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UNDERGROUND LONDON PARTIES Vol.3

ロンドンのクラブシーンを紹介するレポートシリーズ「UNDERGROUND LONDON PARTIES」第3弾は、世界中で活躍するビッグネームDJのレジデントパーティーが毎週行われているAKA&The Endをご紹介。2005年8月にスタートし、今年で2年目をむかえるDanny Howellsのパーティー「Dig Dipper」に潜入しました!

<パーティーデータ>
As One presents Dig Deeper @AKA&The End
DATE: 16th June 2007(Sat)
DJ - Main Room & Lounge: DANNY HOWELLS (ALL NIGHT LONG SESSION)
AKA: Little Creatures feat. Luke Solomon and guest Kenny Hawkes

ありのままを表現できる「DIG DEEPER」

毎年世界の人気DJ100人を決める、UKの 「DJ Mag」誌の企画「DJMagTop100」で、1998年以降1度も100位以下にランク落ちしたことのないDJ、Danny Howells。ここでの彼のプレイスタイルは、古い楽曲から最新の楽曲、アシッド、エレクトロ、ディープハウス、テックハウス、ファンキー、ミニマルハウス、テクノと幅広い選曲が主で、ゲストDJとして招聘される東京や世界各都市とは少し違っている。常に最先端の音楽を求めるロンドンのクラウドの中で、無尽に駆けめぐる6時間のロングセットは、とてもユニークでクールであることは間違いないだろう。このパーティーの特徴は、彼がしっかりと自分の羽を広げ、幅広い音楽テイストをクラウドに届けるという、新しいコンセプトで行なわれていることである。これについてDannyはこう語っている。「『Dig Deeper』は本当の自分自身でいさせてくれるんだ。いろんな音楽の境界線なしで一晩中プレイできて、自分自身が楽しめるんだよ。」

レコード&ミックス

ロンドンではまだ少し肌寒さが残る6 月16日深夜12時30分、The Endに到着。さすがに土曜日なので入り口に長蛇の列ができており、入場するまで30分もかかってしまった。いつものようにセキュリティーの身体チェックを受けたあと、駆け足でフロアに向かうと、すでにDannyの音楽を楽しみに来ているクラウドの熱気が溢れかえっていた。ジョンレノンがプリントされた緑と白のおしゃれなTシャツと、ベースボールキャップというカジュアルな服装に身を包んだDanny Howellsは、リラックスした様子でDJブースで黙々とレコードを選んでいた。フロアを360度見渡せるブースの周りには、多くのクラウドが彼の選ぶレコードを食い入るように見つめていた。

ハウスというよりはテクノ!?

この夜のDannyの選曲は、ハウスというよりテクノ寄りだった。ミニマルテクノでクールに踊らせたかと思えば、グルーヴィーなプログレッシヴチューンでいつの間にかBPMを上げ、僕らを夢中で踊らせてくれた。ボーカルハウスはまったくかけず、終始テッキーでプログレッシヴ、ミニマルな選曲を展開、その中で今夜の中心となるサウンド=テクノを常に感じさせ、Danny Howells節でフロアをロックしていった。Dannyが掲げるコンセプトどおり、様々なジャンルの音楽を次々とプレイし、巧みなミックスと彼特有のグルーヴ感でぐいぐいとクラウドを引っ張っていく。やっぱりロンドンで聴いたどのDJよりも、選曲センスとミックステクニックが飛び抜けてすごい!!完璧なタイミングでビートやベースが交わってきたかと思うと、いい意味で期待を裏切るタイミングでビートが入り、曲が変わるごとに「次は何!?」とわくわくさせられた。この「絶妙ミックス」こそ、クラウドが長時間飽きずに踊るために欠かせないものではないだろうか。これを披露するたびに「ウォー!」と喚起が巻き起こり、口笛がフロアに響き鳴り、クラウドをどんどん熱くさせていった。

天才DJ =DANNY HOWELLS !!!

Dannyは6時間というロングセットの中で、波が押し寄せるようなノリノリのファンキーテクノでピークまで持っていったかと思うと、波が一気に引くかのように、ミニマルテクノでシンプル&クールに選曲していた。どんなにシンプルでも絶対にグルーヴを切らさない、巧みなコントロールテクはクラウドを飽きさせず、1度彼の世界に連れて行かれるとそこから抜け出せないくらい、彼のグルーヴは心地よく踊らせてくれる。疲れた体を休めてからフロアに戻っても、すぐにDannyのグルーヴに乗ってフロアの輪に入り、簡単に踊りだせる。こんなに楽しく踊ったのは本当に久々だった。またこの夜は最後までそのスタイルを崩さなかったので、日本で見たDannyとは全然違う印象を受けた。彼おなじみのファンサービスなどはあまりなく、音楽にすごく集中している様子だったが、彼がトイレに行く途中では、たくさんのクラウドが話しかけ、いつものように気さくにみんなと話をしている姿もしっかりあった。また彼はどんなところでプレイするときも、基本的にはCDではなくレコードをプレイすると聞いていたが、この夜もほとんどがレコードだったことにはすごく驚いた。あんなにたくさんのレコードを持ってこられるのは、ロンドンならではなのではないだろうか!?プレイが終わったあと、彼がプレイした曲をたずねる者や、感極まってダニーにかけよって行くクラウドが多くいた。最後の曲がかかってからも、まだまだ彼のDJプレイを聴いていたくて仕方がなかった。久々に感じた新鮮な気持ちに自分自身うれしくなったし、とても楽しい夜を演出した彼に感謝したい気持ちでいっぱいであった。

