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子育てと音楽活動の両立
Vol.3:Shhhhh(前編)

取材・文・写真:Koyas
 
 子どもを授かったときに、自分の音楽活動やライフスタイルはどうなるのか? 子どもを持ちながら音楽活動を続ける生活とは? そのノウハウを4歳になる娘を持つ私、Koyasが伺う連載です。
 
 今回の取材相手はDJのShhhhh(シー)さん。南米や東南アジアなどのワールドミュージックからテクノまで幅広い音源を掘り起こす選曲が特徴的なDJですが、なんとお子さんが障害をお持ちだということ。じつは私も交通事故で障害者手帳をもっていますが、障害者の子どもを持ちながらDJ活動を続けることは、どういった側面があるのでしょうか?
 
 
子どもに音楽をやらせてもっているっていうのは、すごくあります。

 
Koyas:ShhhhhさんのDJは辺境系のイメージがありますが、普段は何をしていますか?
 
Shhhhh週末はだいたいDJの現場が入っていますが、いわゆるワールドミュージックのCDを輸入する会社にも所属していて、ラテン音楽とスペイン語圏や世界各地の音楽を仲間のレコードショップに卸して、っていう感じの活動もしています。ちょこちょこライターをやったり、最近は自分でヴァイナルを刷ったり。ずっと音楽ですね。
 
Koyas:レーベル、El Folclore Paradoxもやられてますよね?
 
Shhhhhそうですね。Voodoohopというブラジルのレーベルのコンピや、前に呼んだサンパウロのSpaniolの7インチを出したり。あとは、まだ進行中ですがバリ島の新世代ガムランみたいなレーベルコンピを出そうかなと思っています。2018年はひたすら南米とアジアの音楽家の招聘をしていました。招聘といってもエージェント経由とかじゃなく、活動のなかで友人になったり紹介してもらったりして。
 
KoyasもともとDJを始めたきっかけは?
 
Shhhhhきっかけは大学生のときですね。今、40歳ですけど、98~99年とか一番音楽バブルで、大学生とかがDJをやっていたような時期。モテたいじゃないけど、高校生が“ギターカッコイイ”みたいに言うのとまったく一緒で、“DJかっけー”みたいな。単純に音楽が好きでしたし。
 
Koyasその頃から辺境系でした?
 
Shhhhhもともとはジャズが好きでした。当時、下北沢の古着屋でバイトしてたんですけど、下北沢にDJ BAKUくんが働いていたSHAKARA RECORDSってレコード屋があって、そこでバイトの合間にフリージャズのレコードを買ってましたね。DJ KENSEIさんとかINDOPEPSYCHICSとかのドープでヘビーな音だったり、ストイックな中南米の変拍子のジャズだったりをよく買っていましたね。
 
Koyas結婚されたのは、いつごろですか?
 
Shhhhh2006〜7年かな。できちゃった結婚なので早いんですよ(笑)。
 
Koyasうちもそうなんですけどね(笑)。お子さんは?
 
Shhhhh12歳の男の子が一人。自閉症と発達障害でいわゆる専門の学校に通っています。エネルギーが強い子なので、お腹空いたとか楽しいとか嬉しいとか意思疎通はできるんですけど、普通の学習とかは、まったくできない感じですね。来年中学生になりますが、同じ学校の施設内で移動するっていう形で。
 
Koyas自閉症って具体的にはどんな感じなんですか?
 
Shhhhh:音で「あ、あ、あ、あ」とか。おはようって言ったらオウム返しに「おはよう」って言うし、「お腹空いた」とか「ラーメン!」とか要望は言ってくれる。「嫌だ」とか「トイレ」とかも。トイレはもう自分でできるんですけどね。
 
Koyas奥さんは何かお仕事を?
 
