REPORTS

TAICOCLUB’09 -part 2-(6/6)

Squarepusher / Ricardo Villalobos / TAKKYU ISHINO / クボタタケシ / Doseone & Jel(Themselves/Subtle from Anticon) / SIS(Sei Es Drum/Cecille) / Zazen Boys / Fumiya Tanaka / Daniel Wang / DE DE MOUSE / Matmos / DJ MITSU THE BEATS / world’s end girlfriend(Special Dance Set) / Atom tm(Señor Coconut) / Nick the Record(Life Force) / MOODMAN / SPECIAL OTHERS / Alex Under(PLUS8/TRAPEZ/CMYK) / tujiko noriko / Serge Santiago / JEL

(PT.2)
MOODMAN'Sハウスマナーをたっぷり堪能した僕ら。日はまだ高い、持って来たバトミントンやらフリスビーやら、普段はやらないような遊びを一生懸命になってやって、そして日が暮れかけるとテントに戻って、どのアーティストを見るかスケジュールを組む。正直、全部のアーティストを見たい。でも、ちょっとづつ摘むよりも、長く深くアーティストの公演を堪能するほうが性にあっている僕らは、world’s end girlfriend → SIS → 卓球 → Atom TM → Squarepusher → Ricardo Villalobos → Fumiya Tanaka → MATMOS → Nick The Recordというスケジュールでまわることにする。だけど、いつもこのとおりに事が運んだことなんてないから、このスケジュール決めは、野外フェスにおける一種の儀式的なものなんだと思う。
野外音楽堂では、world’s end girlfriendがフリーキーでダンサブルなセットを披露している。彼らのライブは何回か聴いたことがある。だけどもTAICOでのセットはいつもと違うように感じる。インストはインテリジェンスだが、ノリはもっと肉体的で生生しい。彼らの根底に潜むパンクには、なんていうか、古い表現だけど、泣く子も黙る的な迫力があった。実際に僕の前にいた3歳か4歳くらいの子もグっと口をつぐんで彼らのライブに真剣な眼差しを送っていた。
下界に降りると、一気にクラウドが増えていることに気がつく。TAICOCLUBは今年も大盛況だ。来ている人も、「音楽が好きです。それもとてつもなく、無くては生きてけません。」みたいな人がたくさんいる。同じような人種が集まって、そこにある何かを共有するっていうのは良いものだ。
SISの男らしいストレートな選曲で踊り、名物になりつつある焼き魚を食べながら石野卓球を聴く。この日の卓球のセットはすごかった。食べかけの魚を仲間に託して、踊らされる。SISからの流れで、序盤はじわじわと卓球流ミニマルからビルドアップしていく。そして到達するのはNew Order - Blue Monday!誰かがどこかで適当にかけても、恥ずかしい思いをするだけかもしれないこの曲を、ここしかないところでスピンできる石野卓球。会場が一体となっていた瞬間その1だ。
そして、Atom TMによる超高濃度のライブが始まる。だけど僕は彼のライブを言葉にすることができない。レポーターとしては失格だが、言葉にすると損なわれてしまう何かがありそうで、何も語れない。何年もたくさんエレクトリックミュージックに触れて、それを生業としてきたけど、Atom TMのライブを見て感じた感覚ははじめてのものだった。次回、彼がどこかでライブをやるときは見逃さないことを強くオススメします。
Squarepusherのサディスティックなライブを楽しみ、Ricardo VillalobosとFumiya Tanakaのセッションを楽しむ。この辺りになってくるとやはりというか、予定通りというか、仲間とは逸れてしまう。まあ、そんなことは、こっちも気にしないし、向こうも気にしないんだけど。
徐々に空が白み始めると、それまでの会場が、他の場所に移ったかのように感じる。会場を囲む深い緑の壁が現れて、一夜を共有してきた人たちの顔がはっきりと見える、いろんな事に気がつく時間だ。どん欲に音楽を求めていた夜のステージから、今度は共有を求める昼間のステージへ。
野外音楽堂では、MATMOSがこれもまた密度の高いライブを披露している。やっている本人たちは肩の力が抜けていてとてもリラックスしながらライブを行っている。だけどその実、やっていることには圧倒させられるものがある。1人がシンセでエレクトリックな音を鳴らして、他の2人が、ステージ真ん中に置いてあるテーブルにつき、サイコロの様なものをカップに入れたり、そのカップからサイコロをテーブルに振ったりしている。それが幾度となく二人とも寸分違わぬ同じ動作で、繰り返されている。そのサイコロが振られたり、拾われることで出るクラック音をビートとして扱うなんて、誰が考えつくのだろう。bjorkのアルバムにも参加しているという、MATMOS。やっぱり普通じゃない。
そして、TAICOCLUBと言えばこの人、Nick The Recordが登場する。気温は28度前後(だろう)、たまに涼しい風がとおり抜ける野外音楽堂。下のメインステージはすでに終了し、全ての人がそこにいる。超休日的な空間で、超休日的なNick The RecordのDJを楽しむ。裸足になって踊ったり、木陰に寝そべったり、そしてたまに、体を起こして、周りの笑顔を確認したり。TAICOCLUBで最も至福の時。この反復作業を延々と繰り返していると、ふとした瞬間に音が止まって、そしてTAICOCLUBの人から終幕の挨拶がある。大きな拍手。その一連を寝そべったまま聴きながら、「終わりじゃなくて、来年に続くだな。来年もこの場所に来よう」と思う。そう決めて、重い腰をあげて、たくさんの思い出が残るフロアに置いてきた靴を探しに行く。