実力が人気を呼ぶ!

久々の生Dannyを体験して感じたことは、天才的なミックステクニックと選曲センスが、僕らクラウドの次元を遥かに超えているということだ。自分がプレイする曲を細部までわかっているからか、クラウドを手の中でころころと転がすようにコントロールし、彼らがその瞬間に何を期待しているかを見透かしているようだった。どうあがいても、僕らにはDannyの音楽観を超えることはできないだろうと完敗の気分だった。この夜のThe Endでは、日本での人気とは一味違う人気のDanny Howellsを見た。1998年から1度も「DJMagTop100」からはずれたことのない実力と実績は今も健在で、彼のプレイを聴けばすべてが当然の結果だと感じられた。ロンドンのクラブは、東京のように最後までたくさんのクラウドが残っていることが少ないが、この夜は多くのDannyファンが最後まで踊り明かし、これが彼の実力と人気を証明していたのではないだろうか。

なかなか夏を迎えることができないロンドンですが、パーティーは夏に向けて非常によく盛り上がっています。毎週末大きなフェスティバルなどが開催され、音楽が生活や娯楽として本当に根付いているんだなと日々感じています。それでは次回!!!!

Danny Howells ダニーハウエルス

イギリス、イーストサセックス出身。地元 Hastings で行われていた John DigweedのBedrock 主催のイベントでプレイしながらArc,Twilo,Renaissance,Home,などのビッグクラブでレジデントを勤め、継続的に世界中をツアー して回るなど14年以上の経験を積み、DJ Mag Top100では過去8年間、彼の名前を見なかったことがないほど名声共に世界トップ・クラスのDJとして成長した Danny Howells は、そのスタイルを"deepsexyfuturistictechfunkhouse"と表されるほど、セクシーでファンキーなディープハウスから、 力強くダークなプログレッシヴ・サウンドまで幅広いセット・スタイルを持つDJ/プロデューサーである。 リミックス・ワークやプロデューサーとしても注目されているアーティストである彼は、AzuliRecordsから常に世界中から高い評価を受け ているChoiceシリーズ、Global Undergraund のNubreedや"24/7"、レーベル Renaissance のコンピレーションCD、Nocturnal Frequenciesシリーズのリリースをはじめ、Rob Green と共に手掛けたChakra (WEA), React To Rhythm( Jackpot/Guerilla), Robbie Williams(Chrysalis)などのリミックス、制作面では、Dick Trevor との共同プロデュースに Erire をヴォーカルに迎えたユニット "Science Departmet"などが活動のメインとなっている。

<クラブデータ>AKA&THE END

住所:18 West Central Street London WC1A 1JJ
ロンドンのほぼ中央にあるHOLBORN駅から歩いて5分くらいのWest Central
Streetにあるクラブ。ロンドンクラブの中でもコアで音楽好きなクラウドに人気があり、多くの地元DJ達からも絶賛されるクラブの1つである。「AKA &THE END」という名前からも想像がつくように、AKAとTHE ENDという二つの空間が同じ建物内に存在し、それぞれ別々の入り口になっている。THE END側から入場した人はAKAへも移動でき るが、AKA側から入場した人はTHE ENDには移動できない面白いシステムになっている。もちろん入場料はTHE ENDの方が高い。 THE ENDの内装はトンネルをくりぬいたような形をしており、フロアのどこにいても音を感じることのできる造りになっている。メインフロアー500人、ラウンジルーム300人収容の合計800人収容可能だ。ロンドンのクラブの中では決して大きいとは言えないが、フロアで踊ったときに、はじめてクラブに足を踏み入れたときに誰もが感じるあの「アンダーグラウンド感」が満点だ。またDJブースがメインフロアーのほぼ中央に丸い形で存在し、クラウドがDJを360度囲むようになっており、DJとの距離が近い。これも良い雰囲気を作っている要素の1つだろう。STEVE LAWLERのほかに、Layo and Bushwacka主 催のパーティー「OLMETO RECORDS」 やDanny Howellsの「DIG DEEPER」、James Holdenの「BORDER COMMUNITY」、Sven Vathの「COCOON」、Darren Emersonの「UNBERWATER」、Ben Wattの「BUZZIN' FLY」など、ロン ドンを代表するDJたちのレジデントパーティーが行われている。これらのアーティストラインナップを見ただけで、面白いクラビングを想像できるはず!?

