場であるVrij Paleisでは、ドイツのライプツィヒに拠点を置きレコードショップとディストリビューション業務を行うInch-By-Inchがポップアップレコードストアをオープンしていた。初日にはドイツのベテランディープハウサーMove Dのプレイがあったり、レコードを買いにくる人、妥協なき品質のロータリーミキサーでおなじみのVaria InstrumentsのDJミキサーも展示されるなど交流の場として機能していた。


Inch-By-Inchのポップアップレコードストア


Inch-By-Inchのポップアップレコードストア

また、世界的なレコード屋、レーベルでもあるアムステルダムの地元Rush Hour Records (RH)でもインストアイベントが開催されており、連日賑わっていた。
今回のADEにおいてRHのインストアがどのような機会だったのかをRHのボスでDJでもあるAntalに訊いてみたところ、「Louie Vegaは毎年ADEの時期になると、うちの店に新しい曲をたくさん入れてくれるんだ。彼と一緒に仕事ができるのはいつも本当に嬉しいよ。それから、KiNK主催のRoland Instrumentsのワークショップも盛況だった。90年代にオランダで活躍したプロデューサーたちを中心としたテクノ・コミュニティも集結した。また、Miche (Mr Bongo)、Trepanando (Selva Disco)、Wendel (Obia discos)、Kléo、Cape St.Francisといった新進気鋭のアーティストたちが、新しいプロジェクトを発表した。このように、さまざまなアーティストやクリエイティブな人々が、それぞれの活動を公開する良い機会を作ることができた。」と述べてくれた。

Obia Records RH Instore

 昼間のカンファレンスで注目したのは、アメリカのテクノシーンの中心人物であるDVS1が招かれ、オーストラリア出身・ベルリン在住、数々の著名な音楽メディアやメーカーで活躍するジャーナリストChristine Kakaireが司会を行うRA Exchange Live。

非常に文化的かつテクノミュージックシーンを中心としたクラブカルチャーについての意見が交わされたこのコンテンツ。DVS1が彼の経験を元にダンスミュージックシーンにおける成長と変化についての洞察を語っていた。
テクノのBPM高速化における競争に焦点を当て、その競争が一部のアーティストにとってはモチベーションとなり、新たな音楽を生み出す原動力となっている一方で、単なる速さとハードさの競争が本質的な芸術性の成長には寄与しないと指摘。
また、COVID-19パンデミックがソーシャルメディア上での競争、TikTokやInstagramが30秒のクリップを視聴することを助長したことに触れつつ、実際のライブパフォーマンスにおいて、音楽が本当に人々の感情や意識を揺さぶることが必要であると語った。

そして、地域ごとの音楽シーンについても議論され、DVS1の地元ミネアポリスがアートのインキュベーターとして機能し、アーティストが自分らしく育ち、独自のクリエイティビティを発展させる場所として特別な存在であることを強調した。そのことからアーティストは、世界で活躍していたとしても自分のルーツを大切にし、地元のコミュニティでアートを追求できる場所を持つことの重要性を強く語っていた。

さらにアーティストの成長についても議論が及び、年齢と経験がアーティストの自己認識と自己確信に大きな影響を与えること。成功を手にするためには長い時間と努力が必要であり、もうすぐ47歳になる彼は40代になると、自分の限界と方向性をより明確に理解し、成功のために精力的に働く自信がついたと述べていた。

現在のシーンを鋭く切りとった二人の問題提起に会場は充実感に満ちており、このような討論が日本のシーンでも活発に行われるような機会を作り出す必要があるのではないかと感じさせられた。



DVS1 x RA Exchange Live

今年も数えきれないほどのパーティーが行われたADE。過去のADEでは初日の水曜や2日目木曜の夜は集客に悩んでいるオーガナイザーが多かったのも事実だ。だが、今年は初日から各会場で盛り上がりを肌で感じられた。
ここからは、今回のADEで注目を集めていたアーティストやまだ知られていないであろう会場を交えて、印象に残ったパーティーを紹介していきたい。


SPRINGSTOFF x Laut & Luise x House For All x BY.on x R.O.T. - Showcase
10/18 at Boom Chicago


