[act] Bill Laswell presents Tokyo Rotation (Bill Laswell / 近藤等則 / DJ KRUSH / 山木秀夫)
5月17日(火)に渋谷のスペイン坂にあるライブハウス"WWW"にてビル・ラズウェル、DJ KRUSH、近藤等則、山木秀夫からなるワールドクラスのミュージシャンが結集したユニット「TOKYO ROTATION」が出演する「WWW presents #restart vol.2 東日本大震災復興支援ライブ」が開催された。震災から約3ヶ月が経ったが、依然として復興の目処はつかず、原発問題はさらに悪化の一途をたどっている今日。
「TOKYO ROTATION」とは元々はビルが企画・出演する、世界と日本のアーティストの融合をコンセプトとしたイベントで、実は震災が起きる4日前、3月7日(月)に、ビルとDJ KRUSHは、世界最古の合奏音楽"雅楽"とのコラボレーションを実現するために、「Tokyo Rotation presents 『GEN JYO RAKU(還・城・楽)』」にて共演していた。ビル本人の強い希望から実現したという本公演は、震災直前の日本にいたからこそ、なおさら少しでも力になりたいという、彼の考えがあったことから、発案されたのかもしれない。また今回のイベントは開催直前に、急きょ彼の意向により、集金体制をチケット式ではなく投げ銭式へと変更。来場者は講演終了後にそれぞれの「ハート」を投げ銭として表すようになっていた。
昼帯のライブハウスへ来ることは、本当に久しぶりだった。"WWW"はこのごろよく耳にする会場だったということや、DE DE MOUTHやDJ BAKUなどクラブ系アーティストも公演を行っていることから、興味があった。もともと映画館だったというだけに、段差がついたフロアと開放感のある天井高が、その名残を残している。この場所が提供するものが、映像から生身の人間のパフォーマンスへと変わったことに違和感を感じることは、新鮮だった。
満員のフロアを見れば、この夜の期待値は優に予想できた。アーティスト陣が登場すると「ビル!ビル!」という声援が沸き起こったのもつかの間。パフォーマンスが始まるやいなや、満員のフロアは静寂を取り戻し、その中を音が静かに立ち上っていった。ビルのベースと山木秀夫がドラムが土台となり、近藤等則のトランペットがメロディー、DJ KRUSHのターンテーブルがメロディーとサンプラーの役割を担っていた。どの楽器の音も際立つので、すべてが主役のように聴こえた。
彼らの音楽は、非常に急進的で常に挑戦するさまを感じた。おそらく今日と明日では、同じ曲でも違う演奏になるだろう。即興性も強く曲の区切りも音が止まるからわかるというもので、1曲10分から15分くらいはあっただろう。その長い時間の中で、演者は、いろいろな音を聴かせてくれた。とりわけ、トランペットの近藤等則の演奏とビルのベースには、意外性の高い音色の数々に驚かされた。手元が見えるから動きと音がリンクして音と楽器がかろうじて結びつく。エモーショナルな演奏、夏の夕暮れ時を感じさせるようなしっとりとした演奏などさまざま。和楽器、蝉の鳴き声、和太鼓の音など、情景が次々と浮かぶ音色は、震災以降、日本という土地を見つめ直した私たちにとって、なおさら感慨深いものに聴こえたのではないだろうか。普段の生活の中でこれほど音と向き合うことはあまりないと思う。約1時間半、じっとステージを向き音楽に集中できた。
音楽を言葉に訳せるとしたら、彼らの音楽は何になるのだろうか?非常にむずかしい。ハイクオリティでありながら実験的でもある。とてもひとことでは言い表せられない深い魅力がある。そしてその魅力に惹かれてまたライブに行きたくなるのだろう。
今回、彼らの思いに共感した来場者の「ハート」により募金された総額は、61万8千485円。出演者、来場者の願いを集めた義援金は、会場の"WWW"が責任をもって日本赤十字社へ寄付、被災地へ届けてくれたとのこと。
Text : yanma