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Text: clubberia編集部
そんなNina Kravizといえば、電子音楽業界において既に不動の立ち位置を獲得しているレーベル<трип>の主宰者であり、昨今は自身の活動として、より既存のポップソングに近い構造を持ったボーカル入りのプロダクションも制作しているアーティストだ。
最新のリリースでは、かなりクラシックなスタイルに近いサイケデリック・トランストラックをリリースしたことでも話題となったが、世界中の大きな舞台に呼ばれて世界最先端のシーンに触れ続けている彼女が、今考えていることはなんなのか?今回は、幸運にも現在の彼女の音楽スタイルについて伺う機会があったので、以下で共有させて頂きたい。
——Ninaさん、まずは、最近のリリースについて伺いたいです。indira paganottoとの共作である最新のリリース『white horse』は、オールドスクールなトランス作品、『tarde』はベッドルームポップ作品のような印象を受けました。最近のプロダクションのスタイルをどのように捉えていますか?
今私には、3つの音楽性があると思ってます。もしかしたら明日には変わるかもしれませんが(笑)
私は2018年ごろから、ダンスフロアではサイケデリック・トランスが好きです。今ではトレンドとなってますが、私がかけ始めた当時は珍しいスタイルでした。
2つ目は、先ほど言ってもらえたようなドリーミーなボーカルトリップ。よりポピュラー音楽に近い構造を持った音楽を制作しています。
そして、3つ目はミニマル音楽ですね。昨日のDOMMUNEでの配信では、一番初めに<трип>でこれからリリースされる予定のエクスペリメンタルなミニマルトラックをかけましたよ。
——昨日の配信は視聴していましたよ!素晴らしかったです。また私は、レーベル<трип>のファンでもあります。レーベルの哲学についても、伺って良いでしょうか?
<трип>は、私の変わり続ける心の内を反映していると思います。
初めは、新しいコンセプトを持ったリズムミュージックを創り出すことに関心がありました。複数のアーティストによる古い曲や新しい曲を織り交ぜて、まるで1つのアルバムのようにストーリーを持ったコンピレーションアルバムを作ることが目的でした。そして、その後は12インチのレコードを制作してますが、全て私がその時興味がある音楽となっています。
——今後のリリースはどのようなものになるのでしょうか?
次のリリースは、とてもミニマルなサウンドのアルバムになる予定です。ウォルフガング・ヴォイトの音楽のような、スタジオで生まれた電子音楽作品です。これは、soren jahanというアーティストによるもので、3分ほどの楽曲が16曲収録されたものなのですが、12インチでは、ロックド・グルーヴ(ループ再生するように彫られたレコード)を採用しました。
この作品は、フィンランドの<Sähkö Recordings>のような雰囲気を思いだします。とても、ミニマルで純粋な電子サウンド……。
そういえば、<Sähkö>って発音が日本語みたいで面白いですよね(笑)
——確かに、そうですね(笑)
<Sähkö>はフィンランド語で“電気“を表す言葉だったと思います。
あと、私が先日発表した楽曲「tarde」のリミックスをリカルド・ヴィラロボスが手掛けてくれました。私は彼の長年のファンなので、この作品を発表できることをとても光栄に思っています。そして、ダブステップのアーティストであるMALAもリミックスを手掛けてくれる予定です!
——次回はビーチパーティでDJを披露されますね。アウトドアイベントでプレイされる場合には、セットリストを変えたりするんでしょうか?
基本的に、私はセットリストを用意しないんです。私は、ステージの5分前にクラウドとセッティングを確認して、無意識下でステージに上がるようにしてます。
フォルダの中には、その日初めてかけるトラックもあります。準備を入念にすることに良いこともありますが、私はより即興性を大事にしています。何かをプレイする時に、より純粋な興奮と向き合いたいんです。
——ジャンルに関しても、何も決めないと。
何も決めません。例えば<Tomorrowland>でプレイした時、それは完全にハウスセットになりました。フロアをより機能的にしたかったのです。大事なのは、何をかけても、私は私ということです。それに大きなステージでは、出演時間が短いことが多いですよね。基本的には1時間半ほど、長くても2時間です。その中で、ストーリーを創らなければなりません。
私のDJの友人の中には、細かい準備やベニューの確認を入念に行う人がいます。けれど、私はあえて何も情報を入れずに、直感で演奏します。
実は、これが長くDJを続けられる秘訣かもしれないと思ってます(笑)私は長年DJを続けていますが、未だにどの現場へ行っても興奮しますし、新鮮な気持ちでプレイできます。
——なるほど。それは、とても参考になります。
そうですね。若く、フレッシュであり続けることはとても大切です。前述のように、私はセットリストを組まないので、どこへ行っても異なるセットになります。
面白いことに、私の母親は時々現場へと来てくれるのですが、彼女が私の曲を聴いて、未だに驚いてくれることがあります。私は、同じ曲でも全く異なる形でMIXすることが多いんです。
©️SKINNY
——最後に、日本のあなたのファン、そしてダンスミュージックファンに向けてメッセージを頂けますか?
日本のオーディエンスは本当に特別です。世界中、他に比べられるものはありません。
情熱と知識、そして優しさと愛を兼ね備えた人々だと思っています。カルチャーへの尊敬もあって、小さなディテールにも敏感です。そういった人々に囲まれて、DJができることがとても光栄です!ありがとうございます!
『ACiD presents THE BEACH 2023』
【日時】2023年6月3日(土)11:00開場 / 12:00開演 / 21:00終演(予定)
【会場】東扇島東公園 かわさきの浜
【料金】1万2000円 U25早割 7700円
【出演】Nina Kraviz / CYK / Drunken Kong / Ground / Little Dead Girl / Million Dollar Sounds / Petar Dundov / Peter Van Hoesen [LIVE] / Raven / Satoshi Otsuki / yama’ / Yamarchy
【オフィシャルサイト】