普段コメディ劇場として知られるアムステルダムの中心からやや西に位置するBoom Chicagoが会場。オーガナイザーからお誘いの連絡を受けたのと、出演していたアシッド/エレクトロニック・ボディ・ミュージック(EBM)系のテクノバンドKomfortrauschenのライヴも体感してみたかったので駆けつけた。初日、さらに雨にも負けず6割程度のオーディエンスで賑わっていた。エントランスを入ってすぐのバースペースでDJがプレイしており、さらに奥にある劇場のスペースがメインフロアでKomfortrauschenがライヴを行っていた。しかし、ライヴはかっこいいのだが…めちゃくちゃスピーカーからの出音が悪い(笑)。痛々しい音質に戸惑ったが、アーティストのパフォーマンスと構成力がそれを吹き飛ばしてくれた。303系アシッドのベースとEBMのインダストリアル感にダンス本能が刺激された。


Komfortrauschenのライヴ

 

Numero (nl) X JEANS invites
10/18 at Levenslang Amsterdam


慎重にキュレーションしたコンテンツで、元牢獄のボイラールームに新しい時代のエネルギーを注入するクリエイティブ探求スポットLevenslang Amsterdamで開催された。
今回の仕掛人はオランダ・デン・ハーグのクラブPIPのブッカーでもあり、アーティストとして活躍するJEANSとオランダのアパレルブランドNumero。オランダのアンダーグラウンドテクノシーンを象徴するラインナップが揃い、水曜夜にも関わらず日曜朝のアフターアワーズの様なコアな雰囲気が漂っていた。この雰囲気の中で印象に残ったのは、数々の優良レーベルからリリースし、繊細なトラックメイクで知られるKondukuとアムステルダムを代表するクラブDe Schoolやアングラ箱Garage NoordのレジデントでDelsinなどからもリリースする有望株Tammo HesselinkのB2Bセット。多数のソリッドなテクノが絡み合い、心地良いポイントをつなぎ合わせるテクノの本質を追及したグルーヴに引き込まれた。セット中盤にTresorからリリースされた邦人アーティストDJ Shufflemasterの「Innervisions」が抜群のタイミングでドロップされ、ハートを揺さぶられた。


Levenslangのエントランス 

DJブース内のKondukuとTammo Hesselink


KondukuとTammo Hesselink

 

United Identities
10/19 at DOKA 


オランダはUtrecht発のレーベル/パーティーUnited Identitiesが、DanleyのスピーカーやAlpha Recording SystemのDJミキサー等が導入されるなど、良質なサウンドで親しまれるミュージックスタジオ・小箱のDOKAでADE恒例のパーティーを行った。当パーティー主宰CARISTAに加え、ゲストにはシカゴのレジェンドSadar Baharが登場し、集まったオーディエンスにハウス、ディスコを中心に朝まで熱いグルーヴを届けた。オープニングを務めたSuze Ijóの美しいセットは一聴の価値あり! 出音が素晴らしい箱なのでアムステルダムに来た際は是非訪れてもらいたい。

DOKAが入ったビル

DOKAのDJブースでのSuze Ijó


Suze Ijó

 

20 Years Dskonnect on The Other Side
10/19 at The Other Side


世界でも数少ないL-Acoustics Spatial Audioの公式会場として知られるキャパシティ900人余りのTHE OTHER SIDEにて、日本でもおなじみのMathew JonsonとSebastian Mullaertがデュオとしてライヴを行った。会場はベイサイドエリアに位置する中箱のようなイメージで、十分なスペースがあり、快適な環境に最新の14.1.5 L-Acousticsサウンド・システムが装備され、心地よい聴覚体験、広大なサウンド・パノラマがオーディエンスに提供され、音楽や踊ることに没入できる素晴らしい環境だった。この二大アーティストの共演とあって混雑を予想していたが、木曜ということや会場の大きさも手伝ってか客の入りは六割に満たない程度だった。しかし、その状況のおかげで、2人のハードウェアマスターの織りなす一級品のミニマルグルーヴ、飽きさせない展開力、時折挿入される感傷的なメロディ、完全即興的なセッションライブをストレスなくフルに堪能させてもらった。


The Other Sideのエントランス


Mathew JonsonとSebastian Mullaert

自転車置き場もムーディー

 

