INTERVIEWS
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HELL

本作は僕自身の分身のようなもの、「HELLの仕事」という事をイメージさせたくて、HELL(地獄)を連想させる「悪魔」というネーミングを思いついたんだ。 本作は、僕が表現したかった事全てを満足行く形で表現出来たと自負しているんだけれど、本作制作の過程の中で、出来上がった作品達を聴いて行く中で、光と闇の2つの世界観に分けられるのではないか!?と気がついたんだ。兼ねてからダンスとアンビエントを一つの世界にまとめあげて表現したいというような構想は持っていたので、早速今回のようなNight/Dayというような2枚組で表現しようと考えた。DAYでは、今迄にやった事がないアプローチを入れてみようと思い、僕が音楽に興味を持ち始めた70年代のピンクフロイドやJ.M.ジャールあたりまでルーツをさかのぼってみる事にしたんだ。DAYのもう一つのビジョンとして構想した事は、NEU、クラフトワーク、CanまたはEberhard Schoenherrのように明確に現代のテクノ音楽が、シカゴ・ハウスと80年代のデトロイトテクノによって構築されていった、ドイツ人のエレクトロニック・ミュージックパイオニアの衝動を得るポテンシャルを持った音楽を作成する事だった。本作は、僕が心から愛していることの全てを蒸留して抽出したエッセンスのようなもので、「僕と僕の魂の肖像画」と言って良いと思うよ。 僕の見解では、テクノとハウスはダンスミュージックシーンに於いて、最もオープンで革新的な音楽ジャンルだと思っているんだ。何故そう思うのか!?と聞かれても上手く説明出来ないんだけれど…ダンスフロアへのアプローチに関しては、スタジオでは常に「何を聴きたいのか!?」「何が僕を突き動かせるのか!?」という事を思い描きながら制作を進めて行くんだ。それはダイレクトに曲に反映されて行くわけで…NIGHTにはそんな思いが表現されていると思う。リスナー自身も同じように、「何を聴きたいのか!?」「何が僕を突き動かせるのか!?」「何がHOTにさせてくれるのか!?」を感じてみて欲しい。「クラフトワーク」を産んだテクノの国という事だけでかたずけられてしまいがちだけれど、そう言う事ではないんだ。 ジャーマンテクノへの敬意と共に、僕がそれらに持っているノスタルジックな思いが本作には込められているんだ。一般的に世界のミュージックシーンとマーケットはイギリスやアメリカの音楽に大きく焦点があてられがちだけれど、それらには負けない多様な音楽の歴史がドイツにはあるという事を知ってもらいたいんだ。それは単に「クラフトワーク」を産んだテクノの国という事だけでかたずけられてしまいがちだけれど、そう言う事ではないんだ。例えば、ドイツ人ではないけれど、デヴィッド・ボウイやイギー・ポップのような最も偉大なミュージシャンの中にはベルリンに住んで、ここでレコード制作を行ってきた人たちが居たという事も含め、芸術と音楽に大いに影響を及ぼしているバックグラウンドも含めてドイツの音楽は今世紀に、伝統的なスタイルから抜け出して、他の領域探求と熟成を果たしたんだ思っているよ。 ヴォーカルに関しては僕自身歌にはあまり自信が無いので、歌はその筋の人に任せるのが一番だと思っていたんだ。シンガーを探すなら、僕が考えうる最高のシンガーを起用したかった。僕の中でブライアン・フェリーはシンガーとしても作詞家としても最高であり適任だったんだ。勿論、パフィーも他のコラボアーティスト達も天才的な人たちばかりだよ。パフィーは音楽シーンの現代版アンディ・ウォーホールみたいな存在になりつつあると思う。彼はアフターアワー・クラブについて構想を練っているみたいだし、世界中のテクノ・クラブで何がかかっているかも知りつくしてるから、彼の話には説得力があるんだ。彼のような人物は僕のような人間にはとても重要な存在なんだ。 僕の頭の中にはどうやら70年代のカルト映画が強烈な印象として、こびりついているんだ。本作でも"I Prefer Women to Men Anyway"という曲にLiquid Skyという映画のサウンドをサンプリングしているよ。この映画のサウンドトラックは8BITシンセサイザーで録音されていて非常にミニマルなアプローチの作品なんだ。映画のサウンドトラックというのは、作品の芸術性を高める為に非常に重要な役割を果たすものだと思っているよ。例えば『時計仕掛けのオレンジ』は、僕が考えうる中で音楽が映画のシーンに与える印象の最も重要な要素である事を表現している作品だと思うよ。これらの70年代の映像表現とサウンドトラックの関係性に触発されながら、新しい表現を模索しているよ。 「時計仕掛けのオレンジ」、「エル・トポ」、「リキッドスカイ」、「地球に落ちて来た男」かな… 今はとてもエレクトリック・アバンギャルド的な方向に興味がそそられているかな?音楽的に僕のDNAに刻み込まれたのは、ピンクフロイド、パンク、グラム・ロック、スペース・ロック、だけでなく、70年代のカルト映画、演劇、そして常に特定のインスピレーションを与え続けてくれたアンディー・ウォーホール、それにTaryn Simonのような現代アート写真家や、僕の大好きなデザイナー、Martin Margiela等の影響は、本作に凄く影響を及ぼしていると思うよ。アルバムジャケットで着ている衣装も含め、最近僕が着用している服はMartin Margielaの作品が殆ど。彼の仕事は古典的な考えを通して現実に繋げられるアバンギャルドの世界を探検して居ると思うんだ。こうしたアバンギャルドな世界観は、僕のイメージととてもリンクする存在だし、常に興味があるキーワードだね。 先日マイアミの『Winter Music Conference』を訪れた際に、聴いたんだけれど、Michael Cleistというアーティストが凄く良かったよ。他にもPezzner and Mr. DynamiteやSei A等が、今回僕の耳を射止めたアーティスト達だね。 僕がシーンに関わり始めた頃はDisko Bでキャリアをスタートしたんだけれど、当時はMijk van Dijk、Richard Bartz等の作品をリリースする中、次第にHELL自身のインスピレーションを模索、思考する中で1996年にGigoloレーベルにて初リリースしたんだけれど、以来、現在迄に250タイトルをリリースしている。Gigoloは「DJによるDJの為のリリース」をコンセプトに活動しているので、当然リリースは現在もVinyl(アナログ盤レコード)中心に行われてきている。アーティスト的な立ち位置では、常にグレイトな人々とのコラボレーションを意識している事で、新鮮であり続ける事。それを実現する為にはあまり考えすぎない事。僕は直感で行動するタイプ。常に新しい事にチャレンジしてチャンスを掴んでいけばシーンがどう変わって行こうとも自分が信じている事はやって行けると思うよ。