Shhhhhbimidoriって名前でたまにDJもやったりするんですけど、今はパン職人。子どもと一緒にできる仕事をっていうので、家を改造して工房にしてパンを作っています。うちのカミさんマクロビオティックでビーガンなんですけど、bonobo(※1)の水曜日のフロントバーに立ってビーガンフードを出したりしています。 
※1:原宿にあるパワースポット的なDJバー。民家を改装した個性的な内装とこだわり抜いた音響が人気。 http://bonobo.jp

Koyas家にパン工房があるんですね!!
 
Shhhhh:子どもの学校に行くために3年前に高円寺から町田に引っ越したんです。裏には山があったり、倉庫があったり、面白い作りなんですよ。大家さんの許可をもらって、掃除して板とか張り替えて、今の工房になりました。少し前までは、朝、子どもを学校に送って、僕とカミさんは仕事に通って、週末に僕はDJで家を空ける。そんな生活をしてたんですけど、実際にかなりハードだったので僕も疲れちゃって。だったら国からも補助が少し出ているし、もうちょっと広い家にして、今のような生活に切り替えました。ある意味、子どもに音楽をやらせてもっているっていうのは、すごくあります。
 
Koyas12歳だとそろそろ難しい年頃ですよね。
 
Shhhhhそうですね。たとえばいつも決まった時間にお昼ご飯を食べているけど、お皿が違ったりしたらすごく怒りだして暴れるんですよ。あとは、好きな店に「今日はいかないよ」って言ったら車壊しちゃうんじゃないかってくらい。行動パターンは、けっこう決まっていて、最近は、家でかかる音楽が自分の納得した音楽じゃないと消しちゃう。かなりハードですよ、ブチっといきなり消すんで。自分の部屋はスタジオ風にしていて、そこまでは立ち入らせないようにしているんですけど。
 
Koyas一日の流れ、現場のある日とない日を教えてください。
 
Shhhhh現場がない日は、7時か7時半ごろに起きて子どもを送って。朝に仕事をすると捗るので、早いときは6時台に起きてメール作業とか。会社に行く日は、8時半に子どもを送って、会社に出勤して退社が19時。会社の帰りにLos Apson?に寄ることが多くて、店主の山辺さんとその日の会社でゲットしたサンプルを聴いて「これやばい」とか2人でゲラゲラ笑いながら「じゃあこれ何枚」とかってオーダーを取ったり。ワールドミュージックは一部の人しか好きじゃないっていうイメージがあったと思うんですけど、それを僕がDJカルチャーのなかで噛み砕いて、山辺さんと一緒にほんの少しは広められたんじゃないかなと思います。
 
以前は月~金で会社務めだったのを、今は減らしています。CD市場は元気ないし、カミさんがパン作りを始めたので、そのサポートで子どもを見る時間を増やしてます。子どもは一人で何かできる訳じゃないので、夕方に帰ってきたらあんまり夜は作業しないかな。


高円寺にある個性派レコード・CDなどを販売するセレクトショップLos Apson?の店主・山辺さん。http://www.losapson.net


カミさんに一人の時間を持たせてあげるのが一番大事ですよね。

Koyas:子どもの日常生活は介護無しで?
 
Shhhhhそうですね。毎朝僕が学校に送って行って、往復30分くらい。放課後は専門の施設で2〜3時間遊んで6時くらいに送ってもらって帰ってきます。
 
Koyas現場のある日はどうしてますか?
 
Shhhhh前日夜中まで選曲して、一回起きて、出番が夜中なので一回お昼寝できたらするようにして。夕方から直前まで選曲はしていますね。週末は夜の9~10時くらいにご飯を食べて、町田から渋谷まで1時間かかるので10~11時には家を出て、って感じです。最近はアジアの国に行ったりするので、そういう時は別ですけど。
 
Koyas週末は奥さんが家で子どもの面倒見る感じですか?
 