Club Hutjemutje
10/19 at Borisov


上記の会場The Other Sideとほぼ同じ敷地内に位置する小箱のBorisovで開催されたClub Hutjemutje。このパーティーのダンスフロアは普段から高いエネルギーで満たされ一体感を生み出しているのが特徴だ。今回もあえて小箱を使用し、比較的若いオーディエンスが多かった。この夜を率いたDekmantel等でおなじみのCinnamanを筆頭にアムステルダムに根ざしたラインナップが、歪んだリズムと恍惚としたブレイクビーツやダンサンブルなハウスで汗ばむ親密なフロアを作りだしていた。ホームパーティーの延長の様な雰囲気ではあったが、若い世代に欧州最先端のグルーヴが十分なサウンドシステムで届けられている環境で、次世代のアーティストやパーティー環境の育成に役立っていると感じた。フロアでたっぷり踊って汗だくになり、中庭の喫煙所でリラックスしている光景がいかにもオランダらしかった。


混みあい湿気を帯びたフロア


ЯETURN to ADE by Trommel and Solid AM
10/20 at Noordwaards


DJ歴30年以上、日本が世界に誇る至宝Fumiya TanakaをはじめMargaret DygasやEdwardなど深いエレクトロニックミュージックへの敬愛を感じられるテクノ系の世界的なアーティストが共演したこのパーティー。アンダーグラウンドシーンのイベント、音楽、プロデューサーに焦点を当てたメディア プラットフォームであるTrommelとアーティストエージェンシーのSolid AMがタッグを組んで行った。
会場となったのは、クリエイティブなスポットが多いアムステルダム北地区に位置する新しいベニューNoordwaards。クラブの前は工事していてめちゃくちゃ通りにくく迷路みたいでパーティー感が増幅した。
会場に到着すると17時にもかかわらず、多数の好き者が音楽に没入していた。Martin AudioのWavefront Seriesから、素晴らしく心地よい出音を創出していたのはFumiya Tanakaだった。


NoordwaardsでのFumiya Tanaka

会場の雰囲気や音の特徴、その瞬間瞬間にオーディエンスが望んでいるグルーヴが何なのかを知り尽くしているかのような落ち着き払ったプレイに、すぐにフロアで陶酔させられた。イコライジングやミックスのタイミング、100%vinylから繰り出される隙の無い選曲、フロアのオーディエンスを掴んで離さないどころか、増殖させまくっていた。貫禄のあるその職人気質のプレイに虜になるオーディエンスがDJブース周りにあふれる美しい光景は、パーティーの象徴的なシーンでもあった。


Fumiya Tanaka

新旧問わずUKガラージ、深めのハウスを中心とした感があり、所々にブレイクスやドープなテイスト、ジャジーな雰囲気も盛り込まれた高濃度のセットが、年に一度のADEを祝う完ぺきな空間を創りあげていた。その後に続いたMargaret Dygasとの流れは見事で今回の個人的なADEのハイライトパーティーであった。
プレイ後に軽く談笑に応じてもらったところ、彼の後にプレイしたMargaret Dygasが遅れてきたため(笑)、ロングセットになったとのことだった。


これまた見事だったMargaret Dygas


Cooking with Palms Trax
10/20 at Lofi


近年のハウスやニューディスコシーンを牽引し、DEKMANTELやSecretsundazeといった名門レーベルからのリリースでも知られるPalms Trax主宰レーベルCooking with Palms Trax (CWPT) のパーティー。2ステージあったが共にオープニングのDJが素晴らしかった。メインフロアのオープニングはイタリア、ミラノ出身、100% vinylでプレイするPaquita Gordon。リスニングからダンスフロアまでvinylディガーとして知られる彼女。幅の広いセレクションから繰り出されるハウスや緩めのテクノを中心としたセットはダンサンブルで、自信みなぎるグルーヴと出音で申し分なかった。
2ndステージのオープニングを担当したのはオランダのアンダーグラウンドの申し子mad miran。通常はアップリフティングな選曲が目立つ彼女だが、今回はオープニングということもあり丁寧にフロアをビルドアップしていき、その才能を魅せつけた。BPM 115くらいのディープ・カットのエレクトロからスタートし、最初は苦戦していたが、中盤以降フロアに人が押し寄せ、アシッド、ベース、IDM、ダブステップ、ブレイクコア、テクノを織り交ぜ、ダンスミュージックの原点を思い起こさせるウェアハウス・パーティーの雰囲気を見事に作りあげた。


