Text: Norihiko Kawai
Photo: Tom Doms, EnriqueMeesters, Linde Dorenbos, SachaHoebergen, Nori
2025年のAmsterdam Dance Event(以下ADE) は、アムステルダム市内300か所以上の会場で1,200以上のイベントやコンテンツが開催され、約3,500人のアーティストが出演した。来場者数は過去最多の60万人に達し、オランダ国内はもとより、世界各国からのオーディエンスが訪れた。
ADEは年々、多様な文化や価値観を尊重する姿勢を強めており、今年のプログラムではフェスティバルやアート&カルチャー部門を通じて、エレクトロニック・ミュージックの幅広いサブジャンルやライブ・パフォーマンスが披露された。
ADEオープニングコンサート
そして、ADEといえば都市型フェスティバルの醍醐味であるカンファレンス・プログラムや各メーカーの機材コンテンツなど、パーティー以外にも話題は尽きない。そんな中で今回も高い注目を浴びていたのが「ADE Lab」だった。ADE Labは、プロデューサー、DJ、ミュージシャン、ビジュアルアーティストなどを対象とした実践的な学びと交流の場として、ワークショップやマスタークラス、デモドロップ、ギアテストラボなど、多彩なプログラムが用意されていた。
業界のプロフェッショナルによる講義や作品フィードバックを通じて、音楽制作・キャリア形成の知識と技術を深めることができる点が特徴である。

Westerpark内に設置された案内板
Westerpark内に設置された電子案内板
今回のADEでは、アムステルダムのWesterpark内に「ADE Lab Village」が新設され、より広いスペースと複数会場で構成された専用キャンパス形式へと発展した。
Westerparkは、アムステルダム西部に位置する広大な文化複合エリアで、歴史的建築を活かしたホールやアートスペース、屋外広場を併設し、創造性と交流が交差する場としてADE Lab 2025の理念と密接に結びついていた。これにより、来場者は機材体験、アーティストとのネットワーキング、メンタリングセッションなどをより充実した環境で体験できる状況となっていた。
会期中に特に目を引いたのがAlphaTheta(旧Pioneer DJ)のコンテンツだった。AlphaThetaは、2025年のADEにおいて、WesterparkのADE Lab Villageを拠点に、機材のタッチ&トライ、ワークショップ、製品デモなどを実施した。
AlphaThetaの大きなバックパネルが人々の目を引いていた
Westerparkは、アムステルダム西部に位置する広大な文化複合エリアで、歴史的建築を活かしたホールやアートスペース、屋外広場を併設し、創造性と交流が交差する場としてADE Lab 2025の理念と密接に結びついていた。これにより、来場者は機材体験、アーティストとのネットワーキング、メンタリングセッションなどをより充実した環境で体験できる状況となっていた。
会期中に特に目を引いたのがAlphaTheta(旧Pioneer DJ)のコンテンツだった。AlphaThetaは、2025年のADEにおいて、WesterparkのADE Lab Villageを拠点に、機材のタッチ&トライ、ワークショップ、製品デモなどを実施した。
AlphaThetaの大きなバックパネルが人々の目を引いていた
AlphaTheta機材のタッチ&トライは大盛況 CDJ3000Xのワークショップの模様
ADEの魅力は、音楽だけにとどまらない。「ADE Arts & Culture」は、エレクトロニック・ミュージックと他の芸術表現が交わるプログラムだ。
2025年9月、ADE Labの拠点であるWesterpark内に、コンテンポラリーアート・ミュージアム「Villa」がオープンしていた。
多数のコンテンツが用意されていた「ADE Arts & Culture」、その中の一つとして、このミュージアムをADE来場者は自由に訪れることができた。
パーティと音楽に浸る日々の中で、このようなコンテンツは良い気晴らしとなり、同時に各作品から新たなインスピレーションを得る場にもなっていた。

館内に入ると独特な作品が各フロアに展示されていた
ミュージアム内
ADEの期間中、アムステルダムのレコード屋はどこも賑わいを見せている。オランダでダンスミュージックシーンのレコード屋といえば、日本でもおなじみのRush Hour Recordsを思い浮かべる人がほとんどだと思うが、オランダ第二の都市ロッテルダムにも世界的なダンスミュージックのレコード屋Clone Recordsがある。
ADEの期間中、アムステルダムのレコード屋はどこも賑わいを見せている。オランダでダンスミュージックシーンのレコード屋といえば、日本でもおなじみのRush Hour Recordsを思い浮かべる人がほとんどだと思うが、オランダ第二の都市ロッテルダムにも世界的なダンスミュージックのレコード屋Clone Recordsがある。

