今回のADEで高い注目を集めていたのは、Jeff Mills presents Tomorrow Comes The Harvestだった。Tomorrow Comes The Harvestは、2018年にBlue Noteからリリースされたナイジェリアの伝説的なドラマーであるTony Allen(2020年79歳没)とJeff Millsによるコラボ作品のタイトルだ。Jeff Millsがこのコラボレーションに敬意を表し、Tony Allen Bandに欠かせない存在であったベテランのキーボーディスト、Jean-Phi Daryと、タブラの名手Prabhu Edouardと組んで再びトリオとして再構成したプロジェクトだ。
ーーTomorrow Comes The HarvestのADEでのパフォーマンスのコンセプトは何でしたか。
Jeff Mills:このパフォーマンスのコンセプトは、即興的で自由なライブ音楽を通じて人々の心と魂を高めることを目指しています。これは新しいコンセプトではなく、フリージャズのジャンルでよく見られるものですが、私たちのパフォーマンスでは、さまざまな音楽スタイルを取り入れている点が特徴です。観客の前でリアルタイムでその意思決定が行われ、実際に演奏するところが独自の要素になっています。
Jeff Mills:そうだね、オーディエンスがステージのすぐそばにいて、フロアの中央でプレイするというのは、いつもとは異なる体験でした。バンドとしては、視線や身振りがはっきりと見られるため、むしろ親密さが薄れる感覚もありました。しかし、オーディエンスにとっては、ライブセットがどのように形作られ、作曲がなされていくか、そして各ミュージシャンのタイミングや正確さを間近で見ることができるため、より興奮を感じられたでしょう。
ーーTomorrow Comes The Harvestとしての日本での公演予定はありますか。
Jeff Mills:まだ、予定は決まっていませんが、このコンセプトを日本に持ち込みたいという強い意欲を持っています。私自身、何度も日本に滞在したことがあり、日本の観客がこのパフォーマンスとどれほど共鳴するか、想像に難くありません。
今年は毎年恒例、ADEの風物詩となりつつあった“Reinbow Disco Club x Rush Hour”のコラボ・パーティーが開催されなかった。その理由は後述Antalのメッセージで語られているが、さすがは世界的な人気を誇るRush Hour(RH)だけに、それを補って余りあるコンテンツが届けられた。
特に土曜日の昼から夜にかけてLo-fiで行われたパーティーは、例年通りの盛り上がりを魅せた。Antalからシカゴ・ディープ・ハウスの重鎮Ron Trentへの豪華な流れにメインフロアは終始満員で酸欠気味ですらあった。セカンドフロアにおいてはSassy JとKaidi TathamのB2Bセットが繰り広げられ、Stevie Wonderの名曲「くよくよするな」からColonel Abramsの「Music Is the Answer (Dub Version)」等のメッセージ性の強いトラックが楽しめるなど、幅広いオーディエンスを満足させるラインナップのセレクトは、さすがはRH。音楽の多様な魅力を存分に味わえるパーティーであった。
プレイするAntal
今年のRHのコンテンツについて同社のボスAntalに質問を投げかけてみた。
ーー毎年ADEでは、Reinbow Disco Club(RDC)とRHのパーティーを開催していましたが、今年開催しなかった理由を教えてください。
Antal:RDC x RHは2024年からは5月開催へと移行したんだ。次のコラボパーティーは、2025年5月にアムステルダムで再び開催される予定だよ。
Antal:寺田創一さんは、相撲ジャングルとゲーム・ミュージックを融合した新作アルバム『Apes In The Net』のライブを初披露してくれた。また、RolandのSP-404とMoodymannのコラボレーションもあり、Alphatetaの新しいミキサー「Euphonia」のプレゼンテーションも行い、今年も大盛況だったよ。