Lofiのエントランス


メインフロア


Paquita Gordon


SlapFunk
10/20 at Shelter


この日二回目の登板となったFumiya Tanakaがプレイしたのは、オランダのユトレヒトをベースにロウハウスやUKガラージに傾倒するレーベルSlapFunkのパーティー。会場はFunction-oneのスピーカーで存分に音楽を堪能できる地下クラブShelter。写真や動画の撮影ができないように携帯のカメラは塞がれるこのクラブ。地下なので逃げ場がないのがキツイのとビール一杯€4.25に値上がりしていて驚いた。
夜中の2時半からFumiya Tanakaがスタート、フロアは超満員で前方に行くのも一苦労だった。夕方のプレイとは明らかに違うピークタイムなテンションでフロアを攻めている感があった。90年代のUKガラージを中心にセレクトし、ハウス、近年のベース系のテックハウスも時折、巧みに混ぜあわせたセットは一級品でフロアは終始パンパン、最高潮に盛り上がっていた。フロアの酸欠度、同日二回目のプレイも手伝ってか、朝5時のセット終了時には消耗度が高く思えたが、朝方のDJブースでプレイ後にレコードを整理する姿が荘厳ですらあった。そのシーンを目に焼き付け、何かパワーを得た気分になり帰宅の途に就いた。


Shelterのエントランス


10/21
Rush Hour x Rainbow Disco Club at Lofi


ADEの風物詩となったアムステルダムを代表するレコード屋/レーベルのRush Hour (RH)と日本を代表するオーガナイザーRainbow Disco Club (RDC)のコラボパーティー。
当日はオープンが14時だったにもかかわらず、早い時間からオーディエンスが押し寄せた。過去の開催とは違い今回からは2フロアが用意され、両オーガナイザーの幅広い人脈をいかしたDJがラインナップされていた。メインフロアのKikiorixからAntal、そしてMotor City Drum Ensembleとして知られるDanilo Plessowへの流れが見事にハマり、フロアは常にクレイジーな盛り上がり。雨が降っていたことも手伝ってか異様な湿気を帯び、携帯が壊れる程であった(笑)。


プレイするKikiorix


サブフロアの雰囲気


Antal


Danilo Plessow

当パーティーをメインにオーガナイズするRHのAntalとRDCのMasaにパーティー終了後コメントをいただいた。


パーティー中も気さくに対応してくれたAntal 

ーーADE'23のRH x RDCはいかがでしたか。

ANTAL: 今年は “colorfloor”と呼ばれる2つ目のフロアをオープンさせたので、フロアが2つになり、DJの数も倍増しました。DJ PaulãoとCoco Mariaによるブラジルや南米のレアグルーヴ、マンチェスターのDJ Tarszaによるクロージング・セットなど、さまざまなスタイルの音楽がイベントでプレイできたことは、私たちにとって大きな収穫でした。また、RHの友人でもあるOtemba Sakeがプロデュースした日本のフードコートも大盛況で素晴らしかった。

ーーADEでのRDCは何回目の開催になりますか。

Masa: ADE参加は2019年からで、今回で3回目になります。


ーー毎年参加してみて、年々手ごたえはいかがですか。
 
Masa: 年々手応えを感じています。毎回行くたびにものすごい刺激を受けますね。


ーーオランダと日本のシーンの違いを感じますか。

Masa: 大きく違いますね。夜の遊び場が多い東京は色々な選択肢があるのかなとも感じますし、オランダのクラブで遊ぶ人たちの熱量はすごいと毎回行くたびに思います。身長が大きいから余計に感じるのかな(笑)。


ーー今年のRH x RDCはいかがでしたか。

Masa: あんな風に多くの人に楽しんでもらえて、多くの素晴らしい瞬間があったのでオープンから最後まで全部がハイライトでした!


パーティー前のRDCクルーとAntal 


TNP ADE ’23
10/21 at Cinetol


アムステルダム北地区で2018年から活動しているインディペンデント系のオンラインラジオ局Radio Tempo Não Pára(通称TNP)のADE恒例パーティー。会場であるCinetolは、クリエイター、アーティスト、ミュージシャンのワークスペースとしても知られている。
今回は3つのステージにライヴアクトとDJが10組参加し、ラジオプログラム同様に多ジャンルの音楽を楽しませてくれた。特に際立っていたフロアは、アムステルダム在住のサウンドエンジニア・Yuji Tsutsumidaによる手作りのKIKUNOスピーカーがインストールされていたフロア。出音が素晴らしいのはもちろんだが、薄暗く、低い天井、スモークがこれでもかというくらいに焚かれ、照明が怪しい雰囲気を作り出すと同時にRush HourやRed Light Recordsのクルーが奏でるディスコやファンク、ドープなハウスミュージックがいかにもアムステルダムらしい雰囲気を醸し出していた。地元の人間も多数訪れており、ADEの中でもローカル率高めのナイスパーティーだったのではないだろうか。