アムステルダムの人気DJバー、Bar TheoでのCloneのポップアップ
このClone Recordsはテクノやハウス、エレクトロに精通している店だ。ディストリビューション業務も行なっており、コアなテクノ系レーベルの流通を中心に行なっている。ディープなエレクトロニックサウンド好きには垂涎の品揃えを誇るこのCloneだが、ADE期間中は毎年ポップアップストアをアムステルダム市内にオープンしており、普段はロッテルダムの店舗まで行けない顧客をはじめ、世界中の電子音楽好きが集う交流の場と化していた。肌寒かった屋外とは対照的に店内は汗をかくほど熱気が溢れていた。

Bar Theo店内、Cloneのポップアップ時には熱心な音楽愛好家が集った

Bar Theo店内、昼間から良質な音楽が鳴り響いた
毎年恒例のポップアップ同様に、今年もADEの期間中Cloneのパーティが10月23日の夜に、アンダーグラウンドな雰囲気で人気のClub Raumにて、選りすぐられたラインナップで開催された。
CloneのボスでありベテランDJでもあるSergeに話を聞いてみた。
CloneのボスでありベテランDJでもあるSergeに話を聞いてみた。
ーーまず、今年のADEもClone関連のコンテンツは大盛況に感じました。改めてCloneのパワーを肌で感じられました。やはりその成功の裏には、あなた方スタッフの日々の努力の積み重ねが表現されていると思います。 毎年、ロッテルダムから参加する意義は見いだせているのでしょうか。
Serge(以下S): ADEはいつも人々とつながるための素晴らしい場所です。そのため私たちは、世界中の人々と話したりアイデアを共有したり、新たなつながりを作るための小さな交流の場を楽しんでいます。私たちにとって重要なことは2つあり、それがポップアップストアとレーベルナイトです。どちらも、私たちが愛する音楽を紹介し、プレイするための場なのです。

Bar TheoでのSerge(中央)
Bar TheoでのSerge(中央)
ーー例年同様にCloneは、ポップアップストアを開催していました。以前の開催に比べると、熱気が年々増しているように感じます。過去のADEはいつから、ポップアップストアを行っているのでしょうか? どのようなきっかけでスタートしたのですか。
S:ポップアップストアを始めてから7〜8年になります。これは私たちにとって小さな集いの場であり、音楽を愛する人々とつながる場所です。
電子音楽は非常に人気になり、プロデューサーやDJは大きなステージに立ったり、SNSの画面越しにしか見られない存在になってしまいました。
私たちのポップアップストアは、DJ、レコードコレクター、レイバー、プロデューサー、レーベルオーナー、プロモーターなど、関わるすべての人々が対等に交流できる場所です。レコードを買い、画面越しではなく、直接顔を合わせて話すことができるのです。
ーーClub Raumで開催されたパーティは平日木曜日にも関わらず大盛況でしたね。クラブに到着して最初、貴方を探していて、上のフロアにいたんですが、貴方の姿が見えずに1時間待っていました。その後…下にもフロアがあることに気付いたのです。Club Raumでイベントを開催することになった経緯を教えていただけますか。
S:Raumはクィアコミュニティによって運営されている新しいクラブです。私は1988年後半からクラブに通っていますが、アムステルダムのRoXYのようなクィアクラブでいつも最も居心地の良さを感じていました。
Raumはその雰囲気を思い出させる場所であり、誰もが自分らしく過ごし、自分を探求できる安全な空間です。
Raumは昨年のADEで、ちょうどオープンした木曜日にClone Recordsがイベントを開催する機会を与えてくれました。それが成功を収め、今年は2つのフロアに拡大して開催しました。