Shhhhhそうですね。それをやってもらって10何年って感じ。そういう家族を持ったと割り切ってくれているのかなと。
 
Koyasお子さんに障害はあっても生活はあまり変わりませんね。
 
Shhhhhそうですね。見なきゃいけない時間は多いだろうなと思いますけどね。ただ、ほかの家庭の動きを見たことがないので、実感としては、ずっと小さいころの大変さが続いている感じなのかな。
 
Koyas話を聞いて、2〜3歳ごろの感じが続いていると感じました。
 
Shhhhh大きくなったらなったで、また別の大変なことが出てくるから、取られる時間は多いんでしょうね。あんまり考えすぎてもね、毎日の流れがあるので。


Shhhhhさん宅のDJブース


Koyas:DJの準備とか制作の環境について教えてください。
 
Shhhhh家の部屋をスタジオにしていて、Mac bookとオーディオインターフェイスからモニターに繋いでいるだけですね。ほかの家から少し離れた一軒家なので、防音しなくてもギリギリ大丈夫で。夜中は雨戸を閉めたりもするけど、そこまでストイックじゃないですね。むしろ息子の叫び声の方が大変なので(笑)。
 
Koyas叫ぶんですか?
 
Shhhhh結構すごいんですよ。叫んで暴れるので、壁とか穴だらけですね。感情がコントロールできないんですよ。だから選曲は子どもがいないときにやりますね。
 
Koyas寝る時間が遅くなることは?
 
Shhhhh息子の送りがあるのでそんなに遅くは。今Apple MusicとかサブスクやDropboxとかのクラウドが発達しているんで、移動中に聴けてすごく助かっています。通勤時間を無駄にしないような努力はしています。クラウドはほんとに子育てには助かっています。最近はアジアに行ったりするんですけど、rekordbox(※2)とハードディスクひとつ持っていけば、WiFiのあるカフェや友達の家とかで仕事できちゃいますからね。そう思うとやりやすい時代だなと思いますけどね。
※2:Pioneer DJが開発したDJ用の楽曲管理ソフトウェア
 
あと僕は性格的に多動症なんで、家に籠もって聴くと言うよりは、移動しながら聴いたり、人と話ながら聴いたりする方が好きで。空間と音楽が溶け込んでいるのが好きなんですよね。磯辺涼が書いてたんですけど、スマホでかかるヒップホップとか、今すごく味があるというか。音と空間っていうのは最近よく考えたりして。
 
Koyas子どもを持つ前と持った後で、違いはありますか?
 
Shhhhhグルーヴから選曲からあやふやだったものが、これでやっていくしかないってことで。でもそれは皆そうなんじゃないんですか。音楽ではなくても仕事上でも、そういうのは当然起こりましたね。
 
Koyas出るパーティーとか関わる仕事の変化とかありました?
 
Shhhhhとくにやっていることは変わらないですね。子どもができてから今の会社に就職したし、DJの内容に対してはすごくタイトになったと自分でも思うし。好きなものがよりタイトになった感じで。
 
Koyas家庭内で何か工夫していることとかありますか?
 
Shhhhhカミさんに一人の時間を持たせてあげるのが一番大事ですよね。
 
Koyas奥さんも週1でbonoboに入ってたら気分転換になりますね。
 
Shhhhh料理するのも好きなんで。原宿近辺って外国人多いけどビーガンできる人少ないんじゃないですかね。
 
Koyas障害を持つ子の親御さんの話を聞いたりすると、親御さんの方が障害を受け入れて乗り越えているイメージがありますがどうですか?
 
Shhhhhそれはもう毎日自分との戦いですね。その問いみたいなのが音楽に向かう…音楽って目に見えないし答えとかないし、それがすごく大きいものになっているんでしょうね。過剰にスピリチュアルになると袋小路になるだろうなって思って、そういう風にはならないようにしているけど。自分が音楽を続けてられるのは、子どものことで自分が緊張感と世の中に対する悩みみたいなものが、すごく自分を緊張させてくれている、向かわせてくれているっているのがあるので。

 

後編は、Shhhhさんも関わっているOVA主催のキャンプインフェス「NU VILLAGE  - a potolach camp」の話に続きます。私も出展者で参加しましたが、しっかりとDJカルチャーの流れを継ぎながらも、ありきたりな子ども連れイベントでは終わらないカッティングエッジなフェスです。
※記事中の年齢は取材時のもの


 
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