Cinetolの外観


TNPのロゴが飾られたダンスフロアのバー


Cinetolのバーフロア


ディープなダンスフロア


Giegling in Amsterdam
10/21 at BRET


ドイツのアーティスト集団でレーベル・オーガナイザーとしてもこだわりの活動で世界的な知名度を誇るGieglingのショーケースが開催された。会場はアムステルダムのミニマル聖地として知られ、ロングランパーティーを得意とする優良ベニューBRET。会場は3階建ての構造になっており、1階がフロア、2階はフロアを見下ろせるスペースで3階が屋上となっている。雨が激しく降っていたが、到着時にはGiegling人気を象徴するかのように超満員でお酒を買うのも一苦労だった。そしてKonstantinの渋味のあるディープで心地よいグルーヴに会場は良いムードが漂っていた。3階のスペースから、アムステルダムらしくない近隣の近代的なビルを眺めながら聴く彼らのDJセットは格別であった。

人で溢れていたBRET店内


Konstantin

Speedy J presents STOOR Live
10/22 at Paradiso


チケットは即日Sold Outする人気コンテンツが、アムステルダム音楽シーンの最重要ヴェニューの一つParadisoで行われた。
STOOR liveは、テクノ・プロデューサーSpeedy Jを中心に彼がキュレートしたアーティストが集まり即興でハードウェア・ジャムを行い、そこに照明とビデオ・アーティストが加わるライヴプロジェクト。
このADE最終日に招聘されたのは、Vril & Rødhådのデュオ・Out Of Place ArtefactsとDonato DozzyとNeelが日本のThe Labyrinthで誕生させたプロジェクト・Voices From The Lake。
世界のテクノシーンで活躍する5人の集結にADE最終日の興奮も相まって会場は早い時間から混雑していた。メインホールに入ると上から吊るされた長方形のLEDビデオウォールスクリーンとフロアの真ん中に組まれたライヴブースの迫力、さらにクリアで重い体感に響くサウンドクオリティに度肝を抜かれた。フロアの中央で聴いてみるとさらに迫力が増し、とにかく踊らされてしまう! さらに驚くことにこの5人の即興は16時から24時までぶっ通しで行われた。


会場となったParadiso




ライヴの様子


2階からの撮影

硬派でダーク、ヒプノティックかつトライバル、フューチャーリスティックでスペーシー、テクノの醍醐味を凝縮させたような魅惑のグルーヴが次々と襲いかかり会場は最高潮。そのセンスと展開力にとにかく没入させられてしまった。久しぶりにテクノの良さを再確認させてくれる貴重な機会となった。
現在のテクノシーンに一石を投じているであろうこのプロジェクト、テクノ愛好家はもちろんのこと、クラベリア読者ならば必ず見てほしい鉄板コンテンツだと強く強く推薦したい。




凄まじ過ぎたライヴ



ブースに並べられた器材

今年も濃厚な内容で忘れられない5日間となったADE。心底エレクトロニック・ミュージックシーンとパーティーが好きな人々が集っているんだなと毎年強く感心させられてしまう。年々拡大する規模の大きさやコンテンツの数、自治体に鉄道会社や各パートナー企業のサポートにも目を見張るものがある。世界最大かつ最も影響力のあるエレクトロニック ミュージックのクラブベースのフェスティバルおよびカンファレンスに成長したADEが昨今のシーンの発展に多大な役割を果たしているのは間違いない。90年代パーティーに通いだしたとき、シーンの発展をここまで予想できない自分がいたが、今は全くその逆の思いに変わっている。


来年の開催が待ち遠しい

エレクトロニック・ミュージックシーンの業界全体を団結させるADEのさらなる発展を祈ると同時に、とにかく動きを止めず、レーベル運営、パーティーオーガナイズ、トラック制作、DJ・VJ等々と書いたらきりがないくらいにシーンに関わる活動があるが、目標を決めて諦めずに続けてもらいたい。そんなメッセージを今年のADEから受けとった2023年の秋となった。

ADE 2024の日程は10/16~20に決定!

ADE 2024公式サイト
https://www.amsterdam-dance-event.nl/en/

Special Thanks: Thomas (BRET), Antal (RH), Masa & Knock (RDC), Musty & Miho, Yappo (Otemba Sake), Hana and Shige.