フライヤー、Club Raumは撮影禁止
ーー今年は2フロア構成でしたが、それぞれにコンセプトを設定されていたのでしょうか?Serge b2b DJ MELL GとXDB b2b PLO Manの時間帯は特に素晴らしい雰囲気でした。
S:このパーティのDJセットのうち2つがADEのベスト30セットに選ばれました。Marcel Dettmann(House Set)が10位、私(Serge)とMell Gのb2bセットが24位です。とても誇りに思っています。
スタジオスペース(上階)はJannah、XDB b2b PLOman、Marcel Dettmannによるハウス中心の構成で、一方のエクスポ(地下フロア)はエレクトロ/テクノを中心とした空間でした。
ーー私は2008年、まだ東京に住んでいたときにADEの取材に駆けつけたのが、最初のADEです。当時と比べると、現在のADEは見事に成長しました。アンダーグラウンドな要素は減りつつも、いいバランスは保っているような気がします。その辺りを含め、ADEの発展に関してどのような意見を持っていますか。
S:確かにアンダーグラウンドな要素は減少したかもしれない。エレクトロニックミュージックのシーンは非常に商業的で巨大なビジネスになりました。人気DJや商業フェスティバルは多額の利益を上げていますが、一方でクラブや音楽プロデューサー、レコードレーベルは生き残るのが難しくなり、人々が踊ること自体が高価になっています。
エレクトロニックミュージック文化の基盤を築いてきたのは、まさにクラブやプロデューサー、レーベルの側ですが、その利益がしばしば大企業に吸い上げられているのです。
将来的にはより公平な環境が整い、ADEが小さなコミュニティに根ざした本来の文化や伝統を促進する役割を果たすことを願っています。今では大量消費しやすい商品として扱われていますが、私は今でもオリジナルの文化を大切にしていますし、ADEにもそれを支えてほしいと考えています。
ーー今後のCloneに関してニュースがあれば教えてください。
S:Clone Royal Oak、The Repetitive Rhythm Research Project、Clone West Coast Seriesなど、私たちのレーベルから多くの素晴らしい新作レコードがリリースされる予定です。
カンファレンス「A Fireside Chat with DJ-Kicks'」さてここでは、今回参加したカンファレンスの中で特に個人的に気になっていたプログラムを紹介したい。
A Fireside Chat with DJ-Kicks' Modeselektor & Eris Drew
10/23 at Felix Meritis
ベルリン拠点の名門レーベル!K7を代表するシーンの最重要ミックスシリーズのひとつ『DJ-Kicks』が節目となる30周年を迎えた。今年のADEでは、これを記念した特別セッション「A Fireside Chat with DJ-Kicks' Modeselektor & Eris Drew」が開催された。
出演者はModeselektor、Eris Drew、Robin Braum(!K7 Music レーベルマネジメント責任者)、David Coleby(!K7 Music)で、モデレーターはMeike Jentjensが担当。
会場内は会話に集中しやすい環境だったこのセッションでは、Eris DrewとModeselektorがDJ-Kicksについて語り、自身のシリーズへの参加についても触れた。また、ダンスフロアカルチャーがどのように進化しているかについて話し、創造性と精神性の関係にも言及した。
ModeselektorがDJ-Kicks制作時を「巨大なスーパーでカートに詰め込むようなもの」と例え、メンバー2人の異なる音楽嗜好の“衝突”が創造につながったと語った。このシリーズへの彼らのミックスコンセプトはクラブのピークを作るものではなく、編集と再構築を通して自分たちのルーツや思想、素の音楽性を示す場であるという認識で、この制作を「ひとつながりのプロセス」と捉えていたのも印象に残った。
カンファレンスでのEris Drew
Eris Drewは、DJ-Kicksのためにオリジナル曲を2曲新たに書き下ろしたと語った。その2曲は一方が速いテンポ、もう一方が遅いテンポで作られていたため、ミックスの中で両者をどう自然につなぐかを考える必要があり、BPMを滑らかに変化させるための工夫を自身で設計したと説明してくれた。
1994年にもらったミックステープや30年のDJ経験、5〜6時間のセットでのジャンル横断経歴、そして自身の精神性が今回の選曲に反映されていると述べた。
カンファレンス終盤では、90年代と現代のDJ文化の情報量の違いに触れ、匿名性が高かった時代と可視化されすぎる現在を比較するなど興味深い内容となった。
ModeselektorとEris Drew二組の言葉から、DJ-Kicksが“DJとは何者か”を記録するシリーズであることが改めて示され、DJの奥深さを再探求する有意義な時間となった。

会期中は街中のいたるところで見かけたADEロゴ
ここからは今回、筆者が訪れた中で印象的だったADEの醍醐味であるパーティを紹介していきたい。
DATSKAT: Karriem Riggins + J.Rocc
10/22 at BIMHUIS
アムステルダムを代表するジャズ会場、BIMHUISで行われたジャズドラマーおよびヒップホップ・プロデューサーとして活動するKarriem Rigginsと1980年代からターンテーブリストとして活動し、Stones Throw Recordsからのリリースでも知られるJ.Roccによるスペシャルライブが開催された。
当日のKarriem RigginsとJ.Rocc
会場となったBimhuisのステージには、ドラムセットとターンテーブルが配置され、オーディエンスの年齢層も高く、渋めな雰囲気に安心して音に身を任せられる環境が整っていた。
ライヴの様子
Planetary Assault Systemsのライブの様子

