INTERVIEWS

Skream

これまで「Skream」っていう名前は、ダブステップというひとつのスタイルに関連づけて語られてきた。だから、俺のDJやライブに来てくれるファンの人たちは、そのスタイルが持つハードな音に慣れ親しんでいる。不安定(ウォブリー)なベースの曲とかね。でも、このアルバムはそういうスタイルじゃなくてもっと「パーソナルな旅」みたいなアルバムになっている。「Skream=ダブステップ」っていうレッテルを貼られるのに飽きたし、いつも同じような曲について話すのもつまらなくなったんだ。今回のアルバム「Outside the Box」は、基本的には自分が聴くためのものなんだ。家で聴いたり、出かけるときに聴いたり。Skreamにはいろいろと違う面があることを見せたかったんだよ。ウォブリーな曲だけでなく、La Rouxの「In For The Kill」リミックスのSkreamだけではなくてね。複雑なアレンジの音楽も作曲できるのを証明したかったんだ。インストのクラブトラックだけじゃなくて、しっかりとしたソングライティングができることも見せようと思って。 アルバムの中の1曲は、実は2年前から手をつけてた曲なんだ(笑)。そのときから2枚目のアルバム用に作ってたんだけど、でも実際の作業的には1年ちょっとってところだね。50曲ぐらい作って、その中からアルバムに合う曲を選んで行く作業を始めたんだ。今回は自分が求めてるアルバムにするためのトラックリストがすごく重要だったんだ。 La Rouxの曲は、間に合うかどうかちょっとあせったね。最初に聴いたデモがすごく好きで、アルバムに絶対入れたかったんだ。でも、曲自体もそうだけど、ミックスや他の制作面がうまくいかなくてね。最終的にはピート・ホフマンっていうロンドンのサウンドエンジニアに電話して聞いたんだ。たった1つの周波数の問題が理解できなくて頭がおかしくなりそうだったよ(笑)!それもあって締め切りに間に合わないんじゃないか、っていう焦りはあったね。でもレーベルの"TEMPA(テンパ)"は俺に自由にやらせてくれてて、そういった締め切りは自分で決めてやれるんだけど、今年中にリリースしたかったんだよね。本当は今年の夏前にリリースしたかったんだけど、ちょっとした問題で遅れたんだ。最終的には完成できてリリースできることになったからいいんだけど。おもしろいエピソードはとくになかったね。スタジオが火事になったとか、そういう話はないよ。 すごくうれしいよ。マスタリング済みのものが届いたときに最初から最後まで聴いて、時間をかけて作ってよかったと思ったね。いままでに作った曲の数を考えれば、すぐにアルバムは出せたと思うけど、時間をかけたことがいい結果に繋がったよ。それに、今作ではある程度リスクを負って挑戦した部分もあったんだけど、そういった挑戦をして本当によかったと思う。聴いた人たちからはアルバム全体の曲の幅広さにすごくいい反応もらってるし、いろいろとタイプの違う人が違う曲を気に入ってくれてて、多くの人を引きつけることができていてうれしいね。
タイトルだけど、俺は長い間自分を「ジャンル」という箱(ボックス)に閉じ込めているような気がしていて、人がどう思うか気にして新境地を開けなくなった気分になっていた。これ以上そういった箱の中に閉じ込められたくなかったんだ。だからこれは俺の一種の「反抗」で、ガイドライン(ジャンル)を捨てた俺なんだ。実験し、学び、コードを練習して、シンプルに音楽作りに励んだんだ。これまで音楽を作っていなかったという訳じゃないけど、今回はそういったコード進行とかを意識したかったんだ。前にも作ろうと思ったら作れただろうけど、アルバムとしてリリースするのと、シングルや12インチとして出すのとは違うと思うんだ。普通に出してたら忘れられてたと思う。というわけで、このタイトルの意味は「お前のジャンルなんてファックだ」という意味だよ(笑) いろいろな音楽を聴いてるよ。幅広く。70年代、80年代のインディーロックから今のインディーロック、ディスコ、ファンク。ラジオもよく聴いている。アンダーグラウンドだけじゃなくて、メインストリームでも何が起きてるか知りたいし、ラジオはその両方をバランスよく聴けるから、いいと思う。
俺は悲しいときは悲しい曲を、うれしいときはうれしい曲を作る、っていうアーティストではないね。ただ音楽を作るだけだ。自然と生まれてきたものを止めることはできない。もちろん、テーマを持つことはある。「ダークで気持ち悪い感じにしたい」ってなると、頭の中でホラー映画のシーンを思い浮かべたり、「ウェアハウス(大型倉庫)とかのレイヴで盛り上げる曲にしたい」となるとレイヴに行ったときを思い出して、こういうタイミングでこんな曲がかかったら手を挙げる瞬間だな、とか。だけど、一定の感情で作ったりはしないんだ。例外はアルバムの中で「ソング・フォー・レニー」っていう曲があって、レニーっていう昨年亡くなった友達に捧げたんだ。この曲を作ったときはすごく悲しかった。この曲は完全に感情を剥き出しにしている。それ以外は、ビートを書き始めたらなんとなく方向性が見えてきたものだね。飛び跳ねてるビートだったら、ちょっとバウンス的な要素を足して、ダークなビートだったら頭下げて入り込んでいく感じになったり……。俺の場合は全部ビートが土台で、方向性とかもそこから決まっていくね。 「ダブステップ」っていう言葉を一番使い倒してる人たちは、ダブステップが始まったころにいなかった人たちだけどね。最初は単なるムーブメントだったんだ。