AKA&THE END web:http://www.endclub.com/news/index.php

CLOSE UP DJs

今回からおまけ企画として、今ロンドンで活躍中の若手注目DJ、アーティストを紹介していきます!日本ではほとんど名前を聞いたことがない彼らを少しでも紹介できればと思います。第一弾はClub Classに所属し、ロンドンで自分のPartyを主催し、今のアンダーグラウンドシーンで確実に実力をつけてきているSam Ballを紹介したいと思います。

Sam Ball
若干23歳のSam BallはLaurent Garnier、Sasha、Nathan Coles、Terry Francis and Fanciulli などのダンスミュージックの先駆者たちに大きく影響を受けたアーティスト。Samのサウンドはテックハウス、エレクトロ、テクノなどのソリッドなエレクトロミュージック。アップカミングなDJやプロデューサーが多く名を連ねるイギリス、Kentの最も期待されている若手である。 「ClubClass」のレジデントDJとしてNic Fanciulliと共に3年半在籍するとともに、<Turn mills>、<Gods kitchen>、<Pin up (Sheffield)>、 <Flow (Italy)>、< Inertia (Ireland)>、<Bounce and digifunk (Ireland)>、<Dusk till Dawn (Bournemouth)>、<Electric Playground (Southampton)>、<The Key (London)>などイギリスを含む世界中のクラブで、John Digweed、Paul Oakenfold、Danny Howells、 Pete Tong、James Zabiela、Justin Robertson、Erick Morrilo、Darren Emerson、Jon Carter、 Steve Lawler、Paul Woolford and Fanciulliなどのワールドクラスを代表するDJたちと積極的にプレイしている。最近では「The Cross Central NYE」や「Club Class」がレジデントパーティーを行なっている<Ministry Of Sound>などでも活躍中である。<Atomics>で行なわれたClub Classのパーティーで、いまや伝説となっている当時のSasha&Digweedのパフォーマンスを体験、DJになることを決意し、ターンテーブルを購入しミックスを追求する。2001年、「Club Class」のプロモーターのSergとGregの目にとまり、後にClub Class Mangementと契約を交わす。The Joy of DecksのコンペティションのなかのITVDJingにエントリーしたとき、MR C、Sister Bliss、Roni size and Tom Middletonからなる300人の参加者の中、最終選考のトップ10に入り、John Carterが所有するパブ、<The Lock Travern>で行なわれた決勝で優勝。イギリスで多くのメディアが注目したこのコンペティションの結果、Sam BallがUKのベストニュータレントであることが知れわたった。楽曲制作面では、2005年にBuick Project 「Drop the beat」のリミックスが話題を呼び、Urban Torque Recordingsから最新EP Double Visionをリリース。Nic Fanciulli , Paul Woolford , Funk D'void , Mazi , Demi, Electric press , Luke Diezierk , Murray Richardson , Kammishake , Anthony Pappa , Tyler Stadius , Nico de Celigiaからの絶大なサポートを受けている。2006年、Urbantorque、Cubic、Punchfunkが3枚の自身のEPをリリース、Urbantorque、ToolroomやISHO recordsからリミックスをリリースした。最近彼はロンドンの若者の人気スポット、Shoreditchに位置するクラ<Bar 54>でTerry francis、Serge Santiago, Luke Solomon、などのゲストを迎え、彼自身のパーティー、「Undercurrent」をスタートさせたばかりだ。今後も目が離せないロンドンの注目のアーティストだ。

<レポーター>
KSK
1978年10月生まれの天秤座、血液型不明。人から聞いた話よりも自分の目で確かめなきゃ気が済まない性格で、モットーは「継続は力なり」と「初心忘れるべからず」。誰よりもBeatとVibesを感じることが一番幸せ。小さい頃は野球に明け暮れ、毎日のように泥だらけでいつかは野球選手になれるだろうと本気で考えていたマルコメ小僧。高校生のときにHip Hopに出会い、ダンスに目覚め、音楽や黒人文化に憧れ、今度はいつかプロダンサーになろうと日々昇進してる中、ハウス、テクノに狂ったようにのめりこみ、そのままオーストラリアに旅立つ。人生観や旅の楽しさ、音楽に対する考え方や感じ方を自分なりに発見する。帰国後、その経験を生かし東京で音楽にDeepにのめりこんでいく中、さらなる自分自身の変化や成長、また新たな音楽的な境地を求めて東京を離れる。現在ロンドンにてゼロからの人生をスタートさせた28歳。