満員に膨れ上がったフロア

イベントが行われた教会内
当日のKarriem RigginsとJ.Rocc会場となったBimhuisのステージには、ドラムセットとターンテーブルが配置され、オーディエンスの年齢層も高く、渋めな雰囲気に安心して音に身を任せられる環境が整っていた。
ライヴの様子
Rigginsはアコースティックドラムで反復するリズムと変化するフレーズを行き来し、J.Roccはターンテーブルでトラックを流し、スクラッチを行っていた。互いのタイミングが合う場面では、ドラムとターンテーブルから繰り出されるサウンドが1つのパートかの様に錯覚させるほどエレガントな構成になっていた。
Visual Frequencies
10/23 at Nxt
今回のADEの会期中は初日以外、見事に雨の連続だった…。この夜も激しい風と雨に見舞われ、正直、外出するのをためらう気分になるレベルだった。
しかし、そんな憂鬱な天気すら忘れさせてくれるのがADEの凄さかもしれない。この夜も平日にも関わらず、アートとテクノロジーに特化した美術機関であり、実験的なアート空間として位置づけられているNxt Museumにディープかつインダストリアルなテクノを奏でるSandwell DistrictとLuke Slaterの伝説的名義Planetary Assault Systemsが登場するイベントが開催された。
圧巻だったインスタレーション
24時頃会場に到着すると既にPlanetary Assault Systemsがライヴを行っていた。しかし、最も驚かされたのは会場内のインスタレーションだった。金属パイプで組まれた立体的なフレーム構造が複雑に組み上げられ、LEDパネルが取り付けられていた。
Planetary Assault Systemsのライブの様子
会場内は悪天候もあってか、7割強といった人の入りだったが、異世界に迷い込んだような光の演出に、Planetary Assault Systemsのインダストリアルなテクスチャと未来的リズムが空間全体に立体的に展開され、極上の時間となった。
Sandwell Districtのライブの様子
Sandwell Districtのライブの様子
そして、続いたのはSandwell Districtのハイブリッド・パフォーマンスだった。この時間帯は、故Silent Servant(Juan Mendez)のアーカイブ映像が広大なスクリーンに投影されることで、コレクティブの歴史と現在が自然に接続された。美術館ならではの空間規模と高解像度で写し出された映像が、Sandwell Districtのミニマル/インダストリアル・テクノに新たな深度を与えていたのが印象的だった。
20 Years of Dave Clarke Presents
10/24 at Melkweg
イギリスのブライトンで生まれ育ち、現在はアムステルダムに在住しているベテランのテクノDJ・プロデューサーのDave Clarkeが自身の20周年を記念したパーティーをアムステルダムの名箱Melkwegで開催した。
この記念すべきアニバーサリーのラインナップは、まさにテクノファンの心に刺さる内容となっていた。ライブアクト、ハイブリッドセット、そして映画プログラムが織り成す、一夜に会場内はさまざまな年齢層のオーディエンスで埋め尽くされた。

満員に膨れ上がったフロア
ラインナップには、Marcel Dettmann、FJAAK、Helena Hauff、Anthony Rotherといったテクノ・エレクトロ界のアイコンが名を連ねていた。この日も嵐のような天気だったが、どうにか会場に到着したのは既に午前2時を回っていた。
Anthony Rother~Helena Hauffへの交代シーン
Anthony Rother~Helena Hauffへの交代シーン
到着するやAnthony Rotherのいぶし銀のダークエレクトロライヴを堪能し、そこからのHelena Hauffへと繋がるお目当ての時間帯を堪能した。Helenaの美しい美貌からは想像できないトリッキーでインダストリアルなブレイクスやテクノを織り交ぜたセットは見事だった。フロア内は移動の困難を極める程の寿司詰め状態だったが、テクノが広く世間に普及していることを感じさせるナイスパーティだった。

超満員だったがゆとりのあった会場内
Fumiya Tanakaプレイ時
そうこうしているうちにFumiya Tanakaの時間を迎えた。100%vinylから繰り出されるUKガラージ、ハウスを中心に引き出しの多い選曲でフロアはヒートアップ。何の違いなのかは定かではないが、そのオリジナリティ溢れるグルーヴで千両役者ぶりを発揮。Giampiero Mendolaの「Thank You For The Jazz」であろうと思われるトラックでオーディエンスは、そのエレガントな高揚感に包まれ、会場内は最高潮の雰囲気に包まれた。

静まり返っていた待機所SlapFunk x Yoyaku 10yrs
10/25 at Klaproos
次世代に向けた新たな“Slap(衝撃)” があり、何らかの “Funk(ファンク)” の要素を持つ音楽をコンセプトにアムステルダムをベースに活動するレコードレーベル・パーティオーガナイザーのSlap Funkと、パリ拠点のレコード屋でありディストリビューション業務やイベントも行うYoyakuのコラボレーションパーティ。
会場となったのは、アムステルダムのクリエイティブエリアである北地区にあるレストラン・バーであり、週末にはクラブスペースへと変貌を遂げるKlaproos。

超満員だったがゆとりのあった会場内
この朝8時から21時まで開催されたパーティには、ベルリン在住2人の日本人DJ、Fumiya TanakaとTomoki Tamuraもラインナップされていた。
17時に到着したがフロアはすでに超満員だった。日本人アーティストの登場という事もあってか、顔なじみの日本人も数人駆けつけていた。すでにプレイを終えていたTomoki氏にも会うことができ、久しぶりのキャッチアップということもあり、いろいろと話しかけてしまった(笑)。丁寧に対応していただき感謝、Tomoki氏の今後のさらなる活躍を期待したい。
Fumiya Tanakaプレイ時
そうこうしているうちにFumiya Tanakaの時間を迎えた。100%vinylから繰り出されるUKガラージ、ハウスを中心に引き出しの多い選曲でフロアはヒートアップ。何の違いなのかは定かではないが、そのオリジナリティ溢れるグルーヴで千両役者ぶりを発揮。Giampiero Mendolaの「Thank You For The Jazz」であろうと思われるトラックでオーディエンスは、そのエレガントな高揚感に包まれ、会場内は最高潮の雰囲気に包まれた。
ADE x 750: ZERØBPM | 39,5 Hour Ambient Meditation Experience
10/25 at de Thomaskerk
2025年10月27日、アムステルダムは750周年を迎えた。この特別な日を祝うため、2024年10月27日から1年間、街中でさまざまなイベントが「Amsterdam 750」という名目の元で開催されていた。
ADEも例外に漏れず、Amsterdam 750と協力し、都市の750周年を盛り上げた。その一環となったのがこの39.5時間にわたるアンビエント瞑想体験を届けるプログラムだった。
当日イベント会場である教会に到着したのが、20時半ごろだった。会場に入るや一つ前のアーティストのライブが終わったので次のアーティストまでの時間は待合ホールのような場所で待機してくれと待たされた。

待機所には数人しかおらず、会場内では物音を立てるなどの行為は控えるように入場時に伝えられていたのもあってか静まり返っていた。プログラムが始まる数分前に合図があり、本会場へ移動するように指示があった。
私はこの土曜日は昼過ぎから2つのパーティへ取材に出ていた。さらに水曜日から連日、パーティやカンファレンスに繰り出していたため、心身ともに正直疲れていた。そんな中、プログラムがスタートすると、その疲れが体から抜けていくような不思議な体験をした。

イベントが行われた教会内
ステージ上には胡坐を組んだ人物が座り、後方のデジタル掛け軸の様なスクリーンがひと際目を引いた。そしてそこに奏でられたアンビエントミュージックが、体の奥に静かに浸透していき音楽の魔法にかけられたう様な気分になった。
会場を後にする頃には、心身の重さがふっと軽くなり、再び動き出すための新しいパワーが生まれていた。この瞬間こそが、このプログラムがもたらすメッセージだったのかもしれない。
Breakfast Club: Sunday
10/26 at Radion
最終日は、朝食が無料で振舞われることで人気の高いADEでもおなじみのパーティ『Breakfast Club』がアムステルダム西の顔でもあり、アンダーグラウンドな雰囲気で人気のRadionで開催された。
前日も朝までコースだったため、夕方に会場に着いたが空いていると思いきやADEの最終日を惜しむかのように会場内はレイビーな雰囲気で盛り上がっていた。
メインフロアではラストの時間帯をAdiel b2b Questが務めていた。終演30分前頃にX-Formの「Hiroshima」がかかり、何か懐かしい気分に浸らされ、エモーショナルなエンディングへと向かっていった。
Radionの外観
終演10分前のメインフロア

終演10分前のメインフロア
その後も2つの会場に立ち寄って、今年のADEは幕を閉じた。
今年は悪天候の中での開催であったが、訪れた会場はどこも賑わっており改めてADEのパワーを感じられた。年々コンテンツの数が増え、正直一人で全ての開催内容を把握することすら難しくなってきた。しかし、一歩現場に足を踏み入れると新たな発見や久しぶりの再会など、ADEならではの充実した時間を送ることができた。

ADE 2026の日程は10月21日〜25日に決定!
Special Thanks: Serge (Clone Records), Yappo (Otemba Sake), Tomoki Tamura