受け入れられていない音楽のムーブメント。受け入れられてない、っていうか商業的に成功していない、合法のラジオ局では一切流れない音楽だったんだ。当時は俺、Benga、Digital Mystikz、Kode 9、Horsepower Productions、Pinch、Mary Anne Hobbsとかで、みんなが集まって音楽をかけてたんだ。最初はそういったイベントは1つもなくて、最初に始めたのがFWDで、Digital MystikzがDMZを始めて……、そういうイベントがすごく重要だったんだ。しっかりとした大規模のレイヴだったからね。そういったイベントが出てくるまでは"FABRIC"のRoom 3が1番大きい規模だったくらいだから。さっきも言ったけど、ダブステップ、ダブステップと言ってる人は、その当時いなかった人たちで、俺にとっては彼らのいなかった最初期にあったものが「ダブステップ」なんだ。今はひとつのジャンルになったけど、当時はまったく認められてなくて、ただ「大低音のリディム」だったんだ。2003年からの変化がわかりやすいだろうけど、俺にとってダブステップっていうのは「最初期から今もずっと続けてる人たち」のことを意味するね。もちろん、なんにでも名前を付けないといけない、ということは十分理解している。今はすべてのリリースに「ダブステップミックス」が入っているのが当たり前のことになっている。俺のLa RouxのIn For The Killのリミックスのあと、ここ1年ぐらいだね。あれからすべてのリリースにダブステップリミックスが入ってるだろ?この状況は大嫌いだね。通常、レーベルはダブステップの大御所にリミックスをやってもらうバジェットがないから、安くてウォブリーなベースを作れる奴を見つけて作らせたりして、これがダブステップリミックスってことになる。そういうのが嫌だ。全部一緒に聴こえる。基本的にそういう同じものの繰り返しは嫌いだからさ。85bpmの狂ったドラムンベースのリミックスとか聴きたいよ。まあでも、ラジオ向けのトラックとかも今は作っているし、メインストリームやポップであることに関して反対してるわけではないんだけどね。 今注目してるのはKITO(キート)っていうロンドン在住のオーストラリア出身の女の子。去年自分のレーベル"Disfigured Dubs(ディスフィガード・ダブズ)"とサインしたすごく才能のあるアーティストなんだ。最近では"MAD DECENT"とも契約したしね。みんな絶対チェックするべきだよ。あとJOKER(ジョーカー)も最近すごく好きだね。アルバムがすごく楽しみだよ。CONGO ROCKっていうグループもいて、会ったことないけど彼らの音楽は好きだね。すごくミニマルなハウスなんだ。影響は自分の周りにいる人たちから受けている。朝5時に起きて仕事に行かないといけない友達とか見て、そうならないように、っていう影響は受けてるよ(笑)。やっぱりBENGAにもすごく影響受けてるね。お互いにそうだけど。過去10年ぐらい、彼がやってることを聴いて……昔からすごくいい関係なんだよ。対抗意識は持ったことないし、お互いを追い抜こう、っていう気持ちは一切ないんだ。曲を聴いて「イェー!これいいね!」ってなって、「じゃあ俺はこうするよ」って俺のひねりを足して……常に音楽を送り合ってるんだ。BENGAの影響は大きいね。 ここ最近さらによくなってきたね。全体的にもっとポピュラーになってきたからね。ヨーロッパはもう5年ぐらいやってるけど、ヨーロッパ全体は、昔から俺らのやってることに対してオープンに受け入れてくれてたよ。フランス以外はね。フランスには最初は手こずったよ。エレクトロ系のヒップスターたちに受け入れられるまでは。でも、何にせよ世界中でプレーするのは好きだよ。別に今日本にいるから言ってるわけじゃないけど"UNIT"は大好きだね。いつもお客さんがやる気満々ですごく盛り上がるから。ほかには、カナダに「Shambhala(シャンバラー)」っていうフェスがあるんだけど、それも最高だよ。本当に何もない土地で、10席しかない小型飛行機に乗って行くんだよ。彼らはヒッピーコミュニティーがベースになってて、ベースミュージックが大好きなんだ。最高なバイブズだよ。ロンドンなら"FABRIC"はいつプレーしても楽しいね。"Plastic People"も大好きだ。一時期閉まってたけどまた開店したんだ。ショーをやるのが基本的に大好きだね。大学だとかでやるのも好きだよ。結構遊べるからね。そんなド真剣にやらなくてもいいし。家で聴くような曲ではなく、本当に狂った曲をかけられるんだ。他では理解不能な曲でも、そういうところだと皆がハイだからその場では理解できるんだ。 ないね(笑)。本当に音楽ばかりやってるんだ。ほかに何したらいいのか分からないんだ。学生のときに音楽制作に出会ったときからこれなら一生続けられる、って思ったんだ。実際に音楽で成功するようになって、お金も入るようになるとさらにいい気持ちになって、運よく自分が好きなことを毎日やれているっていう実感が湧くんだ。俺の周りでそういう機会に恵まれなかった奴もたくさんいるからさ。あえていうなら、音楽以外では、美味しいご飯食べることと、まぁパーティーすることかな(笑)。パーティーするのは得意だね(笑)。トレーニングしてきたからさ(笑)。 引き続き応援よろしく!今まで作った曲を忘れて、オープンな心でこのアルバムを聴いて欲しい。これはまったく新しいスクリームの一面だから。この音楽をサポートし続けてほしいし、今後もユニークなみんなでいてくれ!