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子育てと音楽活動の両立
Vol.3:Shhhhh(後編)

 子どもを持ちながら音楽活動を続ける生活は、どういったものか? 4歳の娘を持つKoyasが先輩パパ・ママにインタビュー取材する本連載。

 

 今回の先輩パパには、DJのShhhhhさんが登場。前編では日常生活について話してもらいましたが、後編では、彼が立ち上げから関わっている「Nu Village」というキャンプイン・フェスについて聞きました。山梨県にある白州・尾白の森名水公園「べるが」で開催され、簡単にいうと子持ちのパーティー好きが親子で一緒になって遊べる野外パーティー。私KoyasもAym Jetとともに子どもが電子楽器でジャムセッションするワークショップ「Jam Paradise」で参加したことがあります。子持ちにはよくある話ですが、僕の娘が直前に熱を出したので1人でNu Villageに参戦してきました。家族や皆で遊べたらさぞ楽しいだろうなあ、と思いつつ……

 

前編はこちら

https://clubberia.com/ja/bloggers/126-Vol-3-Shhhhh/


「パーティーで出会った人と再会したい」っていうのがコンセプトなので、DJブースがなきゃダメ

Koyas:子ども連れで参加できるパーティーの多くは、あくまで内容は大人向けで、そこにキッズエリアがあるパターンが多い。でもNu Villageが面白かったのはメインのコンテンツも子ども向けで、大人向けのコンテンツもパーティーカルチャーに根ざしていて、そのバランス感覚が上手いなと思って。

Shhhhh:子ども向けキャンプだよって言っても、大人向けの音楽でも、ブッキングや見せ方によって“大人も子どもも面白く”っていうのは、すごく狙ったことでもあります。


Koyas:立ち上げた理由は?

Shhhhh:ダンスミュージックのダンスっていうのも根源的なのに、子どもができたからこういう遊びは卒業しよう、っていうのがすごく嫌で。地方に行ったら昔遊んだ仲間が「子どもできちゃって、もう嫁からは出るなって言われてるんです。」みたいなのとか、そういう雰囲気を無くしたいと。


サントリー「南アルプスの天然水」の水源でもある白州・尾白の森名水公園

 


Shhhhh:Nu Villageの場所って縁があって僕が0歳のころから通っているんです。おじいさんが山小屋を建てて。そこに子どもを連れて行きました。場所もいいし水もキレイ、何か出来ないかなと思ったときに、OVAチームのレイカさんに久々に会って「いい場所があるんですよ。」って言ったら、5分後に電話で「下見の約束取ったから」とか言って(笑)。

Koyas:仕事が早い(笑)。

Shhhhh:じゃあ行きましょうってなって。それで2014年にスタートして。このとき面白かったのは影絵ですね。影絵は僕が好きなインドネシアの伝統的な文化のひとつで、大人が見ても子どもが見ても面白い。川村亘平斎っていう人がいるんですけど、滞空時間っていうユニットを組んでて、一時期OOIOOのガムランの担当もやっていて。彼が影絵をやって僕がAbletonで音を出す、みたいなのを森の中でやったらめちゃくちゃウケたんですよ、子ども大発狂(笑)。1回目で「これはちょっと大きい、まだやってないこと掘れたな」っていうのはすごく思いましたね。

Koyas:その光景、見てみたかったな……。

Shhhhh:2017年に僕がキュレーターをやったときは、ロバの音楽座っていうクルーに出てもらって。玉川上水に自分たちで家を建てて。世界中の民族音楽を集めたり、ルネッサンス時代の古楽器を再現して音楽を作ってて。リーダーの松本雅隆さんはじめ素晴らしい方々なんですが。NHKにも出てたりとかで知られてるんですが、DJブースがあるパーティーにそういう人たちに出てもらったら、すごく新しいんじゃないかと思って。彼らがフードエリアでいきなり演奏を始めて、子どもたち集まってきて、ハーメルンの笛吹き男みたいに子ども達がどんどんついて行って、森の奥までたどり着いてワーってなってる光景は感動的でしたね。まさに童話の世界でした。




Shhhhh:ヨーロッパや南米って伝統歌や童謡とか子守唄をアーティストがカバーして、それだけでアルバム出すことが多い。僕もそういうものを好きでストックしてて。それを子どもたちの前でプレイしたいなっていうのは、DJとしてNu Villageを立ち上げのコンセプトの一つであったけど、実際は子どもはDJを聴いちゃいない(笑)。実際、影絵とかロバの音楽座とかみたいに視覚的じゃないと全然盛り上がらない(笑)。

Koyas:そうなんですね(笑)。 

Shhhhh:DJブースに関しては、いまだ悩んでます。大人は子どもを見ることで忙しくて踊ってる暇ないし。音量がでかいと苦情も来たり。だから、「パーティーとコンテンツと子ども」っていうのは成功しているけど「DJカルチャーと子ども」っていうのに関しては、まだ模索中なんですよ。でもDJブースがあるから大人たちがいてくれる。「KENSEIがやってるんだ、MOOCHYがやってるんだ、Shhhhhがやってるんだ」と見に来てくれる人も多いわけで。「Nu Village」は、ライブ見に行くだけとか、いい場所だから皆でキャンプしようよってだけじゃなくて、「パーティーで出会った人と再会したい」っていうのも自分の中のひとつのコンセプトなので、DJブースがなきゃダメだし。 

いまだ模索中と語るDJブース。写真右。
 

Koyas:ShhhhhさんはDJをされていかがですか?

Shhhhh:誰もいなかったり、通り過ぎていったりされると寂しい(笑)。いい流れができてみんな集まっても、子どもに呼ばれたら、フロアにいた親は行ってしまう。いいフロアができてもそれが偶発的な感じが多くて。そういうのも面白いんですけどね。でもあそこで音を流すというのが喜びなので。良い曲があったら「これを来年あの場所でかけたいな」って思う。場所の思い入れというのも個人的にすごくありますね。




「子どもにあの水を触れさせたい」

Koyas:去年のNu Villageで面白かったのは、ジョンと岸野雄一さん。彼らも影絵でしたね。子どもが喜ぶものというよりは、僕の周りでは「怖い~」って泣き叫ぶ子がいて。

Shhhhh:そう、あれは不協和音ですからね。不協和音怖いなって思いましたね。ドレミの歴史を改めて勉強したくなりました。空気が綺麗で静かだから余計に広まるんですよね。ジョンさんは3年目から来てもらっていて、結構人気キャラなんですよ。「あ、またいた~」みたいな感じで。東野祥子ちゃんの周りでもやっていて、いわゆるアバンギャルド界隈の人だったりもするから、作曲した歌を子どもの前でやるとかあんまりないんじゃないかな。bonoboのSEIさんが連れてきたんですよね。あのセンス流石ですよね。

犬のジョンと影絵の岸野雄一
 
Koyas:Nu Villageに自分のお子さんは連れて行きますか?

Shhhhh:連れて行くんですけど、キャンプはできないんで、夜はじいさんの山小屋に行って。毎回家族で参加してますけど、俺もカミさんもうちの子も、あの場所には行きまくってるんで。「今年も来たぞ~」とかはそういうのはなく「ああ、やってるな」くらいの感じです。ほかの子どもたちは子どもたち同士で仲良くなったり一緒に遊んだりするけど、自分の子どもは一人で遊ぶしかないしすぐ帰っちゃうから。ほかの親が健常な子どもを連れてくる立場とは違うんだろうな。だから、妙に俯瞰することができてパーティーを作れる側に回れるのかなと思いますけどね。

Koyas:ちなみにNu Villageの会期中に家族関係で大変なことは?奥さんがずっと子どもの面倒を見てる?

Shhhhh:そうですね。今回はDJしかしなかったんですけど、なんだかんだで始まったらやることは、けっこうあるので。キュレーターをやった前回は最後倒れちゃってましたからね。でも今回は初めて会期中に温泉行ったりとか、楽しめちゃってるNu Village、余裕あるぞみたいな(笑)。あの場所は本当にいい。水が綺麗でサントリーの工場があるくらい。南アルプスの天然水が湧く場所なんですよ。子どもにあの水を触れさせたいっていうのはありますよね。あの水で淹れたコーヒーも全然違うので。 

子どもが電子楽器でジャムセッションできるスペース「Jam Paradise」 by Koyas&Aym Jet

 
Koyas:最後にこれからのDJ活動の展望などを教えてください。

Shhhhh:ベトナムのホーチミンにあるObservatory(オブザーバトリー)っていう箱のレジデントになったんですよ。いまアジアのシーンが面白いんですけど、ちょこちょここれからアジアのクラブを回ろうかなと思います。あとは南米の音楽家たちの招聘やリリースも引き続きしていきます。

Koyas:アジアのシーンって活気があるみたいですね。

Shhhhh:日本の80年代90年代と一緒。いま10代~20代の子が本当多くて、街にすごい活気があって。LCCの発達でヨーロッパからの移住も多いし、ヨーロッパ人たちがパーティーカルチャー持ち込んでる。もちろんローカルのいいDJも出てきてる、ワクワクします。2020年代はアジアとつながって盛り上げたいな。
※記事中の年齢は取材時のもの
 

Shhhhh (El Folclore Paradox) 
DJ/東京出身。オリジナルなワールドミュージック/伝統伝承の発掘活動。フロアでは民族音楽から最新の電子音楽全般を操るフリースタイル・グルーヴを発明。2017年にレーベル『EL FOLCLORE PARADOX』を始動し、南米からNicola Cruz、Chancha Via Circuito、BARRIO LINDO、R VINCENZO、Spaniol、Jaçira、VJ Suaveらを招聘。2018年秋よりベトナムはホーチミンのクラブ=The ObservatoryのレジデントDJに就任。

https://soundcloud.com/shhhhhsunhouse
https://twitter.com/shhhhhsunhouse
https://www.facebook.com/kanekosunhouse
https://jp.residentadvisor.net/dj/shhhhh



Shhhhh出演イベント

日時:4月3日(水)22時〜 
タイトル:ピーターコン ft. MR HO 
会場:神宮前ボノボ
料金:2000yen / 1D
出演者:[DJ] Mr.Ho ( Klasse Wrecks / 宀 Club / 香港 )  〜special 4hours set〜 
& Shhhhh

日時:4月21日(日)17時〜21時 
タイトル:ピーターコン ft. Uji
会場:Unice代官山
料金:TBA
出演:[Live] Uji (ZZK Records / Argentina), [DJ] Shhhhh & more special guest, [sound] ASADA, [装飾]Suu(猿の谷渡)

Uji JAPAN TOUR
4月26日 Kalakuta DISCO名古屋
4月28日 Troopcafe 神戸

Uji (ZZK Records / Argentina)
ウジことルイス・マルエッテはブエノスアイレス産まれの放浪するプロデューサー/マルチ・インストゥルメンタリスト。ラテン・アメリカとアフロ・ラテン・ディアスポラに影響されたサウンドは、人間に無意識に植え付けられえている根源的な”踊り”に導き。ボリビアのカーニバルやコロンビアの村祭りの甘美な夜から、ベルリンのウェアハウス・パーティのドラッギーな夜明けまでを行き来するような幻想を描き出す。

ニコラ・クルス、チャンチャ・ビア・シルキート、バリオ・リンドといったエレクトリック・フォルクローレのコレクティブの中心の一人でもあり、Voodoohopやスロー・テクノの名もなきシーンに共鳴する。かつての名義、ルラクルサで5枚のアルバムをリリースし、映像作家ビンセント・ムーンのビジュアル・アルバムでも共演。2018年に、ZZK Recordsからリリースしたアルバム、”アルボラ”は、彼自身が採集したフィールドレコーディングとコンガ、クヌノ、バラフォン、チャランゴ、ボンボ・レゲーロといった世界の伝統楽器とシンセとボーカルで作られ、各メディアに絶賛された。2019年初来日。

https://soundcloud.com/ujitimebeing/solsticio-de-luna-llena-live-set-19062016
https://www.youtube.com/watch?v=vB8